クリニックで健診システムは何ができる?特徴やメリット、選定ポイントを解説
近年、医療現場では業務効率化が求められており、クリニック向け健診システムの導入が注目されています。健康診断や人間ドック、特定健診などは多くの情報管理や報告書の作成を伴うため、スタッフの負担が大きい業務ですが、健診システムを活用することで業務の効率化と医療の質向上を両立できます。
この記事では、クリニック向け健診システムの基本的な特徴や機能、導入によるメリットなどをわかりやすく解説します。
目次
クリニック向け健診システムとは

クリニック向け健診システムとは、医療機関で実施される健康診断や人間ドック、特定健診などの健診業務を効率化するシステムです。予約管理から検査結果の管理、報告書作成、請求業務まで、健診に関わる一連の業務を統合的に管理し、業務効率化と医療の質を向上するツールとして活用されています。
従来の紙ベースの業務では、患者さん情報の転記作業や、手計算による判定業務に多くの時間を要していました。健診システムでこれらの作業を自動化することで、業務効率化が期待できます。
健診システムの対象になるもの
健診システムの主な対象となる健診には、以下の3つがあります。
- 健康診断
- 人間ドック
- 特定健診
健康診断は、企業が常時使用する労働者に対して実施が義務付けられている健診で、労働安全衛生法第66条に基づく法定健診として定められています。検査項目は血圧測定、血液検査、胸部X線検査などで、基本的な健康状態の把握、健康維持および増進を図る目的で実施します。
一般の健康診断のほかにも、特定の有害業務に従事する労働者を対象とした特殊健康診断などがあります。クリニックでは、企業の依頼を受けてこれらの健康診断を実施することがあります。健診システムを活用することで、労働者情報の管理、検査項目の設定、結果の記録、企業への報告書作成などを効率的に行えるようになります。
人間ドックは法令で義務付けられているものではありませんが、健康診断よりもさらに詳細な検査を行う総合的な健康診断で、がんや心疾患、脳卒中などの生活習慣病や重大な疾患の早期発見を目的としています。
クリニックによってさまざまなコース設定やオプション検査があり、健診システムは、複雑な予約管理や多岐にわたる検査項目の設定と結果入力、個別化された報告書の作成などをスムーズに行ううえで重要な役割を担います。
特定健診は40~74歳の医療保険加入者を対象とした健診で、被保険者だけでなく配偶者などの被扶養者も含まれます。高齢者医療確保法に基づき2008年4月から開始され、メタボリックシンドロームに着目した生活習慣病予防を目的としています。2024年4月からは第4期特定健診・特定保健指導として制度が改正され、単に健診を実施するだけでなく、“対象者の生活習慣が具体的に改善されたか(アウトカム)”を、より重視する評価体系へと移行しています。
健診システムの種類
健診システムは導入形態により、オンプレミス型とクラウド型の2つに分類されます。
オンプレミス型は、クリニック内にサーバーを設置し、ソフトウェアをインストールして運用します。カスタマイズ性が高く、既存のシステムとの連携もしやすい点が特徴ですが、サーバー機器の導入費用や設置スペースの確保が必要で、初期費用や運用コストが高くなる傾向があります。
一方、クラウド型は、インターネットを通じてサービスを利用するシステムで、インターネット環境があればどこからでもアクセスできるのが大きな特徴です。
クリニック向け健診システムでできること

クリニック向け健診システムは、健診に関するさまざまな業務を効率化するための多様な機能を備えています。主な機能を紹介します。
受診者の予約や受付
Web予約などの予約管理や受付処理機能が備わっており、健診予約の受付や予約状況の確認、予約変更、キャンセル処理、受付時の受診票発行などが可能です。
Web問診
Web問診システムは、受診される方が事前にスマートフォンやパソコンから問診票に回答できる機能です。これにより、問診票の受け渡し、電子カルテへの転記作業などが不要になり、事前に問診内容を確認できるため、診察時間の短縮や効率的な診察につながります。さらに、院内での接触を減らせるため、感染対策としても有効です。
受診状況の確認
健診システムは、受診される方の現在の状況をリアルタイムで把握できる機能を有しています。例えば、受付済み、採血済みなどの各ステータスをシステム上で確認できるため、スタッフは受診される方の流れをスムーズに管理できます。
健診結果の入力や取り込み
健診システムは、さまざまな検査結果を自動でデータとして取り込めるので、手作業による入力ミスを防ぎ、データ入力にかかる時間を短縮できます。健診結果は受診者ごとに一元管理され、過去のデータとの比較や経過を簡単に確認できます。
報告書や帳票の作成
登録された健診結果データに基づき、報告書や受診券、個人票、請求書などの帳票を自動で作成する機能も備えています。
自動判定機能では、日本人間ドック学会の基準値や登録された判定基準に沿って、A~D判定など判定値を自動生成できます。
受診勧奨
健診を受けていない対象者への受診案内やリマインドを行う機能により、受診率の向上が期待できます。また、再検査が必要な方への受診勧奨の機能を備えたシステムもあります。
会計
健診内容に応じた料金計算が自動で行われるため、会計処理をスムーズに進めることができます。
クリニックで健診システムを導入するメリット
健診システムの導入は、クリニックにとって多くのメリットがあります。ここでは主に3つのメリットを解説します。
予約や受付、会計業務の効率化
電話での予約対応はスタッフがほかの業務を中断せざるを得ませんでしたが、予約管理機能でWeb予約や予約調整が可能となり、電話対応の負担を減らすことができます。受付処理機能で受付業務のために割かなければいけない時間が減り、さらに健診結果や料金情報が一元管理されることで、会計処理の業務削減やヒューマンエラーの防止も期待できます。
こういった業務の効率化で、スタッフが患者さんのサポートに集中できる時間が増え、結果的に患者さんの満足度向上につながる点が1つ目のメリットです。
報告書作成、送付業務の自動化
健診結果から報告書を自動作成することで報告書作成にかかる時間を大幅に短縮し、入力ミスなどを抑えることが可能です。報告書の印刷、郵送準備などの一連の作業を一括で行えるシステムもあります。電子データとして健診結果を患者さんや企業担当者に送付する場合は、郵送費や紙のコストも削減可能です。
特定保健指導業務の推進
特定保健指導とは、生活習慣病の発症リスクが高いと判断された方に対し保健師や管理栄養士といった専門のスタッフが介入し、生活習慣の改善をサポートする取り組みです。健診システムを活用すれば、特定保健指導の対象者を自動で抽出し、個々のリスクに応じた指導計画の立案を支援できます。2024年4月から始まった第4期特定健診・特定保健指導制度では、従来の行動変容重視からアウトカム評価重視へと方針が転換されており、健診システムにも新しい評価基準に対応する機能が求められます。
クリニック向け健診システムの導入・運用にかかる費用の目安

クリニック向け健診システムの導入にあたっては、導入費用および運用にかかる費用の確認が重要です。システムのタイプと規模により費用は大きく異なります。
導入費用の目安
クラウド型健診システムは、初期費用がかからないプランから50万円ほどかかるプランまでさまざまです。
オンプレミス型健診システムでは、100万円程度のケースから1,000万円を超えるケースまで、導入規模や機能によって大きく幅があります。価格を公開していないベンダーもあるので、詳細は個別に問い合わせて確認する必要があります。
月額費用の目安
クラウド型の月額費用は、1~10万円が目安です。この費用には、システム利用料、保守・サポート、バックアップ、セキュリティ対策などが含まれている場合が多く、プランによって異なります。
オンプレミス型は、月額費用ではなく保守・運用費用として、年に20万円~100万円程度必要になるケースが一般的です。
クリニック向け健診システムの選定ポイント
ここでは、健診システム選びで特に重視すべきポイントを解説します。
自院の健診内容を網羅できているか
まず、自院で提供している健診内容、あるいは今後提供を予定している健診内容に対応しているかどうかを確認する必要があります。一般健康診断や人間ドック、特定健診など、自院が実施するすべての健診に対応できるかどうか、独自の様式やデータ提出要件に適合しているかは重要なチェックポイントです。
電子カルテとの連携はできるか
健診システムと電子カルテの連携は、クリニックの業務効率を向上させるための重要なポイントです。
健診結果が電子カルテに自動反映されることで患者さんの情報を一元管理でき、二重入力の手間やミスを削減します。現在使用している、あるいは導入予定の電子カルテと健診システムが連携可能かを、あらかじめベンダーに確認しておくことが大切です。
システムに拡張性はあるか
今後のクリニックの規模拡大や新たな健診メニュー追加に対応できるよう、ユーザー数や機能の拡張性、ほかのシステムとの連携の柔軟性があるかを確認しましょう。法改正への迅速な対応も重要です。
保守、サポート体制が充実しているか
導入後のトラブルに備えて、充実した保守、サポート体制が整っているかも重要なポイントです。システムに不具合が発生した際のサポート対応時間や連絡手段、迅速な復旧対応の有無を確認しましょう。定期的なシステムのアップデートやメンテナンス体制、スタッフ向けの操作トレーニングやマニュアルの有無も確認しておくのがおすすめです。
クリニック向け健診システム導入の流れ

クリニック向け健診システム導入にあたっては、まず自院の健診業務の現状の課題、導入目的を明確にし、そのうえで必要な機能、予算を検討します。
次に、複数のベンダーに資料請求を行い、デモンストレーションを通じてそれぞれの健診システムの特徴を把握します。見積もりを比較するだけでなく、自院の受診者との適合性、導入、運用コストの評価、サポート体制の充実度なども総合的に判断し、導入を決定しましょう。
健診システム導入前のスタッフ研修の重要性

優れたシステムを導入しても、それを使いこなせなければ、その効果を発揮できません。操作方法だけでなく、予約管理や結果報告、会計業務など、業務フロー全体を踏まえた実践的なトレーニングが重要です。
また、院内でマニュアルやサポート体制を整えることもポイントです。導入初期の習熟度がその後の業務効率やトラブル回避につながるため、可能であれば複数回に分けて研修を行うなど、導入前に計画的に準備を進めましょう。
まとめ
健診システムは、クリニックで実施する健康業務の効率化に役立つツールです。予約・受付から問診、検査データ管理、報告書作成、会計まで幅広い機能を一元化でき、これまで手作業だった業務を大幅に軽減できます。
導入にあたっては、自院の健診メニューへの対応状況や電子カルテとの連携可否、拡張性やサポート体制などを慎重にチェックすることが大切です。
事前にしっかりと準備をして、適切な健診システムを導入しましょう。




