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クラウド健診システムとは?オンプレミスとの違いや選び方、費用の相場も解説

                   
投稿日: 2025.08.15
更新日:2025.11.13
                   

医療機関のIT化が急速に進むなかで、健康業務におけるクラウド型健診システムの導入が注目されています。従来のオンプレミス型と比べ、コスト削減や運用効率の向上が期待できるクラウド型健診システムですが、その詳細や選び方について迷うこともあるでしょう。

本記事では、クラウド型健診システムの基本的な概要からオンプレミス型との違い、選ぶポイントなどをわかりやすく解説します。

クラウド型健診システムとは

クラウド型健診システムとは

健診システムとは、医療機関で実施される健康診断や人間ドック、特定健診などの健診業務を効率化するシステムのことを指します。

クラウド型健診システムの概要

クラウド型健診システムとは、院内にサーバーやソフトウェアを設置する必要がなく、ブラウザや専用のWeb画面からアクセスして利用できる健診システムです。

データはクラウド上で保管され、複数拠点からもアクセスが可能なため、規模の大きな医療法人も利用することができます。

クラウド型健診システムでできること

クラウド型健診システムでできることは多岐にわたります。

予約管理機能では、患者さんがWeb上で健診の希望日時を選択して予約を取ることができ、医療機関側は予約状況を一元的に管理できます。

また、受付問診機能、検査結果管理、結果報告書作成なども自動で行えます。健康診断の結果に基づいて、二次検査や精密検査、治療が必要な方に医療機関への受診を促す受診勧奨機能や会計機能があるシステムもあり、健診業務全体の効率化と患者さんへのサービス向上を期待できます。

クラウド型健診システムとオンプレミス型の違い

クラウド型健診システムとオンプレミス型の違い

健診システムには大きく分けてクラウド型オンプレミス型の2つの選択肢があります。それぞれの特徴を理解し、自院に合ったシステムを選ぶことが重要です。

クラウドとオンプレミスとは

クラウド型とオンプレミス型の違いは、システムがどこに設置され運用されるかにあります。クラウドとは、システムやデータをインターネット上のサーバーに置き、ネットワークを通じてそのサービスを利用する形態を指します。

一方、オンプレミスとは、施設内にサーバーやネットワーク機器を設置し、システムを運用する形態を指します。

機能と安全性で比較するクラウド・オンプレミス型健診システム

クラウド型健診システムとオンプレミス型健診システムは、機能性、データの安全性、費用、導入期間、管理負担など、さまざまな側面で異なります。

   
比較ポイント クラウド型オンプレミス型
機能のアップデート
  • 事業者側で自動反映
  • 法改正にも迅速に対応
  • 業者や自院での手動作業による対応が必要
  • 対応のための時間や費用が発生しやすい
システムの拡張性
  • 利用人数・拠点増にも柔軟に対応しやすい
  • サーバ増設やライセンス追加などで手間と費用が発生
カスタマイズ性
  • 標準機能が中心
  • 他システムとの連携に制約がある可能性
  • 自院に合わせたカスタマイズがしやすい
  • 院内でのシステム連携がしやすい
セキュリティ
  • 事業者が暗号化や脆弱性への対応を行う
  • 自院でセキュリティ対策を実施
バックアップ
  • 自動バックアップが標準的
  • 自院で運用
費用構造
  • 初期費用を抑えられる
  • 月額費用が必要
  • 初期費用が高額になりがち
  • 年額保守が多い
  • ハードの更改費が必要

クラウド型は、アップデートや機能拡張、セキュリティ対策を事業者に任せられるため、常に新しい状態のシステムを安定して運用できる点が特徴です。

オンプレミス型は、自院の運用フローに合わせたカスタマイズ性や院内ネットワークとの連携に強みがありますが、保守や法改正対応は院内での負担が大きいといえます。

クラウド型健診システムを導入するメリット

クラウド型健診システムを導入するメリット

クラウド型健診システムを導入するメリットを4つ紹介します。

予約、受付業務の省力化

クラウド型健診システムの導入により、予約や受付業務の大幅な省力化が実現できます。

Web予約機能によって患者さんが24時間好きなときに予約でき、予約変更やキャンセルも行えるため、電話や窓口での予約対応回数を削減できます。システム上で予約状況がリアルタイムに反映されるため、ダブルブッキングのリスクも低減できるでしょう。

患者さんの情報や健診コースの事前入力が可能となり、当日の受付業務を短縮できます。受付票や問診票の自動発行といった機能もあり、スタッフの作業を効率化しながら、患者さんの待ち時間短縮にも貢献します。

会計業務の効率化

クラウド型健診システムは、健診料金の計算から請求書発行まで自動で行われるため、会計業務全般を効率化できます。保険適用の有無や自費診療の料金設定などを事前に登録しておくことで複雑な健診メニューにも対応でき、企業健診での集合請求や個人健診での個別請求など、多様な請求形態にも対応できます。会計データの管理で経営判断に必要な情報を迅速に取得でき、月次や年次での収益分析に活かせます。

帳票、報告書作成の効率化

クラウド型健診システムでは、取り込んだ検査結果をあらかじめ設定された診断基準やテンプレートに照らし合わせ、報告書を自動生成できます。

企業健診や団体向け健診などで求められる統一フォーマットへの対応や、個別にカスタマイズされた帳票の出力にも柔軟に対応でき、個人結果報告書、企業向け総括表、受診率一覧、所見別統計など目的に応じて自動で出力できます。

さらに、税務申告に必要な帳票作成も自動化でき、事務作業の負担軽減に貢献します。

法改正や制度改正への柔軟な対応

医療制度や健診制度は定期的に改正され、その都度システムの更新が必要となります。クラウド型健診システムでは事業者が法改正への対応を行うため、医療機関側での対応負担が軽減されます。

クラウド型健診システムと既存システムの連携

クラウド型健診システムと既存システムの連携

クラウド型健診システムの導入する場合、既存システムと連携できるかが重要なポイントです。電子カルテやレセプトコンピューター、医療用画像管理システムとの連携により、データの一元管理と業務の効率化が実現できます。

電子カルテシステムとの連携では、健診結果を自動的に患者さんの診療記録に反映させることができます。また、健診で撮影したレントゲンやエコーの所見を画像管理システムと連携させることで、健診システムからPACSに保存された画像を参照できるようになり、診断効率が向上します。

会計システムとの連携では、健診で実施された内容に応じた料金をシステム上で自動計算し、そのまま会計処理に反映できるので、手入力による転記ミスや二重登録のリスクを低減できます。また、保険請求や自費診療の区分けも自動化され、請求業務の正確性向上と効率化を同時に実現できます。

クラウド型健診システムの導入にかかる費用の相場

クラウド型健診システムの導入にかかる費用の相場

クラウド型健診システムの導入は、オンプレミス型と比較して初期費用を抑えられるのが特徴です。

初期費用の相場

クラウド型健診システムの初期費用は、初期費用がかからないプランから50万円ほどかかるプランまで、導入するシステムの機能や医療機関の規模により大きく異なります。

運用費用の相場

クラウド型健診システムの月額費用の目安は、約1万円~10万円といわれています。この費用にはシステム利用料、保守・サポート、バックアップ、セキュリティ対策などが含まれます。そのほかにもオプションの機能があり、追加料金がかかる場合があります。

運用費用は、毎月固定で発生するコストとなるため、長期的な視点での費用対効果を検討することが重要です。

クラウド型健診システムを選ぶポイント

適切なクラウド型健診システムを選ぶためには、いくつかの大切なポイントがあります。ここでは3つのポイントを詳しくみていきましょう。

自院のシステムとの連携の可否

自院の電子カルテ、レセプトコンピューター、画像管理システムなどの既存システムと、新しく導入するクラウド型健診システムがスムーズに連携できるかどうかは、業務効率に大きく影響します。また、将来的な拡張性も大切です。将来的に別のシステムを導入する予定がある場合、そのシステムとの連携についても考慮しておきましょう。

患者さんとスタッフの操作性

クラウド型健診システムを選定する際、患者さんとスタッフの操作性も重要な評価項目です。どれだけ高機能なシステムであっても、使用する患者さんとスタッフが使いにくければ、業務の効率化にはつながりません。

患者さんにとっての使いやすさは、予約率や来院率に直結します。直感的に操作できるWeb予約画面、スマートフォンにも対応したインターフェース、予約の確認・変更・キャンセルが簡単に行える設計であるかがポイントです。特に高齢の患者さんが多い場合、文字の見やすさやボタンの配置など、ユーザビリティに配慮された設計が求められます。

導入を検討する際は、実際に業務で使用するスタッフの意見も取り入れましょう。

保守、サポート体制の充実度

クラウド型健診システムの導入後は、継続的なサポートが不可欠です。稼働時間内に迅速なサポートを受けられるか、緊急時の対応が可能かなどを確認しましょう。特に、健診業務が集中しやすい午前中や土曜日のサポート体制は重要です。技術サポートの提供方法に関して、電話、メール、チャット、リモート操作など、どのような方法で行われるかを確認します。また、定期的なシステムメンテナンスやアップデートが、どのような頻度で、どのような形で行われるかも事前に把握しておくべきポイントです。

クラウド型健診システムの導入フローと注意点

クラウド型健診システムの導入フローと注意点

クラウド型健診システムを円滑に導入し、その効果を最大限に引き出すためには、計画的なフローと、導入前後における注意点の把握が不可欠です。

導入フロー

クラウド型健診システムを円滑に導入し、その効果を最大限に引き出すためには、計画的な導入フローが必要です。

導入前の準備段階では、自院の健診業務の現状の課題や導入目的を明確にしたうえで必要な機能、予算を検討します。

複数のベンダーから資料請求を行い、デモンストレーションを実施し、それぞれの健診システムの特徴を把握しながら比較検討します。自院の患者さんとの適合性、導入・運用コストの評価、サポート体制の充実度なども総合的に判断し、導入を決定しましょう。

選定後は、詳細な設定作業とテスト環境での動作の確認を行い、実際の業務フローに沿ってテスト運用を行います。システムを利用するすべてのスタッフに対して研修を実施し、複数回に分けて研修するなど繰り返し学習できるようにしましょう。

導入前後の注意点

クラウド型健診システムを導入するにあたり、導入前と導入後でそれぞれ注意すべき点があります。

導入前は、既存システムとの互換性やデータ移行の手順を確認し、スムーズに稼働できる環境を整えておきましょう。健診業務の流れの変更点、各部署の役割、既存システムとの連携状況などを整理し、マニュアル作成や研修日程はスケジュールに余裕を持って進めるのがポイントです。

導入後は、定期的な運用状況の見直しと評価を行うことも重要です。システム導入によって期待した効果が出ているか、業務上の課題は解決されたかなどを振り返り、必要に応じて追加研修や設定の見直しを検討します。スタッフからのフィードバックを積極的に収集しましょう。

まとめ

まとめ

クラウド型健診システムは、従来のオンプレミス型よりも初期費用を抑えやすく、システムの運用・保守の負担が少ないシステムです。

導入するメリットは、患者さんの利便性向上や、受付・会計業務の効率化、帳票・報告書作成の自動化、さらには法改正への迅速な対応など多岐にわたります。しかし、導入を成功させるためには、既存システムとの連携の可否、操作性、そして導入後の保守・サポート体制の充実度などを慎重に検討することが必要です。

自院に合うシステムを導入し、効率的で質の高い健診サービスの提供につなげましょう。