患者呼び出しシステムは必要?メリットや注意点、導入の流れや費用相場を解説します
クリニックでの待ち時間は、患者さんにとってストレスを感じやすい時間です。特に、混雑する待合室ではプライバシーや感染症のリスクも気になるところです。そこで注目されているのが、受付を済ませた患者さんが院外や車内、近隣施設などで自由に待機でき、診察が近づくと自動で呼び出してくれる「患者呼び出しシステム」です。
本記事では、患者呼び出しシステムの概要や種類、導入のメリット・懸念点、選び方や費用、導入の流れまでを詳しく解説します。
患者呼び出しシステムの概要と種類

患者呼び出しシステムとは、専用の呼び出し端末やスマートフォンのアプリ、メール、SMSなどのを通知手段を活用し、受付を済ませた患者さんに診察や会計の順番が来た際に自動で知らせる仕組みのことです。
システムを介して呼び出すことで待合室にいなくても順番に気付けるため、患者さんは院内外の好きな場所で待機可能です。
患者呼び出しシステムにはいくつかのタイプがあります。主な種類と特徴は次のとおりです。
- スマートフォンや携帯電話などを活用するタイプ:アプリやメール、SMSで通知するので、患者さんが院内で待つ必要がない
- 専用呼出端末(ポケットベル型など)を貸し出すタイプ:スマートフォンや携帯電話を持っていない患者さんにも対応できる
- 院内モニターやディスプレイで番号を呼び出すタイプ:ほかの方法と組み合わせやすい
それぞれの特徴を知り、クリニックの患者層や設備状況に合わせた種類を選ぶことが重要です。
患者呼び出しシステム導入のメリットと懸念点

患者呼び出しシステムを導入すると、患者対応や院内オペレーション面で多くのメリットがあります。
- 待合室の混雑緩和・感染リスク低減
- 患者満足度の向上
- プライバシー配慮・聞き逃し防止
- 業務効率化とスムーズな診療進行
患者さんが快適に過ごせることで満足度向上につながるだけでなく、クリニックの運営全体がよりスムーズになると期待できます。
患者呼び出しシステムによって、受付後の待ち時間の過ごし方の自由度が増し、長時間の待合室滞在による疲労やストレスを解消できます。必ずしも待合室で待つ必要がなく、車内で休んだり用事を済ませたりでき、「トイレなどで席を外しているあいだに呼ばれたらどうしよう」という不安も感じにくくなるでしょう。
院内の密集を防げるため、感染症対策の面でも患者さんはより安全感を得られると考えられます。
メリットが多い一方で、導入にあたっていくつか懸念点やデメリットも把握しておく必要があります。
- 導入コストと維持費がかかる
- 操作が難しいと感じる患者さんへのフォローが必要
- 機器管理の手間がかかる
- スタッフの運用習熟と患者さんへの周知が必要
- 通信障害やシステムトラブルへの備えが必要
特に注意したいのは、高齢の患者さんやスマートフォンに不慣れな方は操作が難しいと感じる可能性があるという点です。受付で丁寧に説明し、必要に応じて従来どおり直接声がけするなどの対応も残しておくことが大切です。
患者層に合わせた柔軟な運用が、患者さんにとってのメリットにつながるといえるでしょう。
患者呼び出しシステムの導入に適しているのは、一日の患者数が多く待ち人数や待ち時間が多く発生しがちなクリニックです。
- 来院患者数が多く混雑しやすい
- 診察時間が読みにくく待ち時間のばらつきが大きい
- 待合スペースが手狭である
- 感染症リスクに配慮したい
- プライバシーやサービス向上を重視したい
以上のような条件に当てはまる場合は、患者呼び出しシステム導入のメリットが大きいと考えられます。逆に、完全予約制で待ち時間が発生しにくいクリニックでは必要性が低いでしょう。自院の診療科特性や患者層を見極めたうえで、導入判断をすることが重要です。
患者呼び出しシステムの選び方と費用相場

複数のメーカーやサービスがあるなかで自院に合ったシステムを選ぶには、次のポイントに注目しましょう。
- 通知方法と患者層の適合
- 付帯機能やサービス体制
- 初期費用とランニングコストのバランス
- システムの安定性や通信環境への依存度
これらを総合的に比較し、自院のニーズに合う患者呼び出しシステムを選びましょう。
費用は選ぶシステムの種類や提供会社によって幅がありますが、一般的な費用の目安は以下のとおりです。
- スマートフォンや携帯電話などを活用するタイプ:初期設定やシステム利用料として導入費用は10〜30万円程度、運用費用は月額5千円〜2万円前後
- 専用呼出端末(ポケットベル型など)を貸し出す配布するタイプ:本体機器や設置工事費を含めて導入費用は20〜50万円程度、運用費用は1万円程度
月額費用がかからないプランや月額定額プランなど、システムや事業者によって料金体系が異なるため、複数社に問い合わせて自院の規模・ニーズに合ったプランを検討してください。
患者呼び出しシステムを導入する流れと導入後の運用

患者呼び出しシステム導入の一般的な流れは、事前準備・業者選定から始まり、機器設置、スタッフ研修、患者周知というステップで進みます。
- 情報収集とニーズ確認 まず自院に合いそうなシステムの情報収集を行います。
- 業者へ問い合わせ・デモ依頼 候補となる提供会社に連絡し、詳しいサービス内容や料金プランの説明を受けます。可能であればデモ機を借りて、営業担当によるデモンストレーションを実施してもらいましょう。
- 契約・発注 導入するサービスを決定したら契約手続きを行い、必要な機器を発注します。
- 設置・初期設定 届いた機器類を院内に設置します。
- スタッフ研修と試運転 機器設置後、スタッフ向けに操作方法の説明会や研修を行います。
- 患者さんへの周知 本格稼働にあたり、患者さんにシステム導入を告知します。
- 運用開始とフォロー システム稼働開始後は、しばらくスタッフ同士で状況を共有し合い、問題があれば改善します。
クリニックの事情によって多少前後しますが、おおむねスムーズに導入できるシステムだといえるでしょう。
大がかりな研修は不要ですが、事前にスタッフ全員への説明・周知は必要不可欠です。患者呼び出しシステム自体は操作が簡単なものが多く、基本的には送信機で呼び出したい患者番号を押すだけなので難しいスキルは要求されません。
導入当初は戸惑う場面もあるかもしれませんが、事前研修により想定外の事態を減らし、スムーズな開始に向けて準備をしましょう。なお、システム提供企業が操作マニュアルや電話サポートを用意していることが多いので、トラブル時などはすぐ問い合わせられるよう、サポート連絡先を周知しておくのも大切です。
患者呼び出しシステムを定着させるには、導入後の細かな運用工夫も重要です。以下のポイントに気を付けると、よりスムーズに活用できるでしょう。
- 患者さんへの丁寧な案内を継続する
- 呼び出し漏れ・遅れへのフォロー
- 機器の定期メンテナンス
- 不具合などスタッフ間の情報共有
- 患者さんのフィードバックを活かす
以上のポイントを実践することで、患者呼び出しシステムを患者さんに向けたサービス向上のためのツールとして活用できるでしょう。
編集部まとめ
患者呼び出しシステムはクリニックの待ち時間管理と患者サービス向上に役立ち、導入により患者満足度向上や業務効率化が期待できます。費用や運用面の注意点もありますが、クリニックでも導入しやすいツールであるといえます。
自院に合う患者呼び出しシステムを構築し、よりよいクリニック運営のために役立てましょう。




