クリニックのセミセルフレジとは?フルセルフレジとの違いや選定ポイント、メリットを解説します
クリニックの開業で、業務効率化のカギを握るのが受付・会計業務です。人手不足が問題視されている昨今、セミセルフレジはスムーズな会計を実現できるツールとして注目されています。
本記事では、セミセルフレジの特徴やセミセルフレジとフルセルフレジの違い、セミセルフレジを導入するメリットなどをご紹介します。
目次
セミセルフレジの特徴
セミセルフレジは、スタッフが会計処理を行う部分と、患者さんが支払い操作を行う部分を分けたレジシステムです。
会計時にスタッフが診療内容や保険点数を確認し、支払金額確定までを行い、患者さんが精算機で合計金額を確認、支払いを行います。フルセルフレジと比べて操作が複雑になりにくく、高齢の患者さんや初めて利用する患者さんにも使いやすいのが特徴です。
スタッフによる金額確認があるため、会計ミスを防ぎながら業務効率を向上させることができます。
機能と患者さんへの負担で考えるセミセルフレジとフルセルフレジの違い

セミセルフレジとフルセルフレジでは、どのような違いがあるのでしょうか。機能面と患者さんへの負担という二つの側面から解説します。
【機能面】セミセルフレジとフルセルフレジの違い
医療機関に導入されるレジは、施設やメーカーによって呼び方や分類が異なります。
一般的には、以下のように分類されています。
- セミセルフレジ:医療機関側で合計金額を入力し、患者さんが自動釣銭機を使用して支払をする機種
- フルセルフレジ:患者さんが会計金額を確認し、支払い、領収書の受け取りまで行う機種
フルセルフレジ、自動精算機、自動釣銭機は業界内でも明確に定義づけられていないため、メーカーによって呼び方が異なることがあります。そのため、本記事では上記の一般的な分類に基づき解説します。
セミセルフレジは、電子カルテや診療報酬明細書を作成・管理するレセプトコンピュータ(レセコン)との連携がある場合は会計金額を自動転送できます。連携がない場合や自由診療を提供しているクリニックでは、スタッフが手動で金額を入力することもあります。操作はシンプルでわかりやすく、支払いのみ患者さん自身が行います。
一方、フルセルフレジは電子カルテやレセコンと連携されている機種が多く、会計金額を自動転送できるタイプも存在します。受付から操作、支払いまですべて患者さんが行います。
【患者さんの負担】セミセルフレジとフルセルフレジの違い
セミセルフレジは画面で案内される選択肢が少なく操作しやすい一方、フルセルフレジは受付から会計、領収書印刷などすべて患者さん自身が操作する必要があるため操作が複雑になることもあり、慣れていない方にとっては操作しにくかったり迷ったりしてしまう可能性があります。
クリニックでセミセルフレジを導入するメリット

セミセルフレジをクリニックへ導入するメリット4つのメリットを解説します。
会計業務の効率化
電子カルテやレセコンと連携されている場合、セミセルフレジの導入によって、スタッフの手入力による会計処理が不要になります。またセミセルフレジは現金、クレジットカード、QRコード決済など幅広い決済方法に対応している機種が多い傾向で、現金の取り扱い金額が減少し会計処理をスムーズに進めることができます。
会計待ち時間の短縮
スタッフによる窓口会計の場合、患者さん一人ひとりに対応する時間が必要です。会計処理に時間を要することから、患者さんの待ち時間も増える傾向があります。セミセルフレジの導入によって患者さん自身で会計を行うことができ、待ち時間の短縮につながります。
会計ミスの削減
電子カルテやレセコンと連携されている場合、患者さんの支払う金額を自動計算できるので会計ミスをより少なく抑えることができ、会計ミスに対応する時間や手間も少なくなります。
感染リスクの低減
セミセルフレジは患者さんとの接触機会が少なくなるので、特に感染症が流行りやすい時期には、スタッフと患者さんがお互いに感染リスクを低減することができます。
セミセルフレジを比較するポイント

セミセルフレジを導入する場合、どのような点に注意して比較したらよいでしょうか。比較するポイントを5つに分類して解説します。
電子カルテやレセコンとの連携状況
電子カルテやレセコンと連携とセミセルフレジの連携には相性があり、連携できない可能性もあります。導入予定の電子カルテやレセコンと連携できる機種を選ぶとよいでしょう。
対応している決済方法の種類
患者さんの層が若い世代であれば、現金以外にクレジットカード決済やQRコード決済、電子マネー決済などさまざまな決済手段に対応している機種を導入することで利便性が高まり、クリニックへの満足度向上につなげられます。
故障やトラブル発生時のサポート、保守の体制
トラブル発生時や、万一の故障に迅速に対応できるサポート体制が整っているかどうかも大切なポイントです。
特に土日診療や夜間診療があるクリニックでは、サポート窓口が24時間対応しているか、リモートでのトラブル解決や現地での修理対応が可能かどうかを確認しておきましょう。
会計業務の停止はクリニック運営に大きな影響を与えるため、保守契約の範囲や費用、緊急時の代替手段についても事前に明確にしておくことが大切です。
自院の設置スペースとの兼ね合い
セミセルフレジは基本的にはコンパクト設計の機種が多い傾向で、コンパクトモデルはカウンターへの設置に適しており、大型モデルは設置のための専用スペースが必要です。自院のスペースに応じた製品を選びましょう。
操作性
画面表示が大きいこと、わかりやすく誘導してくれるメッセージ表示があることも判断材料のひとつです。例えば、「診察券をかざしてください」「金額をご確認のうえ、お支払いください」というようなメッセージの表示があると患者さんは操作しやすいでしょう。カード挿入時や決済時にイラスト付きで案内できる機種も直感的に操作できます。
クリニックへのセミセルフレジの導入フローと導入時の注意点

クリニックへセミセルフレジを導入する場合の導入フローと注意点を解説します。
導入フロー
一般的なセミセルフレジの導入フローは次のとおりです。
- ニーズの整理、課題の洗い出し
- 機種の選定、業者との打ち合わせや見積依頼
- 電子カルテやレセコンとの連携確認
- 設置・初期設定
- プレ稼働
まずは想定する患者層を分析し、年齢層やキャッシュレス決済の需要などの状況を整理します。そのうえでどのような機能が必要かを整理し、以下のような点を明確にして自院に合った要件を洗い出しましょう。
- キャッシュレス決済に対応すべきか
- 電子カルテやレセコンと連携したいか
- 自院の設置スペースに合っているサイズか
- 音声案内などわかりやすいシステムか
トラブル発生時のサポートや保守体制が充実しているか電子カルテやレセコンと連携したいかどうかをあらかじめ決めておくことで、自院が導入予定のシステムや導入済みのシステムと連携できるかどうか、連携する場合の流れはどうなるのか、追加費用はどのくらいなのかといった点を比較しやすくなります。
上記を踏まえて資料請求を行い、機能やサポート体制、費用などを比較しましょう。
どの機器にするか決まったら、登録機の設置やネットワーク設定など稼働の準備が進みます。本格稼働前に一部の患者さんに協力してもらって試験運用を行い、実際の操作の流れや待ち時間の変化、患者さんの誤操作しやすい箇所などを確認し、本稼働に向けて準備するとよりスムーズに運用できます。
導入時の注意点
セミセルフレジを導入する前に、実施しておくべきことや注意点を確認しておきましょう。
スタッフへの操作研修を実施する
セミセルフレジを導入する際は、スタッフが正確に操作を行えるように事前研修を行います。金額の確認方法、決済方法の選択など、基本的な操作の研修や、決済エラー時の対処法、メーカーへの連絡手順などの研修が必要です。実際に運用開始する前に、実際の機種を使用した支払い誘導やトラブル対応などを確認しておきましょう。
患者さんへの院内掲示と操作マニュアルを作成する
セミセルフレジを初めて利用する方や高齢の方にも配慮し、操作手順をわかりやすく表示したポスターを掲示したり、初めて来院する方に向けたリーフレットを用意したり、患者さんが対応に困らないように案内を充実させておく必要があります。
停電やトラブル発生時の業務フローを作成しておく
セミセルフレジは電源やネットワークが必須のシステムなので、停電やシステム障害が発生すると利用できなくなるリスクがあります。そのため、トラブル時に備えた代替の会計手順や手動での精算方法をマニュアル化し、スタッフ全員が緊急時の対応を共有しておきましょう。事前にシミュレーションを行い、混乱を抑えてスムーズに対応できる体制を整えることが重要です。
セミセルフレジを使用できない患者さんへの対応法を検討する
セミセルフレジの操作が難しい方のために、従来の窓口対応を残す、スタッフが横でサポートするなど、柔軟な運用を検討しましょう。特に初めて利用する患者さんには、操作の流れを丁寧に案内することで安心感につなげることができます。すべての患者さんが安心して利用できる配慮が大切です。
セミセルフレジの費用相場と活用できる補助金の種類

セミセルフレジを導入する場合、登録機の費用や初期設定費用、保守・サポート費用などがかかります。ここでは費用の目安と活用できる補助金の種類を解説します。
セミセルフレジの導入と運用にかかる費用の相場
セミセルフレジを導入する場合、初期導入費用がかかります。
導入費用の相場
基本的には登録機と自動釣銭機を別々で購入する必要がありますが、メーカーや販売店がセットで販売していることもあります。
登録機にかかる導入費用の相場は90~150万円程度ですが、設置工事や初期設定費が別途必要な場合は総額が200万円以上になることもあります。
運用費用の相場
セミセルフレジの運用費用は、保守・メンテナンス料、ソフトウェアの利用料、決済システムの手数料などが含まれ、一般的には月額1〜5万円程度が相場です。
キャッシュレス決済を導入する場合、1件あたり3〜5%程度の決済手数料が発生するのが一般的です。保守・メンテナンス費には機種の故障やデータ修復、ソフトウェア更新、遠隔サポートなどが含まれます。契約内容によって対応可能な範囲が異なるため、事前に確認しましょう。
またデータをクラウドに預ける場合は、クラウドシステム利用料が別途かかることがあります。
クリニックにセミセルフレジを導入する際に活用できる補助金の種類
補助金制度を活用することで、セミセルフレジ導入の費用負担を軽減できます。代表的なものにIT導入補助金があり、ソフトウェアや関連機器の導入費用の一部が補助されます。
IT導入補助金は、経済産業省が提供しているソフトウェア・サービスなどのITツール導入を支援する補助金で、計画の作成や見積もりの取得を行ったうえで申請し、交付決定後に購入・導入を行います。
IT導入補助金のうち通常枠では、会計や決済のみツールを導入する場合のA類型、顧客管理システムなど複数の業務も導入する場合のB類型があります。
セミセルフレジのみ導入する場合はA類型、会計以外のシステムの導入も検討している場合はB類型が適しています。
| A類型 | B類型 | |
| 補助額 | 5万円以上〜150万円 | 150万円〜450万円 |
| 補助率 | 1/2〜2/3(最低賃金に近い雇用形態の事業者は2/3) | 1/2〜2/3(最低賃金に近い雇用形態の事業者は2/3) |
IT導入補助金のインボイス枠では、インボイス対応に必要なツールを導入するためにかかる費用の補助を受けられます。補助率や補助金額は下記のとおりです。
- ハードウェア(登録機・自動釣銭機)の補助率1/2
- ソフトウェア・クラウド利用料の補助率:50万円以下の場合、補助率は4/5(小規模事業者)、または3/4(中小企業)、50万円を超える場合は2/3
また、厚生労働省による働き方改革推進支援助成金は、中小企業を対象として生産性の向上、時間外労働の削減などを目的としている補助金です。
セミセルフレジを導入し、就業規則の変更など労働環境の改善を行うことで、労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コースに該当する可能性があります。
出典:
厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692.html)
まとめ
セミセルフレジはクリニックの会計業務を効率化しながら、待ち時間短縮や会計ミス防止、感染リスク低減など、多くのメリットをもたらすツールです。
導入にあたっては、患者層やサポート体制、電子カルテやレセコンとの連携可否、設置スペースなどを比較し、自院に合う機種を選ぶのがポイントです。気になる機種がある場合は、試験導入から始めてみるのもおすすめの方法です。
補助金の活用も検討しながら、セミセルフレジを導入してよりよいクリニック運営のために役立ててみませんか?




