電子カルテを使いこなすためには?使い方のポイントや導入手順を解説!
電子カルテを効果的に使いこなすためには、その機能と操作方法を正しく理解することが重要です。電子カルテを適切に使用することで、診療時間の短縮や情報正確性の向上、医療の質の改善が期待できます。一方で電子カルテを有効活用するには、システムを理解するとともに、自院の業務フローに合わせた運用ルールの設計が重要になります。本記事では、電子カルテを使いこなすためのポイントや使用する際の注意点などについて解説します。
電子カルテを使いこなすメリット
- 電子カルテのメリットについて教えてください。
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医療現場における電子カルテの導入は、多くのメリットをもたらします。ここでは、主なメリットを5つ紹介します。
・情報アクセスの迅速化
電子カルテの導入によって、診療情報の検索や照会が容易になり、必要な情報への迅速なアクセスが可能になります。これにより、従来の紙カルテでの運用時に比べて、医療現場の業務効率が改善され、スタッフの業務負担軽減や患者さんの待ち時間短縮が期待できます。
・検査結果の取り込みが即時に可能
電子カルテは、検査結果などの情報を即時に取り込むことができます。検査結果を電子カルテですぐに確認できるので、患者さんの状態を瞬時に把握でき、適切な治療計画を立てやすくなります。また、レセコンや自動精算機との連携も可能なため、レセプト作成や会計業務の効率化や正確性の向上につながります。
・紙カルテの保管スペースが不要
電子カルテの導入により、紙カルテを保管するスペースや管理コストを削減することができます。紙カルテは長期的に保管するスペースが必要なため、患者数の増加とともにその場所の確保が課題でした。さらに、過去の紙カルテを電子化するサービスを利用することで、そのスペースを別の用途に活用できます。
・間違いを未然に防ぐ
電子カルテを導入することで、手書きによる書き間違いや読み間違いといった指示の伝達ミスを回避することができます。電子カルテのなかには、不正確な情報や矛盾した情報が自動的に検出される機能をもつシステムもあり、医療ミスや誤診のリスクを未然に防ぐことができます。
・ほかの医療機関との情報共有がしやすい
クラウド型電子カルテは、インターネットを介してクラウド上でデータの管理をおこなうため、分院設立時などほかの医療機関との情報共有が容易になります。また、スムーズな診療情報の共有は、地域医療連携を推進し複数の医療機関における二重検査や二重投薬などの非効率な医療提供を防ぐことができます。
電子カルテを使いこなすためのポイント
- 電子カルテの操作は難しいですか?
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電子カルテの操作感は、使用するシステムの操作性や使い手がパソコンの操作に慣れているかによって異なります。特に、高齢のパソコン操作に苦手意識があるスタッフは、長年使用してきた紙カルテの方が使いやすいと感じるかもしれません。
しかし、最近の電子カルテは、パソコンが苦手な人でも比較的簡単に操作ができるように設計されています。導入初期は慣れない操作や覚える手間に業務効率が一時的に落ちる可能性もありますが、一度覚えてしまえば、その後は大幅な効率化が期待できます。このような使いこなすための手間は、必要なプロセスとして前向きに捉えることも大切です。
- 電子カルテの便利な機能について教えてください。
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近年登場している電子カルテには、初めての人でも直感的に操作がしやすいように様々な便利機能がついています。その中でも代表的な機能を3つ紹介します。
・検索機能
電子カルテには、患者さんの情報を迅速に検索できる機能が備わっています。患者さんの氏名、診察日、診断コードなどのキーワードを入力するだけで、関連する情報にすぐにアクセスできます。これによって、診療記録や検査結果をまとめて照会することができるため、効率的な医療提供が可能になります。
・テンプレート機能
あらかじめ設定されたテンプレートを使用することで、同じ情報を繰り返し入力する手間を省くことができます。また、自院の診療科目に合わせた情報を追加することで、テンプレートをカスタマイズすることもできます。
・手書き入力機能
近年登場している電子カルテのなかには、手書き入力やタッチパネル操作に対応しているものもあります。これにより、キーボード操作が苦手な医師や看護師でも紙カルテに近い感覚で情報を入力できます。図形や注釈を追加することもできるため、患者さんの診察や処置に関する情報を手軽に入力し、視覚的なデータを補完することも可能です。
- 電子カルテを使いこなすためのポイントを教えてください。
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電子カルテの便利な機能を使いこなすためには、いくつかのポイントがあります。
・研修や操作説明会を実施し、スタッフの理解度を高める
電子カルテの操作方法や機能を正しく理解するために、研修や操作説明会を定期的に実施しましょう。スタッフ全員がシステムをしっかりと理解することで、電子カルテの有用性を最大限に発揮できます。電子カルテのメーカーが研修会を開いていることもあるので、そうした機会も活用しましょう。
・自院の操作マニュアルを用意する
電子カルテの操作に迷ったらその都度調べられるように、使用方法やトラブルシューティングなどをまとめた操作マニュアルを作成しましょう。メーカーのマニュアルを、自院のスタッフ向けに編集したものを用意するなどの工夫が必要です。
・定期的に運用改善を図る
電子カルテの運用においては、定期的な見直しが欠かせません。効率的な活用ができているかスタッフにヒアリングを行い、問題点を洗い出しましょう。そうした課題に対して改善策を実施することで、電子カルテを最適化することが重要です。その際、担当者をおくことで、改善率アップが期待できるでしょう。
・ITシステム人材を育成する
専門的な知識を持つシステム担当者がいると、電子カルテをさらに有効活用できます。現場の課題を把握し、かつ電子カルテの活用ポイントを見極められるシステムに精通した人材を育成することが重要です。
電子カルテを使用する際の注意点
- 電子カルテのデメリットや注意点を教えてください。
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電子カルテを導入することにはメリットだけではなく、デメリットもあります。ここでは、5つのデメリットを紹介します。
・パソコンやシステムの使い方を学ぶ必要がある
電子カルテの導入は、パソコンの使い方や新しいシステムの扱い方を学ぶ必要があります。特に高齢の医師や看護師のなかには、パソコン操作が苦手という方も多いかもしれません。しかし、一度覚えて使いこなすことができれば、その後の大幅な業務効率化が期待できるため、これらの学習の手間は必要な要素ともいえるでしょう。
・紙カルテを入力しなければならない
電子カルテの導入初期には、過去の紙カルテを電子化する手間が発生します。これには大量の時間と労力が必要となり、スタッフの負担が一時的に増加する可能性があります。また、紙カルテと電子カルテを並行して使用する期間が生まれるため情報が錯綜し、チームの連携に不都合が生じるケースもみられます。
・セキュリティ対策が必要
電子カルテには患者さんの個人情報が含まれており、それらの情報を保護するためのセキュリティ対策が必須です。セキュリティ対策の不備や情報漏えいのリスクを放置すると、患者さんのプライバシーを知らぬ間に侵害し、クリニックの評判を落とすことにもつながりかねません。
・導入・運用費用がかかる
電子カルテの導入には、専用のソフトウェアやハードウェアの購入費、設置工事費、スタッフの研修費などの導入費用がかかります。また導入費用に加え、システムの月額使用料やネット使用料など月々の運用費用も発生します。特に大規模な医療機関や複数の診療所を運営している場合、費用が高額になる可能性があるため注意が必要です。
・停電になると利用できない
電子カルテは電力を必要とするシステムです。したがって、災害などの非常時に停電が発生すると、電子カルテの利用ができなくなります。万が一の停電に備え、バックアッププランとして、一時的に紙カルテの運用に切り替える訓練を行いましょう。
- 電子カルテの導入で失敗しないための手順を教えてください。
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電子カルテの導入で失敗しないためには、導入前の準備が大切です。ここでは、失敗しないための3段階の導入手順を紹介します。
1. 予算の策定
電子カルテの導入には、ハードウェアやソフトウェアの購入費用、設置工事費用、導入後の運用費用など、様々な費用がかかります。予算の策定には、これらの項目をすべて考慮して十分な予算を確保する必要があります。必要に応じて、見積もりを複数の会社からとり、費用を比較検討しましょう。
2. 課題と目標を明確にする
まず、解決すべき課題と目標を明確にする必要があります。電子カルテには様々な機能やサービスがありどれも魅力的に感じますが、初めからすべてを使いこなすことは難しいかもしれません。重要課題や目標にあった機能やサービスを優先的に選び、計画的に導入を進められるようにしましょう。
3. 運用方法の整理とシミュレーションの実施
運用方法を事前に整理し、業務フローに合わせてシミュレーションを行いましょう。導入前に実際のシステムの操作性や運用方法を模擬的に確認することができます。スタッフが電子カルテを使用する具体的な場面を想定し、システムの使い勝手の良し悪しを評価しましょう。
編集部まとめ
電子カルテは医療現場での業務効率化や医療の質の向上に貢献する有用なツールです。本記事では、電子カルテの機能や使いこなすためのポイントについて詳しく解説しました。最近の電子カルテには、手書きやタッチパネル操作機能、検索機能、テンプレート機能など、便利な機能が数多く備わっています。また、導入手順も重要で、課題と目標の明確化、シミュレーションの実施が必要不可欠です。電子カルテの導入を検討する際には、これらのポイントを押さえることで効果的な活用を目指しましょう。