スタッフを大事にしないクリニックの問題点|スタッフ満足度の重要性と満足度を上げるポイントを解説
クリニックでは、医師のほかにも看護師や看護助手、放射線技師、理学療法士、受付スタッフなどの多くの職種のスタッフが働いています。
スタッフを大事にしない職場環境では、業務の効率ならびに医療サービスの低下にもつながってしまいます。
そこで、この記事ではスタッフを大事にしないクリニックの特徴と、その問題点を明らかにし、スタッフ満足度を向上させるための具体的な改善策を提案します。
ぜひ参考にしてみてください。
目次
スタッフを大事にしないクリニックの問題点
まずは、スタッフを大事にしないクリニックの問題点について解説します。
離職率と採用コストの上昇
スタッフが大事にされていないと感じる職場環境では、離職率が上昇しやすくなります。
離職が頻発すると、クリニックは新たなスタッフを採用するためにコストと時間を費やさなければなりません。採用プロセスには、求人広告費用や面接、研修などが必要となります。その結果、大きな経済的負担が発生します。
離職率に関するデータを一つ、提示してみましょう。
全国の病院を対象にした日本看護協会の「2023年 病院看護実態調査報告書」によれば、2020年時点で正規雇用看護職員(新卒採用者や既卒採用者を含む)の離職率は11.8 %となっています。回答病院における看護職員の合計人数は554,080人であり、そのうち65,102人が退職していることがわかっています。
また、正規看護職員の離職率が最も高い設置主体は「個人」(17.6 %)、ついで「医療法人」(14.3 %)ということも明らかになっています。
総合病院に比べて規模が小さいことが多いクリニックは、個人経営または医療法人が経営している場合も多いと想定されます。そのため、クリニックでの離職率は総合病院などの大きな病院と同様に、またそれ以上に注意を払うべきといえるのではないでしょうか。
患者満足度の低下
スタッフが不満を抱えている職場ではモチベーションが低下し、それが患者さんへの対応にも影響を与えます。患者さんはスタッフの態度や対応の質を敏感に感じ取り、サービスへの満足度が低下する傾向にあります。
満足度の低い患者さんが不満を表すことで、結果的にクリニックの評判や信頼性に悪影響を及ぼしてしまう恐れもあります。
モチベーションの低下による業務効率の低下
スタッフが適切に評価されていない場合、仕事への意欲が低下して業務効率が悪化します。
意欲的に取り組むスタッフが減少すれば、日常業務の進行が遅れ、サービスの質も低下します。これにより、クリニック全体の生産性が下がり、経営にマイナスの影響を与える可能性もあります。
コスト増大と売上低下による経営難
スタッフを大事にしないクリニックでは、これまでに述べてきたようなことが連鎖的に発生し、結果的に経営難に陥ることもあります。
つまり、離職による採用コストや患者満足度の低下による売上の減少が、クリニックの経営を圧迫してしまうこともあるのです。
これに対処するためには、経営者がスタッフを大切にし、職場環境の改善に取り組むことが不可欠です。
【スタッフを大事にしないクリニック】7つの特徴
ここでは、スタッフを大事にしないクリニックの特徴について解説します。
スタッフが意見を言いにくい、質問しにくい雰囲気
クリニックのスタッフが意見を言いにくい環境では、問題が発生しても改善されにくくなります。
例えば、院長や医師が高圧的だったり、あるいはいつも忙しそうにしていたりすると、なかなかほかのスタッフが話しかけづらいこともあります。
このような環境や雰囲気では、院長や上司とスタッフとの良好なコミュニケーションが難しくなります。その結果、業務の改善やチームワークの向上に困難が生じてしまう可能性もあります。
上司が部下の業務を細かく管理・干渉
上司が過度に業務に干渉する環境では、スタッフの自主性が奪われ、仕事への満足度が低下します。結果的に、スタッフは自分の能力を十分に発揮できず、モチベーションが下がることもあります。
昇給や評価のルールが機能せず給料水準が低い
明確な昇給や評価制度がない場合、スタッフは自分の努力や成果が適切に評価されていないと感じ、不満が募ることもあります。
この不満が溜まり、離職へとつながる可能性もあります。
スキルアップに非協力的
スタッフの成長をサポートするための教育や研修の機会が提供されていないと、スタッフは将来への不安を感じ、転職を考え始めるきっかけになることもあるでしょう。
業務の効率化に消極的
業務改善や効率化に対して積極的でないクリニックでは、無駄な業務が増え、スタッフの負担が増加します。
その結果、業務の効率が低下し、結果的にクリニック全体の生産性も低下します。
ワークライフバランスが悪い
長時間労働や過度な残業が常態化している環境では、スタッフのワークライフバランスが崩れ、仕事に対するモチベーションが低下します。
ライフワークバランスの悪さは、離職の大きな原因となります。
スタッフ間の問題を放置
多くのスタッフが勤めるクリニックでは、ともすればスタッフ間に問題が生じることもあるでしょう。
その際に、院長などの管理職が問題行動のあるスタッフに適切な指導を行わないことや、仕事量の偏りを是正せず、仕事ができるベテランスタッフに負担がかかりすぎる状態のまま放置することがあると、スタッフ同士のトラブルや不満が解決されません。
そのままでは、チームワークが損なわれ、職場の雰囲気が悪化します。これが業務効率に直接的な影響を及ぼすことも少なくありません。
クリニックにおけるスタッフ満足度の重要性
スタッフ満足度の向上は、クリニックの経営やサービス全般にわたって良い影響を与えてくれます。
スタッフ満足度が向上することにより、業務効率や定着率、採用コストの削減、さらには患者満足度の向上につながることも期待できます。これらは、クリニック全体の成長に貢献します。つまり、スタッフを大事にすることが、経営の安定化において不可欠な要素であると考えられます。
ここでは、スタッフ満足度の重要性を、具体的なメリットを挙げながら説明します。
スタッフが本来の業務に専念できることで業務効率の向上が見込める
スタッフが不満やストレスを抱えることなく、本来の業務に集中できる環境が整っていると、業務の効率が格段に向上することが期待できます。
例えば、クリニック内のコミュニケーションが円滑で、上司や同僚からのサポートが充実していれば、スタッフは業務に対するモチベーションを高く保つことができ、結果として患者対応の質が向上します。さらに、業務の煩雑さや無駄が減り、患者さんに提供するサービスの速度や正確さも向上します。
こうした効率の向上は、クリニック全体の運営に良い影響を与えるでしょう。
スタッフが定着することで業務の安定性が向上する
スタッフ満足度が高い職場では、離職率が低下し、スタッフの定着率が向上します。
定着率が上がることで、スタッフ一人ひとりが長期的に業務に取り組み、スキルや知識が蓄積されるため、チームとしてのパフォーマンスも高まります。
特に、医療機関では経験豊富なスタッフの存在が、患者さんとの信頼関係を作るために大きく寄与します。長く働くスタッフはクリニック内の業務に慣れており、トラブル対応にも精通しています。
その結果、患者対応の質や効率が向上するため、クリニック全体の運営がよりスムーズになります。
採用コストや人件費を削減でき、利益率が向上する
離職率が高いクリニックでは、新たなスタッフを採用するためにかかるコストが大きな負担となります。
求人広告や面接、採用プロセスに時間と労力を割くことにより、クリニックの人件費が余分に消費されてしまうこともあるでしょう。
さらに、新入社員の研修や教育にもコストがかかり、即戦力となるまでに時間を要します。
これに対し、スタッフの定着率が高いクリニックでは、こうした採用にかかるコストや人件費を大幅に削減でき、その分、クリニックの利益率が向上します。
また、採用活動にかかる労力をほかの業務に充てることができ、クリニックの運営全体に好影響を与えます。
患者満足度が向上し、来院者数の増加が期待できる
スタッフが充実した職場環境で働いていると、患者さんへの対応にも良い影響が現れてきます。
スタッフの笑顔や対応の質が高ければ、患者さんは安心感や信頼感を抱きやすくなり、クリニックに対する評価も自然と高まります。
患者満足度が向上すると、再診や紹介によって新たな来院者も増加する可能性があります。また、クリニックの評判が向上することで、新しい患者さんの来院が増え、クリニック全体の収益も向上することが期待できます。
さらに、満足度の高い患者さんは、積極的に定期的な検診や治療を受けるようになるため、安定的な収益基盤が形成されます。こうした好循環が、来院者の増加につながるでしょう。
スタッフを大事にして満足度を上げるポイント
就業規則を定めてきちんと運用する
明確な就業規則を設け、それをしっかりと運用することは、スタッフに公平で透明な職場環境を提供するために不可欠です。
曖昧な規則や不明確なルールが存在すると、スタッフ間で不満が募りやすくなり、職場の信頼関係にも悪影響を与えます。
特に、労働時間や休暇の取得に関するルールは明確にしておく必要があり、スタッフが安心して働けるような環境づくりが重要です。
適正な給与に見直して福利厚生を整える
クリニックのスタッフのモチベーションを高めるためには、給与や福利厚生の見直しが欠かせません。
特に、同業他社と比較しても競争力のある給与水準を保つことは、優秀な人材の確保に直結します。さらに、福利厚生を充実させることで、スタッフの生活の安定感が増し、長期的な定着が期待できるでしょう。
例えば、健康保険や育児休暇の制度を整えることは、スタッフの健康管理やライフイベントに対する不安を軽減するのに有効です。
仕事量とスタッフ数を見直して労働環境を整備する
スタッフの仕事量とクリニック内での人員配置を適正に見直すことも、労働環境の改善のために大切です。
過剰な業務量や人員不足は、スタッフに過度な負担をかけ、疲労やストレスを引き起こします。これが原因で離職率が高まるケースも少なくありません。
そのため、スタッフの人数の見直しや、業務の分配を合理化することが、クリニック全体の生産性向上につながります。適切な休憩時間の確保や、繁忙期には追加スタッフを雇用するなどの工夫が効果的です。
公平な評価・昇給制度を整えてスキルアップをサポートする
スタッフのスキルアップを促進するためには、公平で透明な評価制度を導入し、昇給やキャリアアップの機会を提供することが必要です。
評価が不公平であったり、昇給の基準が曖昧であると、スタッフのモチベーションが低下し、不満が溜まりやすくなります。
研修や資格取得支援などスキルアップのためのサポートを提供することで、スタッフが自己成長を感じながら長期間勤務できる環境を作り出すことができます。
自主性を尊重し意見を発信しやすい環境を整える
スタッフが自分の意見やアイデアを自由に発信できる職場環境を整えることは、職場の改善やスタッフの満足度向上に大きく貢献します。
意見が尊重され、改善提案が積極的に取り入れられる職場では、スタッフは自分の貢献度を感じやすくなり、仕事に対する満足感も高まります。
リーダーや上司となるべき院長や医師がオープンなコミュニケーションを促進し、スタッフの声をしっかりと聞く姿勢を持つことが大切です。
まとめ
クリニックにおいて、スタッフを大事にすることは、経営を長期的に安定させ、成功させることに直結します。
スタッフ満足度を高めるためには、就業規則や給与制度の見直し、労働環境の改善、公平な評価制度の導入など、具体的な施策を講じることがとても大切です。
スタッフが安心して働ける環境を提供することで、クリニック全体の業務効率が向上し、結果として患者満足度も高まります。
経営者や上司である院長や医師たちは、日々の職場環境に目を向け、スタッフの声を大切にする姿勢を持ちましょう。
そのことがクリニックの成長につながるでしょう。