看護師の役職にはどのようなものがある?それぞれの役割や給与水準を解説

看護師は、医療現場で患者さんのケアを担う重要な存在です。その役職やキャリアパスにはさまざまな種類があり、経験を積むことでより責任のあるポジションを目指すことが可能です。
本記事では、看護師の役職の種類やそれぞれの役割、給与水準について詳しく解説します。さらに、クリニックを開業する際に適した看護師の役職設定についても解説し、安定した医療サービスの提供につながる人材配置のポイントを紹介します。
目次
看護師の役職とは?基本的なキャリアパスを解説

ここからは、看護師の役職やキャリアについて詳しく解説します。
看護師のキャリアアップの流れ
看護師のキャリアは、経験を積むことでより責任のある役職へと進んでいく仕組みになっています。以下の表は、一般的な看護師のキャリアパスを年次ごとに示したものです。
年数 | 役割 | キャリアパス |
---|---|---|
1〜2年目 | 新人看護師 | 新人教育を受けながら、日常の看護を実践する |
3〜4年目 | 中堅職員 | 確実な看護実践能力を持ち、日常の看護実践を自立して行うことができる |
5年目以上 | 主任レベル | 看護実践の場でリーダーシップが発揮できる |
それ以上 | 看護師長、看護部長など | ・医療チームにおいて、さらなるリーダーシップを発揮できる ・専門看護師や認定看護師などの資格を取得看護管理や医療経営を学ぶ |
>>看護職の キャリアと 連動した賃金モデル 日本看護協会 p4
看護師としての第一歩は、現場に慣れ、基本的な看護技術や医療知識を身につけることから始まります。バイタルサイン測定や点滴・注射、患者さんの移動介助、電子カルテの入力など、日々の看護業務を通じて多くの経験を積みます。
先輩看護師の指導を受けながら技術や業務の流れを学び、徐々に一人で対応できる業務を増やしていく期間となります。
2年目以降は、夜勤に入る機会も増え、急変対応や緊急時の判断力が求められるようになります。また、患者さんとのコミュニケーションを通じて信頼関係を築く力も必要です。
新人の指導を任されることもあり、後輩に適切なアドバイスをする能力も養われていきます。この時期に、認定看護師や専門看護師の資格取得を視野に入れる人も少なくありません。
3年目以降になると、業務をスムーズに進めるだけでなく、チームの中でリーダーシップを発揮する役割を担います。
後輩の指導をはじめ、医師や他職種との連携などチーム医療の中心的な存在として活躍する場面が増えます。また、病棟や診療科の中でリーダーを務めるなど、スタッフ間の調整や業務の割り振りを任されることもあるでしょう。
この時期には、看護主任への昇進を考える人も増えてきます。管理職を目指す場合、看護管理の知識を学ぶ研修に参加することも重要です。
臨床の現場でより専門的なスキルを磨きたい場合は、認定看護師や専門看護師の資格を取得し、特定の分野で活躍することも可能です。特に、がん看護や救急看護、感染管理などの分野では、専門知識を持つ看護師の需要が高まっています。
このように、看護師は新人として現場に慣れることから始まり、徐々に後輩指導や管理業務を任されるようになり、最終的には病院の運営や教育にも関与する立場へと成長していくのが一般的なキャリアアップの流れです。
クリニックと病院での役割の違い
クリニックと病院では、看護師の仕事や役割が異なります。
クリニックは、主に有床診療所(19人以下の患者さんを入院させるための施設)と、病床を持たない無床診療所があります。
クリニックは、その地域の人々が健康的な生活を送ることができるように、地域の医療を支えるという役割を担っています。クリニックでの看護師の役割は、以下のようなものがあります。
- 問診
- 血圧測定
- 採血
- 注射
- 点滴
クリニックでの看護師の特徴としては、患者さんとのコミュニケーションを密に図り、気軽に相談できるような身近な看護を提供することが求められる点です。
一方、病院はクリニックと比較すると規模が大きく、怪我をしたり調子が悪くなったりした場合に、24時間365日体制で地域医療を支えるという特徴があります。
病院に勤務する場合、看護師はいろいろな診療部門で各々の役割を果たすことになります。
例えば、以下のような場所で働くことが想定されます。
- 入院部門で働く場合
24時間交代制のチームで患者さんの命を守ります。患者さんが病気とどのように向き合い、生活していくのかについて一緒に考え寄り添うのも看護師の仕事の一つです。
- 外来部門で働く場合
体調を崩したり不調を訴えている患者さんや、在宅療養中の患者さんに対し、受診介助や生活指導、次回来院までの過ごし方のサポートなどに関わります。
- 検査・放射線部門で働く場合
病院には、生理学的検査部門や血液検査部門、放射線診断/画像下治療(IVR;Interventional Radiology)部門などがあります。こうした検査部門で働く看護師は、検査や診断、治療の介助を行います。
安全、正確かつスムーズに行うことができるよう、患者さんの苦痛や不安を和らげるようにするためにコミュニケーションを密にとることが求められます。
- 手術室で働く場合
疾患の治療のための外科的手術が安全に行われるように、正確な介助をすることが看護師の仕事です。
- 透析室で働く場合
患者さんが安全に透析を受けられるように介助します。また、透析患者さんに対し、食事管理や水分管理などの日常生活指導を行うこともあります。
役職による仕事内容の違い
看護師は、看護主任、看護師長、看護部長などの役職を経てキャリアアップしていきます。
役職が上がるにつれて、後輩看護師の指導やスタッフ間の橋渡し役などのマネジメント的な役割が多くなります。また、給料も上がっていくことが一般的です。
役職別|看護師の役割と仕事内容

看護主任
看護主任は、病棟において看護師長に次ぐ職位にあり、看護師長の不在時にはその役割を代行する看護師のことです。
看護師長とスタッフの間に位置し、現場のリーダーとして教育を行うという役割を担っています。新人看護師の育成だけでなく、中堅看護師がさらなるステップアップを目指せるようにサポートします。後輩が安心して相談できる存在となり、より働きやすい環境を整えることが主任としての大切な役割です。
また、新人や中堅看護師がスムーズに業務を進められるようにサポートし、病棟全体の運営が滞りなく行われるように現場の調整役としての役割も求められます。
看護師長
看護師長は、1つあるいは複数の病棟の管理者であり、病棟の最終責任者のことです。看護主任と連携しながら、看護スタッフの人員管理や業務の調整、病棟の安全管理など、多岐にわたる業務をこなします。
就業規則の管理や勤務管理、病棟管理などの管理業務を広く担当します。医師や他職種との連携を強化し、チーム医療の質を高める役割も重要です。
さらに、スタッフの教育やキャリア支援にも力を入れ、個々の看護師が成長できる環境を作ることも求められます。看護師長としての経験を積むことで、看護部長へのキャリアアップの道も開けます。
看護部長
看護部長は、看護職のトップです。看護部を組織化し、病院の方針の企画・決定、運営にも参加し、看護管理に責任と権限を有する役職です。
看護部長という呼び方は、その病院の規模によっても変わります。クリニックの場合には、看護部長がいない、あるいはその役割を看護師長が担っていることもあるでしょう。
看護師の採用や人事管理、教育制度の整備など、病院全体の方針に基づいた看護体制を構築します。病院の経営陣と協力しながら、医療の質を向上させる施策を考え、実行に移すことも求められます。
看護部長になるためには、看護管理者研修を受講し、マネジメントスキルを身につけることが重要です。また、大学院などで看護管理や医療経営を学ぶことも、さらなるキャリアアップにつながります。
役職別|看護師の給与水準

次は、役職別の看護師の給与水準について解説します。
看護主任の給与
日本看護協会が行った「2012年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書」によると、看護主任の平均基本給は約32万7000円でした。
(参考:2012 年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書|公益社団法人 日本看護協会)
非管理職看護師の平均基本給の約32万3000円と比較してわずかに高い水準ですが、約40%の病院では主任の給与が非管理職の看護師より低いという結果も示されています。
主任の給与が非管理職より低い場合がある理由は、主任が「役職手当」を支給されるかどうかによって異なります。
役職手当がない場合、基本給がほぼ変わらないため、勤務年数が長い非管理職看護師の方が給与が高くなることもあります。
看護師長の給与
同じく日本看護協会の調査によると、看護師長の平均基本給は約37万円(平均年齢54.0歳)と報告されています。
主任の平均給与と比べて約4万円の差があり、管理職としての責任や業務負担を鑑みて、役職手当が支給される施設が多いことも関係していると考えられます。
看護部長の給与
日本看護協会の調査報告書によると、看護部長(専任)の平均基本給は約42万7000円(平均年齢56.7歳)でした。看護師長より約5万円高い水準です。
看護部長は、管理職手当や役職手当の充実度によって、年収に大きな差が出ることもあります。また、病床数が多い病院で勤務するほど、平均月収が上がる傾向がみられます。
クリニック開業時の看護師の給与と役職設定のポイント

クリニックに必要な看護師の役職は?
クリニックに必要な看護師の役職は、規模によって異なります。
入院設備のないクリニックであれば、看護主任クラスのリーダーが1名で十分な場合もあります。中規模以上のクリニックは、看護主任や看護師長の配置も検討しましょう。
給与水準を決める際のポイント
給与を決める際、まずは地域ごとの看護師給与の相場を調査しましょう。業務内容と役職を整備し責任に応じた給与制度を整えることで、仕事に対するモチベーションの向上と定着率アップが見込めます。
看護師が長く働ける環境を作るには?
看護師が長く働ける場所を作るには、適切に能力を評価できる制度を導入し、キャリアアップの道筋を示すことがポイントです。
また、役職者のプレッシャーや負担を軽減するため、事務作業の負担軽減やチーム内での業務分担を工夫するようにして、働きやすい職場環境づくりを進めていきましょう。
まとめ

看護師の役職には、看護主任・看護師長・看護部長などがあり、それぞれの役割が異なります。クリニックの規模に応じて適切な役職を配置し、業務をスムーズに運営することが大切です。
給与設定の際には、役職や責任に応じた適正な水準を意識し、優秀な人材確保につなげましょう。クリニックを開業する際には、スタッフの役割分担や給与水準を事前に整理し、働きやすい環境を整えることが成功のカギとなります。