小児科クリニックは内装で差をつける!選ばれる空間づくりのポイント

小児科クリニックを開業・改装する際、診療の質や医療機器の充実だけでなくどのような内装にするかも重要なポイントです。
子どもたちにとって病院は不安や緊張を感じやすい場所ですが、内装の工夫次第でその印象をやわらげることができます。
この記事では、小児科クリニックにおける内装デザインの工夫や注意点、費用感まで、開業や改築を検討する方に役立つ情報を詳しく解説します。
目次
小児科の内装が患者さんに与える印象と経営への影響

小児科は、小さなお子さんから、主に中学生くらいまでの子どもを対象とした診療科です。
対象とする患者さんの多くが未成年であるという点で、内装においてもほかの診療科とは異なるポイントに注目する必要があります。
特に病院に不安感や緊張感を抱きやすい子どもにとって、よい印象を与えたり不安や緊張を和らげたりできると、次の診療につながりやすいといえます。これはかかりつけ医としての信頼を得ることや集患に結びつき、経営面によい影響をもたらすと考えられます。
よい印象や緊張感を和らげるためには、視覚的にアピールできる内装を工夫するのが効果的です。
子どもと保護者が「また来たい」と感じる内装デザインの工夫とは

子どもと保護者が「また来たい」と感じる内装デザインとは、どのようなものでしょうか。内装デザインで考えられる、安全性と色合いについての工夫を紹介します。
安全性に配慮された空間
小児科は低年齢の子どもが受診するため、特に安全性に配慮された空間であることが望まれます。すべりにくい床素材の採用、机や椅子などの角を丸く加工したり保護剤を付けたりする、スタッフや患者さんが移動しやすい十分なスペースを確保することなどに気をつけましょう。
また、花瓶など落としてしまうと怪我につながるようなインテリアは、子どもの手が届くような範囲に置かない、口に入れてしまいそうなものを置かないなどの配慮も必要です。
安全性に配慮し、清潔感がある空間づくりを心がけましょう。
やわらかで優しい色合いの内装
壁やイス、テーブルなどの色合いを工夫するのもおすすめの方法です。
白い壁の色は清潔感を与えますが、子どもにとっては病院という雰囲気を強く感じやすく、緊張感を抱きやすいといえます。緑色は安心感やリラックス効果、黄色はリラックス効果、青は清潔感や明るさを感じると考えられているので、やわらかで優しい色合いを取り入れてみましょう。
どのような効果を得たいかで色合いを考えるのがポイントです。
小児科の内装で気をつけたいポイント

次は、小児科の内装で気をつけたいポイントを解説します。
エントランス
玄関は、クリニックの顔ともいえる場所です。
乗り物や動物などの装飾を活用し、子どもや保護者が安心できて心が和むような雰囲気づくりを心がけましょう。
デザインする際はバリアフリー設計も取り入れ、ベビーカーを使用している人や赤ちゃんを抱っこしている人も利用しやすいよう、機能的な側面も重視するのがポイントです。
診療室
診療室は、医師が患者さんであるお子さんや保護者と面談し、問診や診察、診断、治療方針の決定を行うため、子どもが緊張しやすい場所です。
そこで、診察室の壁をリラックスできる色合いにするという方法があります。
緑色は安心感やリラックス効果だけでなく、話しやすさの向上にも貢献すると考えられているので、診療室の壁の一面や一部の壁に淡い緑色を採用するのもおすすめです。
子どもになじみのあるキャラクターを壁に飾るのも、不安や緊張を和らげてワクワク感を与えられる方法です。
処置室
処置室は、主に採血や点滴、処置、検査などを行う場所です。処置室もリラックスできるような内装デザインが求められます。
動物や植物のイラスト、風景の写真を飾る、ぬいぐるみなどを設置するなど、楽しげな空間づくりを意識しましょう。緊張感と痛みは密接に関係しているため、緊張感を和らげられれば痛みを感じにくくなる可能性があります。
トイレ
トイレは清潔感が第一ですが、ともすれば殺風景になりがちです。赤ちゃんを連れている保護者や小さな子どもが利用しやすいよう、次のような工夫が考えられます。
- 子供用トイレや子供用便座の設置
- 子どもが使いやすい高さの手洗い場設置や、踏み台の用意
- ベビーベッドの設置
- ベビーカーなどでも入りやすい広々とした設計
トイレを温かく利用しやすい空間にすることで、競合クリニックとの差別化を図ることができます。
キッズスペース
キッズスペースは、クリニックの中で遊ぶことができる場所です。
キッズスペースで待ち時間を楽しく過ごすことで、子どもの心理的・身体的負担の軽減につながります。
クッション性のある床材やイスなどでスペースを作り、安全性に配慮しましょう。子どもが自由に遊べるおもちゃを用意する、モニターから子ども用の映像を流すだけでなく、保護者から目が届きやすい空間にすることも大切なポイントです。
また、カラフルな色使いで楽しげな雰囲気を演出することができます。
受付、待合室
受付は入口から入ってすぐ目に入る場所で、待合室は診療前に緊張しながら時間を過ごす場所でもあります。
受付や待合室の内装に木材を取り入れることで、ぬくもりや安心感を感じさせることができます。本当の木材ではなく、木材の柄がプリントされている切り株形のイスなど、子ども目線のインテリアも取り入れてみましょう。
また、小児科は保護者が付き添うことが多いので、待合室に二人掛けのイスを用意することで、家族と一緒に待つことができる安心感が得られます。
小児科の内装事例

福島県の小児科医院で、クリニックの改築の際に内装を木の素材にしたという事例があります。
その結果、来院者のアンケートでは「質問や相談がしやすくなった」「待ち時間の対応がよくなった」といった高評価を得られることが増えたそうです。
また、お子さんもリラックス効果が得られ、緊張やストレスが軽減されているように見受けられたといいます。
このように、小児科で内装を工夫することはクリニックの評価に大きな影響を与えます。
小児科の内装業者選びのポイントと費用相場

最後に、理想的な内装を実現するために大切な、内装業者選びのポイントと費用相場について解説します。
小児科の内装に強い業者の選び方
小児科クリニックに限らず、病院を建設する際には建築基準法や医療法などの法律を守る必要があります。
建築基準法では、1床でもベッドがあるクリニックは特殊建築物という扱いになり、耐火性建築物にしなければならないなど規定が厳しくなります。
また、自治体によっては、診察室の数や動線の確保など細かい構造上のルールが定められている場合もあります。例えば東京都の場合、小児科については単独の診察室を設けることが望ましいとされています。
こうした条件を踏まえると、小児科クリニックの内装設計を任せる際には、地域の条例に精通し、かつ医療施設の実績が豊富な業者を選ぶことが重要です。
一般的に、内装デザインや工事の依頼先としては、設計デザイン事務所、内装専門業者、施工業者などの選択肢があります。設計から施工まで一貫して対応できる会社であれば、工期やコストの調整がしやすく、開業スケジュールの管理もスムーズに行えるでしょう。
具体的には、以下のようなポイントをチェックするのがおすすめです。
- 小児科や医療施設の施工実績があるか
- 医療法やバリアフリー法に配慮した設計提案ができるか
- 開業後のトラブル(音漏れ、動線ミスなど)を予防する提案力があるか
- アフターサポート(メンテナンス対応や保証制度)が整っているか
さらに、業者選定時には必ず複数社から相見積もりを取り、費用や施工実績、担当者の対応などを比較検討するようにしましょう。費用の安さだけでなく、医療施設に求められる安全性と快適性を理解しているかどうかが選定のポイントです。
費用を抑えつつ質を落とさないためにはどうすればいい?
内装費用のなかで、面積が広い壁や床の費用はかさみがちです。クリニックの壁には、抗ウイルスや消臭効果などの特殊加工を施す場合も多いため、費用がかさむ要因の一つとなります。また、高級素材や有名ブランドの製品などを用いることも、内装費用が増加する要因です。
質を落とさずに費用を抑えるには、機能性を重視する場所と見た目を重視する場所を分けて考えることがポイントです。
例えば、処置室や診察室は安全性と清潔感が第一ですが、バックヤードやスタッフルームは一般的な素材で十分な場合もあります。空間ごとに素材やデザインの優先度を整理することで、コストを抑えることができます。
また、 施主支給という方法も選択肢のひとつです。
これは、建築業者ではなく施主側が直接照明器具や家具などを購入して用意する方法で、同じ製品でも割安に仕入れられるケースがあります。ただし、施主支給には納期や品質保証などに注意が必要なため、あらかじめ業者と綿密に打ち合わせをしておくことが重要です。
さらに、見積もり時にグレードの異なるプラン(A案・B案)を出してもらうことで、コストと仕上がりのバランスを比較しやすくなります。小児科ならではの工夫が必要な部分はしっかり投資し、それ以外はコストを抑えることで、満足度の高い内装に仕上げることができるでしょう。
内装費用の目安と予算の立て方
クリニックの内装費用は、坪単価で20〜50万円程度が一般的とされますが、実際の金額は広さや設備のグレード、デザインへのこだわりなどにより大きく変動します。
小児科では、キッズスペースの設置や壁・床の安全性、内装の色彩などにも配慮が必要であるため、ほかの診療科に比べて内装費用が高くなる傾向があります。抗菌・抗ウイルス機能がある壁紙を選ぶ、床に衝撃吸収性のある素材を選ぶといった配慮は、子どもと保護者の安心感につながる一方で、予算にも影響します。
そのため、予算を組む際は設計料、仕上げ工事費、設備関連費(空調・照明・配管)、什器・家具、サイン・掲示物など、内訳を細かく分けて考えることが重要です。また、設計段階で優先度の高い部分とコストダウンが可能な部分を明確にし、業者とすり合わせながら調整することが成功のカギとなります。
加えて、工事費用は予想外の出費が発生しやすい項目でもあるため、全体予算に対して10〜20%程度の予備枠を設けておくと、安心して工事を進めることができます。
まとめ
今回は、小児科クリニックの内装について解説しました。
小児科の内装は単なるデザインではなく、子どもと保護者の心理的な負担を軽減し、診療への信頼を得るための重要な要素です。子どもと保護者がリラックスできる環境を実現することがクリニックの評価につながり、安定した収益を生み出すことができます。
地域に根差したかかりつけ医に選ばれるため、自院に合う内装づくりを目指してみてはいかがでしょうか。