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クリニックで自動精算機が注目されている理由|選び方やスムーズな稼働のポイントを解説

                   
投稿日: 2025.08.04
更新日:2025.11.13
                   

クリニックを開業する際に、「人件費を節約したい」「受付業務をスムーズにしたい」と希望される方は多いでしょう。そのようなニーズを満たす方法の一つとして、自動精算機の導入があります。

今回の記事では、クリニックで自動精算機が注目されている理由や、クリニック向けの自動精算機の特徴を詳しく解説します。

クリニックで自動精算機が注目されている理由

クリニックで自動精算機が注目されている理由

クリニックを開業するにあたっては、さまざまな準備が必要です。

医師一人だけで運営するクリニックはほとんどなく、看護師や検査技師、受付スタッフなどの従業員を雇うことが一般的です。

そのなかで、人件費を抑えたり、会計や受付業務の負担を減らしたりすることは重要なポイントです。

また、訪日外国人や高齢者の方が現金の持ち合わせがないという理由でその場で支払いができず、治療費が未回収となる可能性もあります。

こうした状況に対応するため、クレジットカードや電子マネーといったキャッシュレス決済が可能な自動精算機を導入する病院も増えています。支払い方法が多様化することで現金がなくても支払いが可能になり、未収金のリスクを低減する効果が期待されています。

このような理由から、クリニックへの自動精算機の導入に注目が集まっているといえます。

クリニック向け自動精算機とは

クリニック向け自動精算機とは

自動精算機は、飲食サービス業や小売業、生活関連サービス業など、クリニックや病院以外でもさまざまな業種で用いられています。

ここでは、クリニック向けの自動精算機について詳しく解説します。

自動精算機の機能

自動精算機では、会計窓口ではなく精算機で患者さんが医療費を支払うことができます。

現金での支払いの場合、人の手で行うと、支払われた額やおつりの額に勘定間違いが生じる懸念があります。一方で、自動精算機の場合には、投入された紙幣と硬貨が自動的に計上されるため、金額を正確に把握できます。

また、自動精算機の多くの機種が現金払いのみではなく、クレジットカードや各種電子マネーなどさまざまなキャッシュレス決済に対応しています。さらに、一部の機種は受付機能も備えており、受付と精算を1台で完結できるため、受付事務の負担軽減や省スペース化にもつながります。

自動精算機の種類

自動精算機(セルフレジ)はフルセルフレジと、セミセルフレジに分けられます。

フルセルフレジは、受診費用の精算から支払い、お釣りやレシートの受け取りなどの会計の流れをすべて患者さんが行うもので、スタッフの操作は不要です。

一方、セミセルフレジは、支払いとお釣りの受け取りは患者さんが行い、それ以外はスタッフが操作する方式です。

セミセルフレジのメリットとしては、フルセルフレジに比べると安価な場合が多いことや、物品の販売などにも対応できる点があります。

デメリットとしては、会計業務が終わるまでスタッフの対応が必要となり、結果的に窓口業務の大幅な時間短縮にはつながらない点などがあります。

自動精算機の種類のメリットやデメリットを理解したうえで、導入することが大切です。

導入にかかる費用相場

病院に自動精算機を導入する際、200〜500万円ほどが費用相場です。

ただし、キャッシュレス決済を導入するかなどの追加機能の有無や、保守点検サービスを付与するかどうかで、導入後にかかるコストは変わってきます。

なお、補助金やリースなどを活用すれば、導入コストやランニングコストを抑えられる場合があります。

自動精算機を導入することで変わること

自動精算機を導入することで変わること

自動精算機を導入すると、スタッフや患者さん双方に以下のような変化が期待できます。

スタッフ目線での変化

受付業務のなかには、現金管理も含まれている場合があります。

従来のレジシステムの場合、診療時間内に患者さんと現金をやりとりするだけでなく、診療時間の前にはある程度の紙幣や硬貨を用意し、診療時間後には残金を計上するといった作業が必要です。

自動精算機を導入すれば、診療時間内の現金の受け渡しは不要になります。また、残金の計上も自動的に行われるため、会計にかかる業務を大幅に削減できる効果が期待できます。

また、紙幣や硬貨を介してウイルスや細菌が感染するリスクは低いとされていますが、非接触で会計が完了する仕組みは感染症対策としての効果が期待できると考えられます。

患者さん目線での変化

患者さんの立場としても、自動精算機の導入はメリットがあります。患者さん1人あたりの会計業務にかかる時間が短縮されることで、受付での待ち時間も短縮できます。

例えば、自動精算機でキャッシュレス決済が可能な機種が導入されている場合、キャッシュレス決済の利用によりレジ業務の所要時間が約35%短縮できたとする調査結果もあります。

出典:

『令和3年度「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」第3回検討会 事務局説明資料』(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_payment/pdf/2021_003_03_00.pdf)(2025年7月15日に利用)

特に混み合う時間帯では、こうした受付時間の短縮は患者さんの満足度向上にもつながります。

クリニック向け自動精算機を選ぶポイント

クリニック向け自動精算機を選ぶポイント

クリニックに導入する自動精算機は、以下のようなポイントを重視して選ぶのがおすすめです。

電子カルテやレセコンとの連携の可否

クリニックでは患者さんの診療情報を扱うため、自動精算機にも情報を反映できることが望まれます。

例えば、レセコン(レセプトコンピュータ)は、診療報酬を請求するためのレセプト(請求情報)を作成するためのコンピューターシステムです。

電子カルテやレセコンと自動精算機が連携できれば、患者さんの基本情報や診療内容、使用した薬剤などの情報が請求情報にリアルタイムに反映され、会計業務の効率化やミスの防止につながります。

新たに自動精算機を導入する場合には、電子カルテやレセコンとの連携が可能かどうかを確認するとよいでしょう。

クリニックでの導入数

クリニックでの導入数が多い製品を選ぶことで、メーカー側のトラブルへの対応もスムーズになる可能性が高まります。

対応している決済手段の種類

クレジットカード決済、各種交通系ICカード、コード決済など、対応する決済方法の多さは患者さんの利便性に直結します。

一方で、決済手段を増やすとそれに応じてオプション料金も加算されることもあるため、予算と患者さんの年齢層などを考慮しながら選択することが大切です。

操作性

タッチパネル式のものや、タッチパネルに触れずに操作できるタッチレス機能を持つもの、音声ガイダンス機能を付加できるものなどさまざまな機種があります。

患者さんの年齢層に合わせて、機械の操作に慣れていない年齢層の方でも使いやすいものを選ぶようにしましょう。

可能であればスタッフが実際に機器を触ってみて、操作性を確認してから導入することをおすすめします。

メンテナンス、保守体制

自動精算機の導入後、各種トラブルが起こってしまった場合の対応も考慮しておく必要があります。

メンテナンスや保守体制にはどれくらいの費用がかかるのか、どのような対応をしてくれるのかなどを、メーカーにあらかじめ確認しておくことが大切です。

クリニックの自動精算機購入フロー

クリニックの自動精算機購入フロー

自動精算機を購入する際は、以下のような流れで進めていくとスムーズです。

  1. 目的と予算を明確にする
  2. キャッシュレス決済などの付加機能を決定する
  3. 助成制度の利用について検討する
  4. 配置する場所を決める
  5. 購入製品や業者を決定する

自動精算機の導入には数百万単位のコストがかかる場合もあるため、なぜ自動精算機を導入するのかという目的と予算を明確にすることが重要です。

キャッシュレス決済機能などの機能は、オプション扱いになることもあります。導入時だけでなくランニングコストがかかるケースもあるので、患者さんの年齢層などに合わせて付加機能を選ぶ際の検討材料としても予算の設定はしっかりと行いましょう。

予算設定の際は、自動精算機を購入する場合に活用できる補助金などの助成制度も調べておくのが重要なポイントです。

例えば、経済産業省のIT導入補助金、厚生労働省の働き方改革推進支援助成金、日本医師会が提供する医療機関のキャッシュレス化を促進するサービス、地方自治体の補助制度を利用できる可能性があるので、予算設定の際に調べておきましょう。

また、医療費助成の受給者証および診察券のマイナンバーカードの一体化に関する補助金も開始されています。

マイナンバーカードと診察券などを一体化するため、自動精算機や電子カルテなどの周辺システムの改修を行う場合には、補助対象となる場合もあります。

自動精算機には、机に置けるタイプや自立型などさまざまな形があるので、設置場所に合わせて形を選びます。

開業時に自動精算機の導入を検討している場合は、スタッフや患者さんの動線を考慮しながら、間取り設計の際に検討できるとスムーズに進められます。

これらのポイントを踏まえ、予算や使い方、クリニックの規模やスペースに合った自動精算機を選びましょう。

クリニックで自動精算機をスムーズに稼働するためのステップ

クリニックで自動精算機をスムーズに稼働するためのステップ

自動精算機を導入した場合、スムーズな運用を行うためには、以下のようなステップを踏むことが大切です。

スタッフ向け研修会を実施する

まずはスタッフに向けた、自動精算機の操作方法に関する研修会を実施します。

特に、クリニックでは受付の近くに設置されるケースが多いため、受付スタッフは診察終了後の精算時に患者さんの近くで対応する場面も多くなります。患者さんの質問やトラブルにも対応できるよう、操作方法を十分に把握しておく必要があります。

患者さん向けの説明資料や掲示を作成する

機械の操作に不慣れな患者さんに向けて、わかりやすい説明資料を用意しておくことも大切です。操作方法を記載した案内板や、画面上での手順表示などを作成し、自動精算機の近くに掲示しておきましょう。

困っている患者さんへの対応方法を決めておく

説明資料があっても、実際に操作で戸惑う患者さんもいらっしゃいます。困っている患者さんに対して、誰が、どのように対応するのかをマニュアル化しておきましょう。

まとめ

今回の記事では、クリニックへの自動精算機の導入について、そのメリットや選び方、スムーズな運用方法まで幅広く解説しました。

自動精算機は、受付スタッフの業務を大幅に軽減し、患者さんの利便性や満足度向上にも役立つ重要なツールです。また、感染症対策や医療業界全体のデジタル化の流れにも合致しています。

今後、マイナンバーカード保険証の義務化や、医療業界の人手不足の進行に伴い、こうしたデジタルツールの活用はますます重要性を増していくと考えられます。

患者さんとスタッフ双方にとって快適なクリニックづくりのために、自動精算機の導入を検討してみてはいかがでしょうか。