クリニックのオンライン予約はどう選ぶ?予約方法別の特徴やメリットデメリットを解説
オンライン予約はレストランやホテルでは以前から広く活用されていますが、医療機関では電話や直接来院による予約が主流でした。しかし近年では、業務効率化やスタッフの負担軽減に貢献する便利なツールとして、医療機関でもオンライン予約システムが注目されています。
本記事では、オンライン予約システムの特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
目次
オンライン診療予約システムとは

オンライン診療予約システムとは、インターネットを通じて患者さんが診療の予約を取れるシステムです。スマートフォンやパソコンから予約できるため、従来のように電話や来院による手続きが不要になり、手間や時間を軽減できます。
患者さんにスムーズな受診体験を提供でき、医療機関側では予約情報を一元管理できるようになります。
クリニックでオンライン予約システムを導入するメリット・デメリット

オンライン予約システムには、業務効率化や利便性向上といったメリットがある一方で、導入コストやスタッフの教育、患者さんの利便性など、検討すべき課題もあります。本章では、導入を検討する際に知っておきたいメリット・デメリットを詳しく解説します。
オンライン予約システムを導入するメリット
オンライン予約システムを導入することは、患者さんとクリニックの双方にメリットがあります。具体的には以下のような効果が期待できます。
○待ち時間の短縮
予約制のクリニックには、主に時間予約制と、当日順番制があります。
時間予約制は診療時間を時間帯ごとに区切り、患者さんが指定の時間に診察を受ける方式で、心療内科や美容医療、内視鏡検査など、一人の診察時間がある程度決まっている診療科で採用されています。
当日順番制は、受付順に診察を行う方式で、プライマリケアを提供するクリニックや来院数が多いクリニック、救急の患者さんを受け入れるクリニックで採用される傾向にあります。
オンライン予約システムのなかには単なる予約機能だけでなく、リアルタイムの待ち状況表示や、順番が近づいた際のアプリ・LINE通知機能を搭載しているものもあります。当日順番制のクリニックでは特に、こうした機能を活用することで、待ち時間の短縮と患者満足度の向上が期待できます。
ただし、システム導入初期は患者さんもスタッフも操作に慣れる期間が必要です。
○電話対応や受付業務の削減
予約や変更、キャンセルなどに関する電話や対面対応が、クリニックで働くスタッフの負担になっているケースは少なくありません。オンライン予約システムを導入することで予約関連の作業を患者さん自身で行えるようになり、スタッフの負担軽減と業務効率化につながります。
○新規患者さんの獲得に貢献
予約システムのなかには、24時間365日予約可能なものもあります。診療時間外でもWebサイトやSNS、LINEなどで予約が可能になると、仕事の都合などで電話や直接来院が難しかった患者さんの来院につながる可能性があります。
また、Googleビジネスプロフィールと連携可能なシステムではGoogle検索やGoogleマップ上から直接予約できます。これは、Googleマップでクリニックを上位表示させるためのMEO対策としても有効で、クリニックの認知度向上や新規の患者さん獲得が期待できます。
クリニックの予約経路を複数用意しておくことは、患者さんがクリニックを見つけるきっかけを増やすことにつながるでしょう。
オンライン予約システムのデメリットや懸念点
オンライン予約システムの導入や運用にあたっては、デメリットや懸念点も把握しておく必要があります。
○システム障害のリスク
予約管理をシステムに依存してしまうと、システムやサーバーの障害発生時に予約の受付や確認ができなくなるリスクがあります。こうした事態に備えて、障害時の業者の対応や、クリニック内での対応を事前に考えておくことが大切です。
○デジタルデバイスに不慣れな方への配慮
ご高齢の方の来院が多いクリニックではデジタルデバイスを使い慣れていない方も多く、システムでの予約が困難な可能性があります。そのため、電話や窓口での予約も並行して提供する必要があります。
○クリニックスタッフへの教育・研修が必要
システム導入時には、実際に操作するスタッフへの教育は欠かせません。また、業務の流れも変わるため、業務フローを再構築しクリニック内で共有し、十分な教育を行うことが大切です。
○費用負担
初期費用や月々の運用にかかる費用も、導入を検討する際に大切な要素です。補助金制度の活用も視野に入れながら、自院に合うシステムを選択しましょう。
予約方法別|オンライン診療予約システムの特徴

オンライン診療予約システムには、専用アプリ、LINE、自動音声による電話予約などの形式があります。この章ではそれぞれの特徴について詳しく解説します。
専用アプリタイプ
患者さんが自身のデジタル端末に、クリニック専用アプリや予約アプリをインストールして予約する方式です。
アプリによっては予約機能だけでなく、予約に関するプッシュ通知やオンライン診療機能、決済機能を兼ねているものもあります。これらの機能を効率的に活用することで、患者さんが通院しやすい環境を整備できます。
一方で、アプリを新規にインストールする必要があるため、患者さんによってはハードルが高いと感じる可能性があります。
LINE対応タイプ
多くの方が日常的に使用しているLINEアプリを活用し、クリニックの公式LINEアカウントを友だち追加して予約する方式です。
予約機能以外にも、リッチメニューによるクリニックのサイトやSNSへの誘導、チャット機能を用いたお知らせや問い合わせ対応も利用できます。
ただし、LINEが提供するサービスに依存するため、クリニックで実現したい機能がない場合があります。
自動音声応答タイプ
クリニックの予約専用の電話番号で、自動音声によって予約や各種案内を行う方式で、スマートフォン操作が苦手なご高齢の方でも予約がしやすい点が特徴です。予約のほかにも、よくあるお問い合わせへの対応も自動音声に任せることで、電話対応業務を削減できます。
予約までの音声ガイダンスが長かったり複雑だったりすると、予約に至らず離脱してしまうリスクや、自動音声のため複雑な内容に対応できないといったデメリットが考えられます。
機能別|オンライン診療予約システムの特徴

予約方法だけでなく、システムに搭載されている機能も重要です。予約管理や会計連携、カルテ連携など、診療の流れに組み込める機能を把握しておくことで、導入後の活用度が大きく変わります。
予約受付と管理
システムによって、予約枠設定の柔軟度や予約の制限機能、キャンセル機能など、仕様はさまざまです。
また、当日順番制のクリニックでは直接来院した患者さんも含めて順番を管理する必要があるため、リアルタイムでの予約反映機能の有無や、直感的で視覚的にわかりやすいUI(ユーザーインターフェース)かどうかは大切なポイントです。
会計やオンライン決済との連携
一部の予約システムでは、予約情報と会計情報が連携しており、診察終了後に自動で決済を完了できる仕組みがあります。これにより、会計の待ち時間を減らし、スムーズに帰宅できます。
また、売上データの分析機能や無断キャンセル抑止機能を持つシステムもあります。
既存システムとの連携
新規にツールを導入する場合、既存の電子カルテや問診システムとの連携が可能だと業務効率化につながります。
予約情報が速やかに電子カルテに反映されると入力の手間が省け、業務効率化につながります。また、オンラインで事前問診に回答できる機能があれば、来院時の受付や問診票記入の手間を省くことも可能です。
さらに、患者さんが来院前なのか来院済みなのか、診察は終わっているかといった状況を確認しやすく、特に複数医師で診療をするクリニックや来院数の多いクリニックでは、患者さんの状況を共有しやすいことがスムーズな医療の提供につながります。
クリニックのオンライン予約システムを選ぶポイント

クリニックに合う予約システムを選ぶポイントは次の3つです。
- 患者層とスタッフに合わせた操作性
- 既存のシステムとの連携の可否
- サポート内容
それぞれ詳しく解説します。
患者層とスタッフに合わせた操作性
クリニックの患者層によって、求められるシステムは異なります。
若い世代の患者さんが多いクリニックは、オンライン予約システムを導入しても操作などで患者さんが困るケースは少なく、予約だけでなくオンライン決済など追加の機能で利便性を高めることが満足度向上につながると考えられます。
しかし、ご高齢の方が多いクリニックでは操作が簡単でわかりやすいインターフェースが適しています。
また、予約管理を担当するスタッフにとっても、操作がわかりやすく使いやすいシステムであることが大切です。トライアル期間を利用して実際に使用し、スタッフの感想も踏まえて判断する方法もおすすめです。
既存のシステムとの連携の可否
上述のように、既存の電子カルテや問診システムなどとの連携で業務効率が大きく向上します。予約システムの事業者に問い合わせれば、連携可能なシステムや連携範囲について詳細な情報を得ることができるため、事前に確認しておきましょう。
サポート内容
システム導入後のトラブル対応や問い合わせに対応できるサポート体制が整っているかどうかも、安心して運用するうえで重要です。システム障害時の対応(平日のみか、土日祝も対応かなど)や、サポート時の連絡手段など、サポート体制や内容について詳細に確認しておくとよいでしょう。
オンライン診療予約システムの費用相場と補助金

オンライン予約システムの費用は、導入規模や機能によって大きく異なります。導入には一定の初期投資が必要ですが、補助金制度を活用することで負担を軽減することも可能です。ここでは、導入にかかる平均的な相場や補助金の活用方法について解説します。
初期費用と月額費用の目安
初期費用はシステムによって大きく異なりますが、50,000〜300,000円程度が相場です。なかには、月間の予約数に応じたプランや、各クリニックが必要とする機能に応じたオーダーメイド型のプランを提供する事業者もあります。
月額費用もシステムによりさまざまですが、10,000〜30,000円程度が一般的です。月間の利用者数、連携システムの有無、オプション機能の有無などにより費用は変動するため、複数の予約システムを比較検討し、自院に合ったプランを選ぶことが大切です。
活用できる補助金
政府は医療機関のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しており、IT導入補助金をはじめとした支援制度が用意されています。補助金を受けるには、導入する医療機関と導入するシステムの双方に条件がありますが、最大で約半額の補助を受けることも可能です。
IT導入補助金には、導入するツールや目的によって、業務効率化を主目的としたツールが対象となる通常枠と、インボイス制度対応に必要な会計ツールなども対象となるインボイス枠が設けられており、それぞれ補助対象や補助額が異なります。
導入を検討しているツールが補助金を受けられるかどうか、また受けられる場合にどの枠に該当するのかを、事前に確認しておくことが大切です。
まとめ
クリニックのオンライン予約システムは、患者さんにとって利便性の高い受診環境を提供し、クリニックの業務効率化が期待できるツールです。
患者さんの立場にたった操作のしやすさや実際の運用を想定しながら、既存システムとの連携可否など、さまざまな観点から自院に合ったシステムを選択しましょう。
オンライン予約システムの導入を通じて、患者満足度の向上と業務効率の改善を目指してみてはいかがでしょうか。




