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クリニックの開業に失敗する要因は?判断基準と成功のポイントを解説

                   
投稿日: 2025.08.05
更新日:2025.11.13
                   

クリニック開業には、多くの準備や経営努力、経営判断が求められます。特に近年は、患者さんのニーズや社会構造の変化によって開業医を取り巻く環境は厳しさが増しており、開業後も経営が軌道に乗らず失敗してしまうこともあります。

この記事では、開業後の成功・失敗の判断基準を明確にしたうえで主な失敗要因と事例を紹介し、リスクを回避して成功につなげるポイントを解説します。

クリニック開業における成功と失敗の判断基準

クリニック開業における成功と失敗の判断基準
クリニックの開業後の理想的な売上、利益の推移を教えてください

クリニックの売上や利益の推移は、診療科目や立地、開業スタイルによって異なりますが、一般的には、開業1~2年目で徐々に患者数を増やし、3年目前後に黒字化・安定化を目指すのが理想とされています。

開業1年目は設備投資や広告費、人件費などの初期コストがかさみ、利益は出にくい傾向にありますが、2年目以降に安定して黒字を出せる体制になっていることが、経営成功の一つの目安です。

3年目には売上が固定化し、余剰利益を設備投資やスタッフ教育に回せる状態になることを目標にしましょう。

規模や診療科にもよりますが、粗利益から人件費や光熱費、税金などの必要経費を差し引いた純利益の目標は、売上高の10~15%程度に設定するのが現実的といわれます。計画的に売上を伸ばし、安定的に純利益を確保できれば経営が成功していると判断できるでしょう。

どのような状態になったときにクリニックの開業が失敗したと判断しますか?

開業失敗の定義はさまざまですが、一般的には数年たっても経営が安定せず、継続的な赤字が続いている状態がひとつの判断基準です。ただし、開業後しばらくは赤字でも、計画どおり患者数が伸びていて収支改善の見込みがある場合は経営努力と成長の過程ととらえられます。

単に赤字が続くだけではなく、開業後3年間で損益分岐点を超えられず、資金繰りが厳しい場合や患者数が伸び悩んでいる場合も注意が必要です。月間の新規患者数が少ない、リピーターが定着しない、スタッフの定着率が悪いといった状況は、経営の土台がうまく機能していないサインだと考えることができます。

また、院長が業務に追われて本来の診療に集中できていない、経営管理が行き届いていないといった状況も、経営の健全性を欠いていると判断できます。

単に売上が伸び悩んでいるだけでなく、軌道修正の余地がなくなっている状態が失敗につながると考えられます。

クリニックの開業が失敗したかどうかを見極めるタイミングを教えてください

開業の成否を判断するタイミングは、開業後1~3年が一つの目安とされます。

初年度は設備投資回収や認知度向上に時間がかかるため赤字も珍しくありませんが、3年目までに黒字化する見込みがなく、患者数の増加傾向がみられない場合は経営の見直しが必要です。想定患者数や売上が計画の5割以下に留まり、運転資金が底を尽くおそれがある要な場合は早期に専門家へ相談し、改善策を講じることが大切です。見極めのタイミングを逃さず、軌道修正できるかどうかがその後の明暗を分けるポイントです。

クリニックの開業に失敗する要因と事例

クリニックの開業に失敗する要因と事例
クリニックの経営に失敗する主な内部要因を教えてください

失敗しやすい内部要因としては、以下のような経営面の課題が挙げられます。

事業戦略・コンセプトの欠如
明確な診療コンセプトや差別化戦略がないと、地域ニーズをとらえられず競合に埋もれてしまいます。「どのような患者さんに、どんな価値を提供したいのか」が曖昧なままでは、診療内容やサービス、内装、広告戦略に一貫性がなくなり、地域に必要とされる存在になりにくくなってしまいます。

開業前には、地域特性やニーズを踏まえた上で、ぶれない方針とコンセプト設計が重要です。

資金計画・経費管理の甘さ
開業費用や運転資金の見積もりが甘いと早期に資金繰りが苦しくなり、経営が不安定になります。開業後も収入に見合わない支出が続くと利益が出にくくなり、経営圧迫の原因になるので、適切な収支シミュレーションと継続的な経費管理が重要です。

経営ノウハウ・人材不足
経営知識やマネジメント能力が不足していると、組織運営がうまくいかないケースがあります。院長一人で業務を抱え込みすぎず、信頼できるコンサルタントなどと連携して体制を整えましょう。

スタッフの定着・コミュニケーションの不足
看護師や事務員が定着せず人材不足になると、診療体制が崩壊し、残ったスタッフに過剰な負担がかかります。院長とスタッフ間の連携が悪いと、ミスやクレームが増え、患者さん対応に支障をきたし医療サービスの質の低下にもつながります。

集患対策の不備
広告やホームページ、地域連携などの集患施策が不十分だと患者数が伸びず、収益の安定につながりません。特に新規開業直後は認知度が低いため、ターゲットとなる患者さんの層に応じた広告戦略や予約システムの整備など効果的な集患対策が必要です。

クリニックの開業で失敗しやすい外部要因はありますか?

外部環境の変化も経営失敗の大きな引き金になりうる要素です。主な外部要因には以下が挙げられます。

立地・競合環境の変化
開業地の人口動態や周辺競合の状況が悪化すると、集患が難しくなります。例えば、開業当初は需要があっても、後から周辺に大病院や新規クリニックが開業すると、患者さんが流出してしまいます。

法改正・報酬改定
診療報酬の引き下げや保険制度の改革は、収益に直結します。そのため、常に新しい制度や法改正の情報にキャッチアップし、急な制度変更にも柔軟に対応できる経営体制を整えておく必要があります。

感染症や災害
新型コロナウイルスなどの感染症の流行や自然災害など、予測が難しい外部要因によって患者さんの来院が減少することがあります。

感染症対策が不十分な場合、院内感染への不安から利用を控える患者さんが増える可能性もあるため、衛生管理の徹底やオンライン診療の導入など、非常時にも対応できる備えを日頃から整えておくことが大切です。

クリニック開業の失敗事例を教えてください

失敗事例として、いくつかのケースを紹介します。

立地選びの失敗で患者さんが集まらない
交通アクセスが悪かったり競合のクリニックが近い立地で開業したりすると、思ったように来院者数が伸びず経営が悪化する例があります。

スタッフ採用のミスマッチで運営が混乱する
採用時のミスマッチなどでスタッフが定着しないと、残った人員に業務が集中して負荷がかかり、院長が多忙になったり患者対応が手薄になったりする場合があります。

ターゲット層とのずれで集患できない
例えば、自費診療に特化するために高額な内装や設備に投資したものの、ターゲット層とのずれにより想定した集患ができなかった場合は、資金繰りが悪化する可能性があります。

こうした失敗の多くは、市場調査不足やコンセプトの曖昧さが原因です。開業前には入念な準備と、専門家からの客観的なアドバイスを受けることが大切です。

クリニックの開業を成功に導くポイント

クリニックの開業を成功に導くポイント
クリニックの開業で失敗しないために気を付けるポイントを教えてください

開業前の準備段階で以下の点に注意し、失敗するリスクを低減しましょう。

明確なコンセプト設定
医療提供の目的や診療方針、ターゲットとなる患者層を明確にします。地域医療への貢献や差別化を具体的に固めることで、ぶれない医院づくりにつながります。

綿密な事業・収支計画
開業費用や運転資金、返済計画を詳細にシミュレーションします。売上目標の達成戦略や損益分岐点を設け、目標達成の手段を具体化しておくことが不可欠です。

好立地選定
交通アクセスや人口動態、競合状況を事前に調査し、患者さんが来院しやすい物件を選びます。特に、駐車場の有無や看板の見えやすさ、近隣の医療機関との兼ね合いに注意が必要です。

十分な資金準備
開業準備段階から資金管理を厳格に行い、初期費用を抑えつつ6ヶ月~1年分の運転資金を確保しておきます。予備的な融資枠を用意し、借入金利・返済計画に無理がないよう注意しましょう。

法手続きの遵守
保健所・厚生局への届け出、保険医療機関指定申請など期限が決まっている手続きを漏れなく行い、開業準備の遅れを防ぎます。

クリニック経営を成功させるために開業前にできることはありますか?

開業前の準備期間は6ヶ月~1年を見込み、経営やマーケティングの基礎知識を学びましょう。

競合調査や診療圏調査を行って地域の患者ニーズを把握し、診療方針やサービスの方向性を明確にすることも大切です。また、経営シミュレーションのもと資金計画や収支シミュレーションを立て、開業後の数年間を見据えた経営プランも準備しておきます。

開業セミナー参加やコンサルタント相談などで知識を補強し、税理士や医療専門の開業コンサルタントなどの専門家と連携して見落としを防ぎながら準備を進めることで、開業後のスムーズな運営につながるしっかりとした土台づくりができます。

クリニック経営を軌道に乗せるために必要なことを教えてください

経営を軌道に乗せるためには、患者さんに選ばれるクリニックづくりが大切です。

診療の質だけでなく、受付対応や内装、予約の取りやすさなど、通いやすさや安心感のある環境を整えることがリピーターの獲得につながります。

また、集患力と運営力の強化も大切です。オンライン(ホームページやSNSなど)を活用した集客や、地域イベントへの参加などで患者さんとの接点を増やし、認知度を高めます。スタッフ教育にも力を入れ、定着率を上げる工夫も必要です。

さらに、定期的な収益分析を行い、必要に応じて広告戦略や診療体制、スタッフの配置などを柔軟に見直すなど、効率的な経営改善を心がけましょう。

現場の声にも耳を傾けながら、小さな改善を積み重ねていくことが、経営の安定と成長につながります。

編集部まとめ

編集部まとめ

クリニックの開業は、大きなチャンスである一方で、判断を誤ると経営が不安定になるリスクもあります。

しかし、失敗の要因や兆しを正しく知っておけば、早めの対策や軌道修正が可能です。

診療コンセプトの明確化、事業・資金計画の厳守、適切な立地の選定など開業前の準備を丁寧に行い、患者さんに選ばれるクリニックづくりを目指して一歩一歩進めるのが大切なポイントです。

開業後もリスクをできる限り抑えつつ、常に地域ニーズに応じたサービス改善と効率的運営を心がけることで、安定したクリニック経営を実現できるでしょう。