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歯科向けレセコンとは?特徴やメリット、選び方や導入費用の目安を解説

                   
投稿日: 2025.08.08
更新日:2025.11.13
                   

歯科医院の経営や日々の診療業務において、診療報酬請求の効率化と正確性のために重要な役割を果たしているツールのひとつが「レセプトコンピューター(レセコン)」です。

歯科ならではの診療内容や保険点数に対応したレセコンを導入することで、請求業務の負担を軽減できるでしょう。

今回の記事では、歯科向けレセコンについて詳しく解説します。

歯科向けレセコンの特徴

歯科向けレセコンの特徴

まずはレセコンとは何か、歯科向けレセコンの特徴や一般的な医科向けレセコンとの違いについて解説します。

レセコンとは

レセコン(レセプトコンピューター)は、診療報酬請求に必要なレセプト(診療報酬明細書)を作成するためのシステムです。

患者さんの受診情報や治療内容、保険情報などをもとに診療報酬を計算し、保険者に請求するための書類作成を自動で行います。

レセコンが電子化されていない歯科医院では、レセプト請求のためのスタッフの業務負担が課題となっていますが、レセコンを導入することで業務の効率化やミス防止、請求処理の迅速化が実現できます。

歯科向けレセコンの特徴

歯科向けのレセコンの特徴は、歯科特有の診療内容や保険制度に対応した仕様になっている点が大きな特徴です。

例えば、う蝕や歯周病の治療、補綴処置、予防処置、技工物の装着といった歯科ならではの診療行為を、点数表や請求区分に従って正確に入力・計算できるよう設計されています。

歯科向けレセコンとして、訪問歯科診療のレセプト請求にスムーズに対応できる機種もあります。モバイル端末やクラウド型のレセコンなら訪問先からレセプト作成できます。

歯科向けレセコンと通常のレセコンの違い

歯科と医科では診療の内容が異なるため、レセコンもそれぞれに対応した仕様となっています。

歯科は保険点数や算定ルールが複雑なので、歯科特有の治療部位や治療本数の入力補助機能、訪問歯科診療などに対応し、細かな処置を正確に記録・請求できる機能が求められます。

通常のレセコンではこうした機能が備わっていないことが多いため、歯科医院では歯科向けレセコンを選ぶことが推奨されます。

歯科向けレセコンと電子カルテの違いと連携

歯科向けレセコンと電子カルテの違いと連携

レセコンと電子カルテとの違い、さらに連携によって実現できることを紹介します。

歯科向けレセコンと電子カルテの違い

レセコンは主に診療報酬明細書(レセプト)の作成や請求など、診療報酬請求業務に特化したシステムです。

一方、電子カルテは診療記録や処方、治療内容、受診歴、アレルギーの有無など、診療に関するあらゆる情報を一元的に記録、管理するシステムです。

歯科向けレセコンと電子カルテとの連携で実現できること

歯科向けのレセコンと電子カルテを連携することで、以下のような効果が期待できます。

  • データの一元化と入力の二度手間解消

電子カルテで記録した診療内容が自動でレセコンに反映されることで、同じ内容を入力する必要がなくなります。

  • 業務の効率化と患者対応のスムーズ化

予約管理や会計機能、問診票連携など電子カルテが持つ多様な機能が一体化し、受付から問診、診療、会計、請求の流れが院内システム上でシームレスになります。

歯科向けレセコンを導入するメリットと懸念点

歯科向けレセコンを導入するメリットと懸念点

歯科向けのレセコン導入にあたっては、メリットだけでなく懸念点も存在します。メリットと懸念点を確認しましょう。

歯科向けレセコンを導入するメリット

歯科向けレセコン導入のメリットは、以下のとおりです。

診療報酬計算、レセプト作成作業の効率化

レセコンの導入により、診療報酬算定結果からレセプト編集、診療報酬明細書の作成、負担金額の計算および窓口請求まで一連の医事会計を自動で行えるようになり、事務作業の効率化が可能です。

ミスの削減

点数や診療区分が自動で反映されるため、診療報酬請求に関わる入力ミスや計算ミス、漏れを防ぎやすくなります。複雑な処置が多い歯科診療では算定ルールの誤解や記録ミスがレセプト返戻の原因になることがありますが、入力時に警告を表示したり過去の診療履歴と照らし合わせてエラーを防ぐ仕組みがある機種なら、ミスを減らしながらスムーズな会計処理が可能になります。

制度改定への速やかな対応

厚生労働省による定期的な診療報酬の制度改定や点数の変更にいち早く対応できるのも、歯科向けレセコンを導入する大きなメリットです。

新しい点数表や算定ルールが自動的に反映されるため、制度変更に伴う手作業での更新や再確認の負担が軽減され、請求漏れや誤請求といったリスクを抑えられます。

特にクラウド型の歯科向けレセコンでは、制度改定などに対しベンダー側が自動的にアップデートを行うため、院内での更新作業を必要とせず、速やかな対応が可能になります。

歯科向けレセコンを導入する際の懸念点

歯科向けレセコンの導入にはさまざまなメリットがありますが、いくつかの懸念点もあります。

  • 導入費用が高額になりがち
  • 継続的なランニングコストが発生する
  • 導入に伴ったスタッフ研修が必要
  • 通信障害時など緊急時の対策
  • ベンダー変更時のデータ移行の難しさ

レセコンにはオンプレミス型とクラウド型があり、オンプレミス型の場合はハードウェアやソフトウェアの購入費などで導入費用が高額になりがちで、クラウド型は導入費用を抑えられますが利用人数や機能に応じて月額の使用料が発生します。どちらの場合でも、保守契約や制度改定対応費など、継続的なランニングコストを見込んでおく必要があります。

クラウド型の場合は特にインターネット環境への依存度が高いため、通信障害時の対応策も検討しておく必要があります。

また、システム更新時やベンダー変更時にデータの移行がスムーズに行われるかどうかも不安材料です。システムごとにデータの形式や仕様が異なるため、スムーズに移行できないことがあり、場合によっては追加の費用や作業が必要になることもあります。将来的な移行も視野に入れて、あらかじめ出力形式やサポート体制を確認しておくことが大切です。

歯科向けレセコンの種類と選び方

ここでは、歯科向けのレセコンの種類と選び方について解説します。

歯科向けレセコンの種類

歯科向けレセコンには、オンプレミス型とクラウド型の2種類があります。

オンプレミス型は、必要なサーバーやネットワーク機器、ソフトウェアなどを自院で保有し運用する形態です。自院の都合に合わせて、利用するサーバーやネットワーク機器を自由に選ぶことができる点が特徴です。

一方、クラウド型はインターネット経由で提供されるサービスを利用するもので、クラウド上でシステム運用します。ハードウェアの設置が不要な場合が多く、定期メンテナンスなどはサービス提供事業者が実施するため、運用負担を軽減できます。

どちらのタイプが適しているかは、運用体制やシステム環境に応じて検討することが重要です。

レセコンを選ぶポイント

レセコンを選ぶポイントについて解説します。

自院の診療内容に合っているか

歯科向けレセコンを選ぶ際は、自院が主に行っている診療内容に合った機能が備わっているレセコンを選びましょう。

一般歯科だけでなく小児歯科や訪問歯科診療、矯正歯科などを扱うクリニックでは、それぞれに適した入力項目やレセプト処理機能が必要です。

特に訪問歯科診療を行っている場合、在宅や施設での診療は診療報酬の算定ルールが異なるため、対応しているかどうかを確認しましょう。施設などで複数の患者さんを診療した際の一括請求処理機能や移動スケジュール管理、訪問先登録機能など、運用面でのサポート機能があれば日々の業務負担が大きく軽減されます。

また、特定の治療に特化したクリニックでは、よく使う処置コードの登録やテンプレート機能が充実しているレセコンを選ぶことで、入力作業がよりスムーズになります。

自院の診療スタイルや今後の展開を視野に入れ、レセコンの機能が日常業務にどれだけマッチしているかを確認することがレセコン選びの重要なポイントです。

電子カルテなどの既存システムと連携できるか

すでに利用している電子カルテなどのシステムと連携できるかどうかも、選定時の重要なポイントです。

今後医療DXの推進に伴い、政府が定める標準規格に準拠した標準型電子カルテとの連携が求められる場面も増えていくと考えられます。システム同士がスムーズに連携できれば、患者さんの情報入力の手間が減り、受付から診療、会計までの業務を一貫して効率化できます。

連携の可否は使用しているシステム同士の互換性などで異なるため、導入前に必ず確認し、必要であればベンダーに相談してみるとよいでしょう。システム同士の連携をうまく活用することで、業務の効率だけでなく、患者さんへのサービス品質の向上にもつながります。

サポート、保守体制が充実しているか

レセコン導入後のサポートや保守体制も重視すべきポイントです。

リモート対応が可能な業者、現地対応が必要な業者など、対応体制はさまざまです。また、システム改修などにかかる費用の負担割合も異なります。

導入前に保守体制なども、しっかりと確認しておきましょう。

歯科向けレセコンの導入と運用にかかる費用の目安

歯科向けレセコンの導入と運用にかかる費用の目安

歯科向けレセコンの導入と運用にかかる費用の目安を紹介します。

導入費用の相場

歯科向けレセコンの導入費用は、製品の種類や導入形態、必要な機能の範囲によって大きく異なりますが、クラウド型は初期費用10~30万円程度、オンプレミス型は50万~300万円程度が相場といわれています。

自院に合わせたカスタマイズや既存のシステムとの連携、スタッフ向けの操作研修などで、別途費用が発生することもあります。導入前に複数社から見積もりを取り、費用の内訳やオプションの有無を明確にしたうえで比較検討しましょう。

また、IT導入補助金などの制度を活用できる場合もあるので、事前に調べておくのがおすすめです。

ランニングコストの相場

一般的に、クラウド型のランニングコストは月額1〜5万円程度、オンプレミス型は月額5千円〜3万円程度が相場です。

両者では費用構造が異なり、月額料金に含まれるサービス内容や、別途発生する費用にも違いがあります。導入前には、初期費用だけでなく中長期的なコストも考慮して、自院に合った契約形態を選びましょう。

運用や保守に必要なそのほかの費用

レセコンを安定して運用するためには、保守サポート契約やシステム更新費用などの費用も見込んでおく必要があります。例えば、電話サポートや遠隔操作によるトラブル対応、法改正への対応アップデート、周辺機器の修理・交換費用などのために都度費用が発生することがあります。

また、マイナ保険証を活用したオンライン資格確認システムの導入が推奨されており、それに伴うレセコンの改修が必要になることもあります。

歯科向けレセコンの選定から運用開始までの流れ

歯科向けレセコンの選定から運用開始までの流れ

歯科向けのレセコンの選定から、運用開始までの流れ、運用開始前後の注意点は以下のとおりです。

導入までの流れ

まずは費用面やサポート体制、既存システムとの連携も含めて比較検討し、自院に合うレセコンを選定します。可能であれば無料トライアルなどを利用して実際に試験運用をしてみることをおすすめします。実際に使ってみることが、自院に合っているかどうかの判断材料になるでしょう。

選定が完了したら、トラブル対応やベンダーのサポート内容も含めたスタッフ研修を行って導入に備えます。

運用開始前後の注意点

導入直後はスタッフが操作に慣れておらず操作ミスなどが起こりやすいため、事前に操作研修などを十分に行い、移行期間中は旧システムとの並行運用も検討しましょう。

また、万が一に備えて、初期不良やトラブル時のサポート体制が充実している業者を選ぶことも大切です。

まとめ

歯科向けレセコンは、診療報酬請求の効率化やミス防止に役立ち、歯科医院の日々の診療をサポートしてくれる大切なツールです。費用や機能、サポート体制をしっかり比較し、自院に合ったシステムを選ぶことで、日々の業務効率が大きく変わります。

自院の規模や運用スタイルに合ったレセコンを選び、診療に集中できる環境づくりを目指しましょう。