【フロア別】歯科開業で揃えるべき備品一覧|選定のチェックポイントも解説
歯科医院の開業準備では、多種多様な備品を用意する必要があります。大型の医療機器から日用品に至るまで幅広いため、事前に備品リストを作成し、必要な物品を漏れなく洗い出すことが重要です。
本記事では歯科医院の開業時に揃えるべき備品をフロア別に整理し、備品選定のポイントについても解説します。
目次
歯科医院開業における備品リストの重要性

歯科医院を新規開業する際には、歯科用ユニットやレントゲンなどの高額な機器類だけでなく、消耗品や日用品など多岐にわたる備品が必要です。
開業の計画を立てている段階で、必要な備品の一覧を用意しておきましょう。備品リストを用意することで抜け漏れなく準備を進められるだけでなく、予算計画や発注スケジュールも立てやすくなります。
歯科医院開業までのスケジュール
歯科医院の開業準備は1年以上前から着手し、開業1年前までにコンセプト策定や事業計画の作成などを済ませるのが一般的です。その後、おおまかなスケジュールとしては以下の流れで進みます。
| 時期 | 主な準備内容 |
|---|---|
| 開業1年前〜6ヶ月前 | 開業場所の物件選定・契約、内装工事の計画、資金調達など |
| 開業6ヶ月前〜3ヶ月前 | 備品リストの作成、医療機器・設備の選定と発注、スタッフ募集開始など |
| 開業3ヶ月前〜直前 | 消耗品やユニフォームなど小物備品の選定と購入、スタッフ採用と研修、広告宣伝の開始、各種行政手続き、医療機器の搬入と設置など |
このように、開業の約半年前から備品選定・手配の本格的な準備が始まり、直前期には多くの業務が並行するため、計画に沿って余裕を持った行動が求められます。
備品リストの作成時期
備品リストの作成開始時期は、開業の約6ヶ月前が目安です。
大型の医療機器や家具は選定から納品まで数週間~数ヶ月かかることが多くあります。スリッパや文房具など小さな備品は直前でも購入可能ですが、開業直前の1ヶ月前はほかの準備に追われやすいため、余裕のある6ヶ月前には備品リストを作成しておくことでスムーズに準備を進められます。
6ヶ月前からリストアップと情報収集を始め、内装工事完了後すぐに搬入できるよう納品スケジュールを調整しておくとよいでしょう。中型・大型の機器は診療方針に沿って慎重に選定する必要があるため、余裕をもって比較検討し、必要に応じて設計業者や業者と調整するのがおすすめです。
早めに備品リストを整備することで開業直前に慌てずに済み、漏れのない準備ができます。
備品の種別
必要な備品を漏れなく揃えるには、カテゴリごとに整理して考えることが有効です。歯科医院で開業時に必要となる主な備品カテゴリは次の4つに大別できます。
医療機器・医療設備
歯科用ユニットや歯科用X線など、診療や検査に使用する医療機器・医療設備が該当します。診療内容と提供する治療によって必要な機器は異なります。
家具・家電
歯科医院内には、椅子や本棚、エアコン、冷蔵庫、洗濯機など患者さん向けとスタッフ向けのさまざまな家具や電化製品が必要です。特に大型家具や家電はクリニックの内装イメージやコンセプトに合わせたデザイン選びも重要なので、どのような家具と家電が必要かをあらかじめリストアップしておきましょう。
清掃・衛生用品
院内の清潔を保つための清掃用具および衛生管理のための用品も必要です。スリッパや掃除機、モップ、トイレ清掃のための用品などが該当します。
事務用品・消耗品
事務用品および日々消費する消耗品は、多岐にわたります。
事務用品には、印刷用紙や医院名が入ったゴム印、スタンプ台などが考えられます。
消耗品は診療で使用するものと医院運営に必要なものに分けられ、診療で使用する消耗品には紙コップや手袋、エプロン、注射針、ガーゼなどがあり、印象材やセメントなどの材料が含まれることもあります。医院運営に必要な消耗品には、トイレットペーパーやティッシュペーパー、洗剤、タオルなどが含まれます。
事務用品と消耗品は細々したものが多く、漏れが発生しやすいカテゴリだといえます。患者さん用のエプロンや紙コップなど十分な在庫を必要とするものもあるため、必要量も含めてあらかじめ考えておくと、内装デザインの際に在庫を保管するスペースをイメージしやすくなります。
【フロア別】歯科医院の開業に必要な備品リスト

歯科医院の備品は、各スペースごとに必要なものを考えると整理しやすく、抜け漏れの防止につながります。フロア別のチェックリストを作成し、チェックを入れながら準備を進めると効率的です。以下では、院内を主なエリアに分けて、開業時に必要となる代表的な備品をリストアップします。
玄関
玄関はクリニックの第一印象を決めます。雰囲気や清潔感に配慮しつつ、実用的な備品を揃えます。また、土足かスリッパかによって必要な物が異なります。
- 玄関マット
- 傘立て
- 靴箱
- 靴べら
- スリッパ
- スリッパラック
- 手指消毒用アルコール
土足可能なクリニックの場合、靴箱やスリッパ類は不要です。玄関備品のデザインは医院コンセプトに合ったものを選び、清潔で好印象を与える空間づくりを目指しましょう。
受付
受付は患者さんを最初に対応する場であり、事務作業の中心でもあります。患者対応用とスタッフ作業用、それぞれに必要な備品を準備します。
- 受付カウンターと椅子
- 電話機
- パソコン
- プリンター
- レセプトコンピューター(レセコン)
- 自動精算機
- マイナンバーカードリーダー
- クレジットカード決済端末
- 金庫
- つり銭用トレー
- 受付用筆記具
- 診察券入れ
- 問診票と同意書類
- カルテラックと書類棚
- シュレッダー
- 印鑑類
- 掲示板やカレンダー、時計
体温計や飛沫防止パーテーションといった感染症対策用品、高齢の患者さんが多いと見込まれる場合は杖ホルダーや貸出用老眼鏡なども必要に応じて検討しましょう。
トイレ
トイレは患者さんにとって快適かつ衛生的であることが求められます。
- トイレットペーパー
- トイレ用スリッパ
- ペーパータオルまたはハンドドライヤー
- ハンドソープ
- 消臭剤や芳香剤
- 鏡
- ゴミ箱
- 清掃用具
男女兼用の場合でも、利用者目線で必要なものを考えるのがポイントです。女性患者さんが多いと見込まれる場合は生理用ナプキンを用意しておく、小児歯科に力を入れる場合は子どもが使いやすいように台を用意するなど、小さな気配りが患者満足度向上につながります。
待合室
待合室は患者さんがくつろいで過ごす空間です。年代や来院目的に合わせて、快適性と利便性を高める備品を配置します。
- ソファや椅子
- テーブル
- 雑誌や新聞類
- マガジンラックや本棚
- テレビ
- 壁掛け時計
- 空気清浄機や加湿器
- ウォーターサーバー
- キッズスペースや玩具
- 掲示板
- BGM機器
キッズコーナーを設ける場合はクッションマットや絵本、おもちゃ、モニターも検討するとよいでしょう。また、スペースに限りがある場合はモニターを壁掛けにするなど、省スペース化も工夫しましょう。
診療室
診療室には歯科診療に必要な機器と備品を一式揃えます。
- 歯科用ユニット(治療用椅子と一体型の機器)
- 歯科用ライト
- 口腔外バキューム
- エアコンプレッサーやバキュームモーター
- ハンドピース類:エアタービン、コントラアングルなど
- 小器具類:ミラー、探針、ピンセット、スケーラーなど
- 小型治療機器:根管長測定器、電気メス、光重合器など
- 滅菌・消毒設備:オートクレーブ、超音波洗浄器など
- 歯科材料:レジン、印象材、セメント類、薬品類、麻酔薬など
- 消耗品:紙コップ、エプロン、グローブ、ガーゼ、綿球など
- 患者さん用の備品:コート掛け、荷物置き、ティッシュ、ゴミ箱、うがい用紙コップなど
診療室内での備品の準備不足は診療に直結するため、特に念入りに確認しましょう。
レントゲン室・技工室
歯科医院でレントゲン室や技工室を設ける場合、それぞれ専門の機器備品が必要です。
レントゲン室の主な機器は、歯科用CT装置、パノラマX線撮影装置、セファロ装置(頭部X線)、デンタルX線、現像および画像処理用PCとモニター、X線防護スクリーンなどで備品は防護エプロンやセンサーカバー、デンタル撮影用ポジショナー(インジケーター)などが考えられます。
技工室の主な機器は印象材練和器(アルジネートミキサー)、バキュームミキサー、モデルトリマー(石膏模型研削機)、技工用モーター、石膏吸引装置、技工用エアコンプレッサー、技工机などで、備品は技工用ハンドピースや石膏ボウル・ヘラ、印象トレー各種、石膏やレジン材料、研磨剤、技工用ミラーなどが挙げられます。
技工室は、院内で義歯や補綴物の調整や製作などの技工を行う場合に必要です。
スタッフルーム
スタッフの休憩や事務作業に使うスペースには、働きやすい環境を整える備品を用意します。
- テーブルや椅子
- ロッカー
- 流し台
- 冷蔵庫
- 電子レンジやポット
- 洗濯機や乾燥機
- 食器類
- 洗剤・スポンジ
- ティッシュペーパー
- スタッフ用ユニフォーム
- 名札ラック
- タイムレコーダー
- 救急箱
- 工具類
スタッフがリラックスできるように十分な収納と設備を整え、スタッフ同士のコミュニケーションが円滑に図れる環境づくりを心がけるのが大切です。
そのほか
上記以外にも、院内に必要な備品があります。
- 清掃用具:掃除機やモップ、ほうき、チリトリ、バケツなど
- 清掃・衛生消耗品:洗剤や漂白剤、ゴム手袋、ゴミ袋、キッチンペーパーなど
- 消火器
- 医療廃棄物容器
開業後に慌てないためにも、思いついた備品はこまめにリストに追加しておきましょう。
備品選定のチェックポイント

歯科開業時に必要な備品を選定する際は、いくつかのチェックポイントを押さえておくことで、開業後のトラブルを避け、限られた予算内で効果的に医院運営に役立つ備品を揃えられます。
ここでは備品選びのチェックポイントを3つ解説します。
コンセプトに合う備品を選ぶ
医院の診療方針や想定患者層によって必要となる備品は異なります。例えば、ファミリー層が多いなら子どもが遊べる絵本やおもちゃを待合室に置く、高齢の方が中心なら立ち座りしやすい高さ(40〜45cm程度)のソファや手すりを設置するといった配慮が必要です。
また、「高級感を重視するか」「親しみやすさを大切にするか」によって、選ぶ家具のデザインや色調も変わってきます。
クリニックのコンセプトやターゲット層を明確にし、それに沿って備品を選ぶことでクリニック全体に統一感が生まれます。
機能性とコストのバランスを考える
備品は、機能性とコストのバランスをしっかり検討して選びましょう。新しい高機能機器は魅力的ですが、予算を大きく超えて導入すると経営を圧迫しかねません。使用頻度や得られる効果を考慮し、費用対効果に見合うかを判断しましょう。
また、高額備品はリースやレンタルを活用するのも選択肢の1つです。開業資金や今後の収支シミュレーションを踏まえ、自院に適した購入方法を検討しましょう。
アフターサービスやメンテナンス対応を確認する
高額な医療機器ほど、購入先の保証内容やアフターサポート体制を確認することが不可欠です。開業後に機器トラブルが発生した際、メーカーの対応が遅かったりサポートが不十分だったりすると、診療に支障が出るだけでなく修理費用の負担も大きくなりかねません。
特に歯科用ユニットやレントゲンのような機器は、保証期間の長さや保守点検サービスの有無を事前にチェックして比較検討します。開業後のメンテナンス契約を結んで、定期点検を受けられるようにするのもよいでしょう。
万一の故障時にも迅速にバックアップ機を手配してくれるかなど、サポート体制が充実した備品を選ぶことが、安定した医院運営につながります。
まとめ

歯科医院の開業準備では、院内のあらゆる場所で必要となる備品をリストアップし、計画的に揃えていくことが成功の鍵となります。診療内容や規模に応じて必要な物品はさまざまなので、抜け漏れを防ぐため、カテゴリ別あるいは場所別のチェックリストを活用して準備を進めることをおすすめします。
準備段階で時間的な余裕を持ち、機器の納期やコスト、サポート体制まで含めて検討することで、開業後に慌てることなく診療に専念できます。多岐にわたる備品をしっかりと揃え、開業日を迎えましょう。




