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クリニックの再診率を上げるには?ポイントや再診率が低い理由を解説

                   
投稿日: 2025.09.12
更新日:2025.11.13
                   

クリニックにおいて、患者さんの再診率は重要です。新規の患者さんの獲得へ力を注いでも、再診の患者さんが増えなければ新規の患者さんにかかる診療時間や集患コストが経営を圧迫してしまいます。

では、どのような要素が再診率に影響を与えるのでしょうか。本記事ではクリニックの再診率を上げるポイントを解説します。

クリニック経営において再診率が重要な理由

クリニック経営において再診率が重要な理由
 
クリニック経営で再診率が重要な理由を教えてください

クリニック経営において、再診率は安定した経営基盤を築くうえで欠かせない指標で、収益の安定性と事業継続性の確保のためにも再診率を上げることが重要です。

診療科にもよりますが、厚生労働省の医療経済実態調査によると一般診療所の再診率は内科86.2%、整形外科90.2%、精神科96.3%と9割前後におよび、医業収益は再診患者さんからの収入が大きな割合を占めていることがわかります。

再診の場合は初診に比べて診療時間が効率化されるため、1日あたりの患者対応数を増やすことができます。また、慢性疾患や生活習慣病の患者さんにとって継続的な通院は病気の悪化防止に直結するため、再診率の向上は医療の質向上にもつながります。

さらに再診率の高いクリニックは地域における評判もよくなり、自然と新規患者さんの来院も増えるという好循環を生み出せます。そのため、再診率は単なる数字ではなく、患者さんとの信頼関係や医療サービスの質を映し出す重要な経営指標だといえます。

参考:『令和5年医療施設(静態・動態)調査』(厚生労働省)

クリニックにおける再診率の目安はどのくらいですか?

クリニック(一般診療所)における再診率の目安は、一般的に60〜80%程度とされています。

慢性疾患の患者さんを多く抱える内科や糖尿病内科などでは再診率が高くなりやすく、80%を超えるケースもあります。一方で、外科や皮膚科のように症状が一時的で治療が完結しやすい診療科では再診率が下がる傾向があります。

ただし、再診率は診療科の特性や地域の医療需要、競合状況によって変動することも考慮する必要があります。

クリニックで再診率が低い理由

クリニックで再診率が低い理由
再診率が低いクリニックに共通する特徴を教えてください

厚生労働省の受療行動調査における患者満足度調査から、再診率が低いクリニックに共通する特徴がいくつか推測できます。同調査による満足度調査で、患者さんの満足度に影響している項目には次のようなものがあります。

  • 医療効果
  • 医師の思いやり
  • 医師の説明と技能
  • クリニックの評判
  • 看護師の対応
  • 待ち時間の長さ

再診率の低いクリニックは、これらの点において、「患者さんにとって通い続けるメリットが伝わりにくい」「通院の負担が大きい」など不足している要素があると考えられます。

参照:『令和5(2023)年受療行動調査』(厚生労働省)

 
予約の取りづらさが再診率に影響することはありますか?

はい、予約の取りづらさは再診率に影響します。患者さんは「次回の予約が取れない」「希望する日時がいつも埋まっている」といった状況に直面すると、通院を諦めたりほかのクリニックへ移ったりする可能性が高まります。特に、仕事や家事で忙しい患者さんにとって、予約の不便さは大きな負担となります。

また、予約の仕組みが電話のみで受付時間が限られている不便さや、当日のキャンセルや変更がしづらい不便さによって通いにくいクリニックという印象を持たれ、再診率の低下につながってしまうこともあります。

予約の取りにくさによる再診率の低下は、慢性疾患や定期的な管理が必要な患者さんにおいて、治療間隔の延長や治療中断につながるリスクがあります。また、急性症状での受診希望時に予約が取れない場合、患者さんはほかの医療機関を受診する可能性が高くなります。

参照:『令和5(2023)年受療行動調査』(厚生労働省)

 
スタッフ対応の印象が悪いと再診率に関係しますか?

患者さんは診療内容だけでなく、受付や看護師、事務スタッフの対応からクリニック全体の雰囲気を感じ取ります。特に直接接することが多い受付スタッフや看護師の対応は患者さんの受診満足度を左右するでしょう。

例えば、受付での言葉遣いや表情が冷たい、説明が不十分、待ち時間への配慮がないといった対応があると「このクリニックにはもう通いたくない」と思われてしまいます。

反対に、丁寧で親身な対応は安心して通える印象を与え、患者さんの信頼や満足につながります。患者さんへの不適切な言葉遣い、忙しさを理由とした雑な対応などは、クリニックへの不信感にもつながりかねません。

再診率を上げるためのポイント

再診率を上げるためのポイント
再診率を上げるために医師ができることはありますか?

診察の質そのものはもちろん、患者さんとのコミュニケーションの取り方を振り返ってみましょう。

専門用語を避けてわかりやすく説明することや治療の見通しを丁寧に伝えることは、患者さんの不安を軽減し、次回も先生に診てもらおうという安心感につながります。

また、質問しやすい雰囲気づくりも大切です。限られた診察時間のなかでも患者さんの訴えに耳を傾け、治療内容だけでなく生活習慣へのアドバイスやセルフケアの方法を伝えるなど、患者さんに寄り添う姿勢を忘れないようにしましょう。

患者さんに寄り添い、次回の来院の必要性をしっかり理解してもらうことの積み重ねが、クリニック全体の再診率向上につながっていきます。特に慢性疾患の患者さんの場合は、治療の長期的な目標や進捗を共有し、患者さんのモチベーション維持に努めることも重要です。

医師以外のスタッフも再診率の向上に貢献できますか?

患者さんに接するのは医師だけではないので、医師以外のスタッフによる工夫や努力も、再診率に影響を与えます。

受付スタッフは患者さんとの最初の接点として、明るく丁寧な挨拶、適切な言葉遣い、患者さんの状況に応じた配慮を行うことが重要です。

予約の調整や変更に柔軟に対応し、患者さんの都合に合わせたスケジューリングを提供することで、継続受診をサポートできます。

看護師は医師の診療を補完する役割として、患者さんの不安や疑問に対するフォローアップ、服薬指導の補助、生活指導のサポートなどを通じて患者さんとの信頼関係を構築できます。

また、患者さんの変化や症状の経過を適切に医師に報告することで、よりよい医療提供体制を維持できます。

医療事務スタッフは、会計処理の迅速化、各種書類の説明、保険制度に関する患者さんへの案内などを通じて、患者さんの利便性向上に貢献することができます。

業務を効率化することで再診率は上がりますか?

業務効率の向上は、間接的に再診率の向上に寄与すると考えられます。

令和5年に厚生労働省により実施された受療行動調査では、医師の診療・治療内容への不満度は約5.4%、診察までの待ち時間への不満度は25.5%で、患者さんの不満率が相対的に高い項目は診察までの待ち時間でした。

そのため、Web予約やリマインドメールによる利便性向上、Web問診や自動受付機、自動精算機の活用による受付や会計の待ち時間短縮で患者さんの抱える不満を減らすことは、再診率の向上につながると考えられます。

さらに、電子カルテや情報共有ツールの活用で、医師やスタッフが患者さんの経過を正確に把握しやすい体制が整えば診療内容の一貫性が高まり、「自分のことをきちんと理解してくれている」という信頼感が生まれるでしょう。

このように、業務効率化はスタッフの負担を軽減するだけでなく、通いやすさと安心感を患者さんに提供し、再診率を高めることができる重要な施策でもあるのです。

参照:『令和5(2023)年受療行動調査』(厚生労働省)

再診率を効率よく計測できるツールはありますか?

レセプトデータを活用することで、効率よく再診率を計測できるでしょう。再診率は、“再診患者数 ÷ 総患者数”で計算できます。また、より高度に分析し、対策を練ることも可能です。

例えば、年齢層、男女、診療科(複数診療科がある場合)ごとの再診率を計測することで、患者さんの傾向を可視化できます。再診率が相対的に低い項目がある場合は、何かしらの原因が受診体験を低下させていると考え、より詳細な分析を行うとよいでしょう。

Web予約システムを導入している場合は、システムに経営分析ツールが付帯していることがあります。分類ごとの再診率に加え、キャンセル率やアンケート結果などもクリニックの課題を見つけるために有用です。

編集部まとめ

編集部まとめ

クリニックの再診率向上は、単なる経営指標の改善ではなく、患者さんとの長期的な信頼関係構築や地域医療への貢献につながります。医師の診療技術向上だけでなく、スタッフ全体の接遇改善、業務効率化、そして患者さんのニーズに応じたケアが不可欠です。

高い再診率は患者満足度の向上、医療の質の向上、そして安定した経営基盤の確立の柱になるので、再診率向上を意識しながらクリニックを運営してみてください。