電子カルテのデメリットとは?メリットや選び方も詳しく解説します
近年、医療現場で電子カルテの導入が進んでいます。開業医や開業予定の医師にとって、電子カルテの導入にはさまざまなメリットとデメリットがあります。
本記事では、電子カルテの概要や普及状況、導入によるデメリットやメリット、自院に合った製品の選び方などを解説します。
電子カルテの概要と現状

電子カルテは、従来の紙カルテを電子データに置き換え、問診内容や検査結果、処方、会計など患者さんの診療情報を一元管理できるシステムです。情報をデジタル化することで、医療の質向上と業務効率化が期待できます。
電子カルテはカルテ記録だけでなく、レセプトソフトや検査機器との連携が可能な点も大きな特徴です。また、タブレット端末などを用いて、在宅医療や診察室以外での対応にも役立ちます。
令和5年(2023年)時点で、クリニック(一般診療所)の電子カルテ導入率は約55%に達しています。一般病院全体では約65.6%、特に400床以上の大規模病院では93.7%と高い普及率で、今後も普及が進むと見込まれています。
参照:『電子カルテシステム等の普及状況の推移』(厚生労働省)
現時点(2025年)では電子カルテ導入は法律で義務付けられていません。しかし、政府は医療DX令和ビジョン2030のもと、病床数200床以上の病院には電子カルテ普及率90%を目標として掲げて、電子カルテ普及を推進しています。
クリニックや中小規模の医療機関では任意導入ですが、将来的には導入がさらに進むことが見込まれ、診療報酬加算や業務効率化の観点からも今後は標準的なツールになる可能性があるといえるでしょう。
参照:『医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム』(厚生労働省)
電子カルテの導入によるデメリット

電子カルテの導入にあたって懸念されるデメリットは以下の4点です。
- コスト面の負担が大きい
- 導入直後は一時的に業務効率が下がる場合がある
- 停電や通信障害時に利用できないリスクがある
- 情報漏洩のリスクがある
電子カルテ導入には、初期導入費用や保守費用などコストがかかります。導入コストはシステムの種類やクリニックの規模によって異なりますが、例えば院内サーバーを設置するオンプレミス型では初期費用が数百万円規模になることもあり、導入後も月額数万円の保守費用がかかります。
一方でクラウド型システムならサーバー購入が不要な分、初期費用を数十万円に抑えられることがあります。
また、新しいシステムにスタッフが慣れるまで時間や研修を要し、導入直後は一時的に業務効率が下がる場合もあります。
さらに、停電や通信障害時にはシステムが利用できなくなるリスクがあるので、紙カルテにはない対策が必要です。紙運用に比べて情報漏洩などのセキュリティ面の不安もあるため、導入に際してはしっかり検討することが大切です。
デジタルデバイスに慣れていない医師やスタッフは操作に戸惑う場合もありますが、電子カルテの操作自体は慣れれば誰でも行えるようになります。
近年の電子カルテは画面が直感的でわかりやすく、手書き入力やタッチパネルに対応しているものもあり、パソコン操作が苦手な方でも使いやすい工夫がされています。
電子カルテを提供するベンダーによっては導入時に丁寧な操作研修を行ってくれるところもあり、時間をかけて練習すれば問題なく利用できるでしょう。
さらに、ベンダーによっては職種別のマニュアル作成など、習熟度に応じたサポートを提供しているところもあるため、そうした支援体制の有無も選定のポイントになります。
電子カルテは院内のどこからでもアクセスできて便利な反面、内部の人間による不注意や不正アクセスによる情報漏洩のリスクがあります。
ただし、電子カルテのセキュリティ上のリスクは、オンプレミス型とクラウド型で異なります。
オンプレミス型は院内サーバを閉域網で運用し、スタッフ専用のWi-Fiや有線LANのみを利用するため、外部からのサイバー攻撃リスクは低めであるといえます。しかし、USBや外部機器からの感染、端末盗難、内部不正の可能性は残るため、システム更新やアクセス権管理といった対策が欠かせません。
一方、クラウド型はベンダー側が通信・保存時の暗号化や多要素認証、物理関キュリティ、災害時のバックアップなど高度な対策をしていますが、インターネット接続が必須です。利用端末やネットワークの安全性が確保されなければ脆弱性となるため、VPNや院内のセキュア回線からの利用が望まれます。
どちらの方式も一長一短があり、「誰がどこまで守るのか」という責任範囲を明確にして選択することが重要です。
電子カルテ導入のメリットや選び方

はい、電子カルテには多くのメリットがあります。例えば、カルテの物理的な保管場所が不要になり、過去の診療記録や検査結果をすぐ検索できるため業務の効率化につながります。また手書き文字の読み間違いや転記間違いなどのミス防止で、診療の正確性向上にも寄与します。
加えて、患者さんの情報をデータ化して共有しやすくなることでスタッフ間の連携が円滑になり、待ち時間の短縮や患者さんへのサービス向上にもつながります。
紙カルテのように紛失したり劣化したりする心配もなく、バックアップを取っておけば災害時でもデータを保全できる点もメリットです。また、今後さらに拡大が見込まれるオンライン診療や遠隔診療との親和性も高く、電子カルテを基盤にすることで、柔軟な診療スタイルに対応しやすくなります。
電子カルテを導入する際には、次のポイントに気を付けましょう。
- 自院の診療スタイルや規模に合ったシステムを選ぶ
- 操作性やサポート体制を確認する
- データ移行やネットワーク環境の整備を行う
- セキュリティ対策やバックアップ体制について確認しておく
- 費用対効果を検討し、余裕のある予算計画を立てる
- 停電時に備えた無停電電源装置(UPS)の導入を検討する
- 緊急時などの紙運用の手順を整えておく
電子カルテにはさまざまな機能が搭載されているので、自院であまり使用しない機能が多いと操作が複雑になり、逆に必要な機能が不足していると業務に支障をきたします。スタッフ全員が日常的に利用するシステムなので、事前準備も含めてしっかり確認しながら進める必要があります。
また、費用負担を軽減するために、国や自治体のIT導入補助金や、電子カルテ情報共有サービス接続への補助金などを活用できる場合もあります。
参照:『IT導入補助金2025 公募要領』(中小企業庁)
複数の電子カルテ製品を比較検討し、クリニックの規模や診療内容に合ったものを選ぶことが大切です。具体的には、以下のポイントをチェックしましょう。
- 取り扱うベンダーの信頼性(導入数や医療機器との連携数)
- 費用面(初期導入費用と月額利用料のバランス)
- 操作性(画面の見やすさや直感的な操作性、既存業務フローへの適合度)
いくつかの候補について資料請求をしたりデモンストレーションを試したりして、実際の使い勝手を確認することも大切です。
特に見落としがちなのが、既存のレセプトソフトとの互換性や連携の可否です。操作が二重になると業務負担が増すため、レセプト連携機能は必ず確認しておきましょう。
また、クラウド型は導入や運用コストを抑えやすく、院外からのアクセスやデータ保守がベンダー任せで済む一方、オンプレ型はカスタマイズ性やオフライン対応に強みがあります。こうした観点から総合的に判断し、自院に適した電子カルテを選定してください。
編集部まとめ

電子カルテは紙のカルテに代わる便利なツールであり、業務効率化や医療の質向上に大きく貢献します。一方で導入にはコストやスタッフ教育、セキュリティ対策など検討すべき課題も少なくありません。
義務ではないものの、政府の医療DX推進により普及が加速しているため、メリットとデメリットを踏まえ、自院に合った電子カルテを慎重に選ぶ必要があります。
政府による補助金制度の活用も視野に入れつつ、十分な準備と対策を行えば、電子カルテはクリニック経営の強力な味方となるでしょう。




