眼科の内装設計で押さえておきたいポイント|診療効率と患者満足度を両立する空間づくりとは
眼科クリニックの内装は、患者さんが安心して過ごせるか、スタッフが気持ちよく働けるか、長く使ううえで手入れしやすいかなど、さまざまな検討すべき要素があります。
本記事では、眼科内装設計で診療効率と患者満足度を両立するために押さえておきたいポイントを解説します。
患者さんの不安をやわらげる眼科の内装デザインとは

眼科の内装では、患者さんの視覚的な安心感と動線のわかりやすさを意識することが大切です。
目の検査や治療に対して不安を抱く患者さんは少なくないため、白やベージュなどやわらかい色調を用いるなど、落ち着きのある空間づくりを意識しましょう。
また、受付から待合室、検査室、診察室までの動線をシンプルにすることで、初めて訪れる患者さんでも迷わず移動でき、心理的な負担を軽減できます。待合室には適度な採光と清潔感を確保し、リラックスできる椅子やアート作品を配置することで、視覚的にも快適な環境を提供できます。
これらの工夫は患者さんの不安をやわらげるだけでなく、信頼感や満足度の向上にもつながります。
視力低下や目の病気への不安を抱える患者さんには、見えにくさをしっかり補助し、安全に行動できる空間が安心感につながります。具体的には、まず案内表示やサインは大きくはっきりと表示し、配色もコントラストの高い組み合わせにして判別しやすくすることが大切です。
また、十分な明るさを確保しつつ直射光による眩しさを避けた照明計画も重要です。JIS照明基準によると、診察室は500ルクス以上、病院内の廊下などは100ルクス以上が推奨されています。見え方に不安を感じる方が眩しさを感じにくいよう配慮しながら、必要な場所はしっかり照らすことが重要です。
参照:『照明基準総則』(日本産業規格)
さらに、物理的な安全対策も欠かせません。できるだけ段差をなくし、床は滑りにくい素材にする、手すりを要所に設けるといったバリアフリー設計を取り入れましょう。
こうした配慮により、視覚に不安がある方でもつまずいたり迷ったりするリスクを減らすことができます。
清潔さと安心感を両立させるには、配色や素材選びのバランスがポイントとなります。配色と素材選びのポイントは下記のとおりです。
| 観点 | ポイント | 具体例・留意点 |
|---|---|---|
| 配色の基本 | 優しい色合いのベージュや白を基調にして清潔感を演出 | 真っ白一色は冷たい印象になりやすい |
| アクセントカラー | 淡いグリーンなどのカラーを部分的に使用 | 過度にカラフルにしないよう、床や椅子、カーテンなど部分的に取り入れる |
| 色の効果 | やわらかい色味を加えることで空間が和らぎリラックス感が増す | |
| 素材選び | 清掃しやすく衛生を保ちやすい素材を選ぶ | 特に壁や床、カウンターの汚れの落ちやすさに配慮する |
| 耐久性 | 長く使っても傷みにくい仕上げで清潔感を維持する | 経年劣化や汚れが目立ちやすいと悪い印象につながる |
このように、配色の工夫と素材や衛生面の工夫によって、清潔感とリラックス感を両立させる内装が実現できます。
目の治療や検査を行う空間では、明るすぎても暗すぎても患者さんは落ち着きにくく、不安を感じてしまいます。
気を付けたい点の一つは、照度と照明の向きです。
診察室では医師が細部まで正確に確認できる十分な明るさ(500ルクス以上)を確保しつつ、照明器具の配置や角度を工夫して強い光が直接患者さんの目に入らないようにすることが大切です。
待合室や廊下では、逆にやわらかい明るさを保つことでリラックスしやすい雰囲気を作ります。
昼白色などクールな光は清潔感がありますが、緊張を和らげるには電球色寄りの少し温かみのある光が効果的です。場所によって使い分けましょう。
適度な光量と心地よい光色の照明は、初めて来院する患者さんの緊張感を和らげる効果も期待できます。明るさとまぶしさのバランスを取り、検査や診察に支障なくかつ患者さんに優しい照明環境を整えることを心がけましょう。
検査と診察の効率を向上させる内装設計のポイント

眼科クリニックには視力表や検眼機、眼底検査装置など大型の医療検査機器が多数設置されます。これら機器の配置計画は内装設計の初期段階でしっかり検討することが不可欠です。
検査機器の配置は、患者さんがスムーズに移動できる動線と、スタッフが効率的に業務を行えるレイアウトの両立が重要です。頻繁に使う機器は診察室の近くにまとめ、検査内容ごとにゾーン分けすることで移動距離を短縮できます。
また、プライバシーの観点からパーテーションや遮音対策を施し、安心して検査を受けられる空間づくりにも配慮しましょう。メンテナンスや電源確保のしやすさも考慮し、動線や使い勝手を事前にシミュレーションすることで、安全性と効率性を両立できます。
受付から診察、検査、会計までの流れをシンプルに設計することで、患者さんのストレス軽減と回転率向上が期待できます。
入口近くに受付を配置し、待合室から検査室と診察室へ移動しやすい動線を確保することが理想です。診察後は会計にすぐ進めるレイアウトにすることで、患者さんの滞在時間を短縮し、混雑も防げます。
また、通路を広めにとることで車椅子やベビーカーを利用している患者さんにも配慮でき、誰にとってもわかりやすい環境を整えられます。
さらに、スタッフ用の動線と患者さんの動線を交差させない工夫も有用です。
例えば、スタッフが検査室から診察室へ器具やカルテを運ぶ動線と、患者さんが移動する動線がぶつかってしまうとお互い行き来がしにくくなります。バックヤード側でスタッフが行き来できる経路を設け、動線が交わる場合も十分な幅を取るのがポイントです。
スタッフにとって働きやすい内装にするには、視認性・アクセス性・快適性を意識し、業務動線の効率化と職場環境の快適さの両面から工夫できることを考えます。
まず動線面では、スタッフルームや備品の収納スペースへの移動のしやすさに配慮しましょう。さらに、診察室や処置室との連携がスムーズに取れるレイアウトにすることで、チームワーク効率も向上します。
休憩スペースは適度な静けさとプライバシーを確保し、オンとオフの切り替えがしやすいことも重要です。スタッフが快適に働ける環境は、患者さんへの対応力にも直結します。
眼科の内装で失敗しないためのポイント

眼科の内装で失敗しやすいポイントのひとつは、患者さんが移動しにくい動線設計になってしまうことです。
受付・待合室・検査室・診察室・会計の流れが複雑だと、初めて訪れる患者さんが迷いやすく、不安やストレスの原因になります。さらに、待合室が狭すぎたり照明が暗すぎたりすると、圧迫感や不安感を与えてしまい、再診率にも悪影響を及ぼしかねません。
デザイン性を重視しすぎて、清掃やメンテナンスのしやすさが後回しになるケースにも注意が必要です。院内を清潔に保てないと、患者さんの安心感や信頼感が低下してしまいます。
内装計画では、動線のシンプルさと快適さ、清潔感をバランスよく取り入れることが重要です。
内装工事を依頼する業者選定は、クリニック開業成功の鍵を握る重要なステップです。業者を選ぶ際は次のポイントに注目しましょう。
- クリニックの施工数が豊富か
- 医療施設の専門知識を持っているか
- コミュニケーションとアフターサポート
病院やクリニックの内装工事経験が多い業者を選ぶことが肝心です。特に、眼科クリニックの施工例が豊富にある業者であれば、内装デザインにおける眼科特有の注意点などにも詳しく、希望に合うさまざまな方法を提案してもらえるでしょう。
複数の業者から見積もりやプラン提案を取り寄せ、比較検討するのがおすすめです。
編集部まとめ

眼科クリニックの内装設計では、患者さんの安心感と診療の効率を両立させる視点が求められます。眼科を受診する患者さんにとって、照明や色彩計画、動線や待合環境が不安の軽減につながります。
また、スタッフにとっては動きやすいレイアウトや作業環境の整備が、業務効率やモチベーション向上につながります。
患者さんからもスタッフからも居心地がよいと感じてもらえる、快適な空間を目指しましょう。




