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在庫切れ・過剰在庫を防ぐ!クリニックで役立つ在庫管理システムとは|在庫管理システム10選を紹介

                   
投稿日: 2025.11.13
                   

医療機関では、薬剤や衛生用品など多種類の医療物品を在庫として管理しているため、在庫切れや過剰在庫のリスクが常に存在します。在庫管理システムを導入すれば、在庫数をリアルタイムで把握し、発注ミスや期限切れを防止できます。スタッフの負担軽減や経営の効率化にもつながるため、導入する医療機関が増えています。本記事では、クリニックで役立つ在庫管理システムの選び方とおすすめ10選を紹介します。

医療機関における在庫管理の課題

医療機関における在庫管理の課題

医療現場では、薬剤や衛生用品、検査試薬など多岐にわたる物品を日々管理する必要があります。これらの在庫管理は診療の品質や経営効率に直結する重要な業務です。しかし、紙の台帳やエクセルによる手作業管理では、記録漏れや入力ミスといったヒューマンエラーが発生しやすく、リアルタイムでの在庫把握も困難です。本章では、クリニックや病院が抱えやすい在庫管理の課題を整理し、なぜシステム化が求められているのかを解説します。

在庫切れによる診療への影響

薬剤や医療材料の在庫が不足すると、診療の継続に支障をきたし、患者対応の遅れや治療スケジュールの変更を余儀なくされる場合があります。特に、ワクチンや点滴など特定のタイミングで必要となる医薬品が欠品すると、再予約や処方変更が発生し、患者さんの信頼低下にもつながりかねません。手動管理では在庫数の把握にタイムラグが生じやすく、入荷予定や使用頻度を考慮した発注が難しい点が課題です。

過剰在庫・期限切れによるコストロス

在庫切れを防ぐために多めに発注してしまうと、今度は過剰在庫が発生し、保管スペースの圧迫や期限切れによる廃棄ロスが生じます。特に医薬品は有効期限が短く、期限切れによる廃棄はそのまま経営上の損失となります。また、在庫が多いと棚卸や管理作業に余計な時間がかかり、業務効率の低下を招きます。適正在庫を維持するためには、リアルタイムで在庫状況を把握し、使用量や入出庫データをもとに分析、発注する仕組みが欠かせません。

手作業によるミスやスタッフ負担

紙やエクセルシートによる手入力管理では、数量の記載ミスや更新漏れなどのヒューマンエラーが発生しやすく、実際の在庫数とデータの乖離が生じることがあります。さらに、棚卸や発注作業に多くの時間を要するため、医療スタッフの業務負担も増大します。本来の診療業務に集中できない状況が続けば、生産性やモチベーションの低下にもつながるでしょう。こうした課題を解消するために、在庫管理システムの導入が有効です。

在庫管理システムとは?導入の基本

在庫管理システムとは?導入の基本

在庫管理システムとは、医薬品や衛生用品などの在庫状況をリアルタイムで把握し、入出庫や発注、棚卸などの業務を効率化するツールです。これまで手作業で行っていた在庫確認や記録作業を自動化し、ミスの防止やスタッフの負担軽減に貢献します。システムの導入により、在庫数や使用履歴を一元管理できるだけでなく、必要なときに必要な量を確保できる運用体制を構築できます。本章では、導入前に知っておきたい基本的なポイントを解説します。

医療機関専用と汎用システムの違い

在庫管理システムには、医療機関専用タイプと一般業種向けの汎用タイプがあります。医療機関専用のシステムは、医薬品コードやロット番号、使用期限などを管理しやすい設計で、薬剤や医療材料の特性に即した運用が可能です。一方、汎用システムは幅広い業種で使える柔軟性があるものの、医療特有の項目や帳票に対応していない場合もあります。導入にあたっては、自院の管理対象や業務フローに合ったシステムを選ぶことが重要です。


在庫の「見える化」で得られる効果

在庫管理システムの大きな特長の一つが、見える化です。各部署や拠点の在庫数、使用履歴、入出庫の動きがリアルタイムで確認できるため、担当者間での情報共有がスムーズになります。これにより、重複発注や在庫切れを防ぎ、倉庫や保管棚の在庫を適切な状態に保つことが可能です。さらに、消費傾向のデータの分析により、発注サイクルの適正化やコスト削減にもつながります。

自動発注やアラート機能の活用

在庫管理システムには、設定した下限数を下回ると自動で発注を行ったり、アラートを出したりする機能が搭載されています。この自動化により、在庫切れリスクを最小限に抑えつつ、無駄な在庫の抱え込みを防止できます。また、期限切れが近い製品や使用頻度の低い備品を自動でリストアップできる機能を備えたシステムもあり、効率的な棚卸や入れ替えを実現します。手間を減らし、経営面でも安定した在庫運用を支援するのが在庫管理システムの大きな強みです。

在庫管理システム導入の注意点

在庫管理システム導入の注意点

在庫管理システムは、業務効率化やコスト削減に大きく貢献しますが、導入時に慎重な検討が必要です。システムの機能や料金プランだけでなく、既存システムとの連携性、運用体制、スタッフの習熟度など、複数の要素が成果を左右します。本章では、導入を検討する際に押さえておくべき3つの重要なポイントを解説します。

導入コストとランニングコストのバランス

在庫管理システムは、初期費用と月額利用料が発生します。導入規模や機能によって費用は異なり、クラウド型であれば初期投資を抑えつつ導入できるケースが多い一方、オンプレミス型はセキュリティ面で信頼感があるものの、サーバー保守やアップデート費用がかかる場合があります。重要なのは、機能とコストのバランスを見極めることです。必要以上に高機能なプランを選ぶと、費用対効果が低下する恐れがあるため、自院の規模や運用目的に合ったプランの選定がポイントです。

既存の会計システム・電子カルテとの連携可否

医療機関では、電子カルテや会計システムなど複数の業務システムを併用しているケースがあります。新たに導入する在庫管理システムがこれらと連携できない場合、データの二重入力や情報の不整合が発生し、かえって業務効率を下げてしまうこともあります。導入前には、使用中のシステムとのデータ連携が可能かを必ず確認しましょう。スムーズな連携が実現すれば、会計、発注、在庫の情報を一元管理でき、経営判断の精度向上にもつながります。

スタッフ教育と使いやすさのチェック

システムを導入しても、現場のスタッフが使いこなせなければ効果は半減します。導入前にデモ画面を確認し、操作のわかりやすさや画面の見やすさをチェックしましょう。また、ベンダーによっては導入時の研修やサポート体制が充実している場合もあるため、運用開始後のフォローアップ体制も確認しておきましょう。現場の業務フローに無理なくなじむシステムの選定により、導入後の定着率が高まり、長期的な業務効率化につながります。

在庫管理システム

本章では、医療機関での導入実績があるおすすめの在庫管理システムを10社紹介します。各システムの特徴や機能、対応規模を比較しながら、自院の運用に適したツールを検討しましょう。電子カルテや会計システムとの連携、クラウド対応、自動発注機能の有無など、導入後の使いやすさを左右するポイントもチェックしてみてください。

用度版|鴻池メディカル株式会社

用度版は、鴻池メディカル株式会社が提供する、病院やクリニック向けの診療材料管理システムです。同社のSPDサービスとの連携により、院内物流の効率化をサポートします。大きな特徴は、メディエ株式会社が保有する約120万件の医療材料データベース、メディエを活用できる点で、マスタ作成や年度更新にかかる手間を大幅に削減可能です。機能面では、バーコードを用いた入出庫管理や発注業務の自動化、さらにGS1-128対応による高精度なトレーサビリティを実現します。また、医事請求ラベル印刷機能により請求漏れを防止します。導入によって、在庫管理の負担軽減と安定した収益確保が期待できます。

スマートマットクラウド|株式会社エスマット

スマートマットクラウドは、株式会社エスマット提供のIoTを活用したクラウド型在庫管理システムです。このシステムは、在庫を載せた専用マットの重量変化を自動検知し、残量をリアルタイムでクラウドに記録します。設定した発注点に達すると、あらかじめ登録した卸業者へ自動で発注を行う機能も備えています。導入実績は1,200社以上あり、冷蔵庫内の試薬や消耗品、高額医療資材など幅広い物品の管理に対応します。手作業による在庫確認や棚卸しの工数を削減し、欠品や過剰在庫のリスクを防ぐことが可能です。在庫管理業務を徹底して自動化、省力化したい小規模から大規模な医療機関に適しています。

ENIFwin Nex-Sus|東邦薬品株式会社

ENIFwin Nex-Susは、東邦薬品株式会社が自社開発した統合型在庫管理システムです。医薬品、医療材料、検査薬など院内の物流一元化を実現し、病院経営をサポートします。納品時に有効期限付きバーコードを読み取ることで、出庫時に期限付きデータを自動で先出し、期限切れ廃棄を防止します。各種資料は印刷イメージでデータ化され、エクセル形式での出力やデータ分析が可能です。また、中小病院向けのスタンドアローンタイプと、複数部署運用向けのネットワークタイプを選択できます。期限切れロスの削減と、データの柔軟な加工、分析による経営資料作成の効率化が可能になります。

ODSS|鍋林株式会社

ODSSは、鍋林株式会社が提供するクラウド型医薬品在庫管理システムです。インターネットとPCがあればすぐに利用でき、専用サーバーが不要なため、低コストでの導入、運用が可能です。クラウドサービスのため薬価や新薬情報が自動で更新され、手動更新の手間がかかりません。機能面では、オンライン部署請求による薬剤部と各部署双方の業務効率化、有効期限管理による廃棄コスト削減、およびハンディターミナルを使ったスピーディーな棚卸しが可能です。導入メリットは、初期費用や更新費用を抑えた運用と、正確な期限管理による収益性の確保です。低コストで、かつ薬価の自動更新と部門間の請求業務効率化を重視する幅広い規模の医療機関に適しています。

Medyus2|株式会社メディアス

Medyus2は、株式会社メディアスが提供する、病院物流管理システムの医薬品版です。薬剤部門の業務効率化を通じて、医療の質向上と経営改善に貢献します。特徴として、医薬品データベースとの連携により、煩雑な医薬品マスターの登録や薬価更新を自動化します。機能面では、定数による自動発注やオンラインでの納品データ取込みに対応し、発注業務の負担を軽減します。また、ロット別在庫や使用期限の管理によってトレーサビリティを確保し、期限切迫品の把握で在庫ロスを低減します。さらに、調剤システムとの連携により、調剤単位での効率的な在庫管理を実現します。

Icquickstock|ICソリューションズ株式会社

Icquickstockは、ICソリューションズ株式会社が提供する、医薬品を中心とした在庫管理システムです。特徴として、一つの薬品に複数のGTINコード(JANコード)を登録できるため、コード変更後も実績を一貫して集計、管理できます。機能面では、有効期限やロット記号番号の管理によるトレーサビリティの確保や、インターネットを利用した取引業者へのオンライン発注に対応しています。会計管理では、在庫金額を完全先入先出方式で計算し、正確な会計・経理資料として使用できます。サポート体制として、薬価改定情報がオンラインで随時配信されます。

HOPE LifeMark-Indii|富士通株式会社

HOPE LifeMark-Indiiは、富士通株式会社が提供する、院内物流管理と医療材料費削減を支援する病院物流管理システムです。医療材料や医薬品の発注から納品、院内での物流業務をリアルタイムで一元管理し、物の動きと在庫状況を可視化します。特徴として、オプション機能で電子カルテ(オーダリングシステム)と連携して、診療実績に基づく医療材料、医薬品の自動払い出しや患者さんへの使用情報追跡を可能にします。請求部門の入力、チェック工数の削減と、データ分析に基づく医療材料コストの適正化を実現します。富士通製の他システムとの連携や、データ分析による経営改善を追求する医療機関に適しています。

Medicine Supervision|株式会社電算

Medicine Supervisionは、株式会社電算が提供する医薬品在庫管理システムです。医薬品の発注から入庫、出庫に至る在庫管理事務手続きを総合的に支援し、安定した在庫管理を実現します。特徴として、バーコードやハンディターミナルを使った入出庫処理と、発注点数方式、発注定数方式による発注データの自動生成機能があります。これにより、在庫切れや過剰発注を防ぎます。導入メリットは、発注、出庫作業の効率化と、正確な価格情報管理によるコスト適正化です。大規模病院で、業務に合わせた柔軟なカスタマイズと価格情報管理を重視する医療機関に適しています。

Medi-Vit|株式会社プロゼ

Medi-Vitは、株式会社プロゼが開発した医薬品、医療材料の物流管理を目的とした院内SPDシステムです。2025年1月のリニューアルにより、システム利用形態をブラウザ経由とオンプレミス版から選択可能になりました。特徴として、一錠単位からのコスト把握とコスト管理が可能で、先入先出を徹底します。機能面では、入荷、払出、返品のすべてがバーコード入力に対応し、ハンディターミナルによるモバイル処理も可能です。導入メリットは、仕入コストの削減、在庫圧縮、商品ロス防止などの経営改善効果です。モバイル対応による現場の利便性と、詳細なコスト管理・実績分析を重視する医療機関に適しています。

Windy|株式会社Windy

Windyは、株式会社Windyが提供する病院、クリニック向けのシステムです。製品ラインナップの一つに在庫管理システムがあり、無駄な在庫を抱えないことを目指し、在庫管理事務の効率化を支援します。また、同社は電子薬歴らく歴や調剤監査システムらくRECなど、薬剤部門の業務を支援する多様なアプリケーションを提供しています。導入メリットは、医療現場出身者が開発した使いやすいシステムによる業務効率化と、関連システム(電子薬歴など)との連携による相乗効果です。薬剤師、医療事務の視点を活かした効率的な現場づくりを重視する医療機関に適しています。

在庫管理システム導入で得られるメリット

在庫管理システム導入で得られるメリット

在庫管理システムを導入すると、医療機関は在庫の適正化だけでなく、業務効率や経営の安定性を大きく推進できます。特に、リアルタイムでの在庫把握や自動発注機能により、ヒューマンエラーの防止やスタッフの作業負担軽減が実現します。本章では、システム導入によって得られる主な3つのメリットを紹介します。

在庫切れ・ムダ在庫の防止

在庫管理システムの一番目の利点は、在庫切れと過剰在庫の両方を防げる点です。リアルタイムで在庫状況を把握できるため、残量が少なくなったタイミングで自動的にアラートが表示され、適切なタイミングで発注が可能になります。また、過去の使用履歴をもとに消費傾向を分析できるため、季節や診療内容に応じた在庫計画を立てやすくなります。期限切れによる廃棄や保管コストの削減にもつながり、無駄のない在庫運用が実現します。

スタッフ業務負担の軽減と効率化

従来の手作業による在庫確認や棚卸作業は、時間と労力を要する業務でした。在庫管理システムを導入すれば、入出庫データの登録や在庫表の更新を自動化でき、人的ミスを大幅に減らせます。また、複数拠点の在庫を一元管理できるため、必要な物品をすぐに把握でき、院内の連携もスムーズになります。スタッフは本来の診療業務に集中できるようになり、業務全体の効率化と生産性向上が期待できます。

経営データとしての活用(コスト適正化)

在庫管理システムの活用により、在庫データを経営判断に活かすことができます。どの品目がどの時期にどれだけ使用されているかを分析すれば、不要な仕入れや無駄なコストを抑えられます。また、医薬品や備品の使用傾向を可視化して、コストの適正化や経営改善のためのデータ活用が可能です。システム導入は単なる在庫管理の効率化にとどまらず、医療機関の経営基盤を強化する戦略的な投資です。

まとめ

在庫管理システムは、在庫切れや過剰在庫を防ぎ、業務効率と経営安定性を向上させます。紹介した10社を比較し、連携性や自動発注機能、コストを確認しましょう。リアルタイムでの在庫把握により、ミスやロスを削減できます。医療機関の規模に合ったシステムを選び、効率的な診療環境を実現してください。