クリニック問診票テンプレートの作り方|必須項目や注意点、診療科別の考え方を解説
クリニックを運営する際には、問診票をどのように設計するかが診療の効率や患者さんへの対応に影響します。問診票は患者さんの情報を整理し、診療の質と安全性を保つための重要なツールです。そのため、開業準備の段階で、診療内容や運用体制に合わせて問診票を作成することが大切です。今回の記事では、問診票のテンプレートを作成するときの考え方や基本項目、診療科別の設計ポイントを解説します。
目次
問診票テンプレートの使用前に押さえておきたい前提

問診票は、単なる患者さんの情報を収集するためのツールではありません。診療の質を保ちながら業務効率も高めるものとして機能します。ここでは、問診票のテンプレートを使用する前に押さえておきたい前提事項を解説します。
問診票が担う役割と重要性
患者さんの病状や既往歴、家族歴などを聞くことを問診といいます。
問診票は、患者さん自身がこれらの情報を伝えるために記入する書類を指します。
問診票を患者さんに書いてもらうことで、医師や医療専門職のスタッフが、患者さんの置かれている状況を正確に把握できます。
問診票の主な役割は次のとおりです。
- 主訴や症状経過の把握
- 既往歴や服薬情報の確認
- アレルギー情報の収集
- 女性の場合には妊娠の有無や授乳中かの確認
問診票の内容は、カルテ作成時の基礎情報にもなります。
きちんと問診票の内容が整理されていると、診療時間の短縮につながります。さらに、スタッフと医師の情報共有も円滑になります。
テンプレートをそのまま使用すると生じやすいリスク
開業準備の一環として問診票を作成するにあたって、テンプレートを利用することは効率的な側面もあります。汎用テンプレートは多くの診療科に対応するように設計されているからです。しかし、テンプレートをそのまま使ってしまうと、以下のようなリスクが生じることが想定されます。
- 診療内容に合わない項目が含まれる
- 必要情報が不足する
- 患者さんの記入負担が増える
- スタッフ確認作業が増加する
問診票は診療方針と動線設計に合わせた調整が必要です。開業準備段階で運用を想定した設計が求められます。
問診票に含めるべき基本項目

問診票には診療科を問わず必要となる基本情報があります。これらは診療安全や医療事故防止の観点でも重要です。
患者さんの基本情報
基本情報は患者さんを識別するうえでの基礎的な情報です。また、保険確認や連絡体制にも関係します。
含める項目は、次のとおりです。
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 住所
- 電話番号
- 問診票を書いたのが本人かそれ以外か、本人以外なら続柄
連絡先情報は、治療説明や検査結果の連絡などに使用することがあります。また、緊急時の対応のためにも、緊急連絡先も含めておきましょう。
主訴や来院目的
主訴は診療方針を決定する基礎情報です。症状の経過を記載する項目も欠かせません。
以下のような項目を含めましょう。
- 現在の症状
- 症状の発症時期
- 症状の変化
- 受診理由
- 過去の受診歴
症状の経過を時系列で記載できる形式にすると診察効率が向上します。自由記述欄と選択式の併用が有効です。また、診療所を受診する目的として、何らかの症状がある方もいれば、健康診断や人間ドックなどで異常を指摘された方もいます。そのため、受診理由を記載できる項目を設けるようにしましょう。
既往歴と服薬歴、アレルギーの有無
既往歴や服薬歴は治療選択に影響します。また、アレルギー情報は医療安全の観点でも欠かせない項目です。
次のような項目を含めましょう。
- 過去の病気や手術歴
- 現在治療中の疾患
- 服用中の薬剤
- 薬剤アレルギー
- 食物アレルギー
服薬情報は薬剤名の記載欄を設けると確認しやすいです。お薬手帳の持参確認を併記する方法もあります。
【診療科目別】問診票テンプレートの設計ポイント

問診票のテンプレートを作成するときには、診療科の特性に合わせた設計が必要です。それぞれの診療内容に合った項目を追加すると診察効率が向上します。
内科や総合診療科
内科や総合診療科では、症状が多岐にわたることが想定されます。そのため、患者さんがチェックしやすいような設計が適しています。
例えば、発熱や咳、鼻水、痰など、頻度が高いと思われる風邪症状からチェック項目を挙げます。その後に、そのほかに想定される病気の症状を提示するという構成にします。
息苦しい、動悸がする、身体がだるい、疲れやすいなどの循環器内科的な疾患を疑わせる項目をまとめる、食欲がない、嘔吐、血便が出るなどの消化器内科的な項目をまとめると、診断の際にも役立ちます。
症状が現れている部分を記載できるような図を添付し、症状がどのようなときに現れるかなど、具体的な項目も設定するようにしましょう。
そのほか、以下のような項目を追加することもすすめられます。
- 生活習慣
- 喫煙歴
- 飲酒習慣
- 家族歴
- 健康診断でいままで指摘されたことがある病気など
生活習慣情報は慢性疾患管理に影響します。健康診断結果の記載欄があると診療計画を立てやすくなります。
小児科
小児科では、患者さんの年齢にもよりますが、特に乳児など未就学の場合には保護者からの情報収集が中心です。そのため、機嫌が悪い、ミルクを飲まないなどの他覚症状も含めるようにします。また、飲める薬の種類を記載する項目を設けることで、処方する際に本人や保護者とのやりとりがスムーズに進みます。
小児科の問診票で含める項目の例は以下のとおりです。
- 出生歴(出生児の体重や身長、分娩時の異常など)
- 現在の食事形態
- 予防接種歴
- 発達状況
- 保育園や学校情報
- 家族構成
成長発達に関する情報は診療判断に影響します。母子手帳の確認欄を設けると情報収集が効率化します。また、保育園や幼稚園、小学校などで現在流行している病気などの情報も、診断の一助となります。
皮膚科
皮膚科では、特に症状とその部位を確認し把握することが大切です。そのため、人体のシェーマが有用です。全身のみならず、顔や手足のパーツなど、詳しく症状の記載ができるようなものを掲載し、視覚的な情報を整理します。
皮膚科の問診票に含めたい内容は以下のような項目です。
- 症状の部位
- 発症時期
- 使用中の外用薬
- 生活環境
- 化粧品使用歴
- 現在治療中の病気
皮膚科の場合には、症状がどのように変化しているのかを具体的に選択できるよう、大きくなった、増えた、広がった、などの項目を作るのもよいでしょう。
また、皮膚の病気は、全身の病気の一つとして現れることもあります。そのため、内科的な病気の確認ができるような項目を作っておくと診断の際の参考になる可能性があります。
整形外科
整形外科でも、腫れや痛み、しびれ、けがを確認するために、人体のシェーマの記載が有効です。また、特に打撲や骨折など外傷があり受診する患者さんも少なくないため、受傷機転や痛みの程度を把握することが大切です。また、日常生活動作の確認も必要です。
以下のような項目を含めるようにしましょう。
- 受傷状況
- 痛みの部位
- 痛みの程度
- 可動域制限
- スポーツ歴
疼痛評価を数値で記入できる形式にすると経過観察に活用できます。
眼科
眼科では、左右のどちらの眼に症状があるのかが重要です。そのため、部位の確認として左・右・両、のいずれかを選択できるようにします。また、症状の発症状況や視機能の情報を把握するため、詳細かつ患者さんにわかりやすいように、症状を選択し、記載できるような項目を設定しましょう。
症状のほか、眼科の問診票で記載しておきたい項目は以下のとおりです。
- 視力低下の時期
- コンタクトレンズ使用状況
- 眼の手術歴
- 職業や作業環境
コンタクトレンズ情報は診療判断に影響します。レンズの種類や、使用頻度、装用時間の確認欄を作るようにしましょう。
耳鼻咽喉科
耳鼻科の場合、問診票の主訴の欄で、耳や鼻、のど、そのほかのように、部位ごとに症状を分けて記載します。例えば、耳の症状であれば耳鳴り、耳の痛み、聞こえづらさ、耳だれ、めまいなどがあります。鼻の症状としては鼻血や鼻水、においのわかりづらさ、鼻詰まりなどがあります。また、耳鼻咽喉科には、のどの痛みなどに加えて発熱を主訴に受診する方もいらっしゃると思われます。そのため、感染症歴の確認も必要です。
大まかに耳や鼻、のどに症状を分けておくことで、医師や医療スタッフにとって主訴を把握しやすくなります。
耳鼻咽喉科で含める項目は次のとおりです。
- 症状がある部位
- 症状の持続期間
- 発熱の有無
- アレルギー歴
- 嗅覚や味覚の変化
特に、発熱などの感染症関連情報はクリニックでの診療動線の判断に影響します。
精神科や心療内科
精神科や心療内科を受診する患者さんの症状はさまざまです。症状を詳細に把握するため、自由形式で症状を書くことができる欄を作成しましょう。そのうえで、当てはまる症状をチェックする欄を設けましょう。また、生活リズムは心の変化と密接に関係しています。そのため、食事や睡眠、便通などの生活習慣についての項目も大切です。
これらを踏まえ、精神科や心療内科の問診票は以下のような項目を記載するようにしましょう。
- 現在の生活状況
- 睡眠状況
- ストレス要因
- 過去の精神疾患歴
- 服薬状況
加えて、精神科や心療内科クリニックの場合には、各種公的支援制度や医療費助成制度の利用状況、現在福祉支援サービスを受けているかを確認する項目を設ける方法もあります。
医師やスタッフが活用しやすい問診票とは

問診票は患者さんが記入するだけの書類ではありません。医療スタッフが活用しやすいような構成にすることが大切です。
診察前に要点を把握しやすい構成
診察前に、重要な情報を確認できるような配置にすると、医師が短時間で要点を把握しやすいです。
具体的には、名前や年齢、性別などの個人の基本情報を最初に、次に受診の理由となった症状を記載する欄を設けるようにします。
続いて、既往歴や生活習慣の記載欄を設定し、最後に希望事項があれば記載できるようにすようにします。
そのほか、設計のポイントを以下にまとめます。
- 主訴を上部に配置
- 重要既往歴を強調表示
- チェック式項目を活用
- 時系列記載欄を設ける
このように、重要情報を視認しやすい配置にすると診察効率が向上します。
スタッフの説明や入力の負担を増やさない工夫
問診票の使いやすさは受付業務にも影響します。患者さんにとってわかりやすい書き方にすると、スタッフに対する質問なども減り、スタッフの負担軽減につながります。
工夫の例は次のとおりです。
- 記入例の提示
- 専門用語の使用を減らす
- 選択式項目の活用
- 記入スペースの確保
また、次項で述べるように、Web問診を活用するなど、電子化を進めることで問診票を電子カルテに入力する業務が軽減されます。
Web問診システム導入によって得られるメリット

近年はWeb問診を導入するクリニックが増えています。紙問診と比較すると、診療前後の業務負担軽減につながります。
転記作業の手間を減らし入力ミスを防げる
Web問診システムを導入すると、受付や診察時の作業効率が向上します。
Web問診票を患者さん自身が入力することで、カルテを記入する際の作業量を減らせます。受付や診察時の転記作業が減るため、入力ミスの発生を抑えられます。その結果、診療前後の業務負担の軽減につながります。
患者さんが自宅などで落ち着いて記入できる
Web問診システムを導入すると、来院前に、患者さんがスマートフォンなどで情報を入力できます。結果として患者さんが落ち着いて症状を整理したうえで記入できるため、診察時の情報確認がスムーズになります。また、来院時の受付時間短縮にもつながります。
各システムとの連携で業務効率化を図れる
Web問診票はオンライン予約システムや電子カルテシステムなどと連携することができます。問診情報を一元管理できるため、診療準備やスタッフ間の情報共有がしやすくなり、業務効率化につながります。
まとめ

問診票は診療の質と業務効率を支える重要なツールです。テンプレートを使用する場合も診療内容に合わせた調整が必要です。診療科の特性を反映した設計を行うと診察効率が向上します。また、Web問診の活用は業務効率化に寄与します。開業準備では、それぞれのクリニックでの運用を想定した問診票を設計するようにしましょう。




