クリニックにキャッシュレス決済は必要?導入のメリットや選び方を解説
近年、日常生活においてはキャッシュレス決済が急速に普及しています。一方、クリニックを含む医療機関では、ほかの業種と比べるとキャッシュレス決済の広がりは十分とはいえません。しかし、患者さんの利便性向上や会計業務の効率化、医療DXの推進などの観点から、キャッシュレス決済の導入を検討する医療機関も増えています。本記事では、医療機関でのキャッシュレス決済の現状や導入のメリット、開業時に導入する理由、クリニックに適した決済方法の選び方を解説します。
目次
医療機関におけるキャッシュレス決済の考え方

新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響で、日本でもオンラインショッピングやフードデリバリーなどを中心にキャッシュレス決済が広がりました。また、政府は医療分野でもキャッシュレス決済の普及を促進しています。
ここでは、キャッシュレス決済の基本的な仕組みを確認し、日本の医療機関での導入状況に関するデータを示します。
キャッシュレス決済とは
キャッシュレス決済は、キャッシュ、つまりお札や小銭などの現金を使わずにお金を払うことを指します。キャッシュレス決済手段は電子マネー、プリペイドカード、デビットカード、クレジットカード、そしてスマートフォン決済と多岐にわたります。
医療機関におけるキャッシュレス決済の普及率
令和6年の厚生労働省による調査によると、デビットカードを含むクレジットカードを利用している医療機関は、全医療機関の62.6%に達しています。一方、QRコード決済を導入している機関は5.7%、電子マネー決済は7.8%という結果でした。
なお、医療機関と全業種でのキャッシュレス決済の状況を比較した研究では、医療機関での導入率は7.3%だったと報告されています。
医療機関におけるキャッシュレス決済は普及しつつあるものの、全体の比率と比較しても低値にとどまっているといえるでしょう。
参照:『令和5年度「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果』(厚生労働省)
『令和2年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(キャッシュレス決済の利用シーン拡大に向けた調査事業)報告書-医療分野におけるキャッシュレス決済の普及促進パート-』(Government Report Hub-経済産業省)
『令和2年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(キャッシュレス決済の利用シーン拡大に向けた調査事業)報告書-医療分野におけるキャッシュレス決済の普及促進パート-』(Government Report Hub-経済産業省)
医療DXにおけるキャッシュレス決済の方針
現在、厚生労働省は医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進を掲げています。それを受けて、医療機関ではオンライン資格確認や電子カルテの普及などのデジタル化が進められています。
キャッシュレス決済は医療分野での医療DXにとっても重要な要素の一つです。会計業務の効率化やデータ管理の高度化につながるためです。
今後は電子処方箋やオンライン診療などと連携し、医療機関の業務全体がデジタル化していく可能性もあります。そのなかで、キャッシュレス決済は患者サービス向上と業務効率化の両面で重要な役割を担うと考えられます。
クリニックでキャッシュレス決済を導入するメリット

クリニックで実際にキャッシュレス決済を導入すると得られるメリットにはさまざまなものがあります。
待ち時間の短縮と患者満足度の向上
キャッシュレス決済を導入することで会計にかかる時間が減るため、待ち時間の短縮が期待できます。また、キャッシュレス決済を可能にすることによって非接触方式による感染症対策にもつながります。
このように、待ち時間を減らし、感染症対策を実施することで、患者さんの満足度の向上が見込めます。
事務負担の軽減
キャッシュレス決済の場合、会計時に現金を数え、お釣りを受け取るというプロセスが不要になります。また、売上金の集計や金庫管理、銀行への入金作業などの現金管理業務も減るため、受付スタッフの業務負担軽減にもつながります。
人手不足が課題となる医療機関にとって、事務業務の効率化は大きなメリットといえるでしょう。
支払いトラブルの防止
医療費の支払いに関して起こりうるトラブルの一つに、実際にかかった医療費などと支払うように指示された金額が一致しないことがあります。
キャッシュレス決済の端末を電子カルテやレセプトコンピューター(レセコン)と連携させることにより、会計システム上の金額と決済金額の不一致を自動的に防ぐことが可能です。
未払リスクの低減
キャッシュレス決済は、未払いリスクの低減にもつながります。
持ち合わせの現金がないという理由でその後も未回収になるというケースが少なくないなか、キャッシュレス決済を費用の未収防止目的で導入している病院も少なくありません。クレジットカード決済のように、手元に現金がない場合でも決済が可能な仕組みを備えておくことで、未払リスクを低減できる可能性があります。
経営データの可視化
電子カルテやレセコンと連携可能なキャッシュレス端末を導入することで、会計情報を管理しやすくなり、経営データの可視化にもつながります。未払金額や売上などをリアルタイムで確認可能です。会計情報を管理しやすい端末や、ほかのシステムと連携しやすい端末を選ぶことが大切です。
開業時にキャッシュレス決済を導入すべき3つの理由

キャッシュレス決済は開業後に導入することも可能ですが、受付動線や業務フローを考えると、開業時から導入しておく方が運用しやすい場合も少なくありません。あらかじめキャッシュレス決済を前提に設計しておくことで、会計業務の効率化や患者さんの利便性向上にもつながります。
ここでは、開業時にキャッシュレス決済を導入するメリットについて解説します。
内装設計と受付の動線を最適化できる
キャッシュレス決済を前提にすることで、物理的な現金管理は原則不要になります。そのため、受付や会計スペースのレイアウトを設計しやすくなります。
例えば、現金での運用の場合、会計場所には患者さんとスタッフが対面するスペースが必要です。一方、キャッシュレス決済を前提とする場合、受付窓口は来院手続きや診察券の受け渡し専用などにし、会計エリアは別にすることができます。
業務フローを変更する必要がない
開業してからキャッシュレス決済を導入することになると、受付事務職員などの業務手順を変更したり、研修をあらためて行ったりする必要があります。新しい決済端末の操作方法を覚えるだけでなく、会計手順やトラブル対応の方法なども見直さなければならないため、現場の負担が一時的に増えることもあります。また、すでに運用している会計フローに新しい決済方法を追加すると、受付や会計の動線が複雑になり、かえって業務効率が低下する可能性もあります。
初めからキャッシュレス決済を導入しておくことで、受付から会計までの業務フロー変更、ならびに新たなスタッフ教育や業務手順研修は不要になります。
ほかのDXツールとの連携が可能
キャッシュレス決済の端末をほかのDXツールと連携することで、受付から会計までの業務を効率化することができます。
例えば、電子カルテを中心にし、キャッシュレス対応自動精算機をはじめ、診察券発行機・再来受付機、診察案内板、会計表示板などを一括導入する方法などが考えられます。
受付終了から会計までの待ち時間の短縮や、患者さんの満足度向上も期待できます。
クリニックに適したキャッシュレス決済の選び方

キャッシュレス決済サービスは多数存在するため、クリニックの診療内容や患者層、立地に合わせて選ぶことが重要です。また、決済手数料や端末の運用方法はクリニックの収益や受付業務にも影響するため、自院の診療スタイルに合ったサービスを選択しましょう。
キャッシュレス端末の選び方
クリニックのキャッシュレス端末を選ぶときには、まずは導入する目的を明確にします。キャッシュレス決済を導入することで会計の効率化や患者さんの利便性の向上などのメリットがあります。次に、導入・運用コストを把握し、クリニックの収益見込みとマッチするようにします。また、クリニックの敷地やレイアウトに見合うようなサイズの端末かどうかも重要です。
決済手段を選ぶポイント
医療機関でのキャッシュレス決済の方法としては、クレジットカード決済やQRコード決済などがあります。
キャッシュレス端末を選ぶ際には、以下のような点に着目しましょう。
| キャッシュレスの手段 | 特徴 | 患者さんの層 |
|---|---|---|
| クレジットカード |
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| 電子マネー ・プリペイドカード |
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| スマートフォン決済 |
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| 医療・診察券アプリ決済 |
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キャッシュレス決済の特徴と患者さんの層が見合うようなものを選ぶことで、患者さんとクリニック側の双方にとってスムーズな運用が見込めます。
キャッシュレス決済導入を成功させる運用のポイント

キャッシュレス決済導入を成功させるために、以下のようなポイントをおさえるようにしましょう。
患者さんへの周知を徹底する
キャッシュレス決済を導入しても、患者さんにそのことが十分に伝わっていなければ利用は広がりません。まずは院内ポスターや受付掲示などを活用し、対応している決済方法をわかりやすく案内します。
例えば受付や会計窓口に、クレジットカード対応、QRコード決済対応などの表示を掲示することで、患者さんは会計時にスムーズに支払い方法を選択できるようになります。また、ホームページや予約サイトなどにもキャッシュレス決済対応であることを記載しておくと、来院前から安心感を与えることができます。
特に高齢の患者さんが多い医療機関では、初めてキャッシュレス決済を利用する方もいるため、必要に応じてスタッフが操作をサポートできる体制を整えておくことも重要です。
スタッフ教育を実施しオペレーションを確立させる
キャッシュレス決済を導入することで、現金の受け渡しは原則不要になります。一方で、決済端末の操作方法やトラブル対応など、現金支払いのみの場合とは異なる業務が発生します。
キャッシュレス決済の端末を受付と離れた場所に設置する場合などは、患者さんが端末操作に迷った際の対応方法を、あらかじめスタッフ間で共有しておくとよいでしょう。また、通信エラーや決済エラーが発生した際の対応手順もシミュレーションしておくことで、現場での混乱を防ぐことができます。
導入前に簡単なマニュアルを作成し、スタッフ全員で操作手順を確認しておくと、スムーズな運用につながります。
各指標の確認と改善のサイクルを回す
キャッシュレス決済導入による業務改善効果をきちんと確認することも欠かせません。例えば、会計待ち時間の変化やキャッシュレス利用率などの指標を定期的に確認することで、導入効果を把握できます。
また、患者満足度の向上を評価するために、定期的に患者さん向けの簡単なアンケートを実施するのも一つの方法です。利用しやすい決済方法が十分に揃っているか、会計の流れに問題がないかなどを確認し、必要に応じて運用方法を見直します。
このように、導入後も継続的に状況を確認しながら改善を重ねていくことで、キャッシュレス決済のメリットをより活かすことができるでしょう。
まとめ

キャッシュレス決済は、患者さんの利便性向上だけでなく、受付業務の効率化や未収防止などクリニック経営にも多くのメリットがあります。特に開業時に導入しておくことで、受付動線や業務フローを円滑なものにしやすくなります。医療DXが進むなか、キャッシュレス決済は今後さらに重要な役割を担う可能性があります。クリニックの患者さんの層や診療内容に合わせて適切な決済手段を選択し、円滑な運営につなげることが大切です。




