なぜ病院の会計は遅いのか?会計の待ち時間を減らす具体的な対策方法について解説!
ネットの記事や口コミなどでよく見かける「病院で会計待ちの時間が長すぎる」という社会問題は、医療機関における大きな課題となっています。
待ち時間短縮のための対策はしているものの、「会計が遅い」というクレームがなくならず、困っているという病院も多いのではないでしょうか。
この記事では、
- 病院の会計が遅い理由
- 病院会計の待ち時間を減らす対策方法
- 会計システムの導入事例
病院の会計がなぜ遅いのか、その理由と具体的な対策方法をわかりやすく解説します。病院での待ち時間対策にお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
病院の会計が遅い理由
下記の理由から、病院の会計は遅くなってしまう傾向にあります。
病院だけではなく、クリニックを含む医療機関すべてに共通するものもあるでしょう。
- 診察が終わってからしか計算ができない
- 緊急の患者さんの対応で作業が止まってしまう
- 手入力の作業が多い
- 医療費の計算方法が複雑
診察が終わってからしか計算ができない
病院の会計が遅くなってしまう理由のひとつに、検査や治療のすべてが終わってからしか計算ができないということが挙げられます。
患者さんが受けた治療や検査の結果を正確に把握し、それに応じた医療費を算出する必要があるため、どうしても時間がかかってしまいます。
また、症状や病態が悪化し、追加の検査や治療が発生すると、さらに時間を要してしまいます。
緊急の患者さんの対応で作業が止まってしまう
緊急の患者さんが搬送されると、多くのスタッフがイレギュラー対応におわれます。そのため、救急患者を受け入れている病院では会計業務にも影響が出てしまうのです。
手入力の作業が多い
患者さん一人ひとりのカルテ情報とレセプトの内容が合っているか確認が必要なことも病院の会計を遅くしている理由の一つです。
電子カルテを導入している病院では、業務効率が改善され、待ち時間の短縮に繋がっています。しかし、いまだに紙カルテで運用している病院は、手入力による書き間違いや読み間違いがないかなどを確認する作業に時間を要してしまうのです。
厚生労働省の報告によると、一般病院の電子カルテ普及率は約6割となります。
いまだ多くの病院で、電子カルテの導入がされていないことが、病院の会計を遅くしてしまっている要因といえるでしょう。
医療費の計算方法が複雑
医療費の計算には、診療科ごとの報酬や保険適用の範囲、自己負担額など、多くの変数を考慮する必要があることも会計を遅くしている理由の一つです。
2年ごとに診療報酬の改定があることも会計を複雑にしている要因でしょう。
また、病院ではクリニックとは異なり、一度の来院で複数の診療科を受診する患者さんも多くいます。複数の診療科で受けた診療行為すべてをまとめて計算する必要があるため、さらに時間を要してしまうのでしょう。
正確かつ迅速な会計処理のためには、この複雑さを管理するシステムの導入が必要になります。
病院会計の待ち時間を減らす対策方法
病院会計の待ち時間に対する課題は、多くの病院の共通認識となっており、さまざまな対策がとられています。
ここでは、病院会計の待ち時間を減らす効果的な対策方法について解説します。
- 医療クラークの採用と配置
- キャッシュレス決済の導入
- 料金後払いシステムの導入
- 電子カルテの導入
医療クラーク(医師事務作業補助者)の採用と配置
医療クラーク(医療事務作業補助者)を診察室に配置することで、診療内容を記録するスピードが上がり、会計までの時間を短縮できます。
医療クラーク(医療事務作業補助者)の役割は、
- カルテの代行入力、診断書など文書作成補助業務
- 診療データの入力と管理
- 病院の状況に合わせたさまざまな業務
医師の事務作業の補助をしてくれるため、診察から会計までの業務が効率化されます。
通常は、医師が診察をした後、医師自身がカルテに診断結果を記録する必要があります。
しかし、医療クラーク(医療事務作業補助者)がいることで、診療中にカルテへの入力を完了できるため、会計担当者への共有も早く行えるようになります。
その結果、患者さんの会計までの待ち時間も短縮できるのです。
キャッシュレス決済の導入
キャッシュレス決済を導入することで、
現金をあつかう手間が省けるので、おつりの受け渡しも発生せず、会計時間が短縮できます。。
クレジットカードやQRコードによるスマホ決済は、患者さんにとっても利便性がよく、満足度の向上に繋がります。
2022年の厚生労働省の報告によると、病院全体のキャッシュレス決済導入率は、下記のようになっています。
- クレジットカード決済の導入率は、57.4%
- QRコードを利用した決済の導入率は、3.7%
- その他の電子マネーを利用した決済の導入率は、4.7%
(参考:医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査結果報告書)
病院におけるキャッシュレス決済の普及率は、まだまだ低いのが現状です。
料金後払いシステムの導入
料金後払いシステムを導入すれば、会計の待ち時間をゼロにできます。
このシステムでは、患者さんはオンラインで決済を行い、会計のために待つ必要はありません。
レセコンと連携させることで、入金消込の作業も自動化されるので、会計スタッフの業務負担も軽減できます。
電子カルテの導入
電子カルテは、診療情報をリアルタイムに共有できるため、会計業務の効率化にも寄与します。
電子カルテの種類によっては、診療報酬の入力内容に間違いがないかのチェック機能を備えたものもあります。これらの機能を活用することで、会計時間の短縮や会計ミスの防止にも繋がります。
会計システムで業務効率化するメリット
会計システムで業務効率化するメリットは、会計の待ち時間短縮だけではなく、ほかにも病院の利益につながるものが多くあります。
以下のようなメリットが挙げられます。
- 患者さんの診察のための待ち時間を短縮
- 非接触で院内感染の不安を軽減
- ほかの病院との差別化ができる
- 外国人の患者さんへの対応もスムーズに行える
患者さんの診察のための待ち時間を短縮
会計システムで業務効率化することで、患者さんが病院内で過ごす時間が大幅に短縮されます。
待ち時間のストレスが患者さんの満足度に影響することを考えると、非常に大きなメリットといえるでしょう。
また、患者さん側のメリットだけでなく、待ち時間に対するクレームがなくなれば、スタッフはクレーム対応に余計な時間を取られることもなくストレスが軽減されるため、スタッフ側のメリットにも繋がります。
さらに、より良いサービスを患者さんに提供しようという気持ちの余裕がスタッフにうまれ、その結果として、病院の満足度向上につながることが期待できます。
非接触で院内感染の不安を軽減
キャッシュレス決済の導入は、物理的な接触機会を減らすことができるので、院内感染のリスク軽減にも繋がります。
特に、インフルエンザ、新型コロナウイルスのような感染症が流行する時期には、患者さんとスタッフの安全を守るために非接触化は不可欠です。
患者さんにとっても、感染リスクへの不安が少ないクリニックは安心して受診できるでしょう。
ほかの病院との差別化ができる
会計システムの導入は、ほかの医療機関との差別化を図る手段にもなります。
患者さんの利便性を高めるために先進的な取り組みをすることは、病院のブランディングにも繋がります。
多くの医療機関が待ち時間への課題を感じていることからも、会計時間の短縮は競合との差別化を図るポイントにもなるでしょう。
口コミやSNSで、ポジティブな評判の獲得も期待できるでしょう。
外国人の患者さんへの対応もスムーズに行える
多言語対応が可能な電子カルテや決済システムを導入することで、外国人の患者さんへのサービス提供がスムーズに行えるというメリットがあります。
日本の政策のひとつに、2030年までに訪日外国人観光客の人数を3,000万人にするという目標があり、安心して訪日してもらうためには、外国人の患者さんにとって利用しやすい医療機関体制を整える必要があるとしています。
今後の国内の状況を踏まえて、外国人の患者さんへの対応体制を整えておくメリットはありそうです。
会計システム導入の注意点
メリットの一方で、導入にあたっての注意点もあります。
- 手数料がかかる
- 入金サイクルが遅い
- 患者さんから要望が少ないことがある
これらについて解説します。
手数料がかかる
多くの会計システム、特にキャッシュレス決済やオンラインでの支払いは手数料が発生します。
一般的に、事業者のクレジットカード払いの利用手数料は約3%となっており、患者さんが窓口で支払う金額から差し引かれます。
例えば、1万円の会計では3割負担の患者さんの支払い金額は3,000円になり、その3%にあたる「90円」が手数料になります。
高額の支払いでは、手数料分をもったいないと考える病院もあるでしょう。
入金サイクルが遅い
キャッシュレス決済やクレジットカード決済での売上入金は、現金決済と違い遅れる可能性もあります。
入金サイクルの遅延は、病院のキャッシュフロー管理に影響を及ぼすため、事前に入金スケジュールを確認しておく必要があります。
患者さんから要望が少ないことがある
病院には高齢の患者さんが多いため、そもそも先進的な会計システムで待ち時間を短くしてほしいという要望自体が少ないこともあります。
定期的に満足度調査を行い、通院する患者さんのニーズを把握することも大切です。
意見箱などの活用も有効かもしれません。
その結果として、会計の待ち時間に対する要望が多く寄せられたら、積極的にコストをかけて会計システムの導入を検討することをお勧めします。
会計システムの導入事例
ここでは、会計システムの導入事例を紹介します。
いずれの病院でも、会計システムを導入することで、待ち時間の短縮につながっています。
順天堂大学医学部附属病院で、料金後払いシステムを導入
順天堂大学医学部付属病院は、大学病院としては国内初の「料金後払いシステム」を導入しました。
患者さんが診察券番号とクレジットカード情報を事前登録しておけば、診療後の病院内での会計が不要となるシステムです。
料金後払いシステムを導入したことで、
- 会計の待ち時間がゼロに
- 登録は簡単で手数料も不要
- 院内感染のリスクが軽減
- 領収書も手軽に発行できる
といった、患者さんのメリットや、
- 待ち時間の短縮と混雑緩和になった
- 手作業だった入金管理業務の自動化
- ピーク時の業務を分散させ人件費を削減
- 外国人の患者さんへの対応がスムーズに
以上のような、病院側のメリットも実感しているようです。
2019年4月に導入以降、年々、利用者数を増やすことで、患者さんにとって待ち時間の少ない快適な受診を目指しています。
(参考:患者さんの待ち時間を短縮する順天堂医院の「料金後払いシステム」)
神戸アイセンター病院で、自動精算機を導入
眼科の基幹病院として、地域の中核を担う神戸アイセンター病院は、「診療費自動精算機」を導入することで、会計の待ち時間を短縮するだけでなく、スタッフと患者さんのコミュニケーションが充実したとの声があります。
現在では、約9割の患者さんが、自動精算機を利用するようになり会計窓口を利用する患者さんは少数派になっているようです。
その結果、会計スタッフは患者さんへ丁寧な案内ができるようになったり、一人ひとりの患者さんの声を聞けるようになったりするなど、コンシェルジュのような対応ができるようになったと、喜びの声が上がっています。
(参考:神戸アイセンター病院様導入事例)
編集部まとめ
この記事では、病院の会計が遅い理由、病院会計の待ち時間を減らす方法、具体的な導入事例を紹介しました。
病院の待ち時間に対するクレームは、患者さんの満足度を下げるだけではなく、スタッフもクレーム対応によって疲弊してしまいます。
会計システム導入のためには、初期費用がかかりますが、長い目でみると病院経営にはメリットになることが多いでしょう。
本記事が、病院会計の待ち時間対策の参考になれば幸いです。