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電子処方箋の導入は義務化される?導入手順やいつまでに対応が必要かを解説

                   
投稿日: 2024.06.26
                   

2023年4月に施行された改正薬機法により、電子処方箋の仕組みが法制化されました。電子処方箋は医療DXを推進し、医療の質と利便性の向上に寄与すると期待されています。本記事では、電子処方箋の概要や目的、義務化の動向、導入手順、メリット・デメリットについて詳しく解説します。電子処方箋の導入を検討する際の参考になれば幸いです。

電子処方箋とは

電子処方箋とは

電子処方箋とは何ですか?

電子処方箋とは、従来の紙の処方箋に代わり、デジタルデータの形で処方情報を作成・管理するシステムのことを指します。医療機関と薬局の間で効率的に処方情報をやり取りすることができ、患者さんの同意のもとでオンライン資格確認システムを通じて薬剤情報の閲覧が可能となります。

これまでの紙の処方箋では、患者さんによる紛失や有効期限切れによる再処方の問題がありましたが、電子処方箋ではこうした課題が解消されます。医療機関と薬局の間で直接処方箋のやり取りが行われるため、より精度の高い処方情報の管理が実現できます。

電子処方箋は、クラウド上に構築された「電子処方箋管理サービス」を介して運用されます。このサービスにより、処方・調剤情報の連携がスムーズになり、医療機関と薬局双方で患者さんの過去の薬剤情報を参照することが可能になります。こうした情報連携により、より適切な処方と服薬指導が行えるようになるでしょう。

電子処方箋の目的について教えてください。

電子処方箋の主な目的は、患者さん自身が自分の薬剤情報を把握し、それを健康管理に活用できるようにすることです。電子化された処方情報は、患者さんも閲覧することができるため、自分がどのような薬を処方されているのか、その目的は何かといったことを理解し、服薬の重要性を認識することにつながります。

また、電子処方箋は、政府が進めるデータヘルス改革の一環としても位置づけられています。データヘルス改革は、オンライン資格確認の導入による医療情報連携の基盤構築、電子処方箋の導入による薬剤データの連携、連携可能な医療情報の拡充、という3つのステップで進められており、電子処方箋はステップ2に該当します。

電子処方箋により薬剤データの連携が進むことで、医療機関と薬局の間の情報共有が促進され、より効果的な薬物療法の実現が期待されています。将来的には、ほかの医療情報との連携も視野に入れ、包括的なデータヘルスの実現を目指しています。

電子処方箋の義務化といつまでに対応が必要か

電子処方箋への対応は義務化されますか?

電子処方箋に欠かせないオンライン資格確認の導入は2023年4月より義務化されましたが、現時点では電子処方箋への対応は義務化されておらず、医療機関での導入は任意となっています。しかしながら、厚生労働省は2025年3月までに、オンライン資格確認を導入した概ねすべての医療機関・薬局において電子処方箋を導入することを目指しています。

ただし、電子処方箋の導入にあたっては、医療現場からはさまざまな課題が指摘されています。例えば、システム導入に伴うさまざまなコストの問題や、対応医療機関・薬局の数がまだ少ないこと、マイナンバーカードを保険証として利用する患者さんも少ないためメリットを感じにくいことなどが挙げられます。こうした課題に対して国による支援の強化を求める声も多く上がっています。また、現状を踏まえれば電子処方箋の義務化は現実的ではなく、むしろ避けるべきだとの意見もあります。

電子処方箋はいつまでに対応する必要がありますか?

電子処方箋への対応について、現時点で明確な期日は設定されていません。そのため、医療機関や薬局は自身の状況に合わせて、任意のタイミングで導入対応を進めることが可能です。

ただし、電子処方箋管理サービスの導入に関する補助金の申請期限には注意が必要です。2025年3月31日までに電子処方箋管理サービスの導入を完了し、2025年9月30日までに申請を行えば、補助金の交付対象となります。したがって、電子処方箋の導入を検討している医療機関や薬局は、この補助金の申請期限を念頭に置きながら、計画的に準備を進めていくことをおすすめします。補助金を活用することで、導入に伴う経済的負担を軽減することができます。なお、電子処方箋管理サービスの新機能(機能拡充)に関する補助金についても、2024年4月より申請の受付が開始されています。

電子処方箋の導入手順とメリット・デメリット

電子処方箋の導入手順とメリット・デメリット

電子処方箋の導入手順はどのようなものですか?

電子処方箋を導入するためには、まずオンライン資格確認システムの導入が前提となります。これには、必要な機器の準備やポータルサイトでのアカウント登録、利用申請などの手続きが含まれます。

電子処方箋の運用には、医師・薬剤師が電子署名を行うためのHPKIカードが必要です。医師の場合は日本医師会電子認証センター、薬剤師の場合は日本薬剤師会、それぞれのホームページから申請を行います。発行までに数カ月を要する場合もあるため、早めの対応が推奨されます。

さらに、現在使用中のレセコンや電子カルテシステムが電子処方箋に対応していない場合、システム事業者に依頼して必要な改修を行います。また、HPKIカードの読み取りに対応したICカードリーダーの準備も必要です。システム改修やICカードリーダーの準備が完了したら、ポータルサイトで電子処方箋の利用申請を行います。申請から約1週間程度で、電子処方箋管理サービスが利用可能になります。

電子処方箋を導入するメリットについて教えてください。

電子処方箋では、医師と薬剤師がリアルタイムで処方情報を共有できるため、疑義照会や患者さんへのヒアリングにかかる業務負担を削減できます。また、患者情報の随時アップデートにより、リスク回避にもつながります。

さらに、より質の高い医療が提供できる可能性が広がることもメリットです。患者さんの処方情報や調剤情報が電子化されることで、ほかの医療機関や薬局でも閲覧が可能になるため、重複投薬や好ましくない薬の相互作用を防ぐことができ、的確な治療につなげられます。また、緊急時や災害時にも正確な情報把握が可能となります。

コスト削減の効果が見込めることもメリットといえるでしょう。調剤済みの処方箋や調剤録の保管スペースが不要になるほか、紙の処方箋の印刷代も削減できます。また、長期保管も容易になるため、患者さんの経過をより正確に把握することができます。紙の処方箋と異なり、電子処方箋では偽造や再利用が困難となるため、不正防止につながる点も注目すべきでしょう。

電子処方箋を導入するデメリットについて教えてください。

電子処方箋の導入には、システム構築に時間とコストがかかってしまいます。電子処方箋のシステムを院内に構築するには、ソフトウェアのインストールやパソコンの設定、定期的なメンテナンスが必要となります。これらに要する時間とコストが負担になる可能性があります。また、電子処方箋の普及には、多くの薬局での対応が必要なため、全体的な導入にも時間がかかることが予想されます。

また、電子処方箋の操作に慣れるまでには、担当スタッフにある程度の時間が必要となるでしょう。操作方法の習得やトラブル対応など、運用面での課題も考えられます。電子化された個人情報を取り扱うため、マイナンバー制度と同様に情報漏えいのリスクが完全には排除できません。徹底したセキュリティ対策の実施が必須になります。

編集部まとめ

電子処方箋は、医療DXの重要な一歩であり、医療の質の向上と業務の効率化、コスト削減など、さまざまなメリットが期待されています。一方で、システム構築や運用面での課題、個人情報漏えいのリスクなども存在します。これらのメリットとデメリットを踏まえつつ、自院の状況に合わせて導入を検討していくことが大切です。国や関連団体による支援策の活用や、ほかの医療機関との情報共有なども有効でしょう。電子処方箋の普及にはまだまだ時間がかかることが予想されますが、課題を1つずつ乗り越え、医療DXを推進していくことが求められています。