クリニックにデジタルサイネージを導入するメリットは?導入や運用のポイント
近年、ディスプレイやタブレットなどの電子機器を活用して、デジタルサイネージを導入するクリニックが増えています。
本記事では、デジタルサイネージとはどのようなものか、クリニックに導入するメリットや効果的な運用方法について解説します。
デジタルサイネージとは
まず、デジタルサイネージとはどのようなものか解説します。
- デジタルサイネージとは何ですか?
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デジタルサイネージとは、電子ディスプレイやプロジェクターを使って情報や広告を表示するシステムのことを指します。紙製のポスターと違って、写真やテキストだけでなく動画も表示できるほか、リアルタイムの更新や時間・場所に応じて柔軟に情報を変更できるのが特徴です。
デジタルサイネージには、以下の4種類があります。
- ネットワークタイプ
Web上で情報を映し出すタイプです。使用するためには、同時に情報を映し出す何らかのディスプレイを導入し、接続する必要があります。
- プロジェクタータイプ
壁などに設置したスクリーンに情報を映し出すタイプです。スクリーンを設置する場所を確保しなければならず、スペースに余裕がない場合は設置に向きません。
- スタンドアロンタイプ
USBやSDカードから外部データを読み込んでディスプレイに映し出すタイプです。ディスプレイに情報を表示する際ににネットワークに接続する必要がなく、情報の記録も簡単で手軽に運用できます。
- インタラクティブタイプ
タッチパネルによる操作やユーザーの動きによって、それぞれに合わせた情報を発信できるタイプです。カメラで年齢や性別を認識したり、AIが人の動きなどを分析したりして、患者さんとコミュニケーションをとりながら一人ひとりに合わせた情報を提供できるのが特徴です。
- クリニックにおいて、デジタルサイネージはどのような役割を果たしますか?
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デジタルサイネージは、クリニックでは主に以下のような役割を期待できます。
- 診療案内や待ち時間の表示
現在の予測待ち時間や診察状況、当日の診察スケジュールなどをリアルタイムで更新できるため、患者さんが知りたい情報を提供できます。
- 時節に合わせた情報提供
インフルエンザなどの予防接種開始や流行している感染症とその予防法、検診のお知らせなど、その時々に合わせた情報を表示します。
- クリニックの雰囲気づくり
院内設備の紹介やクイズや映像、綺麗な風景などを表示すると、患者さんの待ち時間へのストレス対策になるでしょう。
- 集患ツール
「予防接種当日OK」や「検診を受診しましたか?」など、屋外向けのデジタルサイネージを導入する方法もあります。歩行者などクリニックの近くにいる人に向けて情報を表示することで、新規患者の獲得につながる可能性があります。
クリニックにデジタルサイネージを導入するメリット
多種多様の情報を提供できるデジタルサイネージは、クリニック側と患者さん側、双方にメリットがあります。具体的にどのようなものがあるか見ていきましょう。
- デジタルサイネージを導入するクリニック側のメリットを教えてください。
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デジタルサイネージの導入で得られるクリニック側のメリットとして、以下のようなことが考えられます。
- スタッフの手間や人件費の削減になる
- 集患や関連商品の広告効果が得られる
- 患者さんに対する啓発活動が容易になる
- 患者さんの待ち時間へのクレーム対策になる
ポスターのような紙の掲示物は、スタッフが掲示物を作成する時間や印刷するコスト、貼ったり剥がしたりする手間が発生します。デジタルサイネージなら、映し出す情報を更新するだけなので、手間や人件費を削減できます。
クリニックの入口や外で、提供している診療内容・院長の紹介などをデジタルサイネージに流すことで広告効果が得られます。診療に関連する商品を販売している場合は、商品の特徴などを紹介してもよいでしょう。
また、流行している感染症の情報や予防法などを表示することで、患者さんへの感染対策の啓発が可能です。動画を活用することで患者さんの注意を引くことができ、より効果的に情報を伝えることが可能です。
さらに、天気予報やニュースなど患者さんに有益な情報を発信することで、患者さんの待ち時間へのストレスを軽減できるというメリットもあります。最新の診療情報や待ち時間、予約の空き状況をデジタルサイネージでリアルタイムに確認できるようにすることで、クレーム対策にもつながります。
- デジタルサイネージを導入すると患者さんにどのようなメリットがありますか?
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患者さんにとって以下のようなメリットがあると考えられます。
- 待ち時間のストレスが軽減される
- クリニックの情報をリアルタイムで取得できる
- プライバシーへの配慮がなされる
- 個人に合わせた情報を効率的に取得できる
診療状況や会計の進み具合がリアルタイムで表示できるため「あとどれくらい待てばいいんだろう」といった患者さんの精神的なストレスが軽減されます。映像を使ったコンテンツで、待ち時間に気を紛らわす効果も期待できるでしょう。
臨時休診や診察担当医、行っている感染予防対策などの情報を、リアルタイムで取得できるのもメリットのひとつです。
また、順番の呼び出しを名前ではなく受診番号をデジタルサイネージに表示させて行うことで、プライバシーに配慮することができます。さらに、呼び出し中の番号だけではなく、もうすぐ順番がくる番号を表示しておけば、患者さんにとってもクリニックにとっても診療をスムーズに進めることができるでしょう。
従来の紙の掲示物は、多くの情報の中から患者さんが必要とする情報を探し出すのに時間と手間がかかります。タッチパネル式のデジタルサイネージなら、それぞれの患者さんが知りたい情報をタッチ操作で効率的に取得できるようになります。
クリニックでデジタルサイネージを導入、運用するポイント
このように多くのメリットがあるデジタルサイネージですが、ここからは導入するにあたって留意しておきたいポイントを紹介します。
- クリニックのデジタルサイネージの選び方のポイントを教えてください。
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クリニックにおける、デジタルサイネージの選び方のポイントは以下の4点です。
- コストパフォーマンスが十分か
- クリニックに適したサイズか
- コンテンツ数やクオリティは十分か
- アフターフォローの体制は充実しているか
デジタルサイネージの導入には、初期費用と運用費用が発生します。
目安として、屋内用ディスプレイ1台の相場は10~40万円、加えて設置工事費用などが別途かかることがあります。さらに、コンテンツの作成や電気代、保守点検費用などにかかる運用費用の相場は月額5〜10万程度です。
これらのコストを踏まえての費用対効果が得られるかどうか、長期的な視点をもって検討することが重要です。
設置を検討する場合は、患者さんの視認性を重視してディスプレイのサイズを選ぶのがポイントです。一般的なディスプレイのサイズは40〜42インチですが、設置する場所に対しての大きさと、表示したい情報量を考慮してサイズを選ぶ必要があります。
また、表示したいコンテンツ数やコンテンツ内容のクオリティも十分で問題ないか、といった点も事前に必ず確認しましょう。
さらに、導入後のアフターフォローの体制について確認することも大切です。追加料金で保証期間や内容がグレードアップできる場合があるので、保証内容を十分確認し、予算を踏まえて検討しましょう。 - クリニックでデジタルサイネージを運用する流れを教えてください。
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デジタルサイネージ運用の流れを、8ステップで具体的に解説します。
- 導入の目的を明確にする
- 患者さんのニーズを把握する
- 電子機器とコンテンツを選ぶ
- 設置場所を決定する
- 運用のルールを決める
- スタッフへの研修を実施する
- 運用後の効果測定をする
- 問題点・課題を改善する
まずは、デジタルサイネージを導入する目的を明確にします。
診療内容や患者層によって、効果的なコンテンツ内容は異なります。コンテンツを選ぶ際は、目的や患者さんのニーズに合っているか、しっかりと検討することが大切です。アンケートなどで患者さんが必要としている情報を把握するのもひとつの方法です。
次に、電子機器とコンテンツを選び、設置場所を決定します。
更新担当者や更新頻度、個人情報の取り扱いなどの運用ルールを決定します。また、患者さんの反応や導入効果を定期的に検証するのも重要です。検証結果をもとに、コンテンツ内容や表示する順番・頻度などを調整し、問題点や課題を改善していきましょう。
- クリニックがデジタルサイネージ導入時に使える補助金はありますか?
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デジタルサイネージ導入時に、IT導入補助金を活用することができます。
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者に向けたITツール導入補助制度です。業務効率化やDX、集患など売上アップのサポートを目的としています。2024年12月時点で、クリニックのITツール導入をサポートする補助金制度は3種類あります。導入するツールによって補助金額や申請条件は異なりますので、最新情報は公式ホームページで確認してみてください。
(参考:IT導入補助金2025|サービス等生産性向上IT導入支援事業)
まとめ
デジタルサイネージは、効率的な情報発信や患者満足度の向上、コスト削減効果が期待できるITツールです。
導入するを検討する際は、患者さんのニーズやコストを見極めて、適切な機器やコンテンツを選びましょう。