病院でペーパーレスを進めるには?対象範囲と関連法令、実践のポイントを解説
医療現場では、診療に伴ってカルテや同意書、紹介状、検査結果など、さまざまな紙文書が発生します。これらの文書は保管スペースや管理業務の負担になりやすく、病院経営やスタッフの働き方にも影響します。一方で、ペーパーレス化を進める際は、どの文書を電子化できるのか、法令やガイドラインにどう対応すればよいのかを把握する必要があります。
この記事では、病院におけるペーパーレス化の基本、電子保存の対象文書、守るべき三原則、関連法令やガイドライン、導入手順と実践のポイントを解説します。
病院におけるペーパーレスの基本

- 病院のペーパーレスとはどのような取り組みですか?
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病院のペーパーレスとは、これまで紙で作成・管理していた診療録、処方箋、各種同意書、紹介状などの医療文書を、電子データとして作成・保存・運用する取り組みです。電子カルテシステムを中心に、問診票のタブレット入力や、紙で受け取った書類のスキャン保存なども含まれます。
電子化が進むと、院内の複数の場所から同じ情報を確認しやすくなり、スタッフ間の情報共有もスムーズになります。単に紙を減らすだけでなく、診療情報を扱いやすい形に整えることが目的です。 - 紙文書の運用における課題を教えてください
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紙文書の運用は、保管スペースの確保が課題です。カルテや検査結果などは保存期間が定められているものがあり、書類が増えるほど保管場所や管理の負担も大きくなります。目的の文書を探す時間がかかる点も、日常業務の妨げになります。
また、紙のカルテや書類は、同時に複数のスタッフが確認しにくいという問題があります。誰かが使用している間は、ほかのスタッフがすぐにみられないことがあり、診療や事務作業の流れが止まる原因です。さらに、紙には劣化や紛失、災害による滅失のリスクもあります。 - ペーパーレス化を進めにくいのはなぜでしょうか
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ペーパーレス化を進めにくい理由のひとつは、長年続いてきた紙の運用への慣れです。紙は一覧性があり、必要なところにすぐメモを書き込めます。そのため、手書きの簡便さや紙をみながら作業する感覚を手放しにくい現場もあります。
過去に蓄積された紙カルテや書類を電子化する作業も負担です。スキャンには時間と人手がかかり、画質の低下や読み取り漏れがあれば、必要な情報を確認しにくくなります。さらに、電子カルテや周辺システムの導入費用、保守費用、サイバー攻撃や個人情報漏洩への不安もあります。 - 病院でペーパーレス化できる文書にはどのようなものがありますか?
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病院でペーパーレス化できる文書には、医師法や医療法などの医療関連法令で作成・保存が求められている文書が含まれます。具体的には、医師が作成する診療録や処方箋、保健師助産師看護師法に基づく助産録、医療法に基づく手術記録や看護記録、検査所見記録、エックス線写真などが対象です。そのほか、紹介状や退院した患者さんに係る入院期間中の診療経過の要約、いわゆる退院時サマリーも対象です。これらは、所定の要件を満たすことで、紙の原本に代えて電磁的記録として保存することが認められています。
- 電子保存の三原則について教えてください
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法令で保存義務のある情報を電子媒体で保存する場合は、厚生労働省のガイドラインに基づき、真正性・見読性・保存性の三原則を確保する必要があります。これは、電子データを紙の代わりとして扱うための基本です。
真正性とは、記録が正当な権限に基づいて作成され、虚偽入力、書換え、消去、患者さんの取り違えなどが防止されていることです。見読性とは、保存された情報を必要なときに画面で確認でき、必要に応じて書面として表示できる状態を指します。保存性とは、法令で定められた保存期間中、見読できる形で復元可能に保存し続けることです。 - e-文書法と関連ガイドラインの位置付けについて教えてください
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e-文書法は、正式には民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律といい、法令で書面保存が求められている文書について、原則として電子データでの保存を認める法律です。
医療分野においては、これを受けて厚生労働省の所管する法令に基づく省令が定められ、医療文書を電子保存するための法的な根拠となっています。さらに、実際の技術的・運用的な対策をまとめたものが、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインです。病院でペーパーレスを進める際は、関連法令を確認したうえで、安全管理ガイドラインに沿って体制を整えることが求められます。 - ペーパーレスに着手する手順を教えてください
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ペーパーレスに着手するときは、まず院内で発生している文書の棚卸しから始めます。どの部署でどのような紙文書が作成されているのか、発生量、発生頻度、保存期間、閲覧するスタッフの範囲を確認します。
次に、電子カルテなどで直接データとして作成する文書と、紹介状や同意書など紙で受け取った後にスキャン保存する文書を分けます。スキャン保存は、情報量の低下を防げる解像度や読み取り手順を確認し、書類の重なりや欠落がないかを確認する流れも決めておきます。そのうえで運用管理規程を整備し、段階的に対象文書を広げることが安定した導入につながります。 - 電子カルテ以外でペーパーレス化に活用できるシステムはありますか?
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電子カルテを中心にしながら、周辺システムを組み合わせることで、ペーパーレス化は進めやすくなります。代表的なものとして、X線やMRIなどの画像データを電子的に管理する医用画像ファイリングシステム、いわゆるPACSがあります。検査機器からデータを取り込む臨床検査システムも、紙の検査結果を減らすうえで有用です。
また、紙の紹介状や同意書をスキャンし、患者さんのIDとひも付けて保管する文書管理システムも活用できます。問診用タブレットや、ベッドサイドで記録・参照できるスマートフォン、携帯端末を組み合わせることで、必要な情報を電子的に共有する流れを作りやすくなります。 - スタッフが紙運用に慣れている場合の進め方を教えてください
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スタッフが紙運用に慣れている場合は、急にすべての紙をなくすのではなく、現場の安全性と利便性を保ちながら進めます。いきなり完全電子化に切り替えると、確認漏れや入力ミス、作業の停滞が起こりやすくなるため、一定期間は紙と電子の併用を認める方法もあります。
例えば、紙書類をスキャンして電子カルテ上で参照できるようにしつつ、緊急時に備えて紙媒体の検索性も維持する方法があります。運用が安定してから、紙の原本を廃棄できる文書と残す文書を分けていきます。導入前の操作研修や入力テンプレート、音声入力などを活用すると、定着しやすいペーパーレス運用につながります。 - 個人情報保護やセキュリティを担保しながら進めるコツを教えてください
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ペーパーレス化は、情報漏洩やシステム障害への備えが欠かせません。運用面は、職員ごとに担当業務に応じたアクセス権限を設定し、必要な範囲の情報だけを閲覧できるようにします。パスワードだけに頼らず、ICカードや生体認証などを組み合わせた二要素認証を導入することも、不正アクセスの防止につながります。
技術面は、不正ソフトウェア対策ソフトを最新の状態に保ち、外部ネットワークを利用する場合はVPNなどで通信環境を整えます。ランサムウェアなどのサイバー攻撃や災害に備え、ネットワークから切り離された安全な場所にバックアップを取得し、復旧手順を確認しておくことも必要です。
病院でのペーパーレスの対象文書と関連法令

病院でペーパーレスを進める手順と成功のポイント

編集部まとめ

病院におけるペーパーレス化は、紙文書の保管スペースや管理負担を減らし、診療情報を共有しやすくする取り組みです。一方で、医療記録は患者さんの診療や個人情報に関わるため、真正性、見読性、保存性の三原則を満たし、関連法令やガイドラインに沿って運用する必要があります。
導入時は、まず院内文書を棚卸しし、電子化する文書と紙で残す文書を把握しましょう。紙運用に慣れているスタッフがいる場合は、併用期間を設け、研修やテンプレートで負担を減らします。セキュリティ対策やバックアップなども整えながら、自院に合った範囲から進めることが大切です。




