看護師に求められる能力は?適正やスキルなどを紹介
看護師という職業は、診療を行う医師のサポートや、ケガや病気が原因で思うように体を動かすことができない患者さんへの介護・補助などを担っており、社会に大きく貢献できます。この記事を読んでいる方の中には「将来、看護師になりたい」という夢を抱いている方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、看護師に向いている人の特徴や看護師になるために必要なスキルなどをまとめました。ぜひ最後までご覧ください。
看護師になるには?
看護師として働くには、国家試験に合格して免許を取得する必要があります。国家試験は誰でも受けられるわけではなく、文部科学大臣が指定した学校や厚生労働大臣が指定した看護師養成所を卒業することが条件として定められています。ご自宅などでの独学では看護師の免許を取ることはできませんのでご注意ください。ここからは、看護師を目指すことができる学校選びから免許を取得するまでの流れを詳しく説明していきます。
看護師を目指せる学校をさがす
看護師を目指すための教育を受けられる場は、大きく分けて4つあります。1つは看護大学です。看護大学は4年制で、専門学校よりも長い教育期間が設けられているのが特徴です。看護師になるために必要な知識を学べるのはもちろんのこと、その他の一般教養科目も充実しています。また、看護職となる保健師や助産師の教育を受けることができたり、3年間の看護教育期間の後の1年間は国家試験対策をじっくり行えたりするのが強みといえます。2つ目は看護短期大学です。大学よりも1年短い3年間の中で、一般教養科目や看護師に必要なスキルを磨く実技や実習が受けられます。教育期間が短いため国家試験対策を行う期間も限られ、短い時間で集中して勉強に励むことになります。なお、看護短期大学は年々少なくなってきています。全国に20校ほどしかなく、看護短期大学への入学を希望する場合は選択肢が狭くなってしまうことを理解しておきましょう。3つ目は看護師養成所です。看護師養成所の大半は専門学校となっており、教育期間は3年間です。実践的な教育を多く受けられる一方で、一般教養を学べる機会が少ないのがデメリットとして挙げられます。これら3つの学校は高校を卒業した人が進学でき、高校を卒業していない場合は看護師養成課程校に5年間通い、卒業することで看護師国家試験の受験資格を得るという方法もあります。
看護師国家試験を受ける
前述した機関で教育を受けた後は、国家試験を受けて合格することが重要です。受験料は5400円で、この額の収入印紙を受験願書に貼って納付することで受験可能となります。国家試験は毎年2月半ばに、全国各地の大学のキャンパスや試験会場で実施されます。試験の内容は必修問題50問・一般問題130問・状況設定問題30問で構成され、所要時間はおよそ5時間20分です。
免許を取得する
国家試験の合格発表は、試験の約1カ月後です。結果は、主に厚生労働省の特設サイトにアクセスするか、発表された日から1週間以内に届く郵便物で確認できます。とにかく早く結果を知りたいという方には、特設サイトを確認する方法がおすすめです。試験に合格していた場合は、医療従事者免許申請窓口で看護師免許の取得申請を行いましょう。この際、厚生労働省のホームページまたは保健所から取得した申請書・1カ月以内に発行された健康診断書・登録済証明書用はがき・印鑑・9000円分の収入印紙と、6カ月以内に発行された住民票の写し・戸籍抄本・戸籍個人事項証明書のいずれかを提出する必要があります。地域によっては申請等控兼事務連絡票を用意しなければならない場合もあります。これらの書類を提出し、免許証が交付されれば完了となります。申請から交付までは4カ月ほどの時間がかかる場合もあるため、できるだけ早く申請するようにしましょう。
看護師に適正がある人の特徴
看護師という職に就くうえで「患者さんの役に立ちたい」という気持ちはもちろん大切です。しかし、それだけでは長く続きません。肉体労働を長く続けるための体力や精神面でのタフさ、医師やほかの看護師との協調性、日々進歩する医療技術を修得するための向上心などさまざまな要素が必要になります。ここからは、看護師に向いている人の特徴をより詳しくご紹介します。
体力がある、メンタルが強い
看護の現場では、夜勤があったり寝たきりの患者さんや成人男性の介助を行ったりする場面があります。時には病院内を走り回ったり、残業をしたりすることもあるでしょう。そのため、体力に自信があるという方は看護師としての適性があるといえます。また、患者さんがどのような状態でも、優しく声をかけたりご家族を励まし続けたりする強いメンタルが必要です。さらに、ただメンタルが強いだけでなく、患者さんが亡くなってしまった際でも感情的にならず、看護師としての仕事を全うできるタフさが求められます。
協調性がある、コミュニケーション能力が高い
看護師の仕事はすべての業務を一人でこなすというよりも、複数人の看護師がグループとなって行うことが基本となります。また、看護師同士だけでなく、医師などほかの職種の人と一緒に仕事をすることもあるため、協調性が求められます。共に働く人への思いやりを欠かさず、主体的に行動できる方は看護師に適しているといえるでしょう。コミュニケーション能力が高いことも非常に重要なポイントです。前述した通り複数人で仕事を進めていく際、「相手が伝えたいことを正しく理解する力」と「自分がいいたいことを正しく伝える力」が必要になります。コミュニケーションが上手くいかないと、患者さんへのスムーズな対応ができなかったり、最悪の場合は医療ミスにつながってしまったりする可能性があります。コミュニケーション能力が求められるのは医療従事者との会話だけでなく、ケガや病気に対してネガティブな気持ちになっている患者さんと接する際にも非常に重要になります。
向上心がある、努力ができる
医療は日々進歩しており、昨日まで正しいとされていた知識や情報が今日になったら間違っているというケースも少なくありません。その情報を逃さないために、勉強会や研修会に積極的に参加し、自ら学びにいく姿勢が大切です。「看護師資格を持っているから大丈夫」と過信するのではなく、意欲的に行動を起こし努力し続けられる人は看護師に向いています。
看護師に適正がない人の特徴
前項では看護師に適性がある人の特徴を紹介しました。一方で、看護師に適性がないのはどのような人なのか、詳しく解説していきます。「自分は看護師に向いていないのかもしれない」と不安に思っている方はチェックしてみてください。
体力がない、きまった生活をおくりたい
看護師の勤務体系はとても不規則です。日勤・夜勤などがあるほか、土日に必ず休めるという保証はありません。そのため、家族や友人と休みの日に予定を合わせることが難しく、日によっては起床時間や就寝時間が異なることもしばしばです。このように仕事が原因で生活リズムが乱れることを嫌う方は、看護師として働くのは難しいでしょう。また、繰り返しにはなりますが、看護師は体力を使う仕事のため、重労働をこなせるパワーがない方には厳しい環境となってしまうでしょう。
コミュケーションを取りたくない
看護師は「対患者」の職業です。患者さんに適した治療を不安なく受けてもらうためにコミュニケーションを取ることは必要不可欠ですので、コミュニケーションを取ることが好きではない、人と話すのが苦手という方が看護師として働くのは難しいかもしれません。
血や死に向き合えない
病院に来る患者さんは、何かしらの病気やケガを抱えている方がほとんどです。その患者さんの処置や治療を行う際に出血を伴ったり、すでに出血している患者さんが運ばれてきたりするというケースも少なくありません。そのため「血を見ると具合が悪くなる」というような方は看護師として働くのは難しいでしょう。さらに、患者さんの命を預かっているという仕事上、最期を看取らなければならない場合もあります。「患者さんが亡くなるのを見るのはつらい」と病んでしまう方に、看護師という職業はおすすめできません。
看護師として大切なスキル
続いて、看護師として働くうえで大切なスキルをご紹介します。これらは生まれつきの要素というよりも、意識すれば変えられることがほとんどなので、看護師を目指している方や「良い看護師」としてのスキルアップを目指したい方はぜひ参考にしてみてください。
観察力や判断力
看護師に必要なスキルとして、観察力や判断力が挙げられます。患者さんの命を守るために必要なのは、小さな変化も見逃さないことです。ささいなことにも目を向けられる観察力と、「こうしたら良いのでは」と瞬時に動ける判断力が必要になります。また、患者さんだけでなく、そのご家族などの様子もしっかりと観察できるのが、優秀な看護師の特徴です。このスキルは働き始めの頃は持っていなくても、少し視野を広げながら仕事をしていくことで身につけることができます。「自分は気が利くほうではないから看護師には向いていない」と諦めず、先輩看護師の姿を参考に業務に取り組んでみてください。
精神力
人の命を預かる看護師は、ミスが許されない仕事を任されることも少なくありません。そんな時に物怖じせず、一人ひとりに適した対応ができる強い精神力が求められます。また、病院などで勤務する場合、先輩・後輩との上下関係にも気を配る必要があるため、人間関係を上手く構築できるようなスキルが大切です。
明るさやコミュニケーション力
病気やケガに対して恐怖心や不安を抱いている患者さんも多くいらっしゃいます。そのような方と明るくコミュニケーションを取り、ネガティブな思考をポジティブに変えられるスキルが重要です。ただテンションが高ければ良いのではなく、患者さんの悩みに親身に寄り添いつつ、前向きな言葉をかけてあげられる方は、看護師としての大きな武器になるでしょう。
看護師として大切なリーダーシップとは
最後に、看護師として働くうえで大切な「リーダーシップ」について説明します。看護師のリーダーシップというと、看護部長や看護師長をイメージする方も多いでしょう。しかし、役職や経験年数に関係なく、チームのために積極的に動ける人材であればリーダーシップを持っているといえます。
看護師としてのリーダーシップの役割は?
看護師のリーダーシップの役割としては3つあります。1つ目は「サポート役」です。同じ部署の中に経験の浅いメンバーがいると、患者さんへの対応で困ったり支障が出たりする場合があります。そこで指示やアドバイスをするのがリーダーの役割です。2つ目は「仕切り役」です。チームで業務を進めていくにあたって、一人の看護師に負担が集中してしまっては効率はあがりません。リーダーは、チームメンバー一人ひとりが持っているスキルや現場の状況を見て、業務量の割り振りをする必要があります。3つ目は「橋渡し役」です。患者さんの状態をほかの病棟や職種の人に伝えなければならない場面も多く存在するため、そのような時にスケジュール管理も併せて行うことが、スムーズな業務につながります。
看護師のリーダーシップに必要なスキルは?
第一に必要なのは看護の知識です。後輩に指示をしたりチームを動かしたりする役割を担っているリーダーの知識が乏しいと、患者さんに適した看護を提供できないというのは誰もがわかることでしょう。より良い看護を提供するために、リーダー自身も知識のアップデートに努め続ける必要があります。また、チーム内でリーダーシップを発揮するには、指導力や伝達力が求められます。意図を正しく伝え、かつ後輩看護師がやりがいを感じられるような指導をしていくことが、チーム医療を行ううえで大切になるからです。さらに、看護の現場では予期せぬ問題やトラブルが起きることも多いため、冷静に判断ができる問題解決能力や適切な指示ができる状況把握力も必要です。現場を混乱させず、患者さんに適した看護を提供するために、これらのスキルは非常に重要なものとなります。
看護師としてリーダーになるには?
まずは一つひとつの業務に優先順位をつけることをクセづけましょう。優先するべきことを後回しにしてしまうと、患者さんに適した看護を提供できない可能性があるため、状況を冷静に把握することが大切です。また、言葉だけでなく、リーダーが自ら行動して手本を見せることで、チームメンバーもついてきてくれるでしょう。時にはなぜその行動を取るべきなのか、理由をしっかりと説明してあげることも重要です。さらに、アメとムチを使い分けるスキルを備えておくと良いでしょう。患者さんの命を預かる仕事のため、時には厳しく叱ったり指導をしたりすることもあるかと思います。ただ、指摘されてばかりではモチベーションを維持するのは難しいため、その後のフォローを忘れないようにしましょう。
まとめ
看護師になるまでの流れや求められるスキル、適性などについてまとめましたがいかがでしたでしょうか。人の命を預かる仕事はやりがいがある一方で、強い覚悟と責任を持って働かなくてはなりません。看護師を目指している方は、今回ご紹介した能力を持っているかどうか、ぜひ自分を客観視してみてください。