TOP > 開業医の年収・お金に関する話 > 脳外科医の年収はいくらぐらい?勤務医と開業医それぞれの平均年収や脳外科で開業する時の注意点について解説!

脳外科医の年収はいくらぐらい?勤務医と開業医それぞれの平均年収や脳外科で開業する時の注意点について解説!

                   
投稿日: 2024.04.24
                   

脳外科は、高度な専門性と技術力が求められる診療科の一つです。人命にかかわる重大な責任を負うことから、脳外科医の年収水準は比較的高くなる傾向にあります。勤務医の場合、平均年収は約1,500万円と、ほかの診療科目の中でもトップクラスの金額となっています。一方、開業医の年収は施設の規模や医療機器の設備環境によって異なり、2,500万〜8,000万円と幅があります。本記事では、脳外科の勤務医と開業医の年収や、脳外科医の年収が高い理由、脳外科の開業時に注意すべき点について解説します。

脳外科の勤務医の年収

脳外科の勤務医の年収
脳外科の勤務医の平均年収はいくらぐらいですか?

労働政策研究・研修機構が2012年に行った「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、脳神経外科医の平均年収は1,480万円で、その他の診療科と比較して最も高い水準にあります。2番目に高いのは産婦人科の1,466.3万円、次が外科の1374.2万円です。

※参考:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」

脳外科医の年収が高い理由は何ですか?

脳外科医の年収が高い主な理由は3つあります。  

第一に、脳卒中やくも膜下出血など、人命に直結する緊急手術などへの対応が必要になる重要な診療科目であるためです。迅速な判断と高度な技術力が求められ、手術の成否が患者さんの生死を左右します。命に関わる重大な責任を負う診療科であるため報酬水準が高くなっています。

第二に、脳外科医は脳の解剖学や脳神経機能に関する高度な専門知識を有しているためです。脳は人体の中でも最も重要な器官であり、その構造は極めて複雑です。脳外科医になるためには長期の徹底した研鑽が必要不可欠で、そうした高い専門性が給与面に反映されているのです。

第三に、過酷な労働環境にあることも一因となっています。絶え間ない緊急対応による精神的・身体的ストレスは大きく、ワークライフバランスの確保が難しい診療科の一つです。そうした厳しい労働環境下にあるため、高い報酬が保障されているといえるでしょう。

脳外科医が扱う疾患について教えてください。

脳外科医が扱う疾患としては、下記のような疾患が挙げられます。

・脳出血

・脳腫瘍

・脳梗塞

・脊髄疾患

・パーキンソン病などの神経疾患

・頭部の外傷
脳外科医の仕事は、これらの疾患の診断から治療、手術を行うことに加えて、周術期管理やリハビリ、長期予後管理までが含まれます。緊急でない場合は、事前にスケジュールを組むこともできますが、血管異常やくも膜下出血などが原因の脳出血や頭部の外傷などでは、緊急で治療を施さなくてはならず、時間外勤務やオンコールにも対応する必要があります。

脳外科医の訴訟リスクについて教えてください。

前述したように脳外科医は患者さんの命に関わる緊急手術などの対応をすることが多いため、高い訴訟リスクが伴います。労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」では、38.2%の脳外科医が、訴訟リスクを「非常に感じる」または「まあ感じる」と回答しています。そのような訴訟リスクの高さから、脳外科医を希望する医師は少ない傾向にあり、医師不足に対する認識に関する設問では、「非常に感じる」または「まあ感じる」と回答した脳外科医が65.9%に上っています。

脳外科の開業医の年収

脳外科の開業医の年収水準を教えてください。

 脳外科の開業医の年収には、診療内容や施設の規模、設備環境によって大きな幅があります。

まず小規模な医療機器を備えた施設の開業医の場合、年収は2,500万〜3,000万円程度が平均的な水準と考えられます。この程度の規模であれば、高額な医療機器の導入は最小限に抑えられます。

一方で、大規模な医療機器を導入し手術件数が多い開業医の場合は、年収が8,000万円を超えるケースもあります。ただし、その場合は設備投資額が最大で2億5,000万円にもなり、借入金の返済負担が非常に大きくなります。返済期間が長期化すれば、短期的にはほかの診療科の開業医よりも年収が低くなる可能性もあります。

このように設備投資の規模が年収に大きな影響を与えるのが、脳外科の開業医の特徴です。投資額が少なければ一般的な診療科と年収は変わりませんが、高額な医療機器を導入すれば高収入を得られる可能性がある反面、返済負担も高くなります。

脳外科の開業時に注意すべき点

脳外科の開業時に注意すべき点
脳外科の開業時に気をつけるべき点は何ですか?

脳外科の開業時に気をつけるべき点は、医療機器の導入に伴う設備投資額の大きさです。

MRIやCTなどの高額な画像診断装置は、脳外科では必須の医療機器です。しかしこれらの機器を一度に導入しようとすると、最大で2億5,000万円もの投資が必要になります。多額の借入が必要になり、キャッシュフローを圧迫してしまう可能性がある点には注意が必要です。

そこで賢明なのは、開業当初は最小限の機器から揃え、集患が安定して一定の利益を計上できるようになってから、大型機器の導入を検討することです。導入機器に優先順位を付け、段階的・計画的に設備投資を行えば、過剰な借入を回避することができます。

また、大型機器については購入ではなく、リースを検討するのも選択肢の一つです。初期投資を抑えつつ、常に新しい機器に更新できるというメリットもあります。

さらに、施設の面積や内装工事費も考慮する必要があります。例えばMRIの場合、60坪以上のスペースと強力な磁気シールド対策のための工事費が別途かかります。このように医療機器の導入には多額の設備投資が必要となるため、返済計画を綿密に立てないと途中で行き詰まってしまう可能性があります。このことを十分に認識し、段階的な設備投資やリースなどの選択肢も検討するようにしましょう。

ほかに脳外科を開業する際に留意すべき点はありますか?

脳外科を開業する際には、ほかにもいくつかの重要な留意点があります。

・人材の確保と育成

まず何よりも、優秀な医師と高度な専門スキルを持つスタッフの確保が欠かせません。また、放射線技師や理学療法士といった専門スタッフの確保と育成にも注力する必要があります。大型の医療機器を扱う以上、これらのスタッフの採用は必須です。経験の浅い新人スタッフの場合は、丁寧な指導を行いスキルアップを図ることが大切です。  

・他院との連携体制の構築  

次に、自院で大型機器を導入できない場合は、近隣の病院などと緊密に連携する体制を整えておくことが求められます。患者さんを他院に紹介できるルートを確保しておくと良いでしょう。手術が必要な患者さんは他院へ紹介し、術後は自院で経過観察を行うなど、役割分担を明確にすることが重要です。そのため開業前から、地域の医療機関とのネットワークづくりに努めましょう。

・働きやすい環境の整備

加えて、優秀な医師を確保し定着させるためには、働きやすい労働環境の整備が不可欠です。給与面での待遇はもちろんですが、ワークライフバランスを重視した柔軟な勤務体制の構築が求められます。例えば、夜勤や当直勤務を複数の医師で分担するなど、過酷な勤務シフトにならないための工夫が必要でしょう。プライベートの時間を十分に確保できる環境を整えることで離職を防ぎ、質の高い医療を継続的に提供できます。

このように脳外科の開業には資金面はもちろんのこと、人材面での様々な準備も欠かせません。医療機関としての需要は十分にある一方で、リスクも高い診療科だといえます。リスクの可能性を多面的に洗い出し対策をしっかりと講じた上で、開業に向けた事業計画を策定するようにしましょう。

編集部まとめ

本記事では、脳外科の勤務医と開業医の年収や、脳外科医の年収が高い理由、脳外科の開業時に注意すべき点について解説しました。この記事が、脳外科医を志す方や、脳外科の開業を検討されている方の参考になりましたら幸いです。