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産婦人科は儲かるのか?開業医と勤務医の年収事情と成功する開業のポイントを解説

                   
投稿日: 2024.04.24
                   

産婦人科で開業を検討している医師にとって、実際に儲かるのかどうかは気になるポイントでしょう。

産婦人科は勤務医も、ほかの診療科より平均年収が高い傾向にあります。

開業は多額の資金調達が必要なため、開業後の収支計画をしっかりと立てておく必要があります。

そこでこの記事では、

  • 産婦人科医の年収事情
  • 産婦人科の開業に必要な資金
  • 産婦人科を開業するメリットとデメリット
  • 産婦人科の開業で成功するためのポイント

これらについて解説します。

産婦人科クリニックの開業を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

産婦人科医の年収事情

産婦人科の開業医と勤務医、それぞれの年収事情について解説します。

  • 産婦人科開業医の平均年収
  • 産婦人科勤務医の平均年収
  • 産婦人科勤務医の平均年収が高い理由

産婦人科開業医の平均年収

産婦人科開業医の平均年収は約3,900万円になります。

一般診療所(歯科を除く)全体の平均年収は約3,200万円ですので、ほかの診療科と比べると産婦人科の方が儲かっているようです。

厚生労働省が調査する「第24回医療経済実態調査」では、一般診療所の産婦人科クリニックの損益計算書が公開されています。

経営が安定しているクリニックから、開業したばかりでまだ経営が安定していないクリニックの平均値になりますので、参考値として捉えるとよいでしょう。

<一般診療所(個人)産婦人科の診療所全体の1施設当たり損益>

医業収益
入院診療収益約530万円
外来診療収益約1億2,300万円
その他の医業収益約200万円
医業費用
給与費(人件費)約3,000万円
医薬品費約2,070万円
材料費約340万円
給食用材料費約100万円
委託費約470万円
減価償却費約550万円
その他の医業・介護費用約2,600万円
医業収益(約1億3,000万)ー 医業費用(約9,100万円)= 利益:約3,900万円

(出典:第24回医療経済実態調査|厚生労働省

産婦人科勤務医の平均年収

産婦人科勤務医の平均年収は約1,500万円といわれています。

少し前の調査になりますが、2011年に勤務医3,000人のアンケート調査を実施した結果から、診療科毎の平均年収が集計されています。

産婦人科勤務医の年収は診療科毎で見ると、脳神経外科に次いで第2位の年収になっています。

<診療科毎の医師の平均年収>

順位診療科目平均年収(万円)
1位脳神経外科1,480.3
2位産科・婦人科1,466.3
3位外科1,374.2
4位麻酔科1,335.2
5位整形外科1,289.9
6位呼吸器科・消化器科・循環器科1,267.2
7位内科1,247.4
8位精神科1,230.2
9位小児科1,220.5
10位救急科1,215.3
11位その他1,171.5
12位放射線科1,103.3
13位眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科1,078.7

また、同調査では、もらっている年収の割合も回答されています。

その結果によると、年収2,000万円以上をもらっている産婦人科勤務医の割合は20.8%と、脳神経外科を抜き1位となっています。

産婦人科勤務医はほかの診療科と比較して、年収が高いといえるでしょう。

<主たる勤務先の年収(回答数130)>

300万円未満0.8%
300〜500万円未満2.3%
500〜700万円未満5.4%
700〜1,000万円未満13.8%
1,000〜1,500万円未満27.7%
1,500〜2,000万円未満29.2%
2,000万円以上20.8%

(参考:勤務医の就労実態と意識に関する調査:労働対策研究・研修機構

産婦人科勤務医の平均年収が高い理由

産婦人科勤務医の平均年収は、ほかの診療科よりも高い傾向にありますが、その理由として以下が考えられます。

  • 当直が多く拘束される労働時間も長い
  • 医療訴訟リスクの高さ
  • 産婦人科医の人手不足

産婦人科では、出産や緊急の対応が予測不可能なタイミングで発生するため、オンコールや当直勤務が多くなります。もし、状態が安定していない妊婦の出産が近い状況でしたら、休むことも難しくなります。

また、激務なことに加えて、訴訟リスクが高い診療科であることも理由の一つでしょう。

一般的に出産は病院で行えば安全なもの、高齢者と違って年齢も若いのでトラブルの可能性は低いだろうという印象をもたれる傾向にあります。そのため、分娩にかかわるトラブルは医療訴訟に繋ががりやすく、訴えられるリスクが高いのです。

結果として、産婦人科医を目指す医師は減少しており、人手不足から病院経営者は、高い給与を支払って産婦人科医を獲得しなければならないのです。

厚生労働省が公開する「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、全体の医師数は増加しているのに対して、産婦人科の医師数は微増、もしくはあまり変化がない状況です。

(参考:令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計の概要|厚生労働省

これらが、ほかの診療科よりも、産婦人科勤務医の年収が高い理由になります。

産婦人科の開業に必要な資金

産婦人科の開業に必要な資金

産婦人科の開業には、どのくらいの開業資金が必要なのか解説します。

どのくらいの開業資金が必要か

産婦人科の開業には、5,000万円ほどの開業資金が必要になるといわれています

もし、分娩も行うのでしたら入院設備も必要なため、さらに高額になります。

開業資金の内訳概算としては以下になります。

  • 土地や建物:3,000万円
  • 医療機器や設備:2,000万円

開業資金の調達方法

開業資金の調達方法は、

  • 自分で貯める
  • 融資を受ける

一般的にどちらかの方法になります。

開業資金は高額になるため、自己資金が十分にあったり、親族から援助をしてもらえたりする場合を除き、融資を受ける方が多いようです。

融資は下記の機関で受けることができます。

融資を受けられる条件や限度額、利息などを確認し、検討するようにしましょう。

  • 民間の金融機関
  • 日本政策金融公庫
  • 独立行政法人福祉医療機構

産婦人科を開業するメリット

産婦人科を開業するメリットは、

  • 自分が理想とする診療を提供できる
  • 勤務医より高収入を得られるチャンスがある
  • 地域社会への貢献を実感できる

それぞれについて説明します。

自分が理想とする診療を提供できる

産婦人科医として、自分が理想とする診療を提供できることが開業するメリットの一つです。勤務医だと病院の方針に従って治療をしなければなりませんが、開業医は治療方針を自身で決められる自由度があります。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識調査」によると、医師が開業を考える理由は「自らの理想の医療を追求したいから」がもっとも多かったとの結果がでています。

(参考:勤務医の就労実態と意識に関する調査:労働対策研究・研修機構

勤務医より高収入を得られるチャンスがある

産婦人科クリニックの開業に成功し経営が上手くいけば、勤務医の時よりも高収入を得られるチャンスがあることも開業するメリットになります。

産婦人科開業医の平均年収は約3,900万円と、勤務医の年収の2倍以上にもなります

もちろん、開業したクリニックの全てが成功するとは限りませんが、経営が上手くいけば年収アップは期待できます。

不妊治療が保険適用となったことや美容医療との親和性が高いことなども、産婦人科が収益を上げやすい要因といえるでしょう。

地域社会への貢献を実感できる

病院よりも患者さんとの距離感が近いため、地域社会への貢献を肌で感じられるのも開業するメリットです。

産婦人科は地域社会に必須の診療科で出産だけでなく、女性特有のさまざまな悩みや疾患にも対応する診療科です。患者さんの病気を早期に発見ができるのも、地域に根付いたクリニックの存在があるからです。

このような地域医療への貢献を実感できるのは、開業医ならではのメリットになるでしょう。

産婦人科を開業するデメリット

産婦人科を開業するデメリットは、

  • 医療訴訟のリスクが高い
  • 競合との差別化が難しい
  • 開業資金が高額になりやすい

それぞれについて説明します。

医療訴訟のリスクが高い

産婦人科の開業を難しくする理由の一つに、訴訟リスクの高さがあります

妊娠や出産は、本人や家族から大きな期待が寄せられているため、、妊婦や胎児に万が一のことが起これば、医療訴訟になりやすく、訴訟リスクの高い診療科であると言えます。

「勤務医の就労実態と意識に関する調査」の結果からも「患者さんからの訴訟リスクを感じている」と回答する医師が最も多いのは産婦人科です。

勤務医とは異なり、クリニックで医療訴訟が起こった場合、院長が全責任を負わなければなりません。このような訴訟リスクの高さが、産婦人科クリニックの開業を難しくしていると考えられます。

競合との差別化が難しい

近隣の競合との差別化が難しいことも開業を難しくしている理由の一つです。

最近では、豪華なホテルのような入院施設を持ったクリニックや美容医療などのサービスが充実したクリニックに、少し遠方からでも通院を希望する妊婦さんが多くいます。

少し離れた診療圏のクリニックも競合になる可能性が高いので、広範囲にむけて集患対策を講じ、しっかりと差別化を図る必要性があります。

開業資金が高額になりやすい

競合と差別化をするため、クリニックの内装にこだわったり高額な医療機器を導入するなど設備投資にお金をかけた結果、開業資金が高額になりやすいというのもデメリットの一つになります。

そのため、融資の金額が足りず、資金不足で開業を断念してしまうケースもあるようです。

産婦人科の開業で成功するためのポイント

産婦人科の開業で成功するためのポイント

産婦人科の開業で成功するためのポイントを紹介します。

  • 女性のニーズに寄り添ったクリニックにする
  • プライバシーに配慮した内装にする
  • ホームページやSNSに力を入れる
  • 美容皮膚科と連携する
  • 不妊治療を実施する
  • オンライン診療の導入

それぞれ説明します。

女性のニーズに寄り添ったクリニックにする

女性が安心して快適に過ごせるクリニックにすることが大切です

不妊治療中の方や初産を目前にしている妊婦さんなど、産婦人科での受診は不安から神経質になりやすいため、特に配慮が必要です。

患者さんの様子に気を配り、適切な声がけ一つで安心できる環境を提供できる場合もあるでしょう。

このような、女性のニーズに寄り添った対応・サービスは、競合との差別化にもなります。

プライバシーに配慮した内装にする

産婦人科クリニックでは、ほかの診療科よりもプライバシーへの配慮が大切です。

もし、産科と婦人科の両方を行うクリニックの場合、産科には同伴の男性が一緒に来院する可能性があります。その際は、男性からは婦人科の待合室が見えないようにしたり、患者さんの導線を工夫して顔を合わせないようにするといった配慮が必要になります。

患者さん同士が向かい合わないような、待合室の設計にするのも良いでしょう。

ホームページやSNSに力を入れる

ホームページやSNSでクリニックの様子や院長の紹介など情報発信を積極的にすることもポイントです。

初めて産婦人科を受診する時の心境としては、

  • どのような先生に診てもらえるのか
  • どんな雰囲気のクリニックなのか
  • 自分の病気や悩みを相談しやすいのか

といった不安が大きいと想定できます。

クリニックの雰囲気などの情報を発信することで、初診の患者さんも安心して受診できるようになります。院長のプロフィールとあわせて、顔写真も掲載するといいでしょう。

もし、自分でホームページやSNSの作り込みが難しければ、専門の会社に外注することも検討しましょう。

美容皮膚科と連携する

クリニックの収益をあげるには、美容皮膚科との連携も効果的です。

美容皮膚科は自由診療の選択肢が多いため、利用者が増えれば収益に貢献してくれます。同じクリニックで美容医療も同時に受けられれば、患者さんにとっても利便性が高く、集患につながるかもしれません。

都心部では、産婦人科と美容皮膚科を合わせて、レディースクリニックと標榜して開業するクリニックも増えているようです。

不妊治療を実施する

不妊治療を行うことで、集患率アップや収益増加につながります。

2022年4月から不妊治療の保険適用範囲が拡大され、不妊治療の需要はますます高まっています。産婦人科クリニックの中には、不妊治療の知識をまとめたコラム記事などを積極的に発信しているところも多くあります。

積極的に情報発信することで、需要を取り込み集患につなげることは大切です。

オンライン診療の導入

オンライン診療を導入して、患者さんのニーズに応えることも大切なポイントです。

最近では、ピルや緊急避妊薬を通院しないで処方してほしいというニーズも高まっています。婦人科のかかりつけ医として、さまざまなニーズに応えることで、結果として集患率アップや収益増加にもつながるでしょう。電子カルテの中には、オンライン診療のサポートサービスが組み込まれているものもあります。

編集部まとめ

この記事では、産婦人科医の年収事情、産婦人科の開業に必要な資金、開業するメリットとデメリット、開業で成功するためのポイントを解説してきました。

産婦人科医は開業で成功すれば、ほかの診療科よりも高い収入を得られる診療科です。産婦人科クリニック特有の開業する難しさはありますが、そのぶん開業するメリットも大きいのではないでしょうか。

これから産婦人科の開業を検討している方にとって、本記事が参考になれば幸いです。