クリニック開業時にリースを活用するメリットは?仕組みや注意点を解説
クリニック開業において、院内の設備や医療機器への投資は大きな支出項目です。導入方法によって、開業時に必要な資金額や、開業後の毎月の支払い額が異なります。
機器の導入方法には、自己資金や金融機関からの融資による購入のほか、リースやレンタルといった選択肢があります。それぞれに特徴があり、資金計画や運営方針に応じた検討が必要です。
本記事では、なかでもリースに焦点を当て、その基本的な仕組みや購入との違い、クリニック開業における活用メリットと、契約までの流れを解説します。
クリニック開業におけるリースの基本的な考え方

- クリニック開業で使われるリースとはどのような契約形態ですか?
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クリニック開業時に使われるリース契約とは、自院が使用する医療機器や設備などをリース会社が代理購入し、開業医が毎月一定額のリース料を払って賃借する契約形態を指します。
リースは主にファイナンスリースとオペレーティングリースに分類されます。
ファイナンスリースは賃貸人であるリース会社がリース契約に要した資金のほぼ全額をリース料として支払う必要のあるフルペイアウト方式といわれる契約方法です。基本的に途中解約ができず、契約期間満了までリース料の支払い義務が生じます。
オペレーティングリースはファイナンスリース以外のリースのことをいいます。これはリース会社が保有している機器などを一定期間賃借する仕組みで、契約条件によっては途中解約が可能な場合もあります。参照:『リースの種類』(公益社団法人リース事業協会)
『Lease Statistics (FY2024)』(公益社団法人リース事業協会) - リースと購入の違いを教えてください
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リースと購入の違いは所有権と支払い額の2点に整理できます。
まずは、所有権の有無です。リースは機器の所有者がリース会社であり、借り手側は原則として契約満了後に返却します。一方で購入した場合は、所有権が自院にあるため、継続使用はもちろん、処分や売却が自由に可能です。
もうひとつは支払い額の違いです。リースは購入に比べ初期費用が抑えられるメリットがある一方で、最終的な支払い総額が高額になる場合があります。
そのほか、リースと購入の違いは以下のようなものがあります。ファイナンスリース オペレーティングリース 購入 所有権 リース会社 リース会社 クリニック 支払い方法 毎月一定額のリース料 毎月一定額のリース料 一括払い、融資返済 処分・売却 原則不可 原則不可 可能 契約満了後 再リース・買取・返却 原則返却 継続使用、売却・破棄 途中解約 原則不可 可能(契約条件による) 可能(売却可能) 支払い総額 購入価格を上回る場合がある 購入価格を上回る場合がある 購入価格+利息(融資利用時) 医院開業にあたり、準備しなければならない機器や設備は多くあります。購入とリースにはそれぞれメリットとデメリットがあるため、資金計画や維持管理の負担などを考慮しながら選定します。
- 会計においてリースと購入はどのような差がありますか?
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会計においてリースと購入は処理方法が異なりますが、共通する点もあります。
まず、購入の場合は、有形固定資産として貸借対照表に資産計上されます。
ファイナンスリースは所有権はないものの、経済的実態が購入に近いとされるためリース料の総額を、リース資産、リース負債として資産および負債に計上します。資産としてとらえる点で購入と共通しています。
資産計上した機器や設備は、耐用年数またはリース期間にわたって減価償却費を費用計上します。この点でも購入とファイナンスリースは共通しています。
そのほかの費用について、購入の場合、固定資産税や保険料などを自院で負担します。ファイナンスリースは、支払うリース料を元本と利息に区分し、利息相当額を支払利息として費用計上します。
一方でオペレーティングリースは、賃貸借取引として扱われるためリース料を毎月費用に計上します。
なお、2027年4月より新リース会計基準の適用開始に伴い、オペレーティングリースについても、原則として資産および負債として計上する処理が求められます。
ただし、この新基準は主に上場企業が対象であり、中小企業については任意適用とされています。そのため、多くのクリニックで従来どおり、リース料を費用処理する従来の会計処理を継続することが可能です。参照:『新リース会計基準に対応する改正』(国税庁)
- クリニック開業時にリースを活用するケースは一般的ですか?
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クリニックの新規開業において、リースは一般的に活用されているといえます。
理由のひとつに、医療機器は購入費用が高額な製品が多いことがあげられます。また、医療は技術の革新が著しい分野です。一定期間賃借した後に返却や入れ替えが可能なリース契約は、設備更新の柔軟性という点でも相性がよいためです。
リース事業協会が公表した2024年度の統計によると、約200社を対象とした医療機器のリース取扱高は約2,380億円に上っています。こうしたデータからも医療機関でリースが広く活用されてることがうかがえます。参照:『リース統計(2025年1月)』(公益社団法人リース事業協会)
- リースを活用する資金計画上のメリットを教えてください
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リース活用による資金計画上のメリットは主に下記のようなものがあります。
- 担保が不要
- 資金負担の軽減
- 費用の標準化
- 金利上昇リスクをヘッジ
クリニック開業時は建築工事費、内装費、広告費など多額の初期運転資金が必要です。リースは設備導入の初期費用が購入に比べ抑えられるため、手元に運転資金を確保することができます。
また、リース料は原則毎月一定額であるため、支出の見通しが立てやすく、資金計画が立てやすくなる点もメリットです。 - 保守や管理の面でリースを選ぶメリットはありますか?
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リースを活用して使用する機器の保守契約は、基本的にメーカーとクリニックの間で締結されるため、リース契約に保守や点検、修理が含まれるわけではありません。そのため、リースだから保守面で有利と一概にいうことはできません。
ただし、リース会社によっては、メーカーとの保守契約を前提に、保守費用をリース料に組み込んだり、リース料とまとめて支払える仕組みを用意していたりする場合があります。このような形を選択すれば、支払管理がしやすくなる点はメリットといえます。 - リース契約の際に注意すべきポイントを教えてください
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医療機器や設備をリースで導入する際の注意点は、毎月の支払額と、支払い総額です。
リースは銀行融資による購入に比べて契約期間が短いことが多く、その分月々の支払額が高い傾向です。リース料には機器の取得価格に加え、固定資産税、動産保険料、金利相当額、リース会社に支払う事務手数料などが含まれています。リースはこれらを合算した総額を契約期間内で均等に支払う仕組みのため、最終的な総支払額は一括購入した場合に支払う金額を上回ります。
さらに、契約満了後も所有権はリース会社にあるため、継続利用には再リースや買取のための追加費用が必要となる点にも留意が必要です。 - リースに向いている設備や機器はありますか?
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高額で初期投資が大きい設備や、技術進歩が早い機器はリースに向いています。
例えば、画像診断装置や内視鏡システムなどは、その両面を満たすため、リースによる導入が適しているといえます。
また、パソコンや複合機、自動精算機などの数年で陳腐化する可能性がある情報機器もリースと相性がよい製品です。 - リースではなく購入を検討したほうがよいケースはありますか?
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長期間使用する前提の設備や低額な備品類は、購入のほうが経済的になることがあります。例えば、診察台や処置台、待合室の椅子や家具、キャビネット類など耐用年数が長い設備は、購入した方がコストが抑えられます。また、血圧計やパルスオキシメーターなどの小型機器も、金額が小さいため購入のほうが合理的です。
- リース会社や契約内容はどのような点を基準に選べばよいですか?
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リース会社を選定する際は、機器の種類や金額、契約期間などに応じて複数社を比較検討することが望ましいです。
特に、医療機器の取り扱い経験があるか、リース料の総額や支払条件は妥当か、審査や契約手続きのスピードは十分かなどを確認しましょう。また、中途解約の可否や違約金の条件も事前に把握しておく必要があります。
契約内容を十分に理解したうえで、自院の資金計画や運営方針に合ったリース会社や契約条件を選択することが大切です。 - リース契約までの流れと手続き方法を教えてください
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リース契約は、医師、リース会社、機器メーカーまたはサプライヤーの3者が関与しながら進められます。ここではクリニック開業時によく利用されるファイナンスリースの契約までの流れと手続き方法を解説します。
ファイナンスリースの契約までの一般的な流れは下記のとおりです。手続きの流れ 関係者 主な内容 機器選定 医師とメーカー 機種や仕様、納期などを決定 申し込み 医師とリース会社 リース料の見積り、契約条件の確認
リース契約の申し込み審査 医師とリース会社 事業計画書、資金計画書などを提出
審査を受けるリース契約 医師とリース会社 リース契約の締結 売買契約 リース会社とメーカー リース契約に基づき売買契約を締結
リース会社が機器を購入機器納入 医師とメーカー クリニックへ直接納入 クリニックへ機器が納入されると、医師は機器を検収し、問題がなければ借受証をリース会社へ提出します。リース料の支払いは、この借受証の発行後に開始されることが一般的です。
リースを活用するメリットと注意点

リース会社や契約内容を選ぶ際の判断ポイント

編集部まとめ

クリニック開業におけるリースは、初期費用を抑えながら高額な医療機器を導入できる選択肢のひとつです。毎月一定額の支払いにより資金計画を立てやすいことと、技術革新のスピードが早い医療機器は、契約期間満了後に新しい機器と入れ替えができる点が大きな利点です。一方で、支払い総額は購入より高くなる傾向で、途中解約が難しいなどの制約もあります。
リースと購入の特徴を理解したうえで、自院の資金計画や運営方針に合った方法を選択しましょう。




