皮膚科を開業するには?必要な準備と差別化戦略、費用などををわかりやすく解説
皮膚科は幅広い年齢層のニーズがあり、安定した経営が期待できる反面、クリニック数も多く競争が激しい領域でもあります。成功するためには、事前準備や戦略が欠かせません。
本記事では、皮膚科クリニックを開業するために押さえておきたいポイントを解説します。
目次
皮膚科開業で押さえておきたい基本ポイント

まずは、皮膚科クリニックを開業するにあたって知っておきたい基本事項を確認しておきましょう。
ほかの診療科と比べた皮膚科開業の特徴や市場ニーズを理解し、自院のターゲット層や診療コンセプトを明確にしておくことが、開業成功の第一歩です。皮膚科開業の背景となる需要や、方針決定とコンセプト策定の重要性を解説します。
皮膚科開業の特徴と市場ニーズ
皮膚科は患者さんの年齢や性別を問わずニーズが存在し、安定した来院が見込める診療科です。
高齢の方の皮膚疾患の悩み、若年層や中年層のニキビやアトピー、シミやそばかすなど、皮膚の悩みは尽きません。
老若男女問わず日常的に皮膚トラブルを抱える方が多く、リピート率の高い皮膚科は、収益の安定性が期待できます。
さらに最近では美容医療への関心が高まり、美容皮膚科分野の市場規模も拡大しています。しかし、都市部などの皮膚科医が多い地域であれば、患者さんの奪い合いになる地域もあります。
また、皮膚科は手術設備や入院設備を必要としないケースが多く、開業に必要な医療機器もほかの診療科よりシンプルで済むため初期費用を抑えやすいという特徴があります。入院設備や高度な手術機器が必要な外科などに比べると準備資金が少ない傾向です。
ターゲット層を明確にすることの重要性
皮膚科は幅広い層の患者さんのニーズに応えられる科ですが、ターゲット層を絞り込んで明確にすることが重要です。
自院のターゲットを定め、その層に響く診療内容や設備、サービスを整えることで競合が多いエリアでも差別化が可能です。
近隣に競合クリニックがある場合も、それぞれの患者層や提供内容を調べて棲み分けを図ることができます。地域の需要と他院の傾向を踏まえ、自院がどの層にどのような価値を提供するのか明確にしておきましょう。
診療方針の決め方
開業前に診療の方向性をしっかり決めておくことで、後の設備投資や集患施策をブレずに計画できるため、まずは軸となる方針を固めましょう。
具体的には、保険診療を中心に幅広い疾患を診るのか、美容皮膚科として自由診療メインで行くのか、両方をバランスよく組み合わせるのかを決めます。この方針によって、必要な設備や内装デザイン、マーケティング戦略が大きく左右されます。
皮膚科開業で診療コンセプトが重要な理由
診療方針とターゲットが定まったら、それを踏まえてクリニックの診療コンセプトを明確に打ち出すことが大切です。コンセプトとは「患者さんにどのような価値を提供するクリニックか」を端的に表すものです。
「近所に皮膚科があるから行く」という状況ではなく、「このクリニックに行きたい」と思ってもらうためには他院にはない強みや特色が必要です。
コンセプトはホームページや広告のメッセージ、クリニック名などあらゆる面に反映されるため、一貫性を持たせましょう。コンセプトに見合った診療内容とサービスや内装、スタッフ対応を整えることで、患者さんの満足度につながりリピーター獲得にも有効です。
皮膚科クリニックの立地・物件選びのポイント

開業場所の選定はクリニック経営の成否を左右する重要な要素です。優れた診療を提供できても、立地選びを誤ると十分な患者さんが来院しないリスクがあります。ここでは、皮膚科クリニックならではの立地や物件選びのポイントを解説します。
競合皮膚科を調査する
開業候補エリアで競合となる皮膚科クリニックの調査は欠かせません。診療圏の分析では、単に近隣に皮膚科が何軒あるかだけでなく、それぞれのクリニックが提供する診療内容や患者層まで把握することが重要です。
具体的な調査方法としては、診療圏調査を専門業者や開業支援サービスに依頼する方法があげられます。
診療圏調査とは、候補地からの通院圏内人口や年齢分布、周辺医療機関数とその診療内容、医療機関あたりの人口などの調査です。
これにより想定される月間患者数や想定されるターゲット層の人数などを予測しやすくなります。
また、地図アプリのレビュー評価なども活用して、患者さん視点で競合の不満点や満足点を研究すると、自クリニックの設計やサービス向上のヒントになります。開業前には必ず周辺競合の分析を行い、自院が勝負できるポイントを見極めておくことが大切です。
ターゲット患者層に合った立地を選定する
物件選びは、ターゲットとなる患者さんが通いやすい立地を優先的に考えましょう。人通りだけでなく、狙う患者層に合わせて、駅からのアクセス、平坦さ、駐車場の有無などを考慮する必要があります。
公共交通機関が発達していないエリアは広い駐車場が欠かせません。一方で電車やバス移動が多いエリアは、駅の近くやオフィス街、住宅街の近くといった立地は患者さんが集まりやすいといえます。
子育て世代をターゲットにする場合は住宅街の近く、自由診療の美容医療を提供する場合は、駅からのアクセスがよい場所という風に、ターゲットの患者さん層に合わせて検討するとよいでしょう。
患者層と診療内容を考慮して物件を選ぶ
物件選びの際は、立地条件に加えて物件自体の特徴も慎重に見極めましょう。
まず確認したいのは、物件の広さや間取りです。一般皮膚科中心なら手術室などは不要のため狭い場所でも開業が可能ですが、美容施術を本格的に行うならレーザー機器設置や施術室スペースを確保するためより広い場所が必要です。
次に物件の構造や設備面です。
例えば、高齢の方やベビーカー利用者に配慮するならエレベーターの有無やスロープ設置可能かといったバリアフリー対応が重要になります。候補物件では実際に現場に行き、周囲の人通りや交通量、ほかのテナントの業種なども観察し、総合的に判断することをおすすめします。
皮膚科開業に必要な設備と機器選定

皮膚科クリニックで必要となる医療設備や機器類の選定について解説します。皮膚科は他科に比べ特殊な大型機器が少ないとはいえ、診療内容によって導入すべき設備が大きく異なります。
一般皮膚科診療で必要な設備
まず一般的な皮膚科診療で必要となる基本的な医療設備を押さえておきましょう。
- ダーモスコープ
- 紫外線照射装置(UV療法機器)
- 液体窒素スプレー(凍結療法器具)
- 顕微鏡(真菌検査など)
- 処置用のベッドや無影灯
- 基本的な外科処置セット
- 電子カルテ
- 患者呼び出しシステム
- 院内の衛生管理設備(オートクレーブ滅菌器など)
これら一般皮膚科の設備は、他科に比べて設備投資額を抑えられる傾向があります。開業時は基本的な機器から揃えるとよいでしょう。
基本的な診療に支障がない範囲でコストを抑え、経営が軌道に乗った段階で追加設備を検討することも可能です。
美容皮膚科を行う際の追加設備
美容系の施術には専用の医療機器が欠かせません。
代表的なものとしてレーザー機器が挙げられます。シミやそばかす治療、ホクロやイボの除去や脱毛にはレーザー機器が必要です。美容医療の領域は装置の新陳代謝も早く、数年で旧式になる可能性もあるため、導入機器は慎重に検討しましょう。
将来的な拡張を見据えた機器導入計画
機器の導入計画を立てる際には、開業時にすべてを揃えようとしないことも大切です。クリニック開業ではいろいろと機器を導入したくなりますが、過剰な設備投資は初期費用を押し上げるだけでなく、借入金の返済負担となって経営を圧迫しかねません。
診療に直結する設備に絞り、専門的な検査機器などは必要に応じて外部委託するという手段もあります。美容施術用の高価な機器類は、リースやレンタルを活用してもよいでしょう。
皮膚科開業までの流れと費用

ここでは、実際に皮膚科クリニックを開業するまでの全体的な流れと、必要となる期間や費用の目安について解説します。
皮膚科開業までの一般的な期間
皮膚科クリニックの開業準備には1年前後の期間があるとよいでしょう。個々のケースで前後しますが、準備すべき事項が多岐にわたるため、ゆとりを持ったスケジュールを組むことが大切です。
物件探しに時間がかかるケースや、内装工事や機器納入に想定以上の時間がかかることもあります。特に、人気エリアでの物件確保や融資審査には数ヶ月単位の時間を要するため、逆算して早め早めの行動を心がけましょう。
皮膚科開業までの流れ
皮膚科クリニック開業までの一般的なステップは以下のとおりです。
- 開業の意思決定とコンセプト設定
- 診療圏調査やエリアの選定
- 資金計画と融資相談
- 物件探し・契約
- 設計施工の打ち合わせ・内装工事
- 医療機器・備品の選定・発注
- スタッフ採用・研修
- ホームページ・予約システム準備
- 各種届出・保健所対応
- 内覧会・開業
以上が大まかな流れですが、実際には複数の準備を並行して進める必要があります。一人ですべて管理し、遂行するのは大変なため、開業コンサルタントや各分野の専門家からサポートを受けるのもよいでしょう。
皮膚科開業時に必要な手続き
クリニック開業には、行政への各種手続きと届出が必須です。診療所の開設届は、医療法で開業後10日以内の提出が義務付けられています。届出制のため届出内容の審査はありませんが、怠ると罰則があります。
次に、保険診療を行うための保険医療機関の指定申請を開業日に合わせて提出します。これがないと保険診療の報酬請求ができません。
そのほかにも、薬局併設(薬局開設許可申請)やX線機器設置(X線装置備付届)、医療廃棄物契約など、クリニックの状況に応じた手続きもあります。
開業後は社会保険診療報酬支払基金への届出などもあるので、必要な申請書類のリストを作成し、漏れなく対応しましょう。
皮膚科開業に必要な資金の目安
皮膚科クリニック開業資金の目安は、物件取得費、内装費、医療機器費、運転資金などを含めて保険診療中心で約5,000~7,000万円です。
美容皮膚科を導入する場合は高額機器が必要となり、総額1億円近くになることもあります。
資金計画は、自院のモデルに合わせて項目ごとの費用を積み上げ、余裕を持った総額を算出することが重要です。
自己資金だけで賄うのは難しいため、日本政策金融公庫や銀行融資を計画的に活用し、開業後に資金繰りに困らないよう準備しましょう。
皮膚科開業のための集患とマーケティング
皮膚科クリニックを開業した後、いかに患者さんに来てもらうか(集患)は経営の生命線です。特に昨今はクリニック間の競争が激しく、患者さんがクリニックを選ぶ時代です。
ここでは、開業前後に取り組むべき集患対策や、皮膚科に適したマーケティング方法について解説します。
皮膚科は開業前後の集患が重要
皮膚科の新規開業では、競合が多いなかで患者さんを待つだけでは集まりません。開業前から情報発信や広報を積極的に行い、早期に知名度を上げることが不可欠です。
具体的な施策は下記のとおりです。
- 開業前の内覧会の実施
- チラシ配布
- ホームページやSNSでの情報発信
- 事前予約対応
オフラインとオンライン両面での施策が効果的で、特に皮膚科は美容目的の患者さんもターゲットになるため、Webと地域密着の宣伝の両輪が重要です。開業後も継続的な情報発信と丁寧な診療を心がけ、近隣の患者さんに知ってもらえるよう努力が必要です。
皮膚科に適した集患・マーケティング方法
皮膚科クリニックの集患には、Webマーケティングが効果的です。使いやすい公式サイトで、医師の専門性やクリニックの強み、有益な皮膚情報を発信しましょう。
また、Googleマップに正確な情報を登録し、患者さんの評判の管理に努めることやSNSで症例や美容情報を発信することも大切です。
さらに、保険診療の患者層が幅広い皮膚科では、チラシのポスティングや近隣医療機関との連携など、地域に根ざしたオフライン施策も重要です。
美容皮膚科の設備や、一般皮膚科の得意分野を明確に打ち出し、自費診療あるいは保険診療の範囲を丁寧に案内することで差別化を図り、新たな患者さんを呼び込むことができます。
まとめ

皮膚科開業は、患者さんニーズに応えるやりがいと安定性がある反面、競争に勝つには準備と戦略が必要です。
成功するためには、タイミングや立地、資金、スタッフ体制などの準備が欠かせません。開業後も患者さん目線でのサービス向上と差別化を続けることが重要です。
本記事の内容を活かし、理想のクリニック像を具体化し、長く愛されるクリニックを目指し戦略的に準備を進めましょう。




