クリニック開業のデメリットは?やめた方がよいといわれる理由と対策とは
医師として働くなかで、「いつか自分のクリニックを開業したい」と考える方もいるでしょう。一方で、近年は「クリニック開業はやめた方がよい」という声も聞かれます。開業には自由度ややりがいがある反面、経営リスクや負担も伴うためです。本記事では、クリニック開業のデメリットや「やめた方がよい」といわれる理由について解説し、それらへの対策やメリットについても解説します。
クリニックを開業するデメリット

「開業医はやめておけ」と言われる主な理由は、大きく3つあります。
1つ目はハイリスク・ハイリターンな点です。開業すると経営が成功したときのリターンは大きいですが、その分失敗したときのリスクも勤務医以上に大きくなります。
2つ目は必ずしも開業医自身が高額の報酬を得られるわけではない点です。自由診療を取り入れるなど工夫しても、開業医が必ず高収入を得られる保証はありません。利益が出ない月でも従業員への給与やテナント料、借入金の返済は継続する必要があり、利益が出なければ院長の手取りは大きく減少します。
3つ目は勤務医時代の想像以上に激務になる可能性がある点です。開業医には医師としての診療だけでなく経営者としての仕事も数多く発生します。このようにリスクや負担の大きさから、「クリニック開業はやめた方がいい」といわれることがあります。
開業することは医師としてのキャリアパスに大きな転機をもたらします。
まず一度開業医になると、再び勤務医に戻りづらい点が挙げられます。開業医と勤務医では求められるスキルや働き方が異なるため、仮に廃業しても、経営者経験を経た後に人に雇われる立場に戻ることへ抵抗を感じる医師もいます。
また、雇用する側から見ても、年齢や開業経験がある医師の採用を見送るケースがあり、転職に苦労する可能性があります。
さらに、開業すると大学医局や病院での昇進コースから離れることになるため、大学病院の教授職や大病院の部長職といった従来のキャリアを手放すことにもなります。自身の理想とする医療を提供しつつキャリアを継続できる点は開業の魅力ですが、軌道に乗らなければキャリアの軌道修正が難しいという点は心得ておく必要があります。
資金面での大きなデメリットは、初期投資と運転資金の負担です。
クリニック開業には診療科にもよりますが、数千万円規模の初期資金が必要です。自己資金だけで賄えない場合は金融機関からの借入に頼ることになりますが、当然借入金は開業後に返済していかなければなりません。経営が順調でないときも返済の重圧がのしかかり、精神的な負担になることがあります。
また、開業後もスタッフの給与、クリニックの家賃や光熱費、医薬品や消耗品の仕入れ費用、設備の維持管理費、税金などの固定費がかかります。
開業医には診療以外の業務負担が格段に増えます。クリニックの院長になるということは、医師であると同時に経営者として全責任を負う立場になることです。
患者さんの診察だけでなく、クリニックの経営状況まで気を配り、財務管理や経費削減策を考える必要があります。また、人材マネジメントの負担も大きいです。
スタッフの採用・教育、シフト管理、給与計算など、人を雇わない限り発生する事務作業のすべてを自分で対応しなければなりません。加えて、院長としてスタッフや患者さんからさまざまな相談や要望が寄せられるため、人間関係の調整にも時間と労力を割くことになります。こうした業務上および精神上の負担は勤務医時代に比べ増加します。
さらに、医療トラブルやクレームが発生した場合にも、自分が責任者として最終対応を行う必要があります。そのため、常に緊張感を伴い、経営の不安や訴訟リスクと隣り合わせのプレッシャーを感じる場合もあります。このように、クリニック開業により医師には診療以外のさまざまな責任と業務負担が増えることを覚悟しなければなりません。
クリニック開業のメリットと魅力

デメリットばかりではなく、クリニック開業には大きな魅力やメリットも存在します。
まず挙げられるのは収入面です。クリニックの経営が軌道に乗り利益を出せれば、勤務医では得られない高収入を得る可能性があります。
次に、理想の医療を実現できる点も大きなメリットです。開業医は経営者としてすべての方針を自分で決められるため、診療時間・休日、導入する医療設備、診療方針やクリニックの雰囲気に至るまで、自分の理想とする医療環境を一から作り上げることができます。
また、定年がないこともメリットの一つです。病院勤務医の場合、一般的に60~65歳で定年となるケースが多いですが、開業医であれば自分の体力・気力が続く限り何歳になっても現役の医師として働き続けることが可能です。このように、収入アップの可能性や理想の医療の追求、生涯現役でいられる自由度などがクリニック開業のメリットといえるでしょう。
クリニック開業によって医師の働き方は大きく変化します。まず、勤務時間やスケジュール面の自由度が増します。勤務医の場合は病院の勤務シフトに従う必要がありますが、開業医になれば自院の診療時間や休診日を自分で決定できます。その結果、家族との時間を取りやすくなるなどワークライフバランスの改善を感じる医師もいます。
クリニック開業のデメリットを回避する方法

はい、いくつかの対策によって開業資金に関するリスクを軽減することが可能です。
まず重要なのは綿密な資金計画を立てることです。開業資金は初期投資と運転資金に分けられますが、初期費用の準備ばかりに気を取られ、開業後の運転資金が不足するケースがあります。
これを防ぐために、最低でも3~6ヶ月分の運転資金を手元に確保しておくことがよいでしょう。開業直後は患者数が安定せず収入が読みにくいため、半年程度は赤字でも回る資金があれば精神的な余裕が生まれます。
また、公的な支援制度を活用することも検討してください。日本政策金融公庫や自治体、厚生労働省系の制度には、医師の開業向けに低金利で融資を受けられる新規開業資金制度や、医療機器導入時の補助金や助成金制度があります。これらは緩やかな条件で資金援助を受けられるため、積極的に情報収集し利用できるものは取り入れましょう。
このように、事前の計画と工夫次第で資金面のリスクを大きく減らすことが可能です。
開業医が背負う人材管理や事務作業の負担を軽減するには、人に任せ、仕組み化するとよいでしょう。まず人に任せる面では、信頼できるスタッフを採用し権限移譲することが重要です。ただし、他人に任せる場合でも最低限の知識は持っておかないと、任せた相手が信頼できるか見極めるのが難しいため、基本的な経営・会計知識の習得は必要です。
次に仕組み化する面では、ITツールや外部サービスを活用することが挙げられます。電子カルテや予約システムを導入してカルテ管理・会計処理を自動化すれば、事務作業の手間が減りスタッフの負担も軽くなります。
また、給与計算や社会保険手続きなど煩雑なバックオフィス業務は社労士や税理士と顧問契約を結んでアウトソーシングするのがよいでしょう。任せるところは任せ、効率化できるところは効率化することが、開業医の負担軽減につながります。
クリニック経営において集患は最重要課題であり、その成否は事前準備と開業後の取り組みに大きく左右されます。まず、開業前には地域の人口構成や競合状況を分析し、地域ニーズに合った診療科目やサービスを明確にすることが不可欠です。
また最近の開業では、Webを中心とした広報や宣伝が欠かせません。ホームページやSEO対策、Googleマップの評価の整備、SNSでの情報発信により、患者さんとの接点を増やします。
加えて、内覧会やチラシ配布などのオフライン施策も、地域での認知向上に有効です。こうした取り組みが、持続的なクリニック経営を支えます。
編集部まとめ

クリニック開業は、理想の医療を実現できる魅力がある一方で、経営リスクや資金負担、診療以外の業務増加などのデメリットも伴います。そのため「やめた方がよい」といわれることもありますが、綿密な資金計画や人材や業務の仕組み化、地域ニーズを踏まえた集患対策を行うことで、リスクは十分に軽減可能です。メリットとデメリットを正しく理解し、準備を怠らず戦略的に進めることが、納得のいくクリニック開業への近道といえるでしょう。




