診療報酬とは?種類や計算例などについて簡単に解説!
投稿日:
2024.01.16
更新日:2024.03.05
診療報酬とは何か知っていますか?聞いたことはあってもどういう仕組みのものなのか分からないという方もいるのではないでしょうか。今回はこの診療報酬がどういうものなのか、どういう仕組みで誰に請求されるものなのかなどを紹介します。患者さんが普段持っている医療機関への素朴な疑問は診療報酬と密接な関わりがあることも多いので、患者さんと医師との両方の立場から読んでいただき参考になさってください。
診療報酬とは
ここでは診療報酬の基礎的な部分を説明します。概要の把握に役立ててもらえればと思います。
- 診療報酬とはどういうものですか?
- 患者さんを診察、治療した際に、行った医療行為の対価として医療機関が受け取るものを診療報酬と呼びます。薬局も同様に、薬を処方するという医療行為に対して、診療報酬を受け取っています。ただし、診療報酬は患者さんが全額を負担するわけではありません。年齢や所得に応じて特例はあるものの、基本的には診療報酬総額の3割を患者さんが負担し、残りは加入している医療保険組合や協会が支払う決まりになっています。名前から診療報酬は医師の報酬、すなわち給料だと思ってしまう方も少なくありませんが、これは間違いです。診療報酬からは、医師の給与だけでなく看護師やスタッフの給与、医薬品等の購入費、施設維持費、管理費などもまかなわれています。診療報酬は点数で表され、現在は日本全国どこでも一律で「1点=10円」で計算されています。どのような医療行為に何点加算されるかというのは厚生労働省で決められており、保険範囲内のものであればクリニックによって値段が違うということはありません。診療報酬にかかる点数などは2年に1度改定されており、日本の医療の発達状況や経済状況に応じて細かく調整されています。
- 診療報酬を点数で表すのはなぜですか?
- 一見分かりづらいこの点数制ですが、物価変動が起きたときにも診療報酬を変えずに済むというメリットがあります。物価が現在の2倍になったとき、それに応じて診療報酬の金額を上げる動きになったとします。そのときにも診療報酬自体を変えるのではなく、「1点=20円」という計算方法に変えれば良いだけなので比較的スムーズに物価変動に対応することができます。
- 診療報酬の種類について教えてください。
- 診療報酬は、基本診療料と特掲診療料に分けられます。基本診療料とは初診料や再診料などのように診療行為をするためにかかる基本的な費用を算定したもののことで、入院基本料などもここに入ります。一方、特掲診療料とは患者さんに応じて行う検査や処置、投薬などにかかる費用を算定したものです。これらを合算して最終的な診療報酬が決まります。
- 診療報酬の計算例を教えてください。
- 「冬に、発熱症状がある患者さんを診療し、インフルエンザであるかどうかの検査も一緒に行った」という場合は次のような診療報酬が想定されます。一般的な例では「初診料288点+機能強化加算80点+インフルエンザ・ウイルス抗原定性139点+鼻腔・咽頭拭い液採取5点+免疫学的検査判断料144点+処方箋料(その他)68点+一般名処方加算1 7点=731点」となります。先述したように現在は「1点=10円」なのでこの場合の診療報酬は7310円となります。3割負担の場合は2193円となりますが、10円以下は切り捨てるという決まりがあるため、患者さんの窓口で支払う負担額は2190円となります。○○加算や○○料などの項目は多岐にわたり、6歳未満の子どもが受診した際に加算される「乳幼児加算」や、診療時間以外の時間に診療を行った場合に加算される「時間外加算」が追加される場合もあります。
診療報酬の仕組み
診療報酬にはさまざまな決まりがありますが、それを決定しているのは誰なのでしょうか。また、診療報酬はどこへ請求してどこから支払われるのでしょうか。ここでは、診療報酬の仕組みについてもう少し詳しく紹介していきます。
- 診療報酬を決定しているのはどこですか?
- 最初に触れたとおり、診療報酬にかかる点数などはすべて厚生労働省で最終決定されています。しかし、診療報酬については2年に1度改定がされているため診療報酬の詳細は年度によってまちまちです。そのため、診療報酬に関わる医療文献や厚生労働省の文書などを読む際は、いつの資料なのか、そのときの診療報酬の詳細はどうだったかというところも 併せて確認しておく必要があるでしょう。
- 診療報酬を請求する方法について教えてください。
- 診療報酬で計算された金額の一部は窓口等で患者さんが負担しますが、残りの診療報酬は、医療機関が審査支払機関へ請求する仕組みとなっています。請求のためには、入院、外来、調剤、歯科のそれぞれで行った、検査や治療内容、調剤内容、点数などが記載されているレセプト(診療報酬明細書)を提出する必要があります。提出したレセプトは、審査支払機関からさらに保険者に提出され、保険者から患者負担分を引いた診療報酬額が支払われます。診療報酬を請求する際、医療機関と保険者の直接やりとりではなく、第三者機関である審査支払機関を介するのは、審査の公正性を守るためであるのはもちろんですが、支払い業務の効率化のためでもあります。審査支払機関の中には「診療担当者代表」「保険者代表」「学識経験者」の3人で構成されている「審査委員会」というものがあります。この審査委員会がレセプトを確認し、記載不備がないかや診療行為は問題ないものだったか、使用した医薬品が患者さんの症状に適していたかなどをチェックします。問題がなければそのままの内容で保険者へ請求されます。審査の際に記入漏れがあったり、不審な点があったりした場合は、その場で審査支払機関から医療機関にレセプトが差し戻され、場合によっては診療報酬の点数が減らされることもあります。こうした専門の機関を通すことで、保険者は審査に通ったもののみに支払いを済ませば良いので、効率的に支払いが進むという仕組みになっています。
- 診療報酬の改定はなぜ行われるのですか?
- 2年に1度行われる診療報酬改定の際は、公益委員、診療側委員、支払側委員の3者で構成されている中央社会保険医療協議会という厚生労働省の諮問機関を通して診療報酬の見直しが行われています。さまざまな視点からの議論を重ね、診療報酬の点数などに変動が起こります。増税に伴って行われる診療報酬改定もあり、どちらか一方のみが不利益を被らないように複数の機関が意見を出し合い、細かく調整されています。
診療報酬の必要性と問題点
診療報酬についてここまで説明してきましたが、そもそも診療報酬はなぜ必要なのでしょうか。ここでは、診療報酬制度の必要性と問題点について紹介します。
- 診療報酬が必要な理由について教えてください。
- 説明したとおり、診療報酬は全国一律で請求できる点数が決められています。そのため、受診するクリニックによって診察料が異なったり不当な金額を請求されたりすることはありません。現在は診療報酬の1~3割を患者さんが負担し、その他は保険者から支払われることになっていますが、診療報酬制度が今のように機能しなくなると、患者さんの負担額が増えたり、クリニックによって支払金額に大幅な差がでたりということが起こり得ます。支払う額が大きくなると受診する患者さんも減り、医療機関の売り上げも減ってしまいます。そうなると医療機関はさらに値上げを検討せざるを得なくなり、現在のように気兼ねなく受診できる環境はなくなってしまうでしょう。そのため、現在のように診療報酬制度が適切に運用されていくことが、私たちの健康を守るために必要不可欠なのです。
- 診療報酬の問題点とは何ですか?
- 診療報酬の請求時に必要となるレセプト整理と提出が医療機関の業務を圧迫していることが問題視されています。しかしながら、不備等があると診療報酬が減点されてしまう恐れもあるため、現状では時間をかけてでもレセプトを提出せざるを得ない状況となっています。
編集部まとめ
いかがでしたでしょうか。診療報酬は私たちの健康を守るためにも医療機関の経営のためにも必要なものです。患者さんが少額の窓口負担金額で医療機関を受診できる環境を守るために、適正な診療報酬の確保が常に求められています。