クリニック開業に必要な備品リスト|準備すべき設備・消耗品を完全ガイド

クリニックを開業する際には、診療をスムーズに行うための医療機器・家具・事務機器・消耗品など、多くの備品を準備する必要があります。しかし、「どんな備品を揃えればよいのか」「優先順位はどう決めるべきか」と悩む医師も多いでしょう。
本記事では、クリニック開業に必要な備品リストをカテゴリーごとに詳しく解説します。開業準備のスケジュール管理にも役立つので、ぜひチェックしてみてください。
目次
クリニック開業に必要な備品とは?基本の考え方

診療科目によって必要な備品が異なる
クリニックの備品は、診療科目によって異なります。例えば、内科であれば診察用のベッドや血圧計、心電計、皮膚科ではダーモスコープやレーザー治療機器、整形外科では骨や筋肉、関節の診療を行うため、X線装置や理学療法機器などの専門機器が必要になります。
このように診療科目によって必要な備品が異なるため、開業前に診療内容を明確にし、それに合った機器を選定することが重要です。
以下のポイントを考慮して、必要な備品をリストアップしましょう。
- 診療内容に必要な機器は何か?
- 最低限の設備で開業できるか?
- 今後導入予定の機器はあるか?
予算配分を考えながら優先順位を決める
開業時は設備投資にかかるコストが高額になります。そのため、備品を購入する際には優先順位を決めて計画的に進めることが大切です。
優先順位の決め方のポイント
- 必須備品(診療に不可欠なもの)
- 業務の効率化を図る機器(電子カルテや予約システムなど)
- 患者満足度を向上させる設備(快適な待合室の家具や空気清浄機など)
診察・診療に必要な医療機器リスト

診察や診療を行うために必要な基本的な医療機器をリストアップします。
基本的な診察機器
- 診察台:診察・処置時に使用
- 聴診器:内科・小児科などで必須
- 血圧計・体温計・パルスオキシメーター:バイタルチェック用
- 超音波診断装置(エコー):必要に応じて
- 心電計:循環器系疾患の診断に使用
診療科目別の特化機器
- 皮膚科:ダーモスコープ、レーザー治療機器
- 整形外科:レントゲン装置、骨密度測定装置
- 耳鼻咽喉科:内視鏡、オージオメーター
設備投資の際は、新品だけでなく中古機器の購入も検討するとコストを抑えられます。
院内設備・家具のリスト|患者さんが快適に過ごせる空間作り

待合室の設備
待合室は、患者さんが診察までの時間を過ごす空間です。快適な環境を整えることで、患者満足度の向上やストレスの軽減につながります。以下の備品を準備し、過ごしやすい待合室を作りましょう。
・快適な待合室づくりのポイント
- 患者さんの動線を考えたレイアウトにする(入口から受付、診察室までの流れをスムーズに)
- 自然光を取り入れ、明るく清潔感のある空間を作る
- 診察待ちのストレスを減らすために、リラックスできる要素を取り入れる(BGM、観葉植物など)
・待合室のイス・ソファ
患者さんの待ち時間が長くなる場合でも快適に過ごせるよう、座り心地の良いイスやソファを配置しましょう。高齢の患者さんが多い場合は、座面が高めで立ち上がりやすい椅子を選ぶのがおすすめです。また、子ども向けの小さな椅子やキッズスペースを用意すると、小児科などでは喜ばれます。
・雑誌やテレビ・ディスプレイ
患者さんの待ち時間のストレスを軽減するため、雑誌や新聞、テレビ、デジタルディスプレイを設置するとよいでしょう。雑誌・新聞:健康情報やライフスタイル誌を揃えると、待ち時間が苦になりにくくなります。
テレビ・ディスプレイでは、ニュースやリラックスできる映像を流すことで、落ち着いた雰囲気を作れます。また、クリニックの診療案内や健康情報を表示するデジタルサイネージも最近注目されています。
・空気清浄機・加湿器
病院やクリニックでは、患者さんが咳やくしゃみをすることが多く、空気中のウイルスや細菌を減らすための対策が必須です。空気清浄機や加湿器を設置し、清潔な環境を保ちましょう。
診察室・処置室の設備
診察室や処置室は、患者さんとのコミュニケーションの場であり、適切な診療を行うための重要な空間です。機能的なレイアウトと設備の整備によって、医師・スタッフの業務効率を向上させるとともに、患者さんが安心して診察を受けられる環境を作ることができます。
・診察室・処置室を快適にするためのポイント
- 診療の流れを考慮し、備品の配置を最適化する
- 患者さんが安心できるよう、整理整頓された清潔な環境を維持する
- 医師・スタッフが動きやすいよう、余計なものを減らしシンプルな空間を作る
・診察デスク・イス
診察デスクは、電子カルテの入力や診療に関する資料を整理するために必要なスペースです。サイズや収納機能を考慮し、機能的で使いやすいデスクを選ぶことが重要です。また、イスは長時間の診療に耐えられるよう、疲れにくい設計のものを選ぶとよいでしょう。
- デスクはパソコンやモニターが置ける広めのものが理想
- イスは高さ調節やクッション性を考慮し、快適に座れるものを選ぶ
- 患者さん用のイスも設置し、安心して相談できる空間を作る
・医療ワゴン
医療ワゴンは、診察や処置に必要な器具・消耗品を収納し、スムーズに取り出せるようにするために不可欠です。キャスター付きのものを選ぶと、診察室や処置室内での移動がしやすくなります。
- 注射器・綿球・アルコール綿などを整理して収納
- 診療科目に応じてカスタマイズ可能な収納スペースを確保
- 使用頻度の高い備品を上段に、予備の備品を下段に配置する
・収納棚・キャビネット
診察室や処置室には、薬品や診療記録、医療機器を適切に収納できるスペースが必要です。薬品や器具は衛生的に保管し、診療時に素早く取り出せるように整理しておくことが重要です。
- 施錠できる収納棚を用意し、貴重品や薬品を安全に保管
- 書類や医療記録を分類しやすいキャビネットを設置
- 清掃がしやすく、ホコリが溜まりにくい設計の収納を選ぶ
受付・会計エリアの設備
受付・会計エリアは、患者さんがクリニックに訪れた際に最初に接する場所であり、クリニックの印象を決める大切なエリアです。スムーズな受付業務・会計処理を行うために、適切な設備を整えることが重要です。
・受付カウンター
受付カウンターは、患者さんとスタッフがコミュニケーションを取る中心的な場所です。患者さんがストレスを感じることなくスムーズに受付を済ませられるよう、適切な設計やレイアウトを考慮しましょう。
- 高さは立った状態でも座った状態でもやり取りしやすいものを選ぶ
- 患者さんのプライバシーを守るため、隣の会話が聞こえにくい設計にする
- 手荷物を置けるスペースや記入台を用意すると、患者さんの利便性が向上
また、受付スタッフが長時間業務を行うため、快適な作業スペースを確保することも重要です。座りやすいイスや書類を整理しやすい収納スペースを整えましょう。
・金庫・キャッシュレス決済端末
会計業務をスムーズに行うためには、適切な決済設備の導入が不可欠です。
金庫:現金の管理を安全に行うため、施錠可能な金庫を設置しましょう。スタッフが使いやすく、かつセキュリティを確保できるタイプを選ぶのがポイントです。
キャッシュレス決済端末:近年、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済など、現金以外の支払い手段を希望する患者さんが増えています。これに対応することで、患者さんの利便性が向上し、会計処理もスムーズになります。
- クレジットカード決済端末(VISA、Mastercard、JCBなど)
- 電子マネー決済(Suica、PASMO、ICOCAなど)
- QRコード決済(PayPay、楽天ペイなど)
キャッシュレス対応を導入すると、現金管理の手間が減り、スタッフの負担も軽減できます。
・診察券発行機・自動受付機
最近では、診察券の発行機や自動受付機を導入するクリニックが増えています。これにより、スタッフの業務負担を減らし、患者さんの待ち時間を短縮することができます。
診察券発行機:患者さんが初診時や診察後に、自分で診察券を受け取れるようにする。
自動受付機:再診の患者さんがスムーズに受付を済ませられるよう、タッチパネル式の受付機を設置すると便利。
特に、電子カルテシステムと連携できる機器を選ぶことで、業務の一元管理が可能になり、より効率的な運用が実現します。
クリニックの運営に必要なIT機器リスト・事務用品

クリニックをスムーズに運営するためには、診療や事務業務をサポートするIT機器や事務用品が欠かせません。特に、近年では電子カルテや予約システムなどのIT機器の導入が進んでおり、効率的な運営には適切な機器の選定が重要です。ここでは、クリニックに必要な事務用品やIT機器について詳しく解説します。
電子カルテシステム
電子カルテシステムは、診療情報をデジタル化し、スムーズな診療をサポートする必須ツールです。
・導入するメリット
- 診療記録の管理が容易になり、紙カルテの保管スペースが不要
- 診療情報を迅速に共有でき、医師・スタッフ間の連携が向上
- 診療履歴の検索が簡単で、過去の診療記録をすぐに確認できる
・電子カルテ選びのポイント
- 操作が直感的で使いやすいか(初めての医師でもスムーズに操作できるか)
- レセプトコンピュータとの連携が可能か(診療報酬請求業務を効率化)
- クラウド型 or オンプレミス型か(セキュリティとコストを比較)
特に近年は、クラウド型の電子カルテが普及しており、初期費用を抑えながら導入できる点がメリットです。
レセプトコンピュータ
レセプトコンピュータ(レセコン)は、診療報酬の請求(レセプト)を行うためのシステムであり、クリニックの収益に直結する重要な機器です。
・レセコンの主な機能
- 診療報酬の計算と請求業務の自動化
- 健康保険の点数計算をミスなく行える
- 電子カルテとの連携でデータ入力の手間を削減
レセコンは、電子カルテと統合されているシステムが増えており、一体型のシステムを導入することで業務を効率化できます。
予約管理システム
患者さんの待ち時間を短縮し、スムーズに診療を行うためには、予約管理システムの導入が効果的です。
・予約システムの主な機能
- オンライン予約機能(患者さんが自宅から予約可能)
- 診察の順番管理(待ち時間の短縮)
- リマインド通知機能(予約忘れを防ぐ)
オンライン予約システムを導入することで、患者さんの利便性が向上し、クリニックの受付業務の負担も軽減できます。
受付・会計システム
会計業務を効率化するために、受付・会計システムの導入を検討しましょう。
・会計システムの主な機能
- 診療報酬の計算を自動化
- キャッシュレス決済への対応(クレジットカード・QR決済など)
- レセプトコンピュータとの連携で正確な請求を実現
特に、キャッシュレス決済の需要が高まっているため、クレジットカードや電子マネー対応のシステムを選ぶと、患者さんの利便性が向上します。
パソコン・プリンター・コピー機
クリニックでは、診療情報の管理だけでなく、書類作成や印刷業務も頻繁に発生します。そのため、パソコンやプリンター、コピー機は欠かせません。
・パソコンの選定ポイント
- 電子カルテ・レセコンがスムーズに動作するスペックを選ぶ(CPUやメモリを考慮)
- デスクトップ型 or ノート型の選択(受付や診察室での使用目的に応じて)
- バックアップ対策を考え、クラウドストレージの活用も検討する
・プリンター・コピー機の選び方
- カルテや処方箋の印刷が多い場合は、高速プリンターを選ぶ
- スキャナー付きの複合機を導入すると、紙の書類をデジタル管理しやすくなる
- インク代やランニングコストも考慮し、コストパフォーマンスの高い機種を選ぶ
また、患者さん向けの資料や説明書を印刷する場面も多いため、カラー印刷が可能な機種を選ぶと便利です。
Wi-Fiルーター・ネットワーク環境
近年では、オンライン診療やクラウド型の予約システムを導入するクリニックが増えており、安定したインターネット環境が必須となっています。
・Wi-Fi環境のポイント
- クリニック全体をカバーできる高性能Wi-Fiルーターを導入
- 電子カルテやレセコンが安定して動作するネット回線の選定
- 患者さん向けにフリーWi-Fiを提供する場合は、セキュリティ対策を徹底
オンライン診療やクラウド型システムを活用する場合は、通信速度が速く、安定した回線を選ぶことが重要です。
消耗品・衛生管理に必要な備品リスト

クリニックでは、日々の診療において消耗品や衛生管理用品が欠かせません。診療に使用する医療消耗品だけでなく、感染症対策や院内の清潔維持のための備品も必要です。消耗品は頻繁に補充が必要なため、適切な在庫管理と仕入れの計画を立てることが重要です。
手袋・マスク・ガーゼ・包帯
クリニックでは、診察や処置の際に医療用手袋・マスク・ガーゼ・包帯を頻繁に使用します。これらは衛生管理の基本となる消耗品のため、常に十分なストックを確保しておくことが重要です。
消毒液・アルコールジェル
感染症対策として、手指消毒・診療機器の消毒・環境消毒のための消毒液やアルコールジェルは必須です。
医療廃棄物処理用品
クリニックでは、使用済みの注射器や血液が付着したガーゼなど、特別な処理が必要な医療廃棄物が発生します。これらを適切に処理するための専用用品を準備しましょう。
掃除用具・クリーニング用品(院内の清潔維持)
清潔な環境を維持するためには、定期的な清掃と適切なクリーニング用品の使用が必要です。
備品の購入方法とコスト管理のポイント

クリニックを開業する際、備品の購入方法やコスト管理の工夫次第で、初期費用やランニングコストを抑えることができます。適切な備品選びと費用管理を行うことで、無駄な出費を減らし、経営の安定につなげることが可能です。
新品 vs. 中古の選択
新品のメリット:保証期間がある、最新機能が搭載されている
新品を選ぶ方が安全性が高い機器や長期的な費用対効果を得られる機器は新規購入を考えると良いでしょう。
中古のメリット:コスト削減ができる、初期費用を抑えられる
コスト削減のために、中古品でも問題なく使用できる備品もあります。中古品を購入する場合は、信頼できる業者から購入し、保証があるかどうかを確認することが重要です。
まとめ買いの活用
備品や消耗品はまとめ買いを活用すると、コストを抑えやすくなります。しかし、すべての備品を大量に購入するのが得策とは限らないため、メリットとデメリットを理解して活用しましょう。
- 消耗品や医療機器は、まとめ買いすると割引が適用されることが多い
- 定期購入契約を活用してコストを抑えながら安定供給を確保する
クリニック開業前に備品チェックリストを作成しよう

クリニック開業時には、多くの備品を準備する必要があります。しかし、準備不足や不必要なものの購入は、開業後の運営に影響を及ぼす可能性があります。そのため、開業前に備品チェックリストを作成し、計画的に備品を揃えることが重要です。ここでは、備品チェックリストの作成方法と最終確認のポイントについて詳しく解説します。
チェックリストの作成方法
クリニックで必要な備品は、診療科目や診療内容によって異なります。そのため、まず診療に必要な機器や設備をリストアップし、それに基づいて購入計画を立てることが重要です。
- 診療科目ごとに必要な医療機器をリストアップする
- 例:内科なら聴診器・血圧計・心電計、整形外科ならレントゲン装置・骨密度測定器など
- 院内設備(家具・事務機器・消耗品)をリストに加える
- 待合室・診察室・受付など、各エリアごとに必要な備品をリストアップ
- 優先順位を決める
- 開業時に必ず必要なものと、開業後に追加できるものを分類する
- コスト管理を意識する
- 新品か中古か、まとめ買いができるかなど、予算内で収める工夫をする
このように、診療科目と院内エリアごとに必要な備品を整理し、優先順位をつけることで、無駄なく準備を進めることができます。
最終チェックのポイント
- 医療機器の動作確認
- 電子カルテや診療機器(超音波診断装置、心電計など)の動作テストを行う
- 万が一の不具合に備え、開業前にメーカーのサポートを受けられるか確認する
- 事務機器・IT機器の接続チェック
- レセプトコンピュータ、プリンター、Wi-Fiなど、ネットワーク環境を確認
- 予約システムや会計システムが正常に作動するか試運転する
- 消耗品・備品の補充状況を確認
- 診療で使用する手袋・マスク・消毒液・薬品などが適切な数量揃っているかチェック
- 受付・会計システムのテスト運用
- 患者受付、会計処理、キャッシュレス決済の動作確認を行う
- スタッフの研修と備品の配置確認
- スタッフがスムーズに診療を行えるよう、備品の配置を最適化する
- 受付や診療室のレイアウトを再確認し、動線がスムーズかチェック
特に電子機器の不具合やトラブルは、開業後の運営に大きな影響を与えるため、事前のテストが欠かせません。
開業後の備品の見直し
開業後に運営を進める中で、実際に診療を行うことで「必要な備品」や「不要なもの」が明確になってきます。そのため、開業直後だけでなく、定期的に備品を見直し、最適な環境を整えることが大切です。
まとめ
クリニック開業には、診療機器や家具、事務機器、消耗品など多くの備品を準備する必要があります。診療科目に応じたリストを作成し、優先順位を決めながら計画的に準備を進めましょう。
この記事を参考に、開業準備をスムーズに進めましょう。