TOP > 開業の準備、開業とは > クリニックをテナントで開業するには?メリットや課題、チェックポイントを解説

クリニックをテナントで開業するには?メリットや課題、チェックポイントを解説

                   
投稿日: 2025.08.05
更新日:2025.11.13
                   

ビルや商業施設の一室を借りるテナント開業は、クリニック開業の選択肢の一つです。テナント契約での開業は初期費用を抑えられる反面、契約条件や設備面で注意すべき点もあります。

本記事では、テナント開業のメリット・デメリットから、物件選びの方法や内見時のチェックポイント、契約時の注意点まで、開業準備中の医師が知っておきたいポイントを解説します。

クリニックをテナント契約で開業するメリットと課題

クリニックをテナント契約で開業するメリットと課題
テナント契約でクリニックを開業するメリットを教えてください

テナント物件でのクリニック開業は、土地や建物を購入したり建築したりする必要がないため、初期投資を大幅に削減できます。また、テナントは駅前ビルや商業モールなど人通りが多く集患に有利なエリアにあることも多く、好立地開業できる可能性が高まるほか、建物の保守管理はオーナー側が行うのが一般的で、外壁補修や設備更新などのコスト負担がない点もメリットです。

テナント契約でのクリニック開業に懸念点はありますか?

テナント契約でクリニックを開業する際の課題やデメリットは以下のとおりです。

  • 継続的に賃料負担が発生する
  • 内装デザイン・設備に制約がある
  • 契約期間やオーナー都合のリスクがある
  • 原状回復費用が発生する
  • 資産形成につながらない

これらの課題を踏まえ、テナント開業では賃料負担に見合う十分な集患が見込めるか、物件条件がクリニック運営に適しているかを慎重に見極めることが重要です。

テナント以外でクリニックを開業する方法を教えてください

テナント以外では、自ら土地や建物を用意する戸建て開業があります。土地を購入して建築したり、中古建物を取得してクリニックに改装したりする方法です。初期費用は高額になりますが、思いどおりの設計が可能で不動産は資産となり、将来の売却・継承がしやすくなります。

また、複数の医療機関が入居する医療モールに入る方法もあります。これは調剤薬局や他科クリニックと同じ施設内に入る形態で、医院開業に適した設備が整っているため初期費用を抑えられ、集患面でも相乗効果が期待できます。

さらに、閉院予定のクリニックを引き継ぐ、継承開業も一つの選択肢です。この場合は既存の患者基盤や内装を活かせますが、物件条件や患者層が自院の計画と合致するか見極めが必要です。

ご自身の方針や資金計画に合わせて、適切な開業形態を選びましょう。

クリニック開業におけるテナント選びの方法と流れ

クリニック開業におけるテナント選びの方法と流れ
テナント物件はどこで探せばよいですか?

クリニック向けの物件は、専門の情報ルートを活用する以下の3つの方法がおすすめです。

開業物件情報サイトの活用
インターネット上には医院開業物件に特化した検索サイトが多数あります。便利な検索機能が利用でき、サイトによって掲載情報が異なるため、複数のサイトを見て情報を集めるのがおすすめです。

不動産会社や開業コンサルタントへの相談
医療物件を扱う不動産会社や開業コンサルタントに直接問い合わせることもできます。専門業者はWeb未公開のテナント情報を持っていたり、新築計画の情報を先取りできたりする場合があります。

人脈・地域ネットワークを使う
開業予定地域の知り合いや医師仲間、医師会などに物件情報を尋ねるのも有効です。

よい物件は競争が激しいため、開業の1年前から本格的に情報収集を始め、複数のルートで並行して物件を探すのがおすすめです。

テナント探しから契約までの一般的な流れを教えてください

物件が見つかってから契約に至るまでの大まかな流れは次のとおりです。

  1. 条件の整理
  2. 情報収集と物件選定
  3. 内見(現地訪問)
  4. 専門家による現地調査
  5. 賃貸借の申し込み・交渉
  6. 契約手続き

物件探しに入る前にクリニックのコンセプトや患者層を明確にし、必要な広さや設備、賃料予算、希望エリアなど条件をリストアップします。条件に沿って候補物件の情報を集め、よさそうな物件があったら必ず現地を確認しましょう。物件が決まったら賃貸条件の交渉に入り、契約内容の最終確認を経て賃貸借契約を締結します。

テナントを探す際はどのような項目を重視すればよいですか?

クリニック向け物件を選定する際には、次のようなポイントを特に重視しましょう。

  • 立地条件・アクセス 
  • 賃料と予算のバランス
  • 建物の外観・印象
  • 設備インフラ
  • 周辺・同ビルのテナント業種
  • 建物の安全性

実際に物件を見る前にこれらのポイントをさまざまな角度から調べておくことで、内見時に確認すべきポイントが明確になります。

事前の情報収集がしっかりできていれば内見もスムーズに進み、現地でしか得られない気づきや判断材料も見つけやすくなります。

クリニック向けテナントの坪単価の相場と妥当性を判断する基準を教えてください

テナント物件の坪単価とは、1坪(約3.3平方m)あたりの賃料のことです。相場はエリアによって大きく異なりますが、都市部では坪単価1.5万~3万円/月程度、郊外では坪単価5,000~1.5万円/月程度が目安となります。

坪単価の妥当性を判断するには、まずクリニックの収支計画に照らして適正か検討します。賃料は月売上の6~8%に収めるのが望ましいとされているので、この範囲に収まっていれば家賃負担が重すぎず健全な経営が見込めます。

次に、周辺相場との比較も有効です。同じエリア・類似規模の他物件の坪単価を調べ、極端に単価に差がないか確認しましょう。不動産情報サイトや不動産会社に問い合わせれば近隣相場を教えてもらえます。

テナントを内見する際のチェックポイント

テナントを内見する際のチェックポイント
テナントを内見する際はどのような点を確認すればよいですか?

内見は物件選びでとても重要です。以下のポイントに注意して見てみましょう。

  • 周辺環境と立地条件
  • 物件の広さと間取り
  • 設備インフラの現状
  • 搬入経路・バリアフリー
  • 共有部分・ビル設備
  • 建物の構造・状態
  • 周辺テナントの状況

内見時には、可能であればメモや写真を残し、後で冷静に比較できるようにします。自分だけでは設備面の専門的な判断が難しい場合、内装業者や設備業者と再訪して細部を確認してもらうとよいでしょう。

一度の内見だけではわからないことも多いため、時間帯を変えて再度周辺を歩いてみたり、実際に車でアクセスしてみたりするなど、さまざまな視点から物件を評価するのが大切なポイントです。

内見時にビルオーナーや不動産会社に聞くべきことを教えてください

物件担当者やオーナーに対しては、契約前の段階で以下のような事項を確認しておくのがおすすめです。

  • 契約条件に関すること:賃貸借契約の種類や契約期間
  • 賃料・費用面の詳細:共益費・管理費、駐車場代、看板使用料など
  • 物件の利用ルール:ビル独自の営業ルールや制限の有無
  • 物件設備・性能
  • 将来の計画:ビル自体の建替え予定や大規模修繕計画の有無
  • 看板・広告に関する許可
  • 原状回復の範囲:退去時の原状回復義務

これらの疑問点は契約前に確認し、重要な内容は書面に残しておくとあとから確認できるので安心です。

テナント契約の際に注意すべきことはありますか?

契約時には、用途制限や内装工事の条件など、クリニック開業に必要な要件が満たされているかを必ず確認しましょう。

「医療機関としての使用が可能か」「どこまで工事できるか」「原状回復の範囲はどうか」といった点は、後々のトラブルを防ぐためにも事前のチェックが欠かせません。

また、将来の移転や拡張も見据えた中長期的な視点を持ちながら、契約形態(普通借家か定期借家か)や契約期間、特約の内容についても慎重に確認することもポイントです。契約書の条文には専門用語も多いため、必要に応じて不動産契約に詳しい専門家のサポートを受けながら、納得したうえで契約を進めることが大切です。

編集部まとめ

編集部まとめ

クリニックのテナント開業は、初期投資を抑えて好立地で始められる魅力的な選択肢である一方で、物件選びの段階から十分な下調べと条件確認が欠かせません。

立地や賃料、設備、契約条件といったポイントを丁寧に確認し、さまざまな視点から慎重に検討することが重要です。

専門家の力も借りながら入念に準備を進め、テナント開業のメリットを活かして快適な医療空間を実現することが、地域で長く愛されるクリニックづくりにつながります。