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整形外科クリニック開業で失敗する原因とは?よくある失敗事例と回避策を徹底解説

                   
投稿日: 2026.05.27
更新日:2026.05.09
                   

整形外科クリニックは、外来需要が高い診療科の一つです。一方で、高額な設備投資や人件費、リハビリ運営などが経営に影響しやすく、開業後に課題が生じるケースもあります。特に事前の検討が不十分な場合、想定していた収益が得られない可能性もあります。本記事では、整形外科開業で起こりやすい失敗の背景や具体例、対策について解説します。

整形外科の開業で失敗しやすい理由

整形外科の開業で失敗しやすい理由

整形外科は、高齢の方の増加とともに受診者が増加傾向にあり、地域医療のなかでも大きな役割を果たしています。今後も安定した需要が見込まれる一方、高額な設備投資や人件費、リハビリテーション(以下リハビリ)の運用などが要因となり収益が安定しにくいこともあります。

患者数は多いが収益が安定しにくい構造

診療所の入院外受診延日数(同じ受診者の複数回受診も含めた回数)を診療科ごとに比べると、整形外科は内科の次に多かったとする厚生労働省のデータがあります。

このことから、整形外科は外来受診の機会が多い診療科の一つと考えられます。

一方で、受診1回あたりの診療報酬については整形外科はほかの科と比べると低い傾向もみられます。つまり、患者数は多いものの一人の診療で得られる収益は多くはなく、回転率が収益に影響しやすい構造と考えられます。

参照:『中央社会保険医療協議会 総会(第612回) 議事次第』(厚生労働省)
   『総-3 外来について(その1)』(厚生労働省) 

設備投資や人件費など固定費が高くなりやすい

整形外科の開業には、骨や関節の検査をするためのX線関連の装置の導入がほぼ必須です。さらに詳細な検査を行いたいと考える際に磁気共鳴画像診断装置(MRI装置)システム一式を購入することもありますが、約2億円にのぼるケースもあります。

また、看護師や医療事務員、理学療法士などの人件費を含め、多くの経費が必要です。クリニック経営では給与費などの経費が支出の大きな割合を占めます。そのなかでも整形外科は、収益の全体に占める給与費の割合が約55%という報告もあり、ほかの科と比較してもやや高い傾向があります。

参照:『磁気共鳴画像診断装置(MRI装置)システム 一式 – 落札者等の公示 – 国立大学法人 | 政府公共調達データベース』(ジェトロ)
   『中央社会保険医療協議会 総会(第615回) 議事次第』(厚生労働省)
   『医療機関等を取り巻く状況について』(厚生労働省)p44

リハビリ運営が経営に与える影響

整形外科の開業時には、リハビリの施設や設備、スペースを設けることも欠かせません。整形外科では、骨折や脱臼、変形性膝関節炎、リウマチ、椎間板ヘルニアなどさまざまな怪我や病気を診察・治療します。そのため、手術後や慢性的に進行する病気の患者さんに対しては、理学療法士や作業療法士と連携し、リハビリを行う機会が多くなります。

リハビリの収益は、理学療法士などのスタッフ数や、一人あたりの施術時間、リハビリごとの単価によって算出されます。一方でスタッフの人件費や設備費、リハビリ器具の導入や維持費などのコストも発生します。したがって、これらのコストが収益を上回る場合には、リハビリ部門が赤字となる可能性があります。このように、リハビリ運営は収入源となる一方で、経営を圧迫する要因にもなりえる点には注意が必要です。

整形外科開業でよくある失敗パターン

整形外科開業でよくある失敗パターン

整形外科の開業で失敗してしまう原因として、クリニックの立地とターゲットのミスマッチ、高額な設備投資による資金繰りの圧迫などが考えられます。また、整形外科クリニックの要ともいえるリハビリの体制の構築ができない場合も、開業の失敗につながる可能性があります。

立地や診療圏の見誤り

整形外科を受診する患者さんの年齢層は、スポーツなどによる怪我をしやすい若い方から、加齢に伴う関節炎や脊椎の疾患などに悩まされる高齢の方まで幅広いです。

そのため、クリニックの立地と住民の方のニーズがマッチしないと、集客がうまくいかず患者さんを呼び込めない事態につながります。

例えば、高齢の方が多い地域でエレベーターがないビルの2階以上に開院したり駐車場がない場合には受診しづらくなってしまいます。また、若い世代を狙ったクリニックでありながら公共交通機関でのアクセスが悪いなどの場合も、想定した集客ができないリスクが生じます。

設備投資の過剰による資金圧迫

整形外科クリニックの開業時には、電子カルテを使用するためなどに使うパソコンなどの一般的な備品のほか、整形外科特有の診療や検査、治療、リハビリなどのための設備を揃える必要があります。

検査で用いるX線透視装置やMRIは高額になることも少なくありません。また、リハビリ施設を充実させようとするあまり、設備投資が実際の収益を上回ってしまうと資金繰りが難しくなってしまうこともあります。

理学療法士の採用難と定着のしにくさ

厚生労働省の令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査によると、全国の整形外科を標榜するクリニックは、1万2,298施設で、すべての診療所のうち11.7%を占めています。これは、内科系、小児科、皮膚科に続く数です。さらに、令和2年と比べて増加していることも明らかになっています。

今後も高齢化などで整形外科のニーズが高まることも想定されるため、リハビリに欠かせない理学療法士の採用時に近隣のクリニックなどとの競争が激しくなる可能性があります。理学療法士などの専門職の場合、勤務環境などがより整ったクリニックや病院への転職もそれほど難しくないケースも少なくありません。そのため、スタッフが定着しにくいという悩みが生まれることもあるでしょう。

参照:『令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況』(厚生労働省)
   『結果の概要-医療施設調査』(厚生労働省)p10

リハビリ体制が整わず収益につながらない

理学療法士の需要が高いことに加え、雇用できた場合にも質の高いリハビリを患者さんに提供するための研修体制の不備などでスタッフが辞めてしまう場合もあります。

診療所のスペースに見合った設備投資ができていない、または先進的な機器を導入してもそれらを使いこなせるスタッフがいないときも、リハビリの体制としては不十分になってしまいます。

また、診療報酬上のルールとして、運動器リハビリの診療報酬の算定日数の上限が150日ということもポイントです。

この日数には例外もありますが、ゴールを定めたリハビリを行っていくという意識が欠けると、場合によっては収益につながりにくくなってしまう懸念もあります。

参照:『平成18年度診療報酬改定に係る通知等について』(厚生労働省)
   『医療保険及び介護保険におけるリハビリテーションの見直し及び連携の強化について』(厚生労働省) 

整形外科開業で失敗を防ぐためのポイント

整形外科開業で失敗を防ぐためのポイント

整形外科のクリニックを開業するときには、開院する場所を見定めることが大切です。さらに、運営をしていくなかで必要な設備を整える意識も欠かせません。

立地・診療圏分析を徹底する

開院するクリニックの強みと、地域の住民の方の生活スタイルや年齢層が合っているかどうかは開業後にスムーズに集客できるかどうかを決める大きなポイントです。

例えば、スポーツ外傷の診断や治療をメインで行う方針であれば、学生や若い方などが住んでいる地域で、アクセスのよい場所にクリニックを開設しましょう。

一方で、骨粗鬆症や変形性関節炎、頚椎症や腰椎症などの疾患を主に取り扱う予定であれば、高齢の方にとって通院しやすいような場所が望ましいといえます。車が移動手段となるような地域では、広い駐車場を設けるといった対応も患者さんの来院のしやすさにつながります。

設備投資は段階的に行う

初期コストの圧縮とキャッシュフローの確保のため、設備投資は段階的に行うことは有効な戦略といえます。整形外科は医療機器が高額になりがちな診療科のため、計画的な投資が必須です。

開業前から初期の段階であらゆる医療機器を揃えようとすると、開業時の借入金が増え、毎月の返済負担によって経営が圧迫されるリスクがあります。また、いざ開業してみたら、地域の住民のニーズが想定と異なっていることもあります。例えば、リハビリ中心に考えていたところ、外傷患者さんの受診が予想よりも多かったという場合です。初期の段階で専門の医療機器を揃えると、こうしたアンマッチに対応できず、使われる機会が少ない機器が生じてしまうという事態につながりかねません。

人材採用と定着施策を重視する

整形外科の開業において、人材の採用と定着はクリニックの運営を左右する重要な課題です。特に整形外科はリハビリ業務がほぼ必須であり、理学療法士や作業療法士、看護師、柔道整復師など多職種が連携する必要があります。そのため多くの人材を採用する必要があり、人材確保の難易度が高く、かつ離職による経営リスクも大きいと考えられます。

入職後の研修体制を整えることや、働きやすい環境を整備することなどにより、スタッフにとって魅力的と感じられる環境づくりをすることが大切です。

リハビリ運営を見据えた設計を行う

整形外科の開業において、リハビリは診療報酬上の強みであり、患者さんの満足度を高め、安定した経営基盤を築くための要です。整形外科の開業を成功させるためには、設計段階からリハビリ運営を主軸に置くことも重要です。

具体的には、リハビリ室に対しては適切な面積を確保することなどが挙げられます。また、将来的にクリニック運営が軌道に乗り、スタッフ数の増加や医療器具の導入がなされる可能性があります。そのため、可動性のパーテーションなどで運動療法のエリアを柔軟に拡大できるような設計にしておくことも有効です。

整形外科開業で押さえておきたい収益と運営の考え方

整形外科開業で押さえておきたい収益と運営の考え方

整形外科の開業は、医療機器やリハビリ設備などのための高い投資が必要となる一方、高齢化社会においては安定した需要が見込めます。収益性と安定した運営を両立させるためには、以下のポイントを押さえておくことが望まれます。

リハビリの稼働率を適切化する運用設計

リハビリを主軸とするクリニックでは、リハビリの稼働率を適切にする運用設計を整える必要があります。

リハビリの稼働率は、理学療法士などのセラピスト1人あたりの対応件数や予約枠の設計によって大きく変わります。

リハビリの収益は、関わるセラピスト数やリハビリの提供量、早期リハビリテーション加算などの各種加算などによって決定します。リハビリに関わるスタッフならびにリハビリの件数を増やせば収益の上昇も見込めます。もちろん、キャパシティを超えるような予約はスタッフの負担増加につながる懸念もあります。その一方、稼働率が低い場合は収益性に影響します。そのため、無理のない範囲で効率的な予約管理を行うことが重要です。

また、リハビリの提供時間や予約枠の設計によっても稼働率は変動します。例えば、1人あたりの施術時間を適切に設定することで、過度な負担を避けながら効率的な運用につなげることが可能です。スタッフの負担と収益性のバランスを考慮した設計が望まれます。

オペレーションの標準化

整形外科のクリニックでは、毎日多くの患者さんの診察や治療が行われます。

効率的かつ安定した経営と、患者さんへの医療の質を維持するためには、医師や看護師、そのほかのスタッフが一定の手順に基づいて運用することが求められます。

例えば、日常診療の例をとってみると、受付から診察、検査、もしくは受付からリハビリまでの流れを一定の手順で運用することで業務のばらつきを抑えることができます。システムの面では、業務支援システムの導入などによって日常業務の効率化が見込めます。結果として、待ち時間の短縮や業務の効率化が期待でき、安定したクリニック運営に寄与します。

院内動線の整備による回転率の向上

整形外科クリニックの院内動線は、患者さんの待ち時間とスタッフの業務効率化に直結する大切な要素です。適切な動線整備によって、回転率の向上も期待できます。

例えば、受付や待合、診察室までの移動をスムーズにし、初診時の問診エリアを動線上に配置します。また、整形外科ではX線撮影が頻繁に行われます。そのため、診察室と撮影室はできるだけ近い方が患者さんにとっても案内するスタッフにとっても混乱が少なくなります。

リハビリ目的の方は、待合室を通らずに移動できるルートを設けることで、毎回のリハビリがスムーズにはじめられ、かつプライバシーへの配慮も叶えられます。

さらに、診察やリハビリから会計に進む方が診察待ちの患者さんとぶつからないようにするのもよいでしょう。

まとめ

まとめ

整形外科クリニックは、今後もニーズが高い状態が続くと考えられます。一方、開業する際には設備投資や人件費、リハビリ運営など複数の要素が経営に影響します。特にリハビリ体制の構築や人材の確保は重要なポイントです。開業前には立地や診療圏の特性を踏まえ、設備投資や運営体制を計画的に整えることは欠かせない要素です。開業後も運用を見直しながら、安定した経営につなげていくことが重要です。