クリニックの開業に必要な資格とは?役立つ資格や大切な心構えなどを紹介!
投稿日:
2024.01.16
更新日:2024.03.05
勤務医として数年間働き、そろそろ開業を考え始めたという方の中には、開業にあたってどのような準備をすればいいのかが具体的にわからないという方もいらっしゃるかと思います。また、「まだ開業するには早いけれど、今からできることがあるのであればしておきたい」という方もいらっしゃるでしょう。この記事ではそのような方のために、開業するにあたって必要な資格や役立つ資格はあるのか、それはどのような資格なのかをご説明します。
クリニックの開業に必要な資格
まずは、クリニックを開業するにあたって必要な資格や、個人事業主や医療法人について解説します。
- クリニックの開業に必要な資格はありますか?
- クリニックを開業するにあたり、必要となる資格はありません。医師免許を持っている人が管理者になる必要はありますが、開業を行う人が必ずしも医師免許を持っていなければいけないわけではないのです。ただし、これは「開業」に限った話であり、実際にクリニックを開業し経営を行っていくうえでは、さまざまな資格が集患や業務拡大のために役立ちます。後述する「病院経営管理士」や「医業経営コンサルタント」といった医療機関の経営に関する資格はもちろん、各種学会が認定を行っている専門医・指導医資格を持っていれば、患者さんからの信頼度が高まり来院数の増加が見込めます。また、テナントとしてビルの一室などにクリニックを開業する場合、そのビルの収容人数によっては防火管理者の資格が必要となります。
- クリニックは個人事業主として開業できますか?
- 個人事業主として、クリニックを開業することは可能です。個人事業主には、経営方針に自分の意向を反映できる、利益分配を自由に行える、法人に比べて複雑な事務手続きが少ない、小規模企業共済などに加入できる、業務範囲が制限されないといったメリットがあります。その分、社会的信用度が低く融資を受けにくかったり、節税効果が低かったりといったデメリットもありますので、メリット・デメリットの両方を理解したうえで選択すると良いでしょう。また、一定の手続きや条件をクリアすれば、個人事業主として開業した後に、医療法人化することも可能です。
- クリニックは医療法人として開業できますか?
- 都道府県知事の認可を受ければ、医療法人としてクリニックを開業することは可能です。医療法人には、税制優遇措置を受けることができる、社会的信用度が個人事業主よりも高い、分院展開がスムーズにできる、多様な節税対策がある、事業承継がしやすいといったメリットがあります。一方で、事業展開の自由度が下がる、手続きが煩雑化する、給与が固定される、個人事業主よりも運営に時間と労力がかかるといったデメリットもあります。個人事業主にも医療法人にも、それぞれのメリット・デメリットがありますので、何を目的に開業し、どのような方針で経営を行っていくつもりなのかをよく考え、それに合った方を選択することが大切です。
クリニックを開業する際に持っていると役立つ資格
前述したように、クリニックを開業するにあたり、必ず取得していなければならない資格はありません。しかし、持っていると役立つ資格は少なからずあります。ここでは、「病院経営管理士」「医業経営コンサルタント」「医療経営士」という3つの資格を紹介します。
- 病院経営管理士とはどんな資格ですか?
- 病院経営管理士は、病院経営に関する知識や実践能力を高めることを目的に作られた資格です。病院経営に関わる職種であれば医師以外でも取得することができ、「医療関連科目」「経営管理科目」「経営管理演習」「特別講座」「卒業論文」の五つのカリキュラムにおける39科目49単位を修了することで認定されます。一般社団法人日本病院会が運営している、2年間の通信教育課程を受講する必要があり、具体的には病院経営者や医師、大学教授などが講師を務める「スクーリング(面接授業)」や「リポート」「試験」を通して、病院経営をリードできる人材の育成が行われています。
- 医業経営コンサルタントとはどんな資格ですか?
- 医業経営コンサルタントは、公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会が認定する資格です。その名の通り、クリニックや病院、介護施設といった施設の経営をコンサルタントとしてサポートするために必要な知識や能力を身に付けることを目的に運営されています。指定講座の受講、筆記による一次試験、論文による二次試験を経て認定登録されるという流れになっており、認定後も登録更新のために継続研修が必要となります。カリキュラムは、「わが国の医療・介護の概要と課題」「医業会計・税務の基礎」「医業経営管理」「施設の活用と維持管理」「医療機関の経営」「医業経営診断」「医療の質管理」「介護サービス事業運営論」「施設の計画と建設」「医業経営戦略と事業計画」「医療情報システム」「総合講義」の12項目となっており、一次試験は年1回、二次試験は年に2回行われています。
- 医療経営士とはどんな資格ですか?
- 医療経営士は、医療機関を運営するうえで必要な知識と、経営課題を解決する能力を有した人材の育成を目指し、一般社団法人日本医療経営実践協会により認定が行われている資格です。3級から1級まで等級が分かれており、3級は医療経営の基本を身に付けることを目標に、医療従事者はもちろん、医療経営に携わる人や学生も受験することができます。2級は、会員登録をしている3級資格保有者が対象となり、医療経営における知識を持っていること、そしてそれを実践できることが認定基準となっています。1級はさらに、経営者、幹部として意思決定をサポートできる知識・能力が求められます。試験の方式としては、3級と2級はマークシート形式ですが、1級の場合は記述式の試験に合格したうえで、口頭試問と個人面接を突破する必要があります。
開業する際に大切なのは資格よりも心構え
ここまでご説明してきたことからもわかるように、クリニックを開業するにあたって役立つ資格は複数あるものの、必ず必要となる資格はありません。では、開業を考え始めた際には、どのような心構えをして準備を進めればいいのでしょうか。
- 経営者になる心構えはどのように持てば良いでしょうか?
- まず、自分はこれから経営者になるのだという意識を強く持ちましょう。会社員や勤務医と経営者では、求められる能力や対応する業務にさまざまな違いが出てきます。
- 開業医として、経営を始める際に必要な心構えについて教えてください。
- 前述したように、大学病院や民間のクリニックなどで雇用されて診療を行っている状態と、開業医として経営を行いながら診療を行う状態には、さまざまな違いがあります。まず、大きく異なるのが業務内容の変化です。これまでの診療業務に加え、集患対策やスタッフの採用・育成、経理業務などが必要となります。このような違いや、経営者として今後どのような業務が必要になるのかは知っておきましょう。まずは勤務医と開業医の違い、開業医として求められることを理解することが、経営者になる心構えとして大切です。
編集部まとめ
開業するにあたり、必要な資格はあるのか、持っていると役立つ資格はあるのかといった事柄について説明しましたが参考になったでしょうか。開業医として診療を行っていくためには、多種多様なスキルや大きな責任が伴います。しかし、自分自身が理想とするクリニック経営を行うためには何よりもの近道であるともいえます。目指すクリニック経営の実現に向けて、必要な準備を着々と行っていきましょう。