クリニックの感染対策に有効なシステムや医療機器は?スペース別に解説
クリニックを開業・運営するにあたり、院内感染の防止策は患者さんとスタッフ双方の安全を守るために欠かせません。特に、新型コロナウイルスの流行以降、患者さんが安心して受診できる環境づくりが求められています。
そこで、本記事ではクリニック内の各スペース別に有効な感染対策のシステムや医療機器、具体的な取り組みを解説します。
クリニックの受付・待合スペースにおける感染対策

受付や待合スペースは患者さん同士やスタッフとの接触が多く、感染リスクが高まりやすい場所なので、接触・飛沫・空気感染のリスクを抑える対策が基本です。
受付カウンターにはアクリル板やビニールカーテンによる仕切りを設置し、飛沫を遮断します。手指消毒用アルコールを入口や受付に設置し、患者さんやスタッフがこまめに手指衛生を行える環境を整えることも重要です。
待合室では座席の間隔を広げて密集しないようなレイアウトを心がけ、空気清浄機や換気システムを導入し、空気中のウイルス拡散を防止します。定期的な清掃と消毒も、感染リスクを減らすために役立ちます。
受付や会計業務に非接触型のシステムを導入することで、感染リスクを低減できます。
例えば、患者さんが自動で受付を行える自動再来受付機やスマートフォンを利用したオンライン受付システム、患者さん自身が画面を操作して会計を完了できる自動精算機を導入することで、スタッフと患者さんの直接接触の機会を減らすことができます。
これらのシステムは、感染対策だけでなく、患者さんの待ち時間短縮や利便性向上、スタッフの業務効率化にもつながります。
受付や待合スペースの感染リスクを下げるためには、飛沫防止・非接触・空気環境改善を目的としたアイテムが有効です。
- アクリルパネルなどの飛沫防止パーテーション
- 会計トレイ
- 手指消毒用アルコール
- 非接触型体温計
- 空気清浄機
- HEPAフィルターを備えた換気システム
HEPAフィルターとは、花粉やホコリ、PM2.5、ウイルスを含む飛沫など、空気中の微細な粒子をしっかり取り除くことができるフィルターです。HEPAフィルターを備えた空気清浄機や換気システム導入で、空気中のウイルスや微粒子を除去し、クリーンな空間を保つことができます。
感染リスクを低減できるツールとしては、接触機会や待ち時間短縮が期待できる、受付番号発券機やWeb受付システムが考えられます。
これらを複合的に取り入れることで、受付や待合スペースでの感染リスクを低減できるでしょう。
待合スペースの本やおもちゃは患者さんが直接手で触れるため、感染経路になりやすいアイテムです。そのため、こまめな清掃と消毒が基本対策です。
おもちゃや絵本は拭き取り消毒できる素材のものを選び、利用後の消毒や定期的な消毒を徹底しましょう。
ただし、赤ちゃんや小さな子どもはおもちゃに触れた指を口に入れてしまうこともあるので、一時的に雑誌やおもちゃを撤去し、タブレット端末で動画や情報を提供する、使い捨て玩具やクラフトを用意して使用後は持ち帰ってもらうといった方法もあります。
この場合も、タブレット端末は非接触操作やカバーを付けるなど衛生管理しやすくするのがポイントです。
タブレット端末や掲示板、壁面装飾などを工夫し、おもちゃが減っても子どもが待ち時間を快適に過ごせる環境づくりを心がけましょう。
クリニックの診察室における感染対策
診察室は患者さんと医師、スタッフが近距離で接するため、感染リスクが高まりやすい空間です。基本方針としては、空気環境の管理・接触感染の防止・飛沫防止策の徹底が重要です。
定期的な換気や空気清浄機の設置で診察室内の空気が滞留しないようにし、診察ごとの手指消毒や診察台、聴診器などの消毒を徹底します。医師・スタッフは不織布マスクやフェイスシールドを着用し、必要に応じて手袋の使用も検討します。
ほかにも、飛沫防止パネルの設置や待合室の人数管理なども感染対策として有効です。
こうした複数の対策を組み合わせることで、感染リスクを抑えた診療室の環境を整えることができます。
診察室内の感染リスクを抑えるためには、非接触・自動化を支援するシステムや空気環境を改善する設備の導入が効果的です。
| システムやサービス | 期待できる効果 |
| Web予約やWeb問診、電子カルテ | 紙やペンなどの備品を介した接触機会を低減できる 診察室の滞在時間を抑えられる |
| ドアの開閉や照明操作のセンサー化 | 手で触れずに作動できる |
| オンライン診療 | 院内での接触機会を減らせる |
複数のシステムやサービスを組み合わせて活用することで、診察室だけでなく院内全体の感染リスクを減らす効果を期待できます。
診療室には感染対策のための設備・医療機器を導入することも検討しましょう。
まず空調・換気設備として、換気システムの自動化や空気清浄機の導入を検討するのがおすすめです。HEPAフィルターを備えていれば、ウイルスや細菌を効率的に除去できます。発熱している患者さんを診察する場合は、室内の空気を強力に吸引・排気し、室内を周囲より気圧が低い状態に保つ陰圧装置の導入も有効です。陰圧装置によって空気の流れを制御し、ウイルス拡散を防ぐことができます。
ほかにも、非接触型の体温測定器や自動血圧計など、スタッフと患者さんの接触機会を減らす医療機器も感染対策に役立ちます。
クリニックスタッフの感染対策

スタッフは日常的に多くの患者さんと接触するため、手洗い・手指の消毒、マスク着用を徹底し、必要に応じて手袋やフェイスシールドも使用しましょう。診療や接客の前後には手指消毒を行い、ユニフォームや白衣のこまめな洗濯と交換で、清潔な状態を保ちます。
このように、スタッフ一人ひとりが感染対策を意識して守ることが、クリニックの感染対策には重要です。
スタッフ用に揃えておくべき感染対策資材は多岐にわたりますが、主なものは下記のとおりです。
- サージカルマスク
- ディスポーザブル手袋(ディスポ手袋)
- 不織布ガウン(エプロン)
- フェイスシールドまたはゴーグル
- シューカバー
- アルコール手指消毒剤
- 清拭用の使い捨てペーパーやワイプ
- 非接触型体温計
- 抗原検査キットやPCR検査
これら資材を十分な量確保しておくことが、スタッフの感染対策および安全につながります。
スタッフ向けの感染対策ルールとマニュアルを用意し、全員に周知徹底することが重要です。ルールの例は以下のとおりです。
- 勤務開始前の検温・体調チェック
- 風邪症状がある場合の対処法
- マスクや手袋など個人防護具(PPE)の使用方法
- 手洗い・手指消毒のタイミング
- 共用スペースや物品の管理・消毒方法
- 休憩スペースでの過ごし方
これらのルールを習慣化し、クリニック全体の安全性向上を目指しましょう。
編集部まとめ

クリニックにおける感染対策は、患者さんを守ると同時に、スタッフを守るための大切な対策です。
受付、待合、診察室、スタッフ動線といったスペースごとの対策で、ウイルスを広げない環境づくりを行いましょう。
感染対策に力を入れることは、患者さんからの信頼にもつながります。日々のクリニック運営で取り入れやすく、継続可能な仕組みを整えることが院内全体の感染対策レベルを高めるカギとなるでしょう。




