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電子処方箋とは?クリニックに導入するメリット・デメリットを解説します

                   
投稿日: 2025.08.29
更新日:2025.11.13
                   

電子処方箋とは、紙の処方箋情報をデジタル化し、医療機関と薬局でオンライン共有できる新しい仕組みのことです。

本記事では、電子処方箋の基本から導入のメリット・デメリット、さらにクリニックで導入する際の準備や費用について解説します。

電子処方箋の基礎知識

電子処方箋の基礎知識
電子処方箋とはどのようなシステムですか?

電子処方箋は、従来紙で発行していた処方箋をデジタルデータとして運用する仕組みです。医師が処方内容をクラウド上の電子処方箋管理サービスに登録すると、薬局は患者さんの同意を得てその処方データをオンラインで取得できます。電子処方箋は2023年1月より正式運用が始まった新しい制度で、普及が進められています。

電子処方箋と従来の処方箋との違いを教えてください

最大の違いは、紙の処方箋が不要になる点です。電子処方箋を選択した場合、処方箋情報の原本はクラウド上で管理されるため、患者さんは処方箋を持ち歩く必要がなくなり、薬局側は情報をスムーズに受け取ることができます。

また、電子処方箋対応の医療機関・薬局では、患者さんのお薬情報が一元管理され蓄積していく点も従来方式との違いです。

複数の医療機関や薬局で処方された直近の薬剤情報をクラウド上で共有できるため、医師・薬剤師は重複投薬の防止や過去の治療内容の把握がしやすくなります。紙からデータへの移行は、利便性の向上だけでなく、安全性が高く効率的な医療体制の実現にもつながっているといえるでしょう。

発行から調剤まではどのようなフローで行われますか?

電子処方箋による処方から調剤までのフローは以下のとおりです。

  • クリニックでの処方発行
  • 薬局での処方箋受付・調剤
  • 調剤結果の登録と薬の受け渡し

クリニックでは医師が診察後に院内の電子カルテやレセコンから処方内容を入力し、電子署名を付けて電子処方箋管理サービスに送信します。電子処方箋対応の薬局で、患者さんがマイナンバーカードや健康保険証と引換番号を提示することで、薬剤師は処方箋の情報を閲覧できるようになります。薬剤師は処方箋に指示に従い調剤を行い、調剤や指導の内容を電子処方箋に登録します。

電子処方箋の普及率を教えてください

電子処方箋は2023年1月に運用が始まったばかりの制度で、徐々に普及が進んでいます。厚生労働省の公表によれば、2025年2月時点で全国の医療機関・薬局合わせて52,854施設が電子処方箋を導入しており、普及率は約24.9%となっています

しかし、クリニック(診療所)では対応準備中であることも多く、全体の導入率はこれから上昇していく見込みです。厚労省は全国的に電子処方箋を普及させる方針を示しており、今後さらに多くの医療機関で導入が加速していくと考えられます。

出典:『電子処方箋の現況と令和7年度の対応』(厚生労働省)(2025年7月23日に利用)

電子処方箋をクリニックに導入するメリット・デメリット

電子処方箋をクリニックに導入するメリット・デメリット
電子処方箋を導入するクリニック側のメリットを教えてください

  • クリニックが電子処方箋を導入することで、業務効率の向上と医療の安全性向上、コスト削減を期待できます。

電子処方箋を導入することで、紙の処方箋発行に伴う印刷、押印やファイリング作業、薬局からのFAX受診や照合作業などが不要となり事務作業の負担が軽減します。紙の処方箋を発行・保管するためのコストも削減できます。

また、過去の処方履歴や薬剤情報が蓄積されていくことで、重複投薬の防止やより適切な薬剤選択に活かすことができ、信頼性の高い医療提供に貢献すると考えられます。

電子処方箋は患者さんにもメリットがありますか?

はい、患者さん側にもメリットがあります。電子処方箋は患者さんにとって便利で安全な仕組みといえます。主なメリットを挙げると次のとおりです。

  • 処方箋を持ち歩く必要がない
  • どこの薬局でも薬を受け取れる
  • 薬の重複や飲み合わせのリスクを減らすことができる

電子処方箋は、患者さんが安心して医療を受けられる環境づくりにつながると考えることができます。

電子処方箋のデメリットも教えてください

電子処方箋には多くのメリットがありますが、導入・運用にあたって留意すべきデメリットも存在します。主なデメリット・課題は次のとおりです。

  • 初期導入の手間とコストがかかる
  • システム障害や停電時のリスクがある
  • セキュリティと個人情報保護に取り組む
  • マイナンバーカード未所持患者さんへ対応する必要がある

これらの点を考慮し、運用体制をしっかり整えることが大切です。

電子処方箋を導入するための準備とコスト

電子処方箋を導入するための準備とコスト
導入する前にクリニックが用意しておくことを教えてください

電子処方箋導入にあたっては、事前に以下のポイントを準備・確認しておく必要があります。

用意しておくこと 詳細
1、オンライン資格確認の導入 オンライン資格確認システムを整備する
2、医師資格証(HPKIカード)の取得 処方データに電子署名を付与するために医師本人のデジタル証明書を用意する
3、電子カルテおよびレセコンの対応確認 導入予定または使用中の電子カルテやレセコンが電子処方箋に対応しているかどうかを確認する
4、利用申請 電子処方箋を使うための利用申請を行う

スタッフが戸惑わないように事前研修の準備も進め、スムーズに導入のために計画的に準備を進めましょう。

電子処方箋の導入や運用にはどの程度の費用がかかりますか?

電子処方箋の導入には、システム機器の整備費やソフトウェアの対応にかかる費用、ネットワーク環境の構築費用などの初期費用がかかります。オンライン資格確認と電子処方箋に対応した設備を整える場合、初期費用は30万〜100万円程度が目安だといわれています。レセコンや電子カルテと連携させるための費用がかかることもあります。

また、初期費用のほかに保守サポートのための月額運用費も発生します。月額運用費は1〜2万円程度が一般的です。

2025年7月現在、厚生労働省は「電子処方箋管理サービス等関係補助金」と呼ばれる補助制度で医療機関が電子処方箋を導入する際の費用を一部補助しています。診療所(クリニック)では導入経費の1/2(上限19.4万円)が補助されるので、導入時は活用できる補助金や支援制度を確認するとよいでしょう。

電子処方箋の選定から導入までの流れを教えてください

電子処方箋導入を成功させるには、単に機器を揃えるだけでなく計画的に準備することが大切です。選定から導入までの一般的な流れは次のようになります。

  1. 導入の目的やスケジュールの設定
  2. システムの選定
  3. システム構築とテスト運用
  4. スタッフ教育と業務フローの見直し
  5. 運用開始とフォローアップ

クリニックの規模や体制によって順番が前後することもありますが、計画的に準備を進めることが成功のカギです。必要に応じて補助金の申請も進めましょう。

編集部まとめ

電子処方箋は、紙を介さずに処方・調剤情報を共有できる仕組みで、重複投薬の防止、業務コストの削減、患者さんの利便性向上につながります。

医療の安全性・業務効率・サービスの質向上のために、補助金や支援制度も活用しながら電子処方箋の導入を前向きに検討しましょう。