クリニックに電話自動応答システムで業務効率化は進む?メリットや選び方を解説
クリニックの電話対応業務は、予約や問い合わせなど多岐にわたりスタッフの負担となりがちです。近年、この負担を軽減し業務効率化する手段として電話自動応答システムの導入が注目されています。
電話自動応答システムとは何か、その種類やクリニック向けの機能、導入によるメリット・デメリット、さらには選び方や費用相場まで、押さえておきたいポイントを解説します。
クリニック向けの電話自動応答システムとは

電話自動応答システム(IVR:Interactive Voice Response)とは、クリニックにかかってきた電話に対して、自動音声で応答するシステムです。
あらかじめ録音されたガイダンスに沿って「予約は1を、問い合わせは2を押してください」といった操作案内を流し、ボタン入力に応じて適切な部署や担当者に転送します。スタッフが電話に出られない夜間や休日など24時間365日の対応が可能で、医療機関でも広く利用が進んでいます。
電話自動応答システムは、主に以下の3種類があります。
クラウド型IVR
インターネット経由で利用するタイプで、自院に機器を設置する必要がありません。初期費用が抑えられ、ネット環境があればすぐに利用開始できる手軽さが特徴です。導入しやすい一方、長期利用ではコストが割高になる場合があり、通信回線に依存するためセキュリティ面の懸念もあります。
オンプレミス型IVR
院内に専用機器やサーバーを設置して運用するタイプです。電子カルテや患者情報との連携がしやすく、既存の電話番号をそのまま使える場合もあります。ただし、環境構築に時間と手間がかかり、導入コストや保守負担が大きくなります。
ビジュアルIVR
音声ではなくスマートフォンなどの画面上で案内を表示し、タップ操作で対応するタイプです。電話機のプッシュ操作ではなく画面上のメニュー選択となるため、直感的で使いやすい点がメリットです。一方で、専用アプリのインストールやシステム開発が必要になる場合もあり、一般的な音声案内に比べ導入ハードルが高い面もあります。
はい、医療機関に特化した電話自動応答サービスが複数提供されています。例えば、予約フォームのURLやアクセス情報をSMSで自動送信する機能など、クリニック特有のニーズに対応したサービスが登場しています。
導入を検討する際は、さまざまな電話自動応答システムのなかから自院の規模や目的に合わせたサービスを選択することが可能です。
クリニックで電話自動応答システムを導入するメリットと懸念点

電話自動応答システム導入により、以下のようなメリットが期待できます。
電話対応業務の削減と効率化
システムが自動で対応できる内容は人の手を介さず完結するため、スタッフの電話対応件数を減らすことができます。その結果、受付スタッフは来院患者さんの対応や会計・レセプト業務に専念でき、電話に業務が中断されないことでミスの減少やサービス向上につながります。
スタッフの心理的負担軽減
忙しい時間帯に電話対応に時間を割かれることはスタッフのストレスとなることもあるため、電話自動応答システム導入はスタッフの精神的な負担軽減にもつながります。
患者さんの電話待ち時間短縮
従来は、受付が電話対応中だと呼び出し音が鳴り続けたり保留になったりすることがありましたが、電話自動応答システムであれば電話をかけてすぐ自動音声応答が開始され、患者さんの電話待ち時間が短縮されます。
電話応対業務の一部を自動化することで受付スタッフの電話対応業務を減らすことができ、人件費の削減が見込めます。
例えば、よくあるお問い合わせ内容の案内、予約変更やキャンセルなどの受付を自動化することで、業務の効率化が図れるだけでなく対応ミスの防止にも役立ちます。
システム利用料などのコストは発生しますが、電話件数の多いクリニックほど費用対効果が高く、繁忙期や人員不足の際にも安定した対応が可能になるため、結果として運営全体のコストを抑える効果が期待できます。
適切に運用することで患者満足度の向上が期待できます。
最大の利点は24時間365日いつでも電話がつながる安心感で、夜間や休診日でも必要な情報提供や予約受付を行えることで、患者さんの不安や不満を軽減できる可能性があります。また、すぐに応答があるため、長い呼び出し音や保留時間のストレスも軽減できると考えられます。
クリニックで電話自動応答システムを導入する際にはいくつか注意すべきポイントがあります。
シナリオ設計の手間と重要性
電話自動応答システムを効果的に機能させるには、患者さんからの問い合わせ内容を想定して適切なガイダンス内容(シナリオ)を設定する必要があります。
イレギュラー対応の限界
自動応答システムでは想定外の質問や複雑な相談には対応しきれず、結局スタッフが対応する場面も発生します。
高齢の患者さんへの配慮
音声ガイダンスによる操作は、高齢の患者さんには負担になる場合があります。耳が遠い方や機械操作が苦手な方も想定し、必要に応じてスタッフが対応する方法を残すといった配慮が必要です。
クリニック向け電話自動応答システムの選び方と費用相場

導入までの一般的な流れは次のとおりです。
- クリニックの課題と導入目的を整理
- 電話自動応答システムのサービス内容の比較と選定
- ベンダー担当者と打ち合わせ
- システムの設定とテスト運用
- 正式導入
このような流れで、クリニックに適した電話自動応答システムを導入します。
クリニックで電話自動応答システムを選ぶ際は、業務の流れや患者さんからの問い合わせ内容に合った機能が備わっているかを確認することが大切です。
例えば、自動予約受付やSMS送信、AI音声認識による対応、多言語対応、録音・テキスト化機能など、業務効率化や患者さんの利便性向上につながる機能の充実度を確認しましょう。
さらに、同時に対応できる着信件数の上限や、音声ガイダンスのカスタマイズ性、操作のしやすさなども選定時のポイントです。
導入形態(クラウド型/オンプレ型)や、自院のIT環境との相性、導入後のサポート体制もしっかり確認し、初期費用と月額料金のバランスも含めて自院に合うシステムを選びましょう。
電話自動応答システムの費用はサービスの導入形態や規模によって異なりますが、クラウド型では初期費用が無料のものから50,000円程度、月額料金は5,000〜20,000円ほどが一般的です。
オンプレミス型は専用機器や工事が必要になるため、初期費用が数十万円、保守費用として月額数万円かかる場合があります。通話料や留守番電話、SMS配信などの追加オプション利用料がかかることもあるので、クリニックの規模や必要な機能に応じて複数サービスの料金プランを比較検討し、コストと機能のバランスが適したものを選ぶことが重要です。
編集部まとめ

電話自動応答システム(IVR)は、クリニックにおける電話対応業務の効率化とサービス向上に有効なツールです。人手不足の解消やスタッフの負担軽減、患者さんの利便性向上などメリットが多い一方で、システム導入にあたっては明確な目的設定と入念な準備が必要です。
特に「どの問い合わせを自動化し、どこから有人対応に切り替えるか」を見極め、患者さんにとって使いやすいシナリオを設計することが導入成功のポイントです。
自院に合った機能やコストを見極めて選定し、導入後も定期的な見直しと改善を行って柔軟に改善を加えることで、スタッフの業務効率化と患者さんの満足度向上につなげましょう。




