電子カルテが普及しない理由|導入するメリットとデメリットについて解説
電子カルテの導入を検討しているものの、実際のところ「電子カルテはあまり普及していない」と聞き、導入を躊躇している方も多いかもしれません。
普及率が低い理由や導入するデメリットをしっかり理解し、費用対効果を見込めるか見極めてから導入を検討する必要があります。
この記事では、
- 電子カルテが普及しない理由
- 電子カルテ導入のメリットとデメリット
- 電子カルテの選び方に関する疑問
これらについて解説します。
電子カルテの導入を迷っている方は、本記事をぜひ参考にしてみてください。
電子カルテの普及率に関する疑問
- 現状の電子カルテの普及率を教えてください。
-
2020年の厚生労働省の報告によると、全国で約半数の医療機関が電子カルテを導入しています。
- 一般病院:57.2%
- 一般診療所:49.9%
※一般病院のうち、精神科病床のみ、結核病床のみを有す病院は除く
※一般診療所のうち、歯科医業のみを行う診療所は除く
2014年時点では、一般病院が34.2%、一般診療所が35.0%と、診療所の方が普及していましたが、6年間で逆転しています。病院よりも特に診療所での普及に課題があるようです。 - なぜ電子カルテの普及が進まないのですか?
-
- 電子カルテの初期費用が高い
- 電子カルテの運用費用がかかる
- 紙カルテに慣れていて、使いやすい
- パソコン操作が苦手なスタッフが多い
- 停電などの緊急時が心配
これらの理由が、紙カルテから電子カルテに移行が進まない代表的な理由です。
- 診療所において電子カルテが普及しない理由はなんですか?
-
特に「初期費用が高い」「運用費用がかかる」ことが、電子カルテを導入しない理由という診療所が多いようです。
電子カルテの価格相場は300万円程度とされています。クラウド型の電子カルテは初期費用を抑えることができますが、それでも全く費用が発生しないというわけではありません。さらに毎月の運用費用が固定でかかることも、導入を躊躇してしまう理由として挙げられます。
診療所では「紙カルテに慣れていて、使いやすい」ことも理由として多く見られます。
長年、診療を続けるクリニックでは、紙カルテが大量に保管されています。クリニックのスタッフも紙カルテに慣れている中、操作を新しく覚えなければならない電子カルテを導入し、業務効率を逆に低下させてしまうことも考えられます。そのため、多くの診療所では電子カルテの新規導入を躊躇してしまうのでしょう。
- 電子カルテの普及を推進する制度はありますか?
-
経済産業省の中小企業庁が監督する、「IT導入補助金」があります。
- 電子カルテ
- 医療用画像管理システム
- レセコン
医療法人であれば、これらのツールなどが補助金の対象となります。
IT導入補助金を利用するには、申請をして採択される必要があり、ソフトやシステムの導入、パソコンの購入それぞれに上限金額が設定されています。
「IT導入補助金」は2017年から開始された制度で、2024年度も継続して受付を行っています。
電子カルテを導入するメリットとデメリット
- 電子カルテを導入するメリットを教えてください。
-
- 診療録の一元管理ができ、業務効率化につながる
- 手書きによる書き間違い、読み間違いのミスがなくなる
- 紙カルテの保管場所が不要になる
診療録の一元管理ができるので、検査結果を即座に反映でき、医師の診断結果や処方薬の情報などをタイムリーに共有することが可能です。
紙カルテの作成や記入を待っている間、ほかの作業が進まないといった無駄な時間も削減できるので、クリニック全体の業務効率化につながります。
手書きによる書き間違いや読み間違いを防げることも、電子カルテ導入のメリットになります。
紙カルテの場合、レセコンにデータを移行をするとき、読み間違いによる入力ミスが発生してしまう可能性があるため、診療報酬の請求不備につながり、クリニックの収益にも影響がでてしまいます。
また、医療機関では、カルテの保存期間が最終記載日から5年間は保存しなければならないことが法律で定められています。外部倉庫を利用するにも費用は発生しますので、保管場所が不要なことは経済的なメリットにもなります。 - 電子カルテを導入するデメリットを教えてください。
-
- 初期費用や運用費用がかかる
- 操作を覚えて慣れるまでに時間がかかる
- 停電などの緊急時に使用できなくなる
一般的に、電子カルテ導入のデメリットは、前述した普及しない理由と重なります。
診療所での電子カルテの普及率が病院に比べて低いのは、規模的に導入のための予算確保がしづらいことや費用対効果が見合わないことなどが要因として挙げられるでしょう。
電子カルテの選び方に関わる疑問
- 電子カルテを選ぶ時に重視すべきポイントはなんですか?
-
- 機能や操作性の良さ
- レセコンとの連動性
- 導入後のサポート体制
- 初期費用や運用費用
- オンプレミス型かクラウド型か
以上が、電子カルテを選ぶ時に押さえるべきポイントになります。
「機能や操作性の良さ」は、実際にデモ機を用いて試用できるかどうか、問い合わせてみると良いでしょう。様々な機能があっても、診療科ごとの特徴に対応してなかったり、操作性が悪いと業務効率が低下してしまったりするケースもあります。電子カルテを実際に使用するスタッフと一緒に、試してみてから選定することをお勧めします。
また「導入後のサポート体制」が充実しているかも押さえるべきポイントです。トラブル発生時の対応や、診療報酬や法令の改正がされた際、電子カルテの情報もすぐに更新してくれるかなど、事前に確認しておくことが重要です。
- オンプレミス型とクラウド型の違いはなんですか?
-
オンプレミス型 クラウド型 仕組み サーバーを院内に設置しデータの管理をおこなう インターネットを用い、クラウド上でデータの管理をおこなう 導入コスト 300~500万円|院内にコンピュータやサーバーシステムをいれるため高額 無料~数十万円|院内で特別な工事も必要なく、導入コストは安価 メリット 独自のカスタマイズがしやすい
院内サーバーでセキュリティが高い低コストで導入できる
災害が発生してもデータは守られるデメリット 初期費用が高額
自らメンテナンスをする必要がある月額の運用費用がかかる
カスタマイズの自由度が低いこれらの違いがあります。クリニックの状況に合わせて選択すると良いでしょう。
- 電子カルテ導入の初期費用を抑える方法はありますか?
-
初期費用をできるだけ抑えて電子カルテを導入するなら、「クラウド型の電子カルテ」がお勧めになります。
最近では、同じメーカーでも、クラウド型かオンプレミス型を選択できるようになっていますので、機能や操作性と合わせて検討すると良いでしょう。
編集部まとめ
この記事では、電子カルテが普及しない理由、電子カルテ導入のメリット・デメリット、選び方に関する疑問について解説しました。
電子カルテの普及率は年々上昇し、現在、全国で約半数の医療機関に導入されています。
この背景からも、電子カルテは利便性が高いツールであることは確かですが、それでも新しいシステムの導入には不安がつきものです。
本記事が、電子カルテ導入を検討する際の参考になれば幸いです。