オンライン診療の始め方は?手続きや準備・導入手順をわかりやすく解説
外来の混雑緩和や訪問診療の負担軽減など、日々の診療体制に課題を感じている医療機関にとって、オンライン診療は有力な解決策の一つです。場所や時間に左右されず診療を行える点は、患者さんの利便性だけでなく、医師やスタッフの業務効率にもつながります。
しかし、スムーズに運用するためには、制度の理解や院内の環境整備が不可欠です。
本記事では、オンライン診療の基本的な知識や始める際に必要な手続き、導入の手順について解説します。
オンライン診療を始める前に知っておきたい基礎知識

- オンライン診療は医師であれば誰でもできますか?
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いいえ。医師であれば誰でもオンライン診療ができるわけではありません。次のような条件を満たした医師が、オンライン診療を行えます。
- 医療機関に所属しており、その所属を明らかにしている
- 厚生労働省が定める研修を修了している
オンライン診療を行う医師は責任の所在を明らかにするため、医療機関に所属していなければなりません。また、オンライン診療の責任者として、厚生労働省が定めた研修の修了が義務づけられています。
- オンライン診療を始める前に検討すべき事項を教えてください
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まず、患者さんのニーズや医療機関側の課題について検討しましょう。
例えば、訪問診療に時間がかかり外来診療が圧迫されているケースや、不妊治療で男性パートナーが受診しづらい状況など、オンライン診療が役立つ場面を洗い出します。そのうえで、オンライン診療が本当に必要かを検討します。
次に、オンライン診療の対象とする患者層について検討します。慢性疾患のフォローアップや条件付きの初診など、診療する患者さんの範囲を明らかにすると、運用ルールを統一できます。あわせて患者数を試算しておくと、導入するシステムの規模やスタッフの配置などの計画が立てやすくなるでしょう。
さらに、オンライン診療を実施する曜日や時間帯の設定も欠かせません。外来診療は予約外の受診が発生する場合もあるため、外来の空き時間や土日などの時間帯などを活用しましょう。
これらに加えて、同じ診療科や規模の医療機関の導入事例を参考にすると、自院での運用イメージがより具体的になります。 - オンライン診療のメリットとデメリットを教えてください
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オンライン診療のメリット・デメリットを、患者側・医療者側の視点で整理すると次の通りです。
視点 メリット デメリット 患者側 - 通院の負担が減る
- 感染対策になる
- 災害や悪天候時も受診可能
- 自宅で薬や処方箋を受け取れる
- 日常生活での様子が伝わりやすい
- 通信不良で診療が中断する可能性がある
- 一定のITリテラシーが求められる
医療者側 - 院内感染対策に有効
- 訪問診療との併用で効率化できる
- システム導入に費用がかかる
- 通信トラブルが業務に影響する
オンライン診療には、患者側・医療者側双方に大きな利点がありますが、運用上の課題も存在します。メリットとデメリットを踏まえ、自院の特性に合った方法を取り入れましょう。
参照:『オンライン診療の利用手順の手引き書』(厚生労働省)
『オンライン診療その他の遠隔医療に関する事例集』(厚生労働省)
『オンライン診療のメリット・デメリット(内閣府)』 - オンライン診療を始めるために必要な手続きや届出はありますか?
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はい。オンライン診療を始めるには、いくつかの届出や書類の準備が必要です。
まず、地方厚生局に対して、基本診療の施設基準準備等に係る届出書および情報通信機器を用いた診療に係る届出書を提出します。これらの書類は、各厚生局のホームページからダウンロードできます。
次に、患者さんがオンライン診療を提供している医療機関を探しやすくするため、各都道府県が運営する医療機能情報提供制度(医療情報ネット)に登録しましょう。オンライン診療を実施する機関として公式に公開されることで、患者さんへの周知もできます。 - オンライン診療に必要なシステムやツールを教えてください
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オンライン診療に使われるツールは、汎用的な情報通信サービスと専用のオンライン診療システムの2つに大別されます。
まず一般的なビデオ通話アプリを使用する方法があります。導入コストが低く、すぐに使える点がメリットですが、予約管理や処方箋の作成、オンライン決済などの機能は備わっていないため、これらは別途システムを用意しなければなりません。
一方、オンライン診療専用のシステムは、予約や問診、ビデオ通話、処方箋作成、決済などが一括で管理でき、業務フローの効率化が可能です。また、システム事業者によるサポート体制が整っているのもメリットです。
また、そのほかに必要なツールとして、パソコンやタブレットなどの通信端末、高画質のカメラやマイク、周囲の雑音を減らすためのヘッドフォンなどが挙げられます。安定した通信環境も欠かせないため、Wi-Fiや有線LANなどの整備もします。 - オンライン診療の薬の処方や配送はどうすればよいですか?
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オンライン診療で薬を処方する場合、次のような方法があります。
院外処方の場合は、患者さんが希望する薬局に、処方箋の情報をメールやFAXで薬局に送付して、原本を後日郵送します。電子処方箋を利用する場合は、処方内容をシステムに登録して、引き換え番号を患者さんに伝えます。
その後は、薬局と患者さんで、服薬指導の方法や薬の受け取り方法を決めます。オンライン服薬指導に対応している薬局の場合は、薬局から自宅へ薬の配送も可能です。
なお、処方箋の原本を自宅に郵送し、患者さんが処方箋を持参して薬局に薬を受け取りに行く方法もあります。
院内処方の場合は、医療機関が薬を調剤し、患者さんが来院して受け取るか、医療機関が自宅へ配送します。いずれの場合も、オンライン診療の際に服薬指導をします。 - 個人情報やセキュリティ面で注意すべきことはありますか?
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オンライン診療で使用する通信端末は、必要に応じてウイルス対策ソフトを導入しましょう。また、診察時には、医師・患者さんともに診療に無関係な第三者が同席しないよう確認し、無断での録画や撮影を行わないよう認識を共有しましょう。
加えて、一般的なビデオ通話サービスを利用する場合は、より厳密な管理が必要です。例えば、医師側から通信を開始する、汎用アプリと連動した連絡先や端末内データの連携を防ぐ設定を行うなどの配慮が求められます。 - オンライン診療を始めるにあたって必要なルール整備のポイントを教えてください
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オンライン診療をスムーズに運用するためには、事前に院内で共通のルールを整備し、スタッフ全員が同じ対応ができるようにしておくことが大切です。特に、次のような項目について整備しておきましょう。
- 診療予約の対応方法
- 本人確認の手順
- 診療記録への記載ルール
- 通信トラブルや緊急時の対応
- 処方せんの送付方法
- 個人情報とセキュリティ確保
また、こうした内容をまとめた院内のマニュアルを作成してスタッフ間で共有しておきましょう。
- オンライン診療開始後の業務フローを教えてください
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オンライン診療の一般的な流れを、事務職員・医師・患者さんのそれぞれの立場でまとめると、次の通りです。
フロー 事務職員 医師 患者さん 予約 - 予約の受付
- 保険証の確認
- 問診のチェック
- 通信方法を案内
- 診療計画の確認
- 事前問診の確認
- 予約をとる
- 保険証提示
- 事前問診入力
診療開始時 - 患者さんへ連絡
- 本人確認
- 本人確認
診察 ― - 症状の聴取、診断
- 急変時対応の説明
- 処方箋送付先の確認
- 次回予約
- 症状の相談
- 必要に応じて対面受診
会計 - 診療報酬計算
- 決済の請求
― - 支払い
処方箋発行
(院外処方)- 薬局の希望を確認
- 処方箋の原本郵送
- 処方箋作成
- 薬局で対面またはオンラインで服薬指導を受ける
- 薬の受け取り
薬の発送
(院内処方)- 薬を患者さんへ発送
― - 薬の受け取り
オンライン診療の業務は、予約から薬の発送まで、各スタッフと連携しながら進行します。事前のスタッフ研修で、業務フローの内容を共有して、効率のよい運営につなげましょう。
- オンライン診療を始める際に行った方がよいスタッフ研修の内容を教えてください
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まず、オンライン診療の基本的な仕組みや注意点などを共有し、各スタッフの役割を明確にしましょう。そのうえで、マニュアルを基にシミュレーションし、実際の動きを確認します。
また、システム事業者による勉強会を活用して、実際に画面をみながらオンライン診療システムの操作方法について確認し、カメラやマイクの接続方法、音声・映像のトラブルが起きた際の基本的な対応方法も押さえておきましょう。
オンライン診療の始め方|必要な手続きとシステム

オンライン診療に適した院内オペレーションとは

編集部まとめ

オンライン診療を始めるには、届出やシステムの準備だけでなく、院内ルールの整備やスタッフ研修が欠かせません。診療の流れや患者さんへの対応方法を事前に決めておけば、スムーズな運用につながります。
患者さんにとっても利便性の高い診療を構築するため、段階的に準備を進めていきましょう。




