オンライン診療を導入するメリットとは?経営に与える影響についても解説
オンライン診療は新型コロナウイルス感染症の影響とIT技術の発展を背景に、急速に広まりつつあります。場所や時間に制限されないオンラインによる診療は、患者さんにとってだけでなく、医療機関側にも様々なメリットがあります。本記事では、オンライン診療導入のメリットを中心に、クリニック経営に与える影響についても解説します。導入を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
オンライン診療とは
- オンライン診療について教えてください。
- オンライン診療は、患者さんがインターネットを介して医師とリアルタイムでコミュニケーションを取りながら医療サービスを受けられる診療方法です。患者さんは自宅や職場などのネット環境がある場所ならどこからでも、スマートフォンやパソコンを使って医師とのビデオ通話やチャットで診察を受けることができます。
- オンライン診療の導入が進んでいる背景について教えてください。
- 現在のオンライン診療のベースとなる遠隔診療ガイドラインは、1997年に制定されました。当初は離島や僻地、在宅糖尿病患者への医療提供を目的としていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大をうけ時限的・特例的措置として初診からのオンライン診療が可能になるなど規制が緩和されたことで、急速に普及し始めました。特に、医療DXが推進されている都市圏を中心に普及が進んだとされています。 また、IT技術の発展と普及もオンライン診療が急速に広まっている要因の一つでしょう。モバイル端末の普及はもちろんのこと、会社でZoomやGoogle Meetなどのオンライン会議システムが一般化したこともオンライン診療の普及を後押ししていると考えられます。このように患者さん側に、オンライン診療を受けやすい環境が整ってきたことも導入が進んだ背景の一つと考えられます。
医療機関側のオンライン診療導入のメリット
- 医療機関側のオンライン診療導入のメリットは?
- 医療機関側がオンライン診療を導入するメリットは以下のものが挙げられます。
◎治療継続率の改善が期待できる
オンライン診療の導入により、患者さんは通院する必要がなくなるため、仕事や家事の隙間時間を活用しての受診が可能になります。その結果、治療を途中で止めてしまう離脱患者さんが減り、治療継続率の改善が期待できます。
◎遠方に住む患者さんの診療ができる
オンライン診療は場所の制限がないため、遠方に住む患者さんへの医療提供が可能になります。そのため、引越しで通院が難しくなってしまった患者さんに対しても継続して診療が行えます。
◎業務効率化による経費削減が期待できる
オンライン診療は、対面診療では必要な問診表の受け渡しなどの受付業務や支払いなどの会計業務を一部省略することができます。このような業務効率化が患者さんの待ち時間短縮やスタッフの労働時間削減につながり、結果的に経費削減が期待できます。
◎院内混雑の緩和が見込める
オンライン診療は、場所や時間の制限を受けないため、仕事が忙しい方でも平日の受診が容易になります。これにより、土日診療への偏りを平準化することができるため、院内混雑の緩和が見込めます。混雑の緩和は、院内感染リスクの低下や患者さんの待ち時間短縮にもつながります。
- オンライン診療導入による、経営面へのメリットはありますか?
- オンライン診療を導入することによる、経営面へのメリットは主に2つあります。
◎患者さんの新規獲得につながる
オンライン診療は、場所の制限を受けずに受診が可能なため、遠方に住む患者さんの新規獲得が見込めます。また、通院が難しい高齢の患者さんにも、オンライン診療の利用で医療提供が可能になります。その結果、集患数の増加がクリニックの収益アップにつながります。
◎クリニックの高評価につながる
オンライン診療の導入は、患者さんの利便性を高め、良い口コミの獲得などクリニックの高評価につながります。近年のインターネット普及にともない、口コミなどを見てクリニックを選ぶ患者さんも増えているため、レビューサイトの高評価は新規の患者さんの獲得や再診率の向上が期待できます。
- 医療機関側のオンライン診療導入のデメリットはありますか?
- オンライン診療の導入はメリットだけではなく、もちろんデメリットもあります。デメリットも事前にしっかりと確認し、適切な対策を講じることで導入後のトラブルを回避しましょう。
◎インターネットやパソコン操作などの知識が必要になる
オンライン診療を行うためには、医師やスタッフにインターネットやパソコン操作などの知識が必要になります。パソコン操作に不慣れなスタッフが多い場合は、システムの導入や運用に関する講習会の開催が必要となり、そのための時間と費用が発生します。また、強引に導入を進めると、スタッフ間で戸惑いや反発が生まれることもあるため、慎重かつ計画的に導入を進めましょう。
◎環境整備の費用がかかる
オンライン診療の導入には、適切な環境整備が必要になります。ビデオ通話用のパソコンや安定したネット環境などは必須で、さらにセキュリティ対策やプライバシー保護にも配慮する必要があります。
◎全ての疾患にオンライン診療が適しているわけではない
オンライン診療は、一部の疾患や症状には適していません。例えば、精密検査が必要な疾患や緊急の対応が必要な症状は、対面診療が必要となります。また、高度な医療処置や手術を必要とする症例にも、オンライン診療には限界があります。【オンライン診療に適している症例】
- 軽度の咳や湿疹の症状
- 生活習慣病などの慢性疾患
- うつ病などの精神疾患
- 症状が安定した花粉症や高血圧症
【オンライン診療に適さない症例】
- 腹痛・頭痛などの急性期症状
- 高度な画像診断や呼吸機能検査が必要な症状
- 外科的処置が必要な傷病
- 感染症や風邪の症状
患者さん側のオンライン診療を利用するメリット
- 患者さん側がオンライン診療を利用するメリットはありますか?
- 医療機関側のメリットだけではなく、患者さん側にもオンライン診療を利用するメリットは多くあります。
◎受診する場所が制限されない
オンライン診療は、ネット環境があれば、自宅や職場などどこからでも受診が可能です。通院する負担を軽減できるだけでなく、地理的な制約から今まで受診を諦めていた遠方のクリニックの診療も受けることができます。
◎通院時間や待ち時間がなくなる
通院時間や院内での待ち時間がなくなるため、患者さんはその時間をほかのことに有効活用ができます。予約した時間にオンラインで診療を受けることができるので、患者さんは自分の予定に合わせて家事や仕事の隙間時間に診療を受けることができます。
◎介護や育児などで制約がある患者さんでも受診が可能
オンライン診療は、介護や育児などで時間に制約がある患者さんでも手軽に医療サービスを受けることを可能にします。自宅で要介護者や子どもの世話をしながらの受診が可能になるので、ほかの患者さんに気を遣う必要もありません。
◎プライバシーが守られる
オンライン診療では、ほかの患者さんと待合室で顔を合わせる機会や人前で自分の名前を呼ばれることがないため、プライバシーが守られ安心して診察を受けることができます。
◎感染症予防になる
オンライン診療の利用は、院内感染を防ぐことができるため、特にインフルエンザなどの感染症が流行している時期や免疫力が低下している患者さんにとっては安心できる選択肢となります。
- 患者さん側がオンライン診療を利用するデメリットはありますか?
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◎インターネットやパソコン操作などの知識が必要になる
オンライン診療を利用するには、パソコンやスマートフォンを操作する知識が必要になります。特に高齢者などITに不慣れな患者さんは、オンラインツールの操作に苦労するかもしれません。そのため、クリニック側に患者さんへのサポート体制が整っているか事前に確認すると良いでしょう。
◎通信障害などのネット環境不良によって、診療ができない場合がある
オンライン診療では、安定したネット環境が必須です。しかし、一部の地域や建物内では通信状況が不安定で、オンライン診療中に通信が途切れてしまうことが考えられます。このような場合、診療が中断されてしまったり、医師とのコミュニケーションが十分取れなかったりするため、診断や治療に支障をきたす可能性があります。
編集部まとめ
オンライン診療の導入には、医用機関側、患者さん側ともに様々なメリットが期待できます。さらに、オンライン診療による患者さんの利便性向上や満足度アップは、クリニックの高評価獲得につながり、結果として収益にもプラスの影響を与える可能性があります。ぜひ本記事を参考に、オンライン診療の導入を検討してみてください。