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クリニックの内装はどう決める?開業成功のためのデザインと設計のポイント

                   
投稿日: 2025.03.05
                   

クリニックの内装デザインは、患者さんからの印象を左右する重要な要素です。適切な内装設計は、クリニックの経営成功に大きく貢献します。

内装を考える際は、患者満足度の向上やスタッフの働きやすさ、法規制の遵守など、多角的な視点が必要です。トレンドや費用対効果の高い方法も知っておくのもよいでしょう。

本記事では、クリニック開業成功のための内装デザインと設計のポイントを詳しく解説します。

クリニックの内装が開業成功に与える影響

内装デザインを通して、医療機関としての信頼性と専門性を視覚的に表現することが大切です。まずは、クリニックの内装が開業成功に与える影響について解説します。

なぜクリニックの内装が重要なのか?

クリニックの内装は、患者さんが来院した時に最初に目にする部分で第一印象を左右します。「このクリニックは医療機関として信頼できる、安心できる」といった要素を視覚的に伝えるための重要な手段となります。

第一印象を決める要素として、エントランスや待合室のデザイン、雰囲気は特に重要です。明るく清潔感がある印象を持ってもらえるように工夫しましょう。

また、待ち時間にリラックスできる空間は、診察前の不安や緊張を和らげる効果も期待でき、患者満足度の向上にもつながります。

クリニックの内装と集患の関係

クリニックの内装は、新規の患者さんと再診患者さんの獲得、どちらにも影響を与えます。最近は口コミや評価をSNSなどですぐに調べることができるので、よい印象を持った患者さんの発信内容を参考に来院する患者さんが増えることで集患につながる可能性があります。

また、クリニックの理念や大切にしていることを内装で表現したり、「このクリニックはきれいで居心地がよい」と感じてもらえたりすることで、競合クリニックとの差別化を図ることができます。

さらに、診療科目によってはスタイリッシュさや洗練されたイメージ、高級感などを演出することが重要な場合もあります。

診療科目や診療内容、ターゲットとなる患者層に合わせた内装やデザインを取り入れることが、増患につながります。

スタッフの働きやすさにも直結する

内装デザインは、患者さんだけでなくスタッフにとっても重要です。業務が効率的に行える動線設計は、スタッフの働きやすさに直結します。

レイアウトは工事が始まってしまうと変更できないため、業務効率を上げるために設計段階で動線を意識したレイアウトを考えましょう。

クリニックの内装を決める際の基本ポイント

クリニックの内装を決める際の基本ポイント

実際にクリニックの内装を決定する際、最初に押さえておきたい基本のポイントを紹介します。

診療科目ごとの内装の違い

診療科目によって求められる内装の特徴は大きく異なります。診療科目ごとの内装のポイントを紹介します。

診療科目内装のポイント
小児科・待合室でのキッズスペースの充実
・明るく楽しい雰囲気づくり
・感染対策を考慮した素材の採用
整形外科・バリアフリー設計の徹底
・高齢の患者さんに配慮した照明の設置
・リハビリスペースの確保
美容外科、美容皮膚科など・高級感を感じさせる雰囲気
・待合室や処置室で患者さん同士が顔を合わせないようなプライバシーへの配慮
歯科・清潔感を重視したデザイン
・ユニットチェアの配置に合わせた空間設計
・十分な設備スペースの確保

このように、診療科目のイメージや特性、患者さんの年齢層に合わせた空間設計を心がけるのがポイントです。

内装のコンセプトを決める

内装のコンセプトは、クリニックの理念や診療方針、イメージ、個性を表現できるものにしましょう。コンセプトをしっかりと決めることで、内装の色や素材選び、イスや棚などの設備選びのイメージをしやすくなり、全体の統一感が出ます。清潔感と温かみを両立させるようなバランスを考え、競合クリニックとの差別化につなげましょう。

クリニックに適した内装材の選び方

クリニックの内装材を選ぶ時に重要なポイントは、次のとおりです。

  • 人通りの多い場所に使える、耐摩耗性の高い床材(長尺塩ビシートなど)
  • 清掃が容易な素材(ノンワックス仕上げ素材など)
  • 清掃による劣化に強い壁材(抗菌性素材、エポキシ樹脂塗装など)
  • 消毒薬に強い素材(耐薬品性塗装など)
  • 抗菌性能のある材料(銀イオン配合材料、抗菌性素材など)
  • メンテナンスしやすい素材(抗菌性素材、塩ビシートなど)

耐久性が高くて清掃しやすい内装材を選ぶのが基本です。感染対策を意識し、抗菌性能のある素材を選ぶのもおすすめです。

遵守するべき4つの法規制

クリニックのコンセプトに合ったデザインも重要ですが、内装設計では以下の4つの法規制を遵守しなければなりません。

法律名概要
建築基準法・防火区画の設定
・避難経路の確保
・必要な換気設備の設置 など
消防法・消火設備の設置
・避難誘導標識の設置
・防火管理体制の整備 など
バリアフリー法・段差の解消
・手すりの設置
・車いす対応トイレの設置 など
医療法・待合室の適切な広さ確保
・診察室の必要面積確保
・医療機器設置スペースの確保 など

これらの規制をふまえ、患者さんとスタッフ双方の利便性や快適性を考慮した内装デザインが求められます。

患者さんが快適に過ごせる待合室の作り方

患者さんが快適に過ごせる待合室の作り方

ここからは、患者さん目線での待合室の設計について考えてみましょう。

待合室の広さとレイアウトのポイント

待合室は、診察や会計などの待ち時間で患者さんが長く滞在する空間です。患者さんがストレスを感じにくく、プライバシーに配慮できるように、以下のポイントに注意しましょう。

  • 最低限のパーソナルスペースの確保
  • 患者さん同士のプライバシーに配慮した適切な距離の確保
  • 車いすやベビーカー置き場のスペースの確保
  • 受付からの視認性の確保

患者さん同士がなるべく向かい合わないような椅子の配置にする、植栽で自然な区切りを作る、クリニック出入り口付近に車いすやベビーカー置き場を設置する、といった工夫ができます。

また、スタッフが受付に座った状態で待合室全体が見渡せるような設計だと、より安心感を与えることができます。

照明・インテリアの工夫で安心感を演出

照明やインテリアを工夫して視覚的にぬくもりや温かさを感じさせることで、安心感の演出や診療への不安が和らぐ効果が期待できます。

  • 自然光を積極的に取り入れる設計
  • 間接照明でリラックスできる雰囲気
  • 温かみのある色合いを選ぶ

高窓を設置する、明るい色調の素材を使う、木目調の素材と組み合わせてパステル系や落ち着いたトーンの色を使う、フェイクグリーンを飾る、といった方法が考えられます。メンテナンスのしやすさも考えて選ぶといいでしょう。

雑誌・デジタルサイネージ・キッズスペースなどの快適性向上策

診察や受付、会計の待ち時間を快適に過ごしてもらうための工夫も大切です。

  •  デジタルサイネージによる待ち時間の表示
  •  無料Wi-Fiの設置
  •  充電スポットの設置
  •  自由に読める雑誌やキッズスペースの確保(感染対策も必要)

これらの要素を取り入れ、患者さんの快適性向上と待ち時間のストレス軽減を図りましょう。

デジタルサイネージや無料Wi-Fiなどのデジタル設備は、開院後も継続的なランニングコストやメンテナンスが必要です。導入する場合は運用体制を検討し、コストとスペースの許す範囲でバランスよく取り入れるのがポイントです。

診察室・処置室のレイアウト設計のポイント

診察室・処置室のレイアウト設計のポイント

仕事を効率的に行うためには、スタッフの働きやすさも重要です。

医師・スタッフの動線を最適化する

医師・看護師・事務スタッフは、それぞれよく出入りする場所が異なります。スタッフが効率的に業務を行えるように、動線を意識してレイアウト設計するのがポイントです。例えば、次のような点を考慮するとよいでしょう。

  • 医師の動線:診察室と処置室を行き来しやすい配置
  • 看護師の動線:診察室と処置室に加え、医療機器や備品の収納場所にアクセスしやすい配置
  • 受付スタッフの動線:受付から待合室、会計窓口までの効率的な配置
  • スタッフ全員が行き来しやすく、連携しやすい配置

必要に応じて患者さんとスタッフの動線を分離することで、効率的な移動の流れを作ることも可能です。業務効率を意識したレイアウトにより、毎日の業務のストレス軽減につながります。

患者さんのプライバシーを守る工夫

患者さんのプライバシーを保護する工夫も重要です。次の点が配慮されているか確認しましょう。

  • 患者さん同士が顔を合わせないようプライバシーに配慮した設計
  • 防音壁の設置
  • 待合室から見えない位置への診察室、処置室の配置
  • 周囲から会話が聞こえにくい受付の配置

防犯面にも考慮しつつ、カーテンやパーテーションの活用、グリーンなどのインテリアを取り入れることで、雰囲気を損なわずに実現できるケースもあります。

診察室に必要な設備の選び方

診察室は、デザインや患者さんへの配慮だけでなく、診療効率も考えたレイアウトにする必要があります。ポイントは次のとおりです。

  • 患者さんと会話しやすく、適度な距離感が保てるデスクとイスの配置
  • 医療機器類の使いやすい位置への配置
  • 診察や処置に必要な採光や照明を適切に配置

デザイン性を重視してしまうあまり、診療に差し支えが出てしまっては意味がありません。必要な動線や照明の明るさがきちんと確保されているか、といった視点も忘れずに考えるのがポイントです。

クリニックの内装費用の相場とコストを抑える方法

理想的なクリニックの内装を実現しようとすると、費用がかさむこともあるでしょう。ここでは、内装の費用相場とコストを抑える方法について解説します。

内装工事の相場と予算設定の考え方

新規開業かリフォームするか、クリニックの立地などの条件によって、クリニックの内装工事にかかる費用には差があります。また、診療科によって必要な医療機器や広さも異なります。各診療科における内装費用の坪単価の例は、以下のとおりです。

  • 内科:35万円
  • 小児科:35万円
  • 整形外科:40万円
  • 眼科:40万円
  • 心療内科:25万円
  • 耳鼻咽喉科:30万円
  • オンラインクリニック:15万円

整形外科は、リハビリスペースの確保やX線装置・検査機器、各種理学療法の治療機器などの設置が必要になるため坪単価が高い傾向にあります。眼科は、暗室の設置で特殊な内装が必要など、各診療科によってかかる費用は異なります。

さらに、同じ診療科であっても、設置したい検査機器や設備によって差が生じるでしょう。

コストを抑えながら質を保つ工夫

内装デザインを理想通りに実現するのは、コスト面から考えると難しいことも少なくありません。

コストを抑えながら質を保つためには、患者さんの目に触れる部分に予算配分を多くする、汎用性の高い設備を選ぶ、将来拡張しやすい設計にする、といった工夫で効率的な予算配分を行うのがポイントです。

また、居抜き物件のリフォームなら内装工事費が抑えられます。医療機器や内装が残っている物件であれば、状態を確認して引き継ぐことでコストを抑えることができます。

施工業者の選び方と見積もりの取り方

内装工事を行うにあたって、大切なのは施工業者選びです。信頼できる内装業者の選び方のポイントは、以下のとおりです。

  • 医療施設の施工実績(同じ診療科)が豊富である
  • アフターフォロー体制の充実している
  • こまめなコミュニケーションが取れる
  • 見積もり内容が明確で価格が明示されている

クリニックの内装は医療法や特殊な条件を満たす必要があるため、クリニックの内装工事に特化した専門知識が必要です。クリニックの施工実績が豊富な業者なら、動線や医療機器の配置なども使い勝手のいい内装を実現できるでしょう。

また、工事を円滑に進めるためにもスムーズなコミュニケーションも大切です。さらに、品質に見合う価格設定かといった点も重要です。複数の施工業者から相見積もりを取り、適正価格かどうかを比較しながら検討してみてください。

最新|クリニック内装の傾向

最新|クリニック内装の傾向

最後に、現在のクリニック内装のトレンドをお伝えします。「病院であることを感じさせない」雰囲気を目指した内装が人気のようです。

最新のクリニック内装の傾向とは?

最近のクリニック内装デザインでは、患者さんの心理的負担を軽減する、リラックスできるような空間づくりが重視されています。

特に注目されているのが、木材やグリーンなどの自然素材を積極的に取り入れた内装です。壁面や受付カウンターに木材を使用することで、温かみのある雰囲気をつくり、患者さんの緊張を和らげる効果が期待できます。また、カフェを併設したり、間接照明やデザイン性の高い内装にしたりするクリニックも増加傾向にあります。

さらに、デジタルサイネージを利用した情報提供や、感染対策を考慮した待合室の座席配置など、機能的な面も考慮された設計が注目されています。

自院のクリニックに合った内装デザインの見つけ方

クリニックの内装デザインを決定する際は、自院の診療方針を明確化することから始めましょう。専門性の高い治療に特化するのか、かかりつけ医として地域医療を担うのかなど、医院のビジョンに合わせた空間づくりを検討します。

次に、ターゲットとなる患者層を分析します。高齢の患者さんが多いと考えられる場合はバリアフリー設計を重視し、若い家族がターゲットであればキッズスペースの充実を図るなど、患者層に応じた内装が必要です。

クリニックの立地も考慮しましょう。都市部のオフィス街なのか住宅地なのかによっても、求められる雰囲気が異なります。近隣の医療機関の内装デザインを研究し、差別化ポイントを見つけましょう。

これらを総合的に検討し、デザイン会社と綿密な打ち合わせを重ねます。

  • 診療科目、診療方針(1日の予想患者数、重点を置く治療や処置など)
  • 診療体制(スタッフ人数、診察室の数など)
  • 内装に関する要望(待合室の広さ、医療機器の設置場所など)
  • イメージするデザイン(色合い、素材など)
  • 重視する部分(患者動線、スタッフ動線、感染対策など)

などを伝え、コンセプトに合致する、機能的なクリニックの内装を実現しましょう。

まとめ

クリニックの内装は、患者さんの第一印象から継続した来院に至るまで、集患に大きな影響を与えます。

診療科目やターゲット層に合わせた内装デザインを選ぶことで、専門性と信頼感を効果的に伝えられます。また、患者さんの目に触れる部分に重点的に投資するなど、メリハリのある予算配分で、コストを抑えながらも快適で機能的なクリニック作りが可能です。

内装は開業後の変更が難しいため、計画段階で十分に検討することが大切です。信頼できる内装業者を選び、理想の内装デザインを実現しましょう。