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電子カルテ・ICT・医療機器・精算機

勤務医として医療機関や地域のクリニックで働きながら、いずれは開業したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。ただ、開業するためにどのような準備をすれば良いのだろう、クリニックを運営していくために必要なものはなんだろう、と困っている方も少なくないはずです。そこで本記事では、近年、医療業界でもよく聞くようになった「ICT」を中心に、備えておくべきシステムや医療機器などについてまとめています。後半には、クリニックを開業する際におさえておきたい制度についても紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

01クリニック開業時に考えたい医療機器やICT

クリニックの開業を検討しているのであれば、どのような医療機器を導入するか考えておくことが大切です。使用するであろう最新の機器をすべて導入できるのが理想ですが、決して安いものではありませんし、開業資金のすべてを医療機器にあてるわけにはいきません。開業してから「あの機器が足りない」「これは不要だった」と後悔してしまわないよう、それぞれの医療機器がどのような役割を果たすのか、自分のクリニックに必要かどうかを事前に調べておくことをおすすめします。

クリニックにおけるICTとは

ICTのそもそもの意味をご存じでしょうか。ICTは「Information and Communication Technology」の略称で、日本語では「情報通信技術」と訳されます。インターネットなどを経由して人と人とがコミュニケーションを取ることができる技術や、その活用方法のことをICTといいます。具体的には、SNSやメールでのやりとりをイメージしていただけるとわかりやすいでしょう。クリニックにおいては、インターネットを通じて医師と患者さん、医師と医師をつなぐことをICTと呼んでいます。例えば、パソコンやスマートフォンを用いて行うオンライン診療や、離れた場所に患者さんの情報を共有することができる電子カルテなどがそれに値します。

必要な医療機器を選定しよう

どの診療科目を専門とするかによって、必要な医療機器は変わってきます。例えば内科を開業する場合、レントゲンや超音波画像診断装置、心電計などが必要になります。整形外科であれば画像診断装置のほかに、骨密度測定装置やリハビリテーション機器などが必要になるでしょう。MRIやCTは高額になるため、予算でまかなえないのであれば、近隣の医療機関との連携を検討してみても良いかもしれません。また、医療機器はメーカーによって価格や機能が異なります。1社の製品だけで検討するのではなく、複数社の初期費用と運用費用を比較したうえで選択するようにしましょう。

ホームページの活用

スマートフォンが普及している今の時代、多くの人がインターネットを活用してクリニックを探しています。医療ポータルサイトやマップなどはもちろん、クリニックの公式ホームページを見てから受診するかどうか決める方も少なくありません。ホームページを作っていないだけで来院候補から外れてしまうため、患者数を増やすためにホームページを活用することは必須と言えます。また、ただホームページを制作するだけでは意味がありません。アクセス情報や診療内容のほか、予約システムなどのコンテンツを充実させることが集患につながります。

02クリニック運営に必要な電子カルテ・ICT・精算機

クリニックにおけるICTは多岐にわたります。ここからは、電子カルテシステムやオンライン診療・自動精算機といったあらゆる機器の特徴やメリット・デメリットなどをご紹介します。「どのようなシステムを導入しようか迷っている」「ICTを導入するメリットを知りたい」という方はぜひ参考になさってください。

電子カルテシステムとは

これまで、患者さんの体の状態や服薬状況といった医療情報は紙にまとめるのが一般的でした。それを電子データとしてまとめたものを「電子カルテシステム」と言います。紙のカルテだと、膨大な量の中から患者さんのカルテを探したり医療情報の記入をしたりするのに時間がかかります。しかし電子カルテにすることによって作業時間を短縮し、効率化を図ることができるようになりました。また、放射線科で撮影したX線画像を管理する医療用画像情報システムや臨床検査機器で得たデータと連携できたり、入院から退院までの診療記録を医療従事者間でスムーズに共有できたりします。さらに、紙カルテのように保管のためのスペースが不要になるのも大きなメリットです。2020年の厚生労働省の調査では、電子カルテの導入率が一般病棟では57.2%、一般診療所で49.9%、400床以上の大きな病院では91.2%となっています。

レセコンとは

「レセコン」とは、レセプト(診療報酬明細書)を作成するためのコンピューターのことを指します。診療費用の一部は患者さんによって支払われますが、それ以外の費用は健康保険組合や共済組合、市区町村などへ請求する必要があります。その請求をするための明細書がレセプトです。レセプトは患者さん1人につき毎月1件作成するため、1カ月分をまとめるとなると相当な量になってしまいますが、レセコンを導入することでその作業にかかる時間を短縮できます。また、一般的なレセコンにはチェック機能が備わっており、入力段階からデータミスがないかを確認してくれます。中には、電子カルテと連携できるものや一体型のものもあるため、導入する際は既存のシステムとの連動性なども考慮しながら選ぶことをおすすめします。

オンライン診療システムとは

パソコンやスマートフォンなどを用いて画面越しに診療を行うのが「オンライン診療」です。これまでは原則として初診のオンライン診療は認められていませんでしたが、インターネットの普及や新型コロナウイルスの流行によって特例として認められました。患者さんにとって待ち時間が少ないことや場所・時間にとらわれず診療を受けられることは大きなメリットとなるでしょう。また、医療機関にとっても、医師やスタッフへの感染症拡大が防げる、受診のしやすさから患者さんが定期的に診察を受けてくれるようになることで変化に気づきやすくなるといった利点があります。近年では「8K等高精細映像技術の医療応用」という取り組みが進んでおり、AIを活用した診断システムや解像度の高いデータが見られるようになるなど、患者さんと対面しているような感覚での診察が可能になる可能性もあります。

問診システムとは

パソコンやスマートフォンから、体の状態などを事前に入力できるのが「問診システム」です。問診票からカルテへの転記の手間を減らすことができるため、事務スタッフの業務効率の改善が期待できます。また、問診システムは事前に入力してもらう場合がほとんどのため、患者さんの医院滞在時間を削減できるというメリットがあります。滞在時間や待ち時間が少なくなることは、医院の評価アップにもつながるでしょう。ただ、メリットがある反面、スマートフォンなどの操作に慣れていない高齢者には使いにくい、導入・運用にコストがかかるといったデメリットもあります。想定される患者層やコストパフォーマンスを考慮したうえで導入を検討することをおすすめします。

予約システムとは

従来は、患者さんと受付スタッフが直接やりとりをして来院日時を決めるのが一般的でした。しかし、その作業は予約日時を決めるのに時間を要したり、いつ予約したか患者さんが把握しにくかったりといった不便さがありました。そこで有効なのが「予約システム」です。時間や場所を問わず、患者さんがインターネット上から自由に予約を取ることができます。また、患者さんはシステム上で日にちごとの予約・混雑状況を把握し、すいている日を選ぶ傾向にあるため、曜日ごとの混雑度合いが自然と平準化されていきます。曜日による患者数の波をおさえることができれば、クリニック側の人員配置もしやすくなるでしょう。

自動精算機とは

「セルフレジ」とも呼ばれる自動精算機は、診察費の支払いや領収書・診療証明書の発行などが行えます。自動精算機を導入することで受付スタッフと患者さんとの接触機会を減らすことができ、感染予防につながります。自動精算機を導入した場合、スタッフが会計に関与することは基本的にはありません。一方で、支払いまでの金額の入力などはスタッフが行い、その後の支払い方法の選択や支払い処理は患者さんが行うセミセルフレジというタイプもあります。自動精算機は種類が豊富で、操作性やレセコンとの連動性、決済方法、機器のサイズなどがそれぞれ異なりますので、クリニックの人員や患者層、開業予算、どこまでを自動化するかなどに合わせて導入すると良いでしょう。

患者呼び出しシステムとは

「患者呼び出しシステム」とは、受付の際に専用の受信機を患者さんに渡し、診察や検査・会計の順番がきたときに、その受信機に通知するシステムです。飲食店などでこの受信機を手にしたことがある方も多いのではないでしょうか。このシステムを利用することで、耳が聞こえづらい患者さんや、名前を呼ばれることを好まない患者さんでも内密かつスピーディーに呼び出すことができます。メーカーによってはほかのシステムと連動できたりスマートフォンを活用できたりする場合もあるため、患者層やシステム活用までの手間を考慮して機器を選択することをおすすめします。

電子処方箋とは

これまで紙で発行していた処方箋を電子化したものが「電子処方箋」です。医師が処方情報を「電子処方箋管理サービス」というシステムに登録した後、薬局の薬剤師がその情報を電子処方箋管理サービスからダウンロードして調剤するという仕組みです。診療を行ったクリニックだけでなく、複数の医療機関や薬局で患者さんの薬の情報を共有することができるため、併用禁忌や重複投薬を防ぐことが可能になります。また、患者さんが処方箋を持ち歩かなくて済むため、紛失してしまう心配もありません。

03医療機器

続いて、クリニックを開業・運営していくうえで欠かせない「医療機器」について解説していきます。

医療機器とは?

医療機器は、「人もしくは動物の疾病の診断・治療・予防に使用されること、または人もしくは動物の体の構造・機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具」と定義されています。具体的には、メスやピンセットのような小物類から心臓ペースメーカー、CTやレントゲン装置、放射線治療装置といった大型のものまでさまざまです。コンタクトレンズやばんそうこう、体温計や電子血圧計、家庭用マッサージ器なども医療機器にあたります。

医療機器管理システム

「医療機器管理システム」とはその名の通り、医療機器を管理するためのシステムです。どの場所にどのような機器が導入されているのか、いつ修理したかなどを可視化することが可能です。また、点検漏れなどのトラブルを防ぐことができますし、点検担当者の負担を減らすことにもつながります。

04クリニック開業時やツール導入時におさえておきたい制度

最後に、クリニック開業時やツール導入時におさえておきたい制度について紹介します。

インボイス制度

インボイス制度とは2023年10月から導入された、新しい仕入税額控除の方式です。仕入税額控除とは、生産・流通などの取引の段階で二重、三重と税がかかることがないようにした取り組みのことを指します。そのため、クリニックの患者さんと医療機関との取引ではインボイスの保存は基本的には不要となりますが、企業から健康診断や予防接種を受託していたり、治験を請け負っていたりする場合はインボイスの対応が求められます。

電子帳簿保存法

これまで、各税法で紙での保存が義務づけられていた帳簿書類ですが、領収書・請求書といった書類の処理作業の負担を軽減するために電子データによる保存を認めたものが「電子帳簿保存法」です。2024年1月1日からは、取引情報を原則データで電子帳簿保存法の要件にのっとって保存するということが定められています。

05まとめ

いかがでしたでしょうか。医療業界では人員不足が深刻化しているものの、さまざまな医療機器やICTをうまく導入することでスタッフの作業効率化や医療従事者間のスムーズなコミュニケーション、患者さんの満足度向上が見込めます。自分のクリニックにはなにが必要か、患者層や地域ニーズを見極めたうえでのシステム導入を検討してみてください。


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