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医療DXで変わる医療業界、導入のメリットや具体的な事例も紹介!

                   
投稿日: 2024.04.03
                   

「医療DX」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。クリニックを経営している方や、これから開業を考えている方の中には、医療DXについて情報収集をしている、導入を検討しているという方も多いかもしれません。この記事ではそのような方のために、医療DXのメリット・デメリットや具体的な事例などを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

深刻化する医療業界が抱える課題 

医療DXを理解するにあたり、現在の医療業界について知っておくことはとても重要です。ここでは、今後さらに深刻化していくと考えられる医療業界が抱える課題について説明します。

少子高齢化の加速

医療業界が抱える課題としてまず挙げられるのは、少子高齢化の加速です。厚生労働白書では、2040年には医療・福祉分野の就業者数が96万人の人手不足に陥るとされており、医療業界における人材確保は今後大きな課題となることが予想されます。また、すでに現在でも人手不足は大きな問題となっており、高齢化に伴い医療を必要とする人口が増える一方で、医療を提供できる人材が少ないことは、国民の健康的な生活を守るうえで深刻な問題となっています。

人材の不足

前述した少子高齢化の加速という理由もあり、医療業界の人材不足は重大な問題となっています。しかし、人材不足の原因は少子高齢化だけではありません。人材が不足している状況が医療従事者に過重労働を強いることで、身体・精神的に大きな負担となり、さらなる人材の流出につながっているのです。また、そのような厳しい労働環境で長時間働くことは、医療ミスの発生や医療従事者の健康被害などにもつながります。人材が不足していることが、新たな問題を生み、それがさらに人材不足を助長していると考えていいでしょう。

地域による医療格差

地域による医療格差が進んでいることも、医療業界における問題となっています。現在の日本では、東京を中心とする都市部に医療機関や医療従事者が多く集まり、そのほかの地域には十分な数の医療機関がないという状況にあります。それにより、地方と都市部で受けられる医療の種類が異なっていたり、より高度な医療を受けるためには都市部の医療機関に通う必要があったりとさまざまな問題が発生しています。

医療DXが進むとどんな世の中になるのか?

では、前述したような医療業界の課題を解決するために、医療DXはどのような働きをしてくれるのでしょうか。まずは、医療DX全般においていえる、その特徴やメリットを解説します。

医療DXとは

医療DXとは

医療DXとは、医療におけるデジタル技術を活用した変革を意味しています。DXはDigital Transformationの略であり、デジタル技術によって行われる変革全般をDXと呼びます。厚生労働省が出している資料では「医療DXとは、保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適な基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えることと定義できる」と説明されており、前述したような医療における課題を解決する手段として期待されています。

医療DXがもたらす医療業界の変化

では、医療DXにより今後の医療業界はどのように変わっていくと考えられているのでしょうか。まず、業務効率化と人材の有効活用が期待されています。デジタル化を進めることにより、必要な情報の確保や共有が迅速に行えるようになり、それに伴う作業の削減が可能になるためです。それにより、人材をより有効に活用できるようになったり、人材にかかるコストを少なくできたりといったメリットを得られます。また、このようにデータの確保や共有が容易になることは、医薬産業やヘルスケア産業の振興にもつながると考えられています。

個人の健康増進に寄与できる

個人の健康増進に寄与できることも、医療DXに期待されることの一つです。例えば、これまでの治療歴や検査歴、処方された薬の一覧などを、患者自身が一元管理できるようになれば、自身の健康状態や既往歴を把握しやすくなります。健康を保つうえで、自身の健康状態を把握することは大切な一歩となりますので、それが容易になることは個人の健康増進につながるといえます。また、離れた場所にある医療機関同士で患者情報を共有できれば、不要な検査を控えることができたり、患者自身が把握していないアレルギーを避けて薬を処方できたりするようになります。こういった点から、医療DXは個人の健康増進への寄与も期待されています。

医療DXの具体的な取り組み事例

医療DXの導入には、業務効率化やそれに伴う人材の有効活用、個人の健康増進などが期待できることを説明しました。では、具体的にはどのようなデジタル変革により、これらが可能になるのでしょうか。ここでは、医療DXの具体的な取り組み事例を紹介します。

医療DXの取り組み事例を紹介

医療DXの取り組み事例として代表的なのが、オンライン予約です。すでに多くの医療機関で導入されており知っている方も多いと思いますが、オンライン予約とはスマートフォンやパソコンを使い、インターネット上で診療予約ができるシステムのことです。患者側からすると、「診療時間外でも、24時間予約がとれる」「あいている日時が一目でわかる」「声を出す必要がないため、電車内など公共の場所でも予約がとりやすい」「予約の変更やキャンセルも簡単に行える」「マイページやメールなどで予約状況が確認できる」といったメリットがあります。

医療機関側からしても、予約のブッキングなどミスが起こりづらかったり、予約を受けつける作業を簡略化できたりと大きなメリットがあります。次に挙げられるのは、オンライン診療です。オンライン診療とは、診療自体をオンラインで行うことであり、スマートフォンやパソコンのアプリ・WEBサービスを利用して問診や診断を行います。患者は自宅にいながら医師の診察を受けられるため、「医療機関へ出向く必要がない」「感染予防になる」「近くに医療機関がなくても診察を受けられる」「待ち時間が少ない」といったさまざまなメリットにつながっています。そして、医療DXによりビッグデータを活用することで、ペーパーレスを実現することができます。例えば、これまで紙で行われていたカルテの記入を電子化することで、膨大な量のカルテをデータとしてまとめることができるようになります。医療機関内での保管場所の確保が必要なくなるほか、資源の有効活用にもつながっています。また、臨床データや医薬品の副作用データを活用することで、疾病や治療に関する研究、新薬の開発、医薬品の安全性の向上が進むと考えられています。

医療DX導入のメリット・デメリット

ここまで説明してきたことからもわかるように、医療DXの導入にはさまざまなメリットがあります。ここでは、より詳しく医療DX導入のメリットとデメリットについて説明します。

医療DX導入のメリットは?

まず挙げられるのは、患者にとって受けられる医療の質が向上するということです。デジタル化により医療情報が円滑に活用できるようになれば、その分一人ひとりの患者さんにとって適した医療を、適切な時間を確保したうえで行うことができるようになります。前述したように、オンライン診療で場所を問わずにさまざまな医療が受けられるようになることも、その一つです。また、医療従事者にとっては、業務の効率化が図れることが大きなメリットです。オンライン予約システムの活用や電子カルテの導入を始めとしたさまざまなデジタル技術を活用することで、それまで行っていた業務を簡略化・自動化し、作業負担を減らすことができるようになります。さらに、緊急事態におけるデータの維持がしやすくなることも、医療DX導入のメリットです。例えば紙カルテの場合、水害や火災などが起これば消失してしまう恐れがありますが、データであればサーバーだけでなくクラウド上にも保存しておくことで復旧が可能になります。

医療DX導入のデメリットは?

医療DX導入には、メリットだけでなくデメリットもあります。まず、導入にはコストがかかるということです。各システムの導入にあたり、数千万円のコストが必要となることもめずらしくありません。また、使いこなすにはそれなりの時間がかかること、使いこなせるかどうかには個人差があることもデメリットとして挙げられるでしょう。医療機関内のすべての従事者がシステムを使いこなせるようになるためには、事前・導入初期の研修や教育、その後の定期的なサポートが必要になると考えられます。また、デジタルシステムは停電時には使えなくなることがほとんどです。そのような事態に備え、リスクヘッジをしておくことが重要といえます。そして最後に、セキュリティー対策が必須となることも頭に入れておきましょう。システム上でのセキュリティー対策はもちろん、そのシステムを利用するメンバーに対する情報管理研修も必要となります。

医療DX導入における課題 

医療DX導入における課題 

医療DX導入には大きなメリットがあるものの、それと同時にデメリットがあることがおわかりいただけたかと思います。ここからは、そういったメリット・デメリットを踏まえ、導入にはどのような課題があるのかを説明します。

IT人材確保の必要性

まずは、IT人材の確保が必要となります。これは、導入されたデジタルシステムをスムーズに扱える人材の確保という意味だけでなく、医療機関のニーズに沿ったシステムを開発できる人材の確保という意味が含まれています。現状は、システム開発はITベンダーに任せている医療機関が多いですが、今後は医療機関ごとの異なるニーズや状況に合わせて開発ができる人材の確保が求められています。

医療データフォーマットの標準化

そして、医療データフォーマットの標準化も、医療業界全体における課題となっています。例えば、現状では電子カルテのフォーマットは標準化されていません。これを標準化させることで、より円滑な情報の共有、電子カルテの普及向上が進むと考えられています。

常時オンラインが出来る環境の構築

医療DXを導入し活用していくためには、常時オンラインとなる環境の構築が必要となります。常時オンライン接続環境での個人情報の使用は、ネット銀行などではすでに行われているものの、医療機関ではいまだ限定的です。そのため、オンライン常時接続が可能となる環境の整備や代表者の意思決定などが必要だと考えられています。

医療DXに対する政府の動向

現在政府は、「医療DX令和ビジョン2030」を提言し、医療DXの実現に向けて「全国医療情報プラットフォーム」の創設、電子カルテ情報の標準化、「診療報酬改定DX」の取り組みを行っています。これらがどのようなものであるのかを解説します。

全国医療情報プラットフォームを構築

「全国医療情報プラットフォーム」の創設とは、医療情報全般を集約するプラットフォームを構築するという取り組みです。これが実現されることにより、レセプトや電子カルテ、予防接種、処方箋などの情報が一元管理できるようになり、医師や薬剤師といった医療従事者は患者の既往歴や検査歴、服薬状況などをこれまでよりも容易に確認できるようになります。患者さん側からしても、不要な検査や薬の処方を避けることができたり、問診での説明がスムーズに行えたりとメリットがあります。

電子カルテの情報共有

「医療DX令和ビジョン2030」には、2030年までに電子カルテの普及を進めるという提言もなされています。前述したように、電子カルテは情報管理・共有が容易になる、保管場所が不要になるといったメリットがあります。このメリットをより生かすために、電子カルテの普及が推進されています。

診療報酬改定DX

医療DXの導入により、診療報酬改定時の負担を軽減することも、政府が進めている取り組みの一つです。現在、診療報酬改定時のシステム変更やそれに伴うレセプト業務などにはコスト、時間が大きくかかっており、必要な人材リソースも大きくなっています。その負担を医療DXの導入により抑え、よりスムーズに診療報酬改定を進めるという目的があります。

まとめ

医療DXについて、その言葉が表す意味から、メリットやデメリット、事例、今後の課題まで説明しましたが参考になったでしょうか。少子高齢化が進む日本にとって、医療DXが普及し活用されることは、大きなメリットとなります。医療機関を形成している方、開業を考えている方は、政府が普及を進めていることも踏まえ、システム導入などを検討していただければと思います。