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時間外対応加算とは?時間外等加算との違いや点数について解説

                   
投稿日: 2025.01.15
                   

診療時間外に患者さんから問い合わせが多いクリニックは、「時間外対応加算」の対応体制を整えることを検討してみてもいいかもしれません。時間外対応加算は、地域医療を支えるクリニックを評価し、かかりつけ医制度を支援する取り組みです。導入によって地域の住民からの信頼を得やすくなるというメリットもあります。

この記事では、時間外対応加算の施設基準や導入のポイント、時間外等加算との違いなどについて解説します。

時間外対応加算とは?

時間外対応加算とは?

時間外対応加算とは、休日や夜間に患者さんから問い合わせがあった際に、対応できる体制をとっている地域のクリニックを評価する仕組みのことです。

休日・夜間に患者さんが集中する救急病院の勤務医の負担軽減を目的としたもので、地域のクリニックが軽症患者さんの対応を行うことにより、1つの病院への負担集中を分散させる狙いがあります。

時間外対応加算の対象患者や算定要件は以下の通りです。

時間外対応加算の対象患者

時間外対応加算の対象になるのは、再診患者のみです。再診料に対する加算として時間外対応加算を算定することが可能です。

算定要件

診療時間外に患者または家族からの問い合わせを電話などで受けつけ、必要に応じて診療や往診、他医療機関との連携などを行うことができる体制を整えていることが算定要件となります。

時間外対応加算は、各施設基準に応じて4段階に分かれています。それぞれの点数および施設基準については後ほど詳しく記述します。

届出要件

時間外対応加算の届出要件は下記の2点です。

・診療時間外でも患者からの電話の問い合わせが受けられるように体制を整える
・診察時間外の対応体制や連絡先について、患者への周知を行う

診療時間外の連絡先は、医院の電話番号とは別の電話番号を用意しておくと便利です。電話転送サービスを利用し、時間外は院長につながるように設定しているクリニックもあります。

時間外対応加算の算定は事前届出が必要

時間外対応加算の算定をするには、あらかじめ厚生局に届出を提出する必要があります。

届出の様式はインターネットからもダウンロードが可能です。クリニックの診療時間や患者さんへの周知方法、対応する常勤の職員数などを記入して書類を郵送する必要があります。

また、過去に対応した実績がなくても届出は可能です。

時間外等加算との違いや加算算定の要件

時間外等加算との違いや加算算定の要件

「時間外対応加算」と「時間外等加算」は名前こそ似ていますが、これらは全く別の加算です。

時間外対応加算は「時間外対応の体制を整えている」ことへの加算です。体制が整っているクリニックであれば、診療時間外の対応であるかどうかを問わず、すべての再診患者さんに対して加算することができます。

一方、時間外等加算は「診察時間外に受診対応をした」ことへの加算です。時間外対応加算の体制が整っていないクリニックでも算定できますが、時間外対応をした患者のみが対象です。

ちなみに、時間外等加算は以下の3つに分けられています。

・早朝・夜間加算
・深夜加算
・休日加算

さらに初診や再診、患者さんの年齢によって点数が異なります。時間外等加算の詳細については、以下の項目を参考にしてください。

早朝・夜間加算

早朝・夜間加算は、診察時間外のうち早朝6〜8時、または夜間18〜22時に対応した場合に加算されます。ただし、深夜加算と休日加算の時間帯は除くので注意が必要です。点数は下記の通りです。

初診:6歳未満200点
   6歳以上85点

再診:6歳未満135点
   6歳以上65点

深夜加算

深夜加算は、22時〜翌朝6時までに対応した場合に加算されます。点数は以下の通りです。

初診:6歳未満695点
   6歳以上480点

再診:6歳未満590点
   6歳以上420点

休日加算

休日加算は、日曜日や国民の祝日、年末年始(12月29日〜1月3日)に対応した場合に加算されます。点数は以下の通りです。

初診:6歳未満365点
   6歳以上250点

再診:6歳未満260点
   6歳以上190点

保険医療機関の都合による算定について

時間外等加算は、患者さんからの希望で緊急時に対応した場合には算定できますが、クリニックの都合で時間外対応をした場合は算定できません。

たとえば、以下のような例は時間外等加算の対象外になります。。

・クリニック側が再診予定日に休日を指定した
・もともと夜間診療しているクリニックが診療時間内に診療を行った
・クリニックが混雑していて、受付時間が診療時間外になってしまった
・日中に診療できなかった患者さんがいたので、診療時間外に来院してもらった
・患者さんの希望で日曜に処方箋を出したが、緊急性のある症状とはいえなかった

時間外・深夜・休日のいずれかに該当することに加え、患者さん側の希望であること、緊急性があることが算定要件のポイントになります。

時間外対応加算の点数・ポイントと施設基準

時間外対応加算の点数・ポイントと施設基準

時間外対応加算は、施設基準に応じて加算される点数が異なります。それぞれの施設基準や点数、押さえておきたいポイントについてチェックしましょう。

時間外対応加算1

「時間外対応加算1」は、診療時間外に患者または家族から問い合わせがあった場合、そのクリニックの常勤の医師または看護師、事務職員などによって常に対応できる体制を整えているクリニックが対象となります。ポイントは「常勤職員」によって「常時対応できる」体制である点です。

ただし、非常勤職員でも週3日以上かつ所定労働時間が週22時間以上の職員であれば、基準を満たしているとみなされます。

また、やむを得ない事情で電話に出られなかった場合を想定し、コールバックできる体制を整えておくことも必要な要件です。

「時間外対応加算1」で加算される点数は5点です。

時間外対応加算2

「時間外対応加算2」は、診療時間外に患者または家族から問い合わせがあった場合、そのクリニックの非常勤の医師または看護師、事務員などによって常に対応できる体制を整えているクリニックが対象となります。ポイントは「非常勤職員」によって「常時対応できる」体制である点です。

また、時間外対応加算1と同様にコールバック体制を整えておく必要があります。

「時間外対応加算2」で加算される点数は4点です。

時間外対応加算3

「時間外対応加算3」は、診療時間外の夜間18〜22時に患者または家族から問い合わせがあった場合、常勤の医師または看護師、事務員などによって対応できる体制を整えているクリニックが対象となります。ポイントは「常勤職員」によって「18〜22時の間は対応できる」体制になっている点です。

ここでの常勤職員は、時間外対応加算1と同じく「週3日以上かつ所定労働時間が週22時間以上の職員」であれば基準を満たしているとみなされます。

また、深夜・休日は留守番電話で地域の救急医療機関を案内するなど、患者さんが必要な医療を受けられる体制を準備しておく必要があります。

「時間外対応加算」で加算される点数は3点です。

時間外対応加算4

「時間外対応加算4」は、複数のクリニックと連携し、患者または家族からの問い合わせに対応できる体制を整えているクリニックが対象となります。ポイントは「他院との連携」によって「18〜22時の間は対応できる」体制になっている点です。

他のクリニックとの協力体制が可能なので、自院だけでは対応の負担が大きいクリニックでも導入しやすい体制です。

当番日の夜間18〜22時は原則当番のクリニックが患者さんの相談を受けつけ、当番日以外の日は当番にあたるクリニックを、深夜・休日は地域の救急医療機関を留守番電話で案内するなどして対応します。

連携するクリニック数は最大3つまでです。また、連携先は患者さんが通える範囲内であることが条件となります。

「時間外対応加算4」で加算される点数は1点です。

条件(加算)の重複について

早朝・夜間加算、深夜加算、休日加算のいずれかで条件が重複する場合、併用して算定することはできません。条件が重なる場合、より点数が高い加算を算定します。

たとえば、日曜診療をしていないクリニックで「日曜日深夜23時に患者さんを診療した」ケースがあったとします。

このケースの場合、休日加算と深夜加算の条件が重複することになりますが、算定できるのは深夜加算のみです。深夜加算と休日加算を同時に算定することはできないので注意しましょう。

2024年6月に施された時間外対応加算の見直しについて

2024年6月に施された時間外対応加算の見直しについて

2024年6月に行われた診療報酬改定では、情報テクノロジーの進展によって多様化するサービスに対応するため、時間外対応加算2が新たに設けられることになりました。

時間外対応加算2が増設されたことにより、現在は非常勤の医師や看護師でも対応可能になっています。

(参考:個別改定項目について|厚生労働省

(参考:令和6年度 診療報酬改定 ポイント_Ver2.0|一般社団法人 日本病院会

時間外対応加算にある課題と対策

時間外対応加算にある課題と対策

時間外対応加算を届け出る際は、患者さんへの周知や電話の対応方法などの課題をクリアにしておく必要があります。

ここでは、時間外対応加算を導入する際の課題と対策についてお伝えします。

患者さんへの周知

時間外対応加算の届出を行ったクリニックは、下記の内容について患者さんへ周知する必要があります。

・時間外対応加算の届出を行っていること
・診療時間外でも電話などで対応すること
・診療時間外の連絡先
・電話を取れなかった場合の対処方法(コールバックなど)

診療明細書を見て「診療時間内に受診したのに、なぜ時間外対応加算の点数がついているの?」と疑問を持つ患者さんも多いことが考えられます。

こうした疑問を残さないためにも、院内掲示や文書に「対応体制を整えていることへの加算であること」「再診の患者さんは、診療時間内の受診であっても全員が加算対象であること」を明記し、スタッフも質問を受けた際に回答できるよう準備しておくとよいでしょう。周知方法は、院内掲示や連絡先を記載したチラシなどの文書配布、診察券への記載が一般的です。

また、2024年の診療報酬改定に伴い、保険医療機関の書面掲示事項は原則クリニックのホームページにも掲載することになっています。ホームページがある場合は、経過措置の令和7年5月31日までに自院が加算対象であることを追加しましょう(ホームページのないクリニックは不要です)。

時間外の電話対応

時間外対応加算では、診療時間外に連絡のつく電話番号を用意しておく必要があります。ここで院長のプライベートの電話番号を記載してしまうと、対応が煩雑になってしまうため注意が必要です。

クリニックの代表電話の留守電にメッセージを残してもらって転送する、またはクリニック用の携帯電話を用意するなどして対策しましょう。

電話対応件数が多い場合は、電話音声ガイダンスを利用して内容を振り分けるツールなどを導入するとクリニックの負担を減らすことができます。

まとめ

時間外対応加算は、地域の医療に貢献するクリニックを評価し、救急病院の負担を軽減するために導入された制度です。

導入すれば経営上のメリットだけではなく、地域住民の不安を解消し、救急医療機関の負担を減らすことにも寄与できます。

2024年(令和6年度)の診療報酬改定で「時間外対応加算2」が新設され、非常勤の医師やスタッフでも対応可能となったことで、導入のハードルは下がっています。この機会に対応体制の整備を検討するといいかもしれません。