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開業医の年収・お金に関する話

医師または歯科医師を目指している学生や、クリニックの開業を検討している方で、「開業医になると、どれくらいの年収をもらえるか」「開業資金がどれくらい必要なのか」についてご存じの方はどのくらいいるでしょうか。本記事では、診療科別に、平均年収や開業資金について解説します。

01開業医の平均年収やお金の話

ここでは開業医の平均年収や、開業するために必要な資金について紹介します。

開業医の平均年収は?

厚生労働省が発表しているデータによると、開業医の平均年収は約2800万円とされています。勤務医の平均年収が約1500万円とされているので、約1.8倍の差があります。手取りで計算すると、開業医は約1500万円、勤務医は約900万円となります。開業医の手取りが大幅に減るのは、収入から税金や設備費、人件費などが引かれるからです。また、医師としてのスキルに加え、広告戦略の立て方や開業場所の周辺環境によって集患率には変動があるため、同じ診療科であっても年収が異なる場合があります。

開業するために必要な資金の平均金額は?

開業のために必要な資金は、約8000万円です。かかる費用としては、主に敷金・礼金・仲介手数料・前家賃・内装工事費・医療設備費・什器備品費・OA機器費・医療消耗品費・人件費・広告宣伝費・医師会の参加費・その他備品費などがあります。特に費用がかかるのは不動産費用であり、開業する場所やクリニックの規模によって金額が大きく変動します。例えば、ビルのテナントでクリニックを開業する場合は、戸建てよりも不動産費用を抑えることができます。ただし、不動産会社によって、敷金や保証金の条件が異なりますので、契約の際は注意深く確認しましょう。また、地方で開業する場合は、駐車場の併設も検討しなければなりません。金融機関の融資は、賃貸借契約後でないと申請できないため、物件を借り始めてから内装工事を行うまでに時間を要することがあります。物件によって期間が変わりますが、賃貸料が1〜2カ月間無料になる、フリーレントを採用している不動産会社もありますので確認すると良いでしょう。また、クリニックが軌道に乗るまでにはある程度の時間がかかりますので、運転資金を多く見積もっておくことをおすすめします。

02診療科別の平均年収

労働政策研究・研修機構から発表されているデータなどをもとに、内科・外科・歯科・整形外科・産婦人科・小児科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科・精神科・皮膚科の平均年収について紹介します。

内科

内科の平均年収は約1200万円です。ほかの診療科と比べると、一人あたりの診療報酬が低くなる傾向にあり、開業医の場合は、内科だけで収益を上げるには集患率を上げる必要があります。内科の一般診療以外に、消化器や呼吸器、循環器、糖尿病などの診療経験があるならば、クリニックの診療科に掲げることで、患者層を広げることができます。

外科

外科の平均年収は約1400万円です。年収は年齢が上がるにつれて増えていき、40代になるころには1000万円の大台に乗ります。クリニックを開業して外科を診療科として掲げる場合は、内科よりも人が集まりにくい傾向があります。美容外科は除きますが、設備的にクリニックでは小手術のみの対応となるため、病院を開業することも視野に入れると良いでしょう。

歯科

歯科の平均年収は約800万円となり、月収は約62万円、年間賞与額は約63万円です。こちらの年収は、賃金構造基本統計調査データを参考にしています。歯科医師の役職や年齢、性別のほか、開業の有無によって、得られる収入は異なります。

整形外科

整形外科の平均年収は約1300万円です。他科と比べると対応している治療範囲が広いため、収益を大きく伸ばすことが期待できます。ただし、開業医として医院を経営している場合は、リハビリスペースが必要になるため賃料が高くなったり、検査・リハビリなどの設備費や理学療法士・作業療法士などの人件費がかかったりします。そのため、その分の支出も増えることが想定されます。

産婦人科

産婦人科の平均年収は、約1500万円です。産婦人科には、月経や不妊症、更年期障害などに対応する婦人科と、妊娠時の健康状態の管理やお産に対応する産科があるため、どちらの分野をメインにするかによっても平均年収は異なります。

小児科

小児科の平均年収は、約1200万円です。少子化に伴い子どもの数は年々減っており、今後も年収は上がりづらいと考えられています。男女比を見ると、女性医師が多いのも特徴となっています。

呼吸器内科

呼吸器内科の平均年収は、約1500万円です。新型コロナウイルスや高齢化社会などが原因で、呼吸器内科を受診する患者数は年々増えています。また、ぜんそくやCOPDなどの慢性疾患で受診する方の数も多く、これらの病気は長期的なコントロールが必要になります。そのため、安定的な収益が得られやすい診療科といえます。

耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科の平均年収は約1500万円で、小児耳鼻咽喉科は約1100万円、気管食道・耳鼻咽喉科は約1000万円とされています。耳鼻咽喉科は、小さいお子さんからご年配の方まで受診する診療科です。患者数の多いアレルギー性鼻炎などを専門的に治療しているクリニックであれば、安定的な収益が見込めます。

精神科

精神科の平均年収は、約1200万円です。インターネットの普及や労働環境の変化、新型コロナウイルスなどの影響で、メンタルに不調をきたす患者が増えています。そのため、現在の平均年収の水準は他科と比べると低いですが、今後は患者数が増え、年収も増加すると予測されます。

皮膚科

皮膚科の平均年収は約1600万円です。ただし、皮膚科のなかでも美容皮膚科の平均年収が約1900万円となっており、保険診療のみのクリニックの場合は、1600万円を下回ると考えられます。

03診療科別の開業するのに必要な費用

続いては、内科・外科・歯科・整形外科・産婦人科・小児科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科・精神科・皮膚科の開業資金について解説します。

内科

内科の開業資金は約6000万円です。循環器内科や消化器内科、呼吸器内科、糖尿病内科、心療内科など、専門とする科によって導入する設備の種類や数が異なり、それに応じて設備費用も変わります。例えば、消化器内科であれば、胃カメラ・大腸カメラ・エコーなどの検査設備を導入する必要がありますが、心療内科の場合は設備費がかかりません。ただし、心療内科は、臨床心理士や精神保健福祉士などのスタッフを雇う必要もありますので、そのほかの内科に比べて人件費がかかりやすくなります。

外科

外科の開業資金は約4500万円です。内訳としては、不動産費が約3000万円、医療設備導入費が約1500万円です。どの診療科にも共通する点ですが、開業場所が地方か首都圏か、戸建てかビルのテナントかによって資金額は大きく変動します。あわせて、広告宣伝費や人件費、税金などの費用も別途発生します。

歯科

歯科の開業資金は、約5000万円です。開業する場所や治療内容によっては、約7000〜7500万円かかる場合があります。医科と同じく、歯科も金融機関に融資の申請をすることができますが、勤務医として働きながら開業準備期間中に自己資金として1000万円以上をためておくと良いでしょう。

整形外科

整形外科の開業資金は、約5000万円です。X線・CTなどの画像診断装置、牽引機・低周波治療機・干渉波治療機・温熱治療機などのリハビリ設備を導入するための費用がかかります。さらに、理学療法士や作業療法士といった専門スタッフを雇う場合は人件費もかさみます。足腰が不自由な患者さんが多いため、通院の利便性を高めるために、送迎サービスを行っている医療機関もあります。

産婦人科

産婦人科の開業資金は、約6000万円です。産婦人科は、月経や更年期障害といった婦人科疾患の診療、不妊治療、中絶、妊娠時の健康管理、お産など、何をメインに対応するかによって開業資金が大きく変わります。

小児科

小児科の開業資金は、約5500万円です。お子さんが病院嫌いにならないようにするためにも、ほとんどの医療機関では、キッズスペースを設置しています。また、親御さんが過ごしやすいように、授乳室やおむつ交換台なども用意しているため、設備費がかかります。開業場所は、子どもが騒ぐことで、近隣の方に嫌がられる可能性がありますので、テナントより戸建てが望ましいとされています。

呼吸器内科

呼吸器内科の開業資金は、約7000万円です。感染症への配慮から待合室を広くしているクリニックが多く、不動産費や内装工事費などの費用が多くかかる傾向にあります。また、X線や一酸化炭素ガス分析装置、スパイロメーターなどの検査設備費も発生します。CTなどの検査装置を導入する場合、さらに設備費と不動産費がかかります。

耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科の開業資金は、約4500万円です。他科と比べると大がかりな手術が少ないため、設備費を少なく済ませることができます。年収もその分低くなりやすいですが、慢性疾患やアレルギー性鼻炎を抱える患者を獲得できれば、安定的に収入を増やせるでしょう。

精神科

精神科の開業資金は、約3500万円です。身体的な検査をしたり外科的処置をしたりするための費用がかかりません。臨床心理士や精神保健福祉士などを雇う場合は、他科と比べると人件費が多く発生します。

皮膚科

皮膚科の開業資金は、約3000万円です。皮膚科は戸建てよりもテナントで開業する医師が多いことから、不動産費用の平均額が低くなっています。ただし、診療科として美容皮膚科を掲げる場合は、レーザー治療器や薬剤をそろえる必要があるため、1000万円近くの治療設備費が必要になることがあります。また、医療機関によっては、内装やインテリアにこだわり、改装費や備品購入費の負担が増えることもあります。

04開業資金の内、自己資金の割合はどれぐらい?

開業をするためには「自己資金をたくさん準備しなくてはならない」と感じる方もいるかもしれませんが、自己資金が少なくても金融機関から資金を調達することが可能です。開業するエリアや掲げる診療科によって、必要な資金は大きく変わりますので、事前に計算をしておきましょう。もちろん、自己資金を多く用意できれば、借入金額を減らすことができるので、返済や利息支払いの負担が軽減し、早い段階でクリニックの経営を安定させることができます。金融機関の融資条件によって異なりますが、自己資金の目安は1000万円となっています。

05開業費用を抑えるためにできること

クリニックを開業・運営するのに、多大な費用がかかることをご理解いただけたかと思います。ここでは、リース活用や価格交渉など、開業費用を減らす方法についてお伝えします。

既に開業している医院・クリニックを継承する

新規で開業する方と、親族や知り合いの医師からクリニックを継承する方とを比べると、開業資金に倍以上の差がついています。継承後も同一の診療科で診療を行うのならば、設備費の負担も抑えることが可能です。さらに、改装も不要であれば、内装工事費も抑えられます。また、知り合いの業者を紹介してもらえれば、機器の購入費用なども交渉しやすくなります。

リースを活用する

新しい医療機器や設備をそろえようとすると、多額の費用がかかります。そこでおすすめするのが、リースの活用です。リース契約の対象は、医療機器のほかに、パソコンなどの耐久性の高い製品です。リース会社によって、契約年数・料金などの契約条件が異なる場合がありますので、契約する前に調べておきましょう。

価格交渉をする

土地代をはじめ、建設費、改装費、家賃、設備費の業者への価格交渉は、必ずしておくと良いでしょう。適正価格より高い場合であっても、値下げ交渉を行うことで費用を下げられる可能性があります。交渉が成功すれば、大幅に支出を減らすことが可能です。

06まとめ

最後まで本記事をご覧いただきありがとうございました。開業医の年収や開業資金について、診療科別に説明しましたが参考になったでしょうか。診療科ごとに、年収や開業資金には大きな違いがありますので、自身の目指す方向性に合わせて年収アップや開業を目指していただければと思います。


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