開業後、医院経営あるある
開業前には資金の調達や事業計画の立案、人材採用などやるべきことがたくさんありますが、いざ開業してからも多くの医師が直面する壁があることをご存じでしょうか。開業はゴールではなく、開業医としての人生のスタートであり、さまざまな悩みや課題が立ちはだかることもしばしばです。今回は開業後のさまざまな失敗例をあるあるとして紹介します。開業する前に知っておけば対策できるものもありますので、明るい開業ライフのためにもぜひ参考になさってください。
目次
01クリニック開業後の医療経営あるある
まずは、経営についてのあるあるから紹介します。これまで医師として知識や技術を磨き蓄えてきた人であっても、経営については初めてである場合が少なくありません。よくある失敗例を参考に、同じ失敗をしないように今の計画を見直してみてください。
経営知識が足りなかった
そもそも経営知識が足りなかったと感じている医師も少なくないのではないでしょうか。開業前は開業のための資金調達で忙しく、経営者としての知識を十分に蓄えないまま開業の日を迎えてしまうケースも多いようです。もちろん、丁寧な診療を提供し、新しい技術や機器を導入することは患者さんにとって非常に大切です。しかしながら、経営という視点から開業を見た場合には、最初の数カ月の間にどれだけ地域の人から注目され、来院してもらうかが鍵となります。そのために開院日よりも前にWEB広告を出したり、駅や周辺に目立つ張り紙をしたりという集患対策を適切な時期から行う必要があり、これは事前にそうした知識を持っていないと、どうしても後手に回ってしまいます。開業後は慣れないことが多く忙しい時期が続きますが、その先の患者数に大きくつながる集患についての経営知識は早い時期から入れておくといいでしょう。また、必要経費が想定以上であることに悩んでいる医師も少なくありません。初期費用だけでなく、運用費用も詳細に見積もっておかなければ、人件費や交際費、設備費などに圧迫され、経営難に陥ってしまう可能性が考えられます。
開業場所や設備が悪かった
開業した場所や導入した設備について失敗したと感じる医師もいます。開業資金は最低でも数千万円必要だといわれています。その中でも大きな部分を占める土地や建物は、よく吟味して選択したとしても後悔する場合が少なくありません。例えば、始めは首都圏での開業を考えていても、テナント料の高さや物件の大きさなどから都市部を離れての開業に変更するというケースがよくあります。当然ではありますが、テナント料や土地代などはアクセスのよさやニーズに合わせて変動します。賃料が高い場所には高いだけの利点があるので、都市部を離れると想定していたよりも患者さんが少ないという事態も考えられます。開業を考えている場所では計画していた来院数が見込めるのかという点は、さまざまな視点から冷静に、かつ客観的に考え意見を集める必要があるでしょう。また、地方や車利用が一般的となっている地域では、広めの駐車場の併設が受診のための必須条件になることもあります。そうした土地代などを加味したうえで、どこにクリニックを開業するのかを判断しましょう。内装や動線、設備などもさまざまな視点からの意見を集めて工夫しないと、後で後悔することが多いでしょう。標榜する科や来院が多い患者層、性別、利用用途などに合わせて内装を考える必要があります。医師やスタッフの好みだけで決めてしまうと、患者さんの居心地が悪く再診につながらない危険性があります。患者さんとスタッフの動線にも気を配り、体調の悪い患者さんでもリラックスできる環境になっているか、スタッフが働きづらくないかなどを考慮し、設備を整えましょう。
採用したスタッフの定着が悪かった
スタッフの定着率の悪さで悩む医師も少なくないのではないでしょうか。開業医になると、患者さんを診療することだけでなく、スタッフの職場環境や福利厚生、人間関係などにも目を配らなければなりません。スタッフの採用も自分で行わなければならないため、初めての経験に戸惑う医師も多いようです。採用面接のときには、自分がこれから開業しようとしているクリニックの理念についてきてくれるのか、チームワークを活かした仕事ができるのかなど細かな部分まで確認する必要があります。開業まで時間がないから、応募数が少ないからと乱雑な採用を行うと、いざ開業してから困るというケースが考えられます。また、スタッフの定着率がよくなるよう、意識して設計、経営することが大切です。スタッフの定着率が悪いと、人材育成に時間がかかったり、人手不足でスムーズに診療が進まず患者さんが減ってしまったりというデメリットが発生します。雇用条件を見直したり、職場環境の改善を行ったりすることで定着率の改善が期待できますので、休憩時間にゆっくり休めるスペースを作ったり、プライバシーが守れるロッカーを設置したりしてスタッフが日々の業務にストレスをためないための工夫が必要です。診療だけでなく、スタッフの働きやすさ、過ごしやすさにも目を向けましょう。
02クリニック開業後の経営によくある人材の悩みは?
職場における人間関係のトラブルはつきものですが、クリニックでも同様の悩みが発生します。人間関係がよければ来院する患者さんにとっても働くスタッフにとってもいい影響があり、雰囲気のよいクリニックを作ることができます。ここでは人に関しての、よくあるクリニック開業後の悩みについて紹介します。
いい人材が集まらない
まずは新規開業に向けてスタッフの募集を開始したものの、思いえがいていたような人材が集まらないという悩みがあります。クリニックの経営をよい状態で進めていくために、優秀な人材の確保は必要不可欠です。このような壁にぶつかったときは、まず今出している募集条件を見直してみるとよいでしょう。周りのクリニックや別の求人募集条件と比べて極端に悪い条件になっていないか、、クリニックの特徴やアピールポイントはちゃんと伝えられているかなどを今一度見直しましょう。場合によっては募集をかける人材会社を変えてみたり、医師自ら声をかけたりするのも効果的です。また、最近ではSNSでの募集のほうが反応がよい場合もあるので、クリニック専用のSNSを作成してみたり、医師個人のSNSから求人募集を発信してみたりするのも一つの手でしょう。
採用したスタッフがすぐ辞めてしまう
いい人材を採用できても、そのスタッフがすぐに辞めてしまっては、結果的によい採用とはいえないでしょう。面接の際には「長く働けるのか」というポイントはしっかりと確認したうえで採用するようにしましょう。また、面接時には長く働く気でいたが、職場環境などを理由に仕方なく辞めてしまうスタッフもいるでしょう。そうしたスタッフが多いと感じた場合には、先述したような職場環境の見直しを行い、スタッフに長く働いてもらえるよう、設備などを工夫することが求められるでしょう。
スタッフ同士の仲がよくない
スタッフ同士の不仲で仕事が円滑に進まない場合もあります。面接時にそれぞれの個性を見ながら採用するというのはとても難易度の高いことです。また、もしそのように気遣って採用したとしても、実際に働き始めるとウマが合わなかったり、仕事のやり方の不一致で険悪になってしまったりということも考えられます。経営者としてできることの一つとして、スタッフ一人ひとりと個別で話す時間を作るという手があります。日々漫然と仕事をしていると、スタッフの不仲に気づくのは難しいでしょう。問題が大きくなる前の段階から気づいてあげられるような環境を作ることができれば、スタッフの中にストレスが蓄積せず、大きなトラブルに発展する前にそれを食い止めることができます。スタッフとは普段からコミュニケーションを図り、異変に気づくことができるように工夫しましょう。
外部(社労士や税理士など)スタッフとのトラブル
社会保険労務士や税理士など、専門家とやりとりする機会は少なくありません。しかしながらここでも良好な関係性を築けず、苦労するケースがあります。必要なときに必要なアドバイスをもらえるように、こうした外部との連携は丁寧に行っていく必要があるでしょう。また、話しても理解してもらえない場合や契約トラブルなどで不信感が募った場合には、早めに関係を切り、ほかに信頼できる先を見つけることも重要です。信頼できないままずるずると関係を続けてもよいことはありません。スタッフの関係性と同様に、こうした専門家とのつながりも正しく見極めていきましょう。
03クリニック開業後の経営によくあるモノの悩みとは?
次はモノについての悩みも同じように紹介します。設備が整っていないと診療に集中できず適切な治療も提供できません。患者さんに繰り返し来院してもらうためには設備面も大切なのでぜひ参考にしてください。
機器のトラブル
導入した医療機器がうまく動かずに苦労するケースがあります。多くの場合は開業のタイミングで新しい機器を導入するので、勤務医時代に使っていたものと勝手が違いうまく操作できない、ほかの医療機器との連携がスムーズでないなどの問題が発生します。医療機器は高価なものなので、事前に操作性をしっかりと確認し、慎重に導入することが大切です。周りの開業医に相談するのもよいでしょう。
ITシステムを理解できるスタッフが少ない
予約システムやWEB問診など、現代ではインターネット上で完結できるサービスを利用する機会が増えてきています。こうしたサービスは患者さんの利便性を向上させ、うまく使うことができればスタッフの負担軽減にもつながるものですが、こうしたITシステムを理解できるスタッフが一人もいない場合は大きな悩みとなるでしょう。予約体制が整っているかどうかなどは患者さんがクリニックを選ぶうえでもとても大きな判断基準となるものです。専門的な部分は外部業者に頼りつつ、ある程度システムを使いこなせる人材を確保しておくことも大切でしょう。
機材、機器、ツールのサポートが少ない
価格や機能で選んだものの、サポート体制が十分でないと日々の診療に大きく負担がかかることがあります。何か起きたときに、機材トラブルなのか操作不足なのかをチェックしてもらったり、細かく操作を教えてもらったりできるようなサポート体制が整っている会社から購入すると、万が一のトラブルにもスムーズに対応できていいでしょう。信頼できる購入元を見つけ、契約内容を事前に確認しておくことも大切です。
04クリニック開業後の経営によくあるその他の悩みは?
クリニックの開業に際してよくある悩みや失敗例を説明してきましたが、悩みはまだまだ多く存在します。想定していたがここまでだと思わなかったということや、事前には想定できない事例などもあるので、失敗例を知っておきましょう。
患者が来ない
経営の存続に関わる患者の来院数は、大きな悩みのタネとなります。想定していたよりも患者さんが少ないと感じた場合は、自分のクリニックと周りにあるクリニックと比べてみることが大切です。知名度が問題なのか、待ち時間が問題なのか、診療に問題があるのかなど、患者さんにアンケートをとるのも効果的です。そうした意見を参考に、システム面やスタッフの接遇も見直し改善していきましょう。
WEBの集患が難しい
近年は、クリニックの情報もインターネットから収集することが主流になっており、WEBからの集患対策が必要不可欠です。とくにホームページはインターネット上での医院の看板的存在なので、まずはこうしたところから見直しを始めるといいでしょう。また、口コミも評判に直結するものなので、口コミに丁寧に返信したり、口コミを書いてもらえるように呼びかけをしたりするのもいいでしょう。WEBからの対策はさまざまあり、必要なものとそうでないものを区別していかなければWEB広告費だけがかさんでしまい思うような集患につながらないという可能性もあります。信頼できるコンサルタントをつけたり、周りのクリニックの医師から情報を集めたりするなどして、WEB集患を行うといいでしょう。
不可抗力の問題が発生(新型コロナウイルスなど)
事前に想定できない問題として、新型コロナウイルス感染拡大などが原因で患者さんの受診が減少してしまうということもあります。新型コロナウイルスの例では、院内感染対策を講じるなどして患者さんに来院してもらうなどの工夫が必要でしたが、今後また別の感染症が爆発的に流行したり、感染症とは別の何かが原因でクリニックへの受診がためらわれたりすることが考えられます。そうしたときには、患者数が減って売り上げが苦しい時期ですが、スポットコンサルを利用するなどして、患者さんが受診しやすい環境作りをほかのクリニックよりも先に行うというスピード感が求められるでしょう。
05まとめ
入念に準備をしたつもりでも、このような失敗例はあるあるの悩みなのでしょう。可能な限り事前に対策を練ることが重要ですが、予測が難しい問題に対しても耐えられるよう準備が必要です。人材、もの、費用の各面で、十分な準備をしておくことが肝心です。
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