医療スタッフが注意すべき言葉遣いとは?医療接遇のよくある疑問を解説
医療接遇の中でも特に大切なのが、患者さんへの「言葉遣い」と言われています。
しかし、実際のところ、正しい敬語が使えず、患者さんからのクレームやインシデントに繋がってしまうケースも少なくありません
この記事では、
- 医療スタッフの言葉遣いに関するよくある疑問
- 医療接遇に取り組むメリット・デメリット
- 医療機関が接遇スキルを高める方法
これらについて解説します。
クリニック経営者にとって医療スタッフの接遇スキルは、集患率をあげるための大切な要素で、競合との差別化のポイントにもなります。
医療現場の言葉遣いにおいて注意すべきポイントも紹介しますので、ぜひ接遇改善の参考にしてみてください。
医療スタッフの言葉遣いに関するよくある疑問
- なぜ医療スタッフは、正しい言葉遣いを意識しなければならないのですか?
-
患者さんと信頼関係を築き、より良い医療を提供するために必要だからです。
正しい言葉遣いには、
- 患者さんの緊張や不安を緩和してくれる
- 患者さんの悩みや症状を正確に聞き取ることができる
- 患者さんが前向きに治療に取り組もうとする姿勢になる
これらの効果が期待できます。
医療機関には、身体の悩みや体調の悪化により、緊張や不安を抱えている方が多く来院されます。したがって、一般的な接客対応と比べ、より安心してもらうための配慮が必要となります。
心理的安心性の高い環境では、患者さんの身体の悩みや症状の問診がスムーズに行えるため、より有用な医療を提供しやすくなるでしょう。
- 医療現場で間違えやすい言葉遣いについて教えてください
-
間違えやすい、また避けたほうが良い言葉遣いとして以下があります。
- 尊敬語と謙譲語を間違って使用してしまう
- 患者さんに医療の専門用語を使用してしまう
尊敬語と謙譲語を間違って使用してしまうケースは多いようです。
尊敬語は話す相手を敬って使用する言葉に対して、謙譲語は自分がへりくだって使用する言葉となります。つまり、主語が誰であるかによって、どちらの使用が正しいかが決まります。
例えば、スタッフが患者さんに対して「もうすぐ院長がいらっしゃいますので少しお待ち下さい」という敬語の使い方は誤りになります。
正しくは、「もうすぐ院長が参りますので少しお待ち下さい」となります。
あくまでも、院長はクリニック側の人間になりますので、患者さんに対しては尊敬語の「いらっしゃる」ではなく、謙譲語の「参る」を使うのが正しい敬語になります。
スタッフ同士の会話では、院長に対して尊敬語を使用する機会が多いため、間違えやすい言葉遣いです。
また、患者さんに対して医療専門用語を使用するのも避ける方が無難です。
医療専門用語は患者さんにはわかりにくく、理解の妨げにもなってしまいます。患者さんの立場に立ってわかりやすい言葉で話すことが望ましいでしょう。
以下は一例ですが、日常的な使用で慣れてしまっているため意識することが大切です。
- 悪寒がある:寒気がする
- 頓服で使用:症状が出た時に薬を飲む
- カテーテル:柔らかい管
- オペ:手術
- 患者さんに好印象を与える言葉遣いのポイントはありますか?
-
- 正しく丁寧な日本語(敬語)を使用する
- 患者さんの立場でわかりやすい言葉を使用する
- 印象を和らげるクッション言葉を使用する
- 患者さんの状態に合わせて声の大きさやスピードを調節する
クッション言葉の使用は、好印象を与えるのに役立ちます。
例えば、患者さんに問診票の記載を依頼する際に、
「こちらの問診票にご記載ください。」
「お手数をおかけしますが、こちらの問診票にご記載ください。」
後者のクッション言葉がある方が、より丁寧に依頼しているように聞こえるでしょう。
また、何か尋ねる際には「もしよろしければ」とクッション言葉を付け加えるだけで、相手に断る余地を残し、押し付ける感じを与えないようにもできます。
医療接遇の言葉遣いは、安心感を与え信頼されることで、患者さんが悩みや症状を正確に伝えやすい雰囲気をつくるのが目的です。
そのためには、言葉遣いのテクニックだけでなく、患者さん一人ひとりに合わせて、声の大きさやスピードを調節することも必要でしょう。
聞き手の患者さんに合わせて、声のトーンを変えてみるのもいいかもしれません。
- 医療接遇で言葉遣い以外に意識することはありますか?
-
接遇の5原則を意識して行うことが大切です。
<接遇の5原則>
- 身だしなみ
- 挨拶
- 表情
- 態度
- 言葉遣い
これらは医療接遇だけではなく、一般的な接客でも、必ず押さえておくべきポイントとして挙げられる項目です。いずれも、相手(=患者さん)からどのように見えるかを意識して行う必要があります。
医療接遇に取り組むメリット・デメリット
- 医療接遇に取り組むメリットはなんですか?
-
医療接遇を磨くことで以下のメリットがあります。
- 医療事故やクレームの発生を防ぐことができる
- クリニックの評判が良くなる
- スタッフがやめにくくなる
医療接遇に取り組むことで、ヒヤリハットやインシデント、患者さんからのクレームを減らす効果が期待できます。
2007年の医療法の改正に伴って、日本医師会から「医療安全対策マニュアル」が公開されました。この資料では、医療機関のヒヤリハットやインシデントは、スタッフ間のコミュニケーション不足が原因で発生することが多いと報告されています。
医療接遇スキルを高める過程で、スタッフ間のコミュニケーションも円滑になり、正確な情報伝達が可能となります。結果としてインシデントの発生も抑制できる可能性が高まります。
また、スタッフ間のコミュニケーションが活発になると、クリニックの雰囲も良くなり、働きやすい環境がスタッフの離職率にも影響してきます。
- 医療接遇に取り組むデメリットはなんですか?
-
接遇のスキルアップ研修を行うには時間と労力がかかります。専門業者に外注する際は追加の費用も発生してしまいます。
また、これまでは接遇に取り組んでこなかったクリニックが、急に接遇の研修を始めようと伝えるとスタッフからは、
「手間がかかることをしないでほしい」
「日々の診療だけで忙しいのにそんな時間はない」
このように、スタッフから賛同を得られないケースもあるかもしれません。
医療接遇にしっかり取り組むなら、地道な努力が必要になるでしょう。
医療機関が接遇スキルを高める方法
- 医療機関の接遇研修にはどのような方法がありますか?
-
接遇研修を実施するには以下の方法があります。
- 医療接遇の専門業者に外部委託をする
- 普段から付き合いのある製薬会社などに相談する
- 自院で研修を実施する
医療接遇の専門業者に委託するのも一つの方法です。
言葉遣いも含めた詳細なカリキュラムが設定されていますので、研修全般を任せることができます。
また普段から付き合いのある、医薬品卸や製薬会社の担当者に相談してみるのも方法の一つです。企業の中には接遇研修についてのノウハウを持ち、支援してくれる場合もあります。
- 外部に委託する際はどのようなことに注意すべきですか?
-
外部業者に委託する際は、以下の内容を確認しておきましょう。
- 医療機関での研修実績が豊富か
- 研修単発型かコンサル型か、カリキュラム内容の確認
接遇研修は、さまざまな業界で需要があります。そのため、研修実績は多いものの、医療業界での実績はあまりないといった業者もあります。
医療接遇は特殊であるため、医療業界での研修実績が多いかどうか確認するようにしましょう。
また、研修カリキュラムの内容が自院の課題に合っているかを見極めることも大切です。
課題が明確になっていないのなら、コンサル形式で委託をし、課題の洗い出しから支援してもらえるかどうかも選択肢になるでしょう。
編集部まとめ
この記事では、医療スタッフの言葉遣いに関するよくある疑問、医療接遇に取り組むメリット・デメリット、医療機関が接遇スキルを高める方法について紹介しました。
医療接遇での言葉遣いは、一つ間違えれば、患者さんからのクレームや医療事故にも繋がります。接遇改善への取り組みは、近隣の競合クリニックとの差別化のポイントにもなるでしょう。
正しく丁寧な言葉使いと接遇面を見直すきっかけとして、本記事が参考になれば幸いです。