潰れるクリニックの特徴7選!潰さないための具体的な対策について解説
クリニックの開業を検討していて、
「安定した経営に必要なものとは?」
「多くの時間と資金を使って開業したクリニックが潰れてしまったらどうしよう」
といった疑問や不安を感じている方は多いのではないでしょうか。専門的な医療の知識は十分に持っているけど、経営に関することは勉強中という方も少なくないでしょう。
そこで、この記事では、
- 潰れるクリニックの特徴7選
- クリニックを潰さないための具体的な対策
これらについて解説します。
潰れるクリニックの特徴を知り、対策することで廃業や倒産を回避することができます。本記事を参考に、具体的な対策を実践してみてください。
クリニックの廃業・倒産率
厚生労働省や企業の調査によると、
- 2021年の一般診療所の施設数は約105,000施設
- 同年に廃業した診療所は471施設
- 同年に倒産した診療所は22施設
(参考:医療施設実態調査|厚生労働省)
(参考:医療機関の休廃業・解散動向調査|株式会社帝国データバンク)
これらの結果から、一般診療所における廃業・倒産率は約0.5%となります。
その一方、中小企業の廃業・倒産率をみてみると、3.5%前後を推移しているとの調査結果があります。単純に比較してみると、クリニックの廃業・倒産率は低いといえるでしょう。
(参考:中小企業の動向|中小企業庁)
廃業と倒産の違い
廃業は、原則として借入金や買掛金などの負債がなく債務免除などの必要がない健全な財務状況で事業を停止することをいいます。
その一方で、倒産は業績不振や大幅な債務超過などによって、やむなく経営を断念することをいいます。
廃業の方が多い状況から考えると、開業のために借入れた資金は返済し終えたものの、何かしらの理由で事業を継続できないクリニックが多いのでしょう。
医療機関の廃業・倒産件数の推移
帝国データバンクのデータによると、廃業をする医療機関は増加傾向、倒産となる医療機関は横ばいで推移しています。
一般的な中小企業と比較して廃業・倒産率が低いからといって安心していると廃業・倒産してしまう可能性は十分あるともいえます。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
休廃業・解散 | 469 | 461 | 488 | 547 | 514 | 567 |
倒産 | 34 | 25 | 40 | 45 | 27 | 33 |
廃業/倒産 | 13.7倍 | 18.4倍 | 12.2倍 | 12.2倍 | 19.0倍 | 17.2倍 |
(引用:医療機関の休廃業・解散動向調査|株式会社帝国データバンク)
日本医師会による倒産対策
日本医師会では、「医療法人制度改革」によって都道府県への決算書類の届出を義務化するなど、経営状況を可視化するための施策を行うことで、クリニックの倒産対策に注力しています。
しかし、2006年に医療法人制度改革が行われてからも、クリニックの倒産件数は増加傾向にあるため、日本医師会にはさらなる改善策が求められているといえるでしょう。
潰れるクリニックの特徴7選
潰れるクリニックの特徴としては下記7つがあります。
- 事業計画がアバウトすぎる
- 資金繰りが上手くいっていない
- クリニックの立地が悪い
- 広告・宣伝などの集患対策が上手くできていない
- スタッフ同士の人間関係が良くない
- 医師の知識やスキル・コミュニケーション不足
- 医師が高齢で後継者がいない
それぞれについて詳しく説明します。
事業計画がアバウトすぎる
潰れるクリニックは、開業前の事業計画がアバウトすぎるといった特徴があります。
事業計画には、
- 開業資金の詳細な返済計画、いつまでにどのくらい収益を上げるのか
- 開業地域の競合状況から、どのくらいの患者さんが見込まれるのかの市場分析
- クリニックの特徴をどのように患者さんに伝えていくのかの経営戦略
- 開業後も定期的に計画を見直して、必要に応じて修正すること
これらの要素が含まれます。
事業計画を適当に立てているクリニックは、目標達成のための具体的な課題を設定できず、リソースを無駄に使いがちです。時間をかけて綿密な事業計画を策定し、必要に応じて専門家の意見も求めることが大切です。
資金繰りが上手くいっていない
事業計画と同様に、具体的な資金計画がないと、資金がショートして潰れてしまう可能性が高くなります。
よく陥りやすいのが、初期投資の見積もりを過少に計画する一方で、売上見込を過大に期待しているケースです。想定外の費用が発生した時には、支払いが追いつかなくなり、資金繰りが悪化してしまいます。
例えば、都心部に高い家賃の物件を借りて開業する場合、多額の初期投資が必要になります。しかし、想定していたよりも集患ができず、高額な家賃の影響で資金繰りが悪化してしまうといった事態も考えられるでしょう。
資金繰り計画には、患者数の増減や、外的要因による売上変動の予測も考慮する必要があります。
クリニックの立地が悪い
患者さんのアクセスが悪い立地や、周辺に競合のクリニックが多いエリアは、集患に苦戦し潰れてしまうリスクが高まります。
その他にも、
- 車でないと通院しにくいのに、駐車場が少ない
- 高齢者が多い診療科なのに、2階のテナントでエレベータもない
このような設備では、患者さんの利便性は低くなってしまいます。
立地を選定する際には、ターゲット層のニーズと周辺地域の競合状況を十分に把握し分析することが重要です。
広告・宣伝などの集患対策が上手くできていない
広告・宣伝などの集患対策が上手くできていないのも、潰れてしまうクリニックの特徴の一つになります。
新規の患者さんに受診してもらうためには、効果的な広告・宣伝が不可欠です。
特に、Webマーケティングの重要性が高まっている現代では、ホームページの作り込みやSNSを活用した広告、口コミの促進など、様々なアプローチが求められます。
街中の電柱や駅中の看板広告だけでは、集患対策としては不十分な環境になってきています。
スタッフ同士の人間関係が良くない
スタッフ同士の人間関係が良くないことは、クリニック経営において致命傷に繋がります。
スタッフ同士の人間関係が悪いと、
- 離職率が上がるので、再び採用するコストがかかる
- 採用後のスタッフ教育に時間と労力がかかる
- スタッフ同士のコミュニケーションが不足し、医療ミス発生の確率が高くなる
- クリニック全体の雰囲気が悪くなる
などの悪影響が考えられます。
クリニック事業は労働集約型のため、人材資本がとても大切です。
医師の知識やスキル・コミュニケーション不足
医師の専門知識やスキルはもちろん必要ですが、それと同等に、患者さんとのコミュニケーション能力は大切です。
対応する患者数が増えて忙しくなると、一人ひとりの患者さんとのコミュニケーションにゆっくり時間をかけるのは難しいと考える医師も多いでしょう。
しかし、短い診察時間の中でも、患者さんに満足して帰ってもらおうとする気遣いや工夫は大切です。これは、患者さんの口コミやネットのレビューにも影響してきます。
医師が高齢で後継者がいない
院長が高齢になり、クリニックを承継できる後継者がいないと廃業を余儀なくされます。
負債を抱えた閉院でなければ、財務的に困ることは少ないかもしれません。
しかし、長年通院していたクリニックの閉院は、地域住民への影響が大きいでしょう。
クリニックを潰さないための具体的な対策
クリニックを潰さないための対策には、次のようなものが挙げられます。
- 事業計画をしっかり立てる
- 開業地について入念に調査する
- 経営状態や患者動向を把握する
- 広告・宣伝活動に力をいれる
- 価値観の合わないスタッフを採用しない
- スタッフの教育に注力する
- 事業継承も視野にいれる
それぞれ、具体的に紹介します。
事業計画をしっかり立てる
クリニック経営で成功する鍵は、明確で綿密な事業計画です。
事業計画には、開業地の見込み患者数の調査や周辺クリニックの専門としている領域や特徴といった競合調査が欠かせません。
開業後、どのくらいの期間までに事業を黒字化するのかといった計算も必要でしょう。
家賃や人件費などの固定費を抑えることも、事業を継続させるポイントです。
様々な事態を予測しながら、赤字に陥らないための事業計画をしっかりと立てるようにしましょう。
開業地について入念に調査する
開業地近隣の通行量や交通アクセスの便などを入念に調査することも、クリニックを潰さないためには重要です。
小児科として開業するなら、ファミリー層が多く住むエリアを選ぶことが大切ですし、精神科として開業するなら、その特性上、駅前の目立ちすぎる場所は避けることも重要でしょう。患者さんが、通院していることを周囲に知られたくないと考える気持ちに配慮する必要があります。
経営状態や患者動向を把握する
1日の平均患者数や新患率、再診率、平均通院回数などをデータ化するようにしましょう。また、合併症率や院内感染率などのデータや治療内容の分布などについても、分析できるように可視化しておくことが大切です。
現状を正確に把握したうえで、注力すべき点や改善すべき点についてはスタッフにも共有して、対策を講じる必要があります。このような現状分析や課題の共有、対策の考案を行っておくことで、クリニックの倒産を防ぎ、より良い経営を行うことができるようになるでしょう。
広告・宣伝活動に力をいれる
インターネットやSNSでの広告・宣伝が主流の現在、Webマーケティングに注力し、集患や増患させていくことが大切です。
クリニックの集患対策として、
- 院内や働いているスタッフの様子がわかりやすいホームページを作り込む
- 休診や診察時間帯が一目でわかるように情報を整理する
- 院長のコラムやブログなど、患者さんの興味を引く情報を発信する
- ホームページが検索上位に表示されるようSEO対策をする
- Googleマップで検索されやすいようにMEO対策をする
- InstagramやXなどSNSでの認知拡大に注力する
これらの対策が考えられます。
もし対応が難しければ、専門的な業者に外注することも有効でしょう。
価値観の合わないスタッフを採用しない
院長の価値観と方向性が合わないスタッフを採用しないことも大切です。
これまでの実務経験が豊富で、知識やスキルが高い人材でも、
「周囲のスタッフと上手くやっていけなさそう」
「自分のことばかり考えて周りへの配慮が欠けていそう」
このようなスタッフは採用しないのが無難です。
スタッフの人選は専門技術や経験だけでなく、クリニックの経営方針や院長の価値観に共感し、スタッフ同士のコミュニケーションやチームワークを大切にできるかどうかを評価する必要があります。
そのためには、採用募集の段階から、クリニックの経営方針を定めて採用面接ができるかがポイントになります。
スタッフの教育に注力する
スタッフのスキルと知識、コミュニケーション能力は、患者満足度に直結しますので注力すべきでしょう。
スタッフ教育の具体的な方法として、
- 医師会や企業が開催しているセミナーに参加する
- 医療に特化した外部研修やオンライン研修に参加する
- 医療接遇を専門にしたコンサルタント会社に依頼する
- 医療機器メーカーや製薬会社に院内勉強会を開催してもらう
などが考えられます。
定期的な研修を通じて、最新の医療知識を習得したり、患者さんへの接遇面を改善したりすることが大切です。
事業承継も視野にいれる
後継者がいない場合は、事業承継も視野に入れましょう。
クリニックの事業承継を専門としているコンサルタント会社もありますので、相談してみるのも選択肢の一つです。
また普段からクリニックに出入りしている、医療機器メーカーや製薬会社MRは、新規開業にアンテナを張っているので、承継を希望する医師情報を持っているかもしれません。
事業承継は、廃業するよりも費用を抑えられる可能性がありますので検討してみましょう。
編集部まとめ
この記事では、クリニックの廃業・倒産率について、潰れるクリニックの特徴7選、潰さないための具体的な対策について解説してきました。
これから開業する医師にとって、クリニックの経営は初めてという方が多いでしょう。経営者としての知識や経験が少ないなかで、安定したクリニック経営が難しいのは当然です。
本記事が、地域住民から求められる、安定したクリニック経営の参考になれば幸いです。