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【最新版】電子カルテの普及率の現状は?普及しない理由と失敗しない選び方のポイント6選を解説

                   
投稿日: 2024.04.18
                   

電子カルテの普及率は、年々上昇傾向にあります。しかし「実際のところは、中小規模の病院やクリニックではあまり普及が進んでいない」と聞き、導入を躊躇しているクリニックも多いのではないでしょうか。

普及率が低い理由や導入するメリットをしっかり理解し、費用対効果を見極めてから導入を検討する必要がありそうです。

この記事では、

  • 最新の電子カルテ普及率
  • 電子カルテの普及率が低い理由
  • 電子カルテを導入するメリット
  • 電子カルテの失敗しない選び方のポイント6選

これらについて解説します。

電子カルテの導入で迷っている方は、本記事をぜひ参考にしてみてください。

電子カルテの普及率

厚生労働省が公開する「医療施設調査」によると、2020年時点では以下の普及率でした。

診療所よりも病院の方が、普及率は高い傾向です。

  • 一般病院の57.2%(4,109/7,179施設)
  • 一般診療所の49.9%(51,199/102,612施設)

(参考:医療施設調査|厚生労働省

また、2023年11月に行われた「第1回標準型電子カルテ検討技術作業班」の中でも、

  • 200床未満の一般病院は5割程度の普及率で、精神科病院ではもっと低い
  • 一般診療所での普及率が50%未満にとどまっている 

(参考:第1回標準型電子カルテ技術作業班議事録|厚生労働省

このような説明がされており、2020年以降、電子カルテの普及率は50%前後からあまり進んでいないといえそうです。

病床規模別の電子カルテ普及率

医療施設の全体では5割程度の普及率でしたが、病床規模によって電子カルテの普及率は異なります。

<電子カルテシステムの普及状況の推移>

医療施設全体400床以上病院200〜399床病院200床未満病院診療所(歯科除く)
2008年14.2%38.8%22.7%8.9%14.7%
2011年21.9%57.3%33.4%14.4%21.2%
2014年34.2%77.5%50.9%24.4%35.0%
2017年46.7%85.4%64.9%37.0%41.6%
2020年57.2%91.2%74.8%48.8%49.9%

(引用:医療施設調査|厚生労働省

ここ数年で、200床以上の病院の電子カルテ普及率は75〜90%まで進んでいます

一方で、200床未満の小規模病院や一般診療所の普及率は50%未満にとどまっています。

この調査結果から、小規模病院や一般診療所における電子カルテの導入に課題があるといえそうです。

電子カルテの普及率が低い理由

電子カルテの普及率が低い理由

小規模病院やクリニックでの普及率が低い理由として、以下が挙げられます。

  • 電子カルテの初期費用が高い
  • 電子カルテの運用費用がかかる
  • 紙カルテに慣れていて使いやすい
  • パソコン操作が苦手なスタッフが多い
  • 停電などの緊急時が心配
  • 個人情報の漏えいが心配

それぞれ具体的に解説します。

電子カルテの初期費用が高い

高額な初期費用が障害となり、電子カルテの導入を躊躇する医療施設は多いようです。

オンプレミス型の電子カルテの価格相場は300万円程度とされています。クラウド型の電子カルテだと初期費用は抑えることができますが、それでも全く費用が発生しないというわけではありません。

昔からある診療所だと、インターネット設備導入の工事が必要なケースもあるでしょう。

そのため、電子カルテ導入の初期費用は、想定以上にコストがかかってしまうことも少なくありません。

規模が小さい病院や診療所では、業務効率化によるメリットが小さいため、初期費用と費用対効果のバランスが見合っていないと判断し、電子カルテの導入を見送ってしまっているのです。

実際、厚生労働省のワーキンググループ資料のアンケート結果には「初期費用の投資回収ができる見込みがないから」との理由で導入予定がないと回答している施設があります。

(参考:第1回標準電子カルテ検討ワーキンググループ資料|厚生労働省

電子カルテの運用費用がかかる

月額で発生する運用費用も導入を見送る理由の一つになっています。

クラウド型電子カルテは、月額の運用費用を数万〜10万円程度と低めに設定して、導入のハードルを下げているメーカーが多いようです。

しかし、更新費用やオプション費用などは、追加で費用が発生するケースもあります。

規模が小さい医療施設では、毎月発生する固定費はできるだけ抑え支出を減らす必要があるのです。

紙カルテに慣れていて使いやすい

紙カルテの方が使い勝手が良く、電子カルテの業務上の必要性を感じないという医療施設も多いようです。

  • 現状の紙カルテで何も困っていない
  • 電子カルテの方がかえって時間がかかる
  • 紙カルテだと自由に記載できる

上記の理由から、わざわざ入れ替える必要がないと考える医師が多いことが、電子カルテが普及しない大きな要因でしょう。

長年、紙カルテで診療をしているクリニックでは、「電子カルテは自由に記載できないので、むしろ使いにくい」と敬遠されてしまうようです。

パソコン操作が苦手なスタッフが多い

医師やスタッフが高齢でパソコン操作が苦手なことも、電子カルテの導入が進まない理由の一つになっています。

キーボード操作に慣れていないため、入力に時間がかかり、業務効率がかえって低下してしまうのではと不安に感じてしまうのでしょう。

また、高齢の親が電子カルテを使用するのは困難であると、導入を諦めてしまう親子で経営しているクリニックもあるようです。

停電などの緊急時が心配

停電などの緊急時に使えないのは不便との理由から、電子カルテの導入を見送ってしまうケースも多いようです。

院内にサーバーを設置するオンプレミス型の電子カルテの場合、停電が発生すると使えなくなってしまう可能性があります。

クラウド型の電子カルテの場合、通信障害などでインターネットが利用できないというトラブルも考えられます。

このような緊急時は、「紙カルテの方が安心できて便利」と考え、電子カルテの導入を見送ってしまうのでしょう。

個人情報の漏えいが心配

インターネットを介してクラウドに情報を預けるのは、患者さんの個人情報漏えいが心配というのも、電子カルテが普及しない大きな要因でしょう。

情報漏えいのリスクを回避するためには、セキュリティ対策をとる必要があり、適切なアカウント管理や定期的なパスワード変更、電子カルテ利用者にはセキュリティ研修を行うなどの必要があります。

紙カルテなら「院内の倉庫に鍵をかけて保管しておけば安全」という安心感から、電子カルテの導入は検討していないというクリニックも多いのかもしれません。

電子カルテを導入するメリット

ここまで電子カルテが普及しない理由を紹介しましたが、それでも普及率は近年上昇傾向にあります。

それには以下のような、電子カルテを導入するメリットがあるからです。

  • 業務効率化につながる
  • 手書きによる書き間違いや読み間違いがなくなる
  • 紙カルテの保管場所が不要になる

それぞれについて解説します。

業務効率化につながる

電子カルテを導入すると、患者さんの様々な診療情報を一元管理できるので、医師の診断結果や検査結果、処方薬の情報などをタイムリーに共有することができ、院内の業務効率化が期待できます。

紙カルテの作成や記入を待っている間、ほかの作業が進まないといった無駄な時間もなくなるので、人件費などのコスト削減にもつながります。

手書きによる書き間違いや読み間違いがなくなる

電子カルテを導入することで、手書きによる書き間違いや読み間違いを防げるのも、メリットの一つに挙げられます。

紙カルテの場合だと、

  • クリニックが混雑して忙しい時はカルテの文字が雑になる
  • 医師ごとに文字のクセがあるため見分けるのが大変
  • 読み間違いのミスがないかの確認をする時間が必要になる

手書きのカルテは、読み間違いなどのミスを誘発し、ダブルチェックをする必要もあるため、業務が非効率になる場合があります。

レセコンにデータを移行する時、読み間違いによる入力ミスが発生してしまうと、診療報酬の請求不備につながり、クリニックの収益にも影響がでてしまいます。

紙カルテの保管場所が不要になる

保管場所が不要になることも、電子カルテを導入するメリットの一つです。

医療機関では、カルテの保存期間は最終記載日から5年間は保存しなければならないことが法律で定められています。万が一の医療訴訟に備えるのなら、カルテは永久に保存しておいたほうが良いとの考えもあります。

しかし、院内の保管場所には限りがありますし、外部倉庫を利用するにも追加費用が発生してしまいますので、保管場所が不要なことは、経済的なメリットにつながります

電子カルテの失敗しない選び方のポイント6選

電子カルテの失敗しない選び方のポイント6選

電子カルテ選びで失敗しないためのポイントを6つ紹介します。

メーカーによって、電子カルテの機能は様々です。自院にとって最適な電子カルテを選ぶために、それぞれの特徴を理解しましょう。

オンプレミス型とクラウド型の違い

オンプレミス型かクラウド型かそれぞれの特徴を理解したうえで、自院にあったものを選ぶ必要があります。

オンプレミス型クラウド型
仕組みサーバーを院内に設置しデータの管理をおこなうインターネットを介し、クラウド上でデータの管理をおこなう
導入コスト300~500万円|院内にコンピュータやサーバーシステムをいれるため高額無料~数十万円|院内で特別な工事も必要なく、初期費用は安価
メリット独自のカスタマイズがしやすい
院内サーバーでセキュリティが高い
低コストで導入できる
災害が発生してもデータは守られる
デメリット初期費用が高額
自らメンテナンスをする必要がある
月額の運用費用がかかる
カスタマイズの自由度が低い

レセコン一体型と分離型の違い

レセコン一体型と分離型の違いは、電子カルテとレセコンの操作を同じシステム上で行うのか、それぞれのシステム上で行うのかの違いです。

一体型のメリットは、受付から診察、会計までを電子カルテの操作だけで完了することができる点です。電子カルテのデータを、そのまま診療報酬の明細に移行できるので、転記によるミスが発生しにくく、患者さんの会計待ち時間も短縮できます。

一方、一体型は、同一サーバーを使用するため障害発生時は電子カルテとレセコンの両方が使えなくなるというデメリットがあります。また入れ替えの際は、両方とも一緒に行う必要が発生します。

分離型は、電子カルテとレセコンが別々のシステムのため、電子カルテのみを導入するといったことが可能です。

使い慣れているレセコンはそのままで、紙カルテから電子カルテに変更することができますので、初期費用を抑えることができるというメリットがあります。

ほかのシステムとの連携

レセコンや検査機器との連携がスムーズにできるかは、電子カルテを選ぶ際の重要なポイントになります。

例えば、眼科のような検査が多い診療科では、検査結果を電子カルテへすぐに反映し、診察室から確認できれば利便性は高まります。

また、現在使用しているレセコンが日本医師会の提供するORCAであれば、ほとんどの電子カルテとの連携はスムーズに行えます。ORCA以外のレセコンの場合は、事前に確認しておくことをおすすめします。

操作性の事前確認

電子カルテの操作性の確認は、導入前に実機でテストすることをおすすめします。

メーカーによって操作方法や機能などに違いがあり、開発に力を入れているポイントも様々です。どのメーカーの電子カルテが自院に合っているのか、複数メーカーの実機で試してみると良いでしょう。

実際に使用する受付や検査スタッフにも試してもらい意見を取り入れることも大切です。

サポート体制が充実しているか

電子カルテ導入後のサポート体制が充実しているかどうかも、重要なポイントになります。

導入後すぐは操作に慣れていないので、担当者がすぐにかけつけ、丁寧にサポートしてくれる体制なのかは重要です。

また、故障やトラブルが発生した時には、どれくらいの費用が発生するのか、保証内容や問い合わせ受付時間の確認もしておくと良いでしょう。

同じ診療科のレビューを参考にする

検討中の電子カルテを既に導入しているクリニックのレビューを参考にするのも、失敗しない選び方のポイントになります。

口コミや満足度調査などのレビューサイトを参考にしたり、知り合いのクリニックに使用した感想をヒアリングしたりするのも有効でしょう。メーカー担当者からの説明より、リアルで役立つ情報が聞けるかもしれません。

編集部まとめ

この記事では電子カルテの普及率や普及率が低い理由、導入のメリット、失敗しない電子カルテの選び方のポイントについて紹介してきました。

電子カルテの普及率は、小規模の病院や一般診療所では50%程度となっていますが、近年は上昇傾向にあります。

電子カルテ導入による業務効率化・サービスレベル改善で集患率があがれば、収益アップも期待できます。

本記事が、自院に合った電子カルテ選びの参考になれば幸いです。