レセプト点検のコツとは?レセプト作成の流れや点検内容についても解説!
レセプトの内容に不備や誤りがないかをチェックするのが「レセプト点検」ですが、できるだけ確認漏れや間違いをなくすコツについて、ご存知でしょうか。
もし、提出したレセプトに返戻があった場合、クリニックへの入金が遅れてしまうため、キャッシュフローにも影響します。そのため、レセプト点検は、経営を安定させるための重要な業務と言えます。
この記事では、
- レセプトとは
- レセプト作成の具体的な流れ
- レセプト点検の内容
- レセプト点検のコツ
これらについて解説します。
レセプト返戻が多くて困っているクリニックや、これからレセプト業務について学びたい方は、本記事を参考にしてみてください。
レセプトとは
レセプトとは、「診療報酬明細書」のことを言います。クリニックや調剤薬局などの保険医療機関が、患者さんに提供した医療内容の報酬を、支払機関から受け取るために必要な書類になります。
レセプトに関わるものとして、
- レセプト業務
- レセプト点検
それぞれについて解説していきます。
レセプト業務とは
レセプト業務とは、レセプト(診療報酬明細書)を作成し、審査支払機関に提出するまでの一連の業務のことを言います。
カルテから診療内容の情報を整理して、厚生労働省が定める診療報酬点数表をもとに報酬を請求します。
レセプトの審査支払機関への提出期限は、毎月10日までとなっています。そのため、月初はレセプト業務に追われ、忙しくなります。
レセプト点検とは
レセプト点検とは、レセプト業務の一部であり、作成したレセプトに不備や誤りがないか、提出前に確認する作業のことを言います。
レセプトの内容に不備や誤りがあると返戻が発生し、クリニックの収益に影響が出てしまうため、レセプト業務の中でも「レセプト点検」は特に大切な業務になります。
支払機関から医療機関に診療報酬が入金されるのは、診療行為を行った月の翌々月が最短になっています。提出したレセプトに返戻があり、再提出となれば入金がさらに遅くなるため、レセプト点検をしっかりと行うことが重要です。
レセプト作成・入力の流れ
レセプト作成・入力は下記の手順で行います。
- レセコンに診療情報を入力する
- レセプト作成・出力をする
- レセプトを点検する
- 医師による確認を行う
- 審査支払機関に提出する
それぞれ具体的に解説します。
レセコンに診療情報を入力する
患者さんのカルテから必要な診療情報を、レセコン(レセプトコンピュータ)に入力をします。一般的なレセコンでは、診療内容に対応したコードや番号を入力することで、自動的に診療報酬の点数が計算されます。
紙カルテの場合、手入力する手間が発生しますが、レセコンと連携できたり、一体型になっていたりする電子カルテを導入することで、この作業を大幅に削減できます。
レセプト作成・出力をする
レセコンで1カ月分の診療報酬を確認して、レセプトを作成します。
基本的には、患者さん1人につき1件のレセプトを作成しますので、患者数の多いクリニックでは作業量も多くなります。
診療報酬の点数は、入力した情報をもとにレセコンが自動で計算してくれるため、レセプトを作成すること自体に時間はあまりかかりません。しかし、紙レセプトで請求しているクリニックの場合、郵送の手間やコストがかかり、その分時間を要してしまいます。
レセプトを点検する
作成したレセプトをチェックして、不備や誤りがあれば修正をする業務です。
この工程には、レセプト返戻をなくすための重要な役割があります。
レセコンに入力された1カ月分の診療情報に入力ミスがないか、一つずつ丁寧に確認する必要があります。
例えば、記載されている検査や処置、処方薬剤の内容と傷病名に整合性がとれているのかといった確認は必須になります。
電子レセプトで請求しているクリニックの場合、レセプトチェック専用のソフトを使用すれば、傷病名の間違いや記入漏れを防ぐことができます。
しかし、ソフトを使っていくら点検業務を効率化したとしてもミスは発生しますので、最後は人による手作業での確認が必要になります。
医師による確認を行う
レセプト点検で不備や誤りが見つかった場合、医師への確認が必要です。
記載されている検査や処置、処方薬剤の内容と傷病名に整合性がとれていない場合、医師の確認のもと修正を行います。
よくある例として、処方されている薬剤の内容と傷病名に整合性がとれていないという場合があります。これは、同じ薬剤でも適応範囲が微妙に異なったりすることなどが原因の一つと考えられます。
審査支払機関に提出する
点検を完了したレセプト(診療報酬明細書)と、診療報酬請求書を審査支払機関に提出します。
審査支払機関への提出方法には、下記の方法があります。
- CD-ROMなどの光ディスクで請求を行う
- 紙レセプトで請求を行う
- オンラインで請求を行う
法令により2024年4月から、事前に紙や光ディスクでの請求継続の届出をしている一部の医療機関以外は、オンライン請求が基本的な請求方法となりました。
提出されたレセプトは支払機関で確認作業が行われ、内容に不備や誤りがあれば、返戻や減額査定となる場合があります。
レセプト点検の内容
レセプト点検の具体的な内容は、
- 入力データに不備や誤りがないか確認する
- 過剰請求になっていないか確認する
- 診療内容と傷病名に整合性がとれているか確認する
- 医師に確認をとり、必要があれば修正する
それぞれのポイントについて解説します。
入力データに不備や誤りがないか確認する
レセプトは入力されたデータをもとに、レセコンが自動で作成してくれます。
そのため、入力内容に誤りがあると、作成されたレセプトにも間違いが生じてしまいます。
例えば、アレルギー性鼻炎や高血圧症など、処方薬があるはずの患者さんに「処方せん」に関する項目がないと、入力漏れが発生している可能性があります。
レセコンから出力する前に、入力データに不備や誤りがないかを確認することが大切です。
過剰請求になっていないか確認する
診療報酬が過剰請求になっていないかの確認も大切なポイントです。過剰請求の多い保険医療機関は、厚生局の指導や監査の対象となる可能性が高くなってしまいます。
例えば、自費診療で患者さんから費用を受領しているのに保険でも診療報酬を請求したり、同月算定不可のものを請求していたりすると、過剰請求になってしまいます。
診療内容と傷病名に整合性がとれているか確認する
保険診療では、傷病名に対して行うことのできる診療行為は定められているため、整合性がとれているかの確認も必須です。
診療内容と傷病名に不整合が発生する原因としては下記があげられます。
- 単純な入力ミス
- 似たような傷病名と混同してしまう
- レセコンのシステムの不具合
特に、医療事務のスタッフにとって、専門的な医学用語を覚えたり、微妙な違いを判別したりすることは難しいでしょう。
診療内容と傷病名に整合性がとれないと返戻の対象になってしまうため、レセプト点検の際には必ず確認するようにしましょう。
医師に確認をとり、必要があれば修正する
診療内容と傷病名に整合性がとれていないことがわかった場合は、医師へ確認をとり、必要に応じて修正をします。
医療事務のスタッフでは、診療内容と傷病名のどちらが正しいのかを判断することはできないため、必ず医師の確認のもと修正をする必要があります。
レセプト点検のコツは?
レセプト点検のコツをしっかり押さえることで、不備や誤りを大幅に減らし、返戻を防ぐことができます。
- 間違いやすい項目を重点的にチェックする
- 審査支払機関の傾向を把握する
- 電子カルテを導入し、レセコンと連携する
- レセプトチェックソフトを使う
- ダブルチェックを徹底する
- レセプト代行業者に依頼する
これらのコツについて、具体的に解説します。
間違いやすい項目を重点的にチェックする
レセプト点検を行う工程で、以下のような間違いやすい項目があります。
- 診療内容と傷病名に整合性がとれているか
- 検査、処置、投薬の入力漏れがないか
- 過剰請求になっていないか
- 必要な箇所にコメントの入力漏れがないか
- 症状などの詳細な記載が必要な箇所に入力漏れがないか
これらが間違いやすい項目と言われています。
レセプト点検は漏れなく完了させるのが理想です。しかし、レセプト提出の期限は毎月10日までのため、作業に十分な時間が取れない場合もあるでしょう。
そのため、間違いやすい項目を重点的にチェックすると効率的です。
審査支払機関の傾向を把握する
審査支払機関の傾向を事前に把握しておくことも大切です。
- 社会保険:社会保険診療報酬支払基金
- 国民健康保険:国民健康保険団体連合会(国保連合会)
被保険者の保険の種類によって、2つの審査支払機関があります。
これらの審査支払機関は別組織であるため、レセプト審査の傾向にも違いがあります。それぞれの傾向を把握して、チェックするポイントを重点的に押さえることが必要です。
日本医師会や地域医師会の主催で、審査支払機関のレセプトに関する注意点についてセミナーや講習会を開催しているところもありますので、そこで情報収集するのも良いでしょう。
また、レセコンや電子カルテのメーカー担当者は、レセプトに関する情報感度が高いため、相談してみると良いアドバイスをくれるかもしれません。
(参考:社会保険診療報酬支払基金)
(参考:国民健康保険中央会)
電子カルテを導入し、レセコンと連携する
電子カルテをレセコンと連携させることで、単純な入力ミスを大幅に削減できます。
- 医師が紙カルテに記載→紙カルテをもとに医療事務スタッフがレセコンに情報入力→レセプトを作成
- 医師が電子カルテに入力→レセプトを作成
電子カルテをレセコンと連携させた場合、「紙カルテをもとに医療事務スタッフがレセコンに情報入力」の工程は不要になります。
紙カルテに記載する医師の書き間違いや医療事務スタッフの読み間違い・入力間違いといった、これらのミスをなくすことができます。
医療事務スタッフの作業量も削減でき、クリニック運営の業務効率化が期待できます。
レセプトチェックソフトを使う
レセプト内容が正しいかをチェックしてくれるソフトの使用も効率的です。
ソフトの主なチェック機能としては、
- 傷病名の記載漏れがないか
- 算定漏れがないか
- 縦覧点検で過剰請求がないか
これらの機能が備わっているソフトが多いようです。月額利用料が1万円程度と比較的安価なものが多く、レセプトチェックを標準化できるため、有用な選択肢の一つになります。
最近では、チェック機能が備わっている電子カルテやレセコンも登場しているので、導入を検討してみると良いでしょう。
ダブルチェックを徹底する
複数人でダブルチェックを行うことで、不備や誤りを減らすことができます。
一人で何度も見直すよりも、何人かでチェックする方が間違いに気づきやすくなります。
例えば、医療事務スタッフがチェックをした後に、もう一度ほかのスタッフがチェックを行い最後に医師が確認をするのが理想です。
人件費とのバランスを考慮したうえで、費用対効果を見極めましょう。
レセプト代行業者に依頼する
レセプト業務や点検に時間や労力をかけたくないクリニックは、レセプト代行業者に依頼するのも一つの選択肢としてあげられます。
レセプト業務を専門家に任せられるのであれば、安心して患者さんの対応に集中できます。
レセプト代行業者の費用相場は、月額5万円程度と言われています。
作成するレセプトの件数や利用するサービス内容によって費用は変動しますので、削減できる業務量と費用のバランスが見合うものなのか検討が必要です。
編集部まとめ
この記事では、そもそもレセプト業務とは何か、レセプト作成の具体的な流れ、レセプト点検の内容とコツについて解説してきました。
レセプト点検は間違いやすい項目を重点的にチェックし、コツを押さえることで返戻を大幅に減らすことができます。
レセコンへの入力作業の必要がない電子カルテの導入は初期費用がかかるものの、業務効率化につながり、長い目で見れば費用対効果も見込めます。
レセプト業務について課題を抱えているクリニックは、本記事を参考にして業務改善につなげていただければ幸いです。